「近衛兵の鉄人」バッキンガム宮殿編


 「衛兵の交代」と言えば、このバッキンガム宮殿のものがもっとも有名です。この、英国陸軍最精鋭部隊である近衛歩兵連隊による贅沢なスペクタクルは観光シーズンには連日、冬場は隔日で行われます。エリート中のエリートだけあって、行進する姿や、気をつけ、休め、担え銃など、動作の美しさと力強さはとても見応えがあります。もちろん、彼らはそれだけの存在ではなく、現在も国連の平和維持活動や、英国国民の生命と権益を守る紛争の最前線で、英国陸軍の中核として活躍しています。彼らの迷彩服姿って言うのはちょっと想像できませんけど、それは私の想像力不足かもしれませんね。軍楽隊員はプロの演奏家を軍人として雇っている時期もありましたが、その場合でも衛生兵として前線で活躍しました。現在では経費節減のために少年兵を教育して軍楽隊員としているようです。
 近衛歩兵連隊は5個あり、そのうちの3個、近衛歩兵第1〜第3連隊であるグレナディア・ガーズ、コールドストリーム・ガーズ、そしてスコッツ・ガーズが17世紀以来の伝統を誇っています。ガイドブックによっては、この赤い軍服も当時のままだとするお粗末なものがありますが、さにあらず。ナポレオン戦争時代とさえ、異なっています。まして17世紀……やれやれ。


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近衛歩兵第1連隊軍楽隊

 速歩分別行進曲「英国の擲弾兵」で入場してきたのはグレナディア・ガーズ軍楽隊です。これからバッキンガム宮殿の警備に就くグレナディア・ガーズが後に続いています。

近衛歩兵第1連隊

 軍楽隊に続いて、本隊が入場してきました。ここまでは速歩行進(普通の行進曲のテンポ)ですが、宮殿の正門にさしかかると、号令がかかって緩歩行進に移り、行進曲も変わります。宮殿の前庭では交代式が行われます。ここではグレナディア・ガーズの緩歩分別行進曲である『スキピオ』が演奏されました。

宮殿前庭から出場する軍楽隊

 軍楽隊員は先ほどのグレナディア・ガーズなのですが、軍楽隊長は宮殿の警備を終えたコールドストリーム・ガーズでした。今、まさに緩歩行進から速歩行進に移るところで、この後『雲の騎兵』(アルフォード作曲)を演奏しながら兵舎へ向かいました。

軍楽隊員の後ろ姿

 腰につけた白い箱状のものは、カード状になっている楽譜が納められています。交代式の前後には新旧の衛兵が交代する間があるのですが、その間、ビートルズ・ナンバーや映画音楽などのメドレーが演奏されます。

出場するグレナディア・ガーズ

 軍楽隊に随伴してきた分隊(?)が出場します。小部隊の出入りがいくつかありました。

グレナディア・ガーズの後ろ姿

 ……だと思います、たぶん。軍服は主に上着の前のボタンで見分けるので、流石によく判りませんです。

コールドストリーム・ガーズの鼓笛隊

 聖ジェームズ宮殿の警備隊はバッキンガム宮殿の警備隊より前にバッキンガム宮殿正門に入って行き、バッキンガム宮殿の警備隊より後に出てきます。これには鼓笛隊(ファイフと打楽器のみ)が随伴します。

鼓笛隊の後ろ姿

 肩に掛けているのはビューグル(喇叭)です。ナポレオン時代は通常歩兵には鼓手、軽歩兵には喇叭手が配置されていました(現在はどうなんだろ……?)。なお、スコッツ・ガーズとアイリッシュ・ガーズの鼓笛隊はファイフ(横笛)の代わりにバグ・パイプを用いています。

聖ジェームズ宮殿の警備を終えたスコッツ・ガーズ

 スコッツ・ガーズのパイプ隊の隊員は近衛歩兵だというのに濃緑色の軍服でキルトをはいています。見たかったな〜。

現代近衛歩兵の軍服による見分け方

 どれも同じようにしか見えない赤い軍服の兵隊さんたちですが、よくよく見ると細かい違いがあります。近衛歩兵連隊は5個(近衛騎兵は2個)。そのうちナポレオン戦争に参加したのはグレナディア・ガーズ(近衛歩兵第1連隊)、コールドストリーム・ガーズ(近衛歩兵第2連隊)、そしてスコッツ・ガーズ(近衛歩兵第3連隊)でした。
 

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