1999.6.9.介護保険にかかる訪問調査委託についての意見
1999/6/2に入手した、当市の介護保険推進室の「要介護・要支援認定調査委託に係る意向調査」についての質問事項につき意見を述べます。
薬剤師会としては、居宅介護支援事業者の指定を受ける予定です。(平成11年8月上旬頃県へ申請予定)
(当初、会として受ける事業)
認定調査委託請負・・市より委託された場合、指定居宅介護支援事業者に所属するケアマネージャは認定申請者について85項目の調査をおこなう。(当市の検討中の調査費用は、1件3600円と決定した)月に100件調査で、36万円となる。人件費を捻出するためには、月25日稼働で1日4件、月100件の調査を消化しなければならない。
しかし、事業の継続性に疑問が生ずる。申請者4千名中、施設入所を除いて、在宅要介護者を約2500名と試算すると、六ヶ月ごとの更新時の調査件数は一月あたり400件余りとなり、ケアマネージャーは、8-15名程度ですむ。
(認定調査の重要性)
認定調査は、コンピューター判定に直に反映するため、もっとも重要な調査となっています。当初の時間をかけた正確な状況調査とていねいな対応が、今後の要介護者の信頼を得るためには絶対に必要な条件でしょう。未熟な調査では申請者に不信感を与えてしまうおそれがあります。
(認定調査費は低すぎると予想)
在宅で看護婦さんが、1時間働くと4000円-8000円かかります。看護婦の訪問看護は1日4件が限度といわれています。介護計画を立てるときに訪問看護料が高くなりすぎて在宅介護に支障がでるほどです。(厚生省は看護料を下げるような報道もあります)経験年数5年以上のケアマネージャー資格者(看護婦も薬剤師も医師もいる)が認定調査1件に1-2時間かけて3500円では、雇用する場合は人件費25万円程度は、月に100件扱ってやっとまかなえる。しかし、交通費は通常車の維持費を含めると千円を算定しなければ無理です。市内の宅配便でも500円かかります。(その他、市委託の駐車中の表示が、車の前後に必要ですのでご検討下さい)
(必置ケアマネージャーの兼務の制限)
施設に必置の定員に数えられるケアマネージャーは、介護等の実務に従事していてはならないとなっていますから、兼務して人件費を賄うことは法律上できません。
かかりつけ医意見書は、厚生省によれば一件4000円という目安案がでていますが、実際には病院の勤務医や大部分の開業医は介護保険の認識はきわめて低く、各地の医師会は危機意識をもっています。おそらく認定審査会では大半の「かかりつけ医意見書」は用をなさず、調査員の特記事項に頼らざるをえないことが予想されます。
認定調査は意見書よりも多岐にわたった質問をしなければならないため、調査員の85項目の調査は作業量としては、大変な作業で、コンピューター判定に直接的に影響します。モバイルコンピューターを、携帯してその場で入力し、市へ送信する作業は効率化をはかる上ではきわめて必要となるでしょう。認定調査用の携帯用モバイルコンピューターは市町村からの無償貸与というのが常識となっています。
(調査に要する時間)
モデル介護認定審査会の調査員の意見では、正確に調べたら2時間はかかるとのこと。要介護度が低ければ、多人数を短時間で調査することはできますので、申請者にあらかじめ状態項目5-6カ所目に○をし、介護度の目安を得られるアンケートが必要です。
件数をこなす調査員は、自立・要支援・要介護度1-2程度の方を集中的に担当すれば可能。要介護度3-5は、施設入所者が多いと思われるので、施設が対応できまし。しかし、在宅で重度の場合は1日4件が最大限と思われます。
通常は、移動の時間を含めずに、1件の調査に1-2時間かかると予想。要支援の方は40分程度でも可能でしょう。モデル介護認定審査会の認定調査資料作成は、15分でつくったものもありましたが、実態は寮母からの聞き取りなどですましており、正確な調査ではなく、モデル事業時には調査員への説明も不十分だったために、特に、特記事項の記載がまったくできていなかった。そのため、モデル介護認定審査会では非常に難渋しました。
(特記事項の重要性)
認定審査には、調査員とかかりつけ医意見書の特記事項が充実することが重要です。モデル事業では、認定審査会の要介護度変更には従来厳しい縛りがあった要介護度変更事例集について、要介護度が認定審査会の権限で変更できるように改訂される模様ですので、より一層 くわしい特記事項が重要となります。
(平塚中郡薬剤師会の認定調査の準備方法)
**調査員は、調査方法の注意すべき点などの訓練や特記事項の重要性の再認識や記載方法の検討が必要と考えます。平塚中郡薬剤師会では、6名のケアマネージャーに6月から毎月、会としてモデル介護認定審査会の認定調査方法の参考資料をもとに調査方法の訓練を開始する予定です。基礎があれば調査方法の変更にも、すぐに対処できると予想します。また、薬剤師ケアマネージャー全員をインターネットでむすび、意見交換や調査結果・ケアプラン作成は電子ネットワークで、プライバシーに配慮し、市へ迅速に提出する予定です。調査作成関係のデータベースも会独自に作成します。
(ケアプラン作成費2000円では、ケアマネージャー専任者は雇えない)
調査した申請者の介護計画作成も引き続き作成することも可能。ケアプランの作成費は全額保険から支払われるのですが、当初のケアプラン作成費用は1件2000円といわれています。(99/8/2時点では5千円-1万円)
しかし、それではケアマネージャーを指定支援事業者としては雇いきれないと予想されます。他の事業をしていて、そこで補うか、措置費を受けている社会福祉法人・公益団体にのみ可能で、現在のところは、ケアプラン作成費だけで単独でケアマネージャーを雇える金額ではないと試算します。これでは、新規参入はできないという参入規制になっています。参入を促す施策が必要です。
月に何回もケアプランを作成しなおし、そのたびに計画費が支払われるのでしょうか?いまのところ不明です。月何回までと制限が加わると思われます。しかし、調整できるのは月30件が限度とも言われていますが、行政は介護支援専門員1人が月に50人担当すると試算していますが無理のようです。
(施設内の兼務ケアマネージャーを活用せざるを得ない)
・通達では、必置ケアマネージャーは、同一施設内の他の施設に属していてもよいが介護などの日常業務に従事していてはいけないというのが介護保険の政省令です。同一敷地内ならば他の施設の管理者等が、支援事業者の必置のケアマネージャーを兼ねることはできるとされています。その他、施設要介護人数が50名増えるごとに施設のケアマネージャーを1人増員しなければならない。
しかし、試算ではケアプラン作成でも認定調査でもケアマネージャー専任者は人件費捻出が難しいので、兼務せざるを得ないでしょう。
(平塚市のケアマネージャー)
当市の申請予想数は4000-5000人で、現在当市のケアマネージャーは133名。そのうちで、ケアマネージャーとしての仕事に就くとアンケートに答えたのは40名だが、市としては、80名のケアマネージャーが常時必要と考えていて一人50名を担当する予定。50名の更新ごとに調査時に175000円、50名のケアプラン作成に10万円となり1カ月でならすと、13万円弱。これだけでは、施設でケアマネージャーを単独に雇用することはできません。一人は50名を担当しサービスを調整するのは無理だという意見も聞くので、30名程度で成り立つ施策を考慮することも必要です。
(ケアマネージャーの仕事量の限界と収入)
単純に計算すると、40名のケアマネージャーが一人で100人の申請調査にあたると36万円。
一人のケアマネージャーはケアプラン作成について、市では1カ月50名担当してもらいたいと思っているようですが、ケアプラン作成では実際には一人では月30名が限度と言われています。特に、最初は市民の苦情やサービス確保や調整のために大混乱の可能性があります。ヘルパーさえ確保しておけば、ケアプランの立て方によって、サービス整備や事業者の参入までの時間が稼げると思われます。布団や物を送りつけるだけのサービスでは、市民は納得できないでしょう。
(現在のところ、認定調査以後の人件費の維持・確保ができない)
一人のケアマネージャーが、1日フルに働ければ認定調査は4-5件は可能。要支援者が多ければ、1日に5-6件は調査可能とすると。認定調査件数が250件で3500円x250件=875000円の粗利益。調査時点の粗利益は計算できますが、継続としての居宅介護支援事業者の利益確保は未定部分が多く試算できません。ケアマネージャーを継続雇用することは不可能です。
現在、身体介護のホームヘルパーの手取りは1時間1500円から1700円ですが、事業所へは3750円程度が支給されており(今後増額予定との県の情報)、支給された人件費の残りは、事務所経費に回っています。家事ヘルパーはもっと安くて手当は1時間950円程度で、事業所へは2700円程度支給されています。
(調査開始時期について)
平成11年10月から6ヶ月かけて、予備認定審査実施のためには、毎週3回6チームが1回40件の*審査を行うためには、1月720件審査でも6ヶ月間かかるので、おそらく7-8月頃から、施設入所者を先に調査に入らなけらばならないでしょう。10月からは、ほぼ一週間毎日認定審査会が開かれ、行政は6チームの資料づくりに忙殺されることでしょう。資料作成や資料保管や整理のためにはコンピューターをフルに活用しなければ難しい場面を迎えます。
(ケアプラン用のコンピューターソフトについて)
ケアプランの作成には、コンピューターソフト処理がなければ時間がかかりすぎるということです。市町村ごとにサービス種類別に支給区分があり、例えば、この要介護度ならホームヘルパーについては何時間まで支給可能という、サービスごとに限度が決められるのを考慮してケアプランをつくらねばならないが、コンピューターなら自動計算して簡単になるようです。
おそらく事業所単位でソフトを購入して処理するのでしょうが、ソフト価格は200-250万円くらいすると予想しています。(日本看護協会の「表参道」ソフト、富士通、NEC 、日立等で作っている模様。今後ソフト会社の調査が必要で、現在検討中です)リースで月額38000-45000円程度でしょう。(社)平塚中郡薬剤師会で用意するためには、ケアマネージャー出動手当の1割程度を会に提供すれば成り立ちます。
(平塚中郡薬剤師会会員ケアマネージャーの報酬)
本来的には、薬剤師ケアマネージャの報酬は、会が斡旋する出来高払いのパートがよいと考えています。会員ケアマネージャー薬剤師が。自由に参加できる仕組みをつくり、極力 得た利益は資格と技術を持つ会員へ還元できるものとしたい。それが、街角の在宅福祉相談薬局のレベルアップにつながり、コストのアップを抑制できます。
医療保険財政が破綻している以上、介護保険も破綻させるわけにはいかない。薬剤師でケアマネージャー資格とコンピューターと意欲があれば、生きがいのある仕事が出来るように会として支援したいものです。
(平塚中郡薬剤師会ケアマネージャーの将来)
また、要介護度の低い方には、質の高いホームヘルパーを確保して雇用し、会から派遣することも東京・横浜・静岡と連携して行う方法を現在検討中です。街角の介護福祉相談薬局からの紹介で地域介護支援センターとをリンクさせてサービスを展開することも予想されます。介護情報の提供や、質の高いホームヘルパーの養成促進や連携の確保にも協力できるものを目指します。
在宅介護支援センターには、もっとケアマネージャーの統合によるネットワーク化や、研修などのレベルアップに寄与できるはずです。街角の介護福祉相談薬局から在宅介護支援センターへつなげるパイプを太くすることが重要です。
従来、薬剤師は、介護の実際には不慣れでしたが、介護知識の習得・介護情報の整理やネットワーク化や意見聴取・薬剤や介護の監査・サービス調整能力は期待されており、伸ばすべきものと思われます。
今後、地域の薬剤師のケアマネージャー数を拡大していくことも、提案する時期に来ていると思われます。介護保険事業参加が高齢化社会を支える一助となると思われます。
(事業の展開や調査の受託の将来は?)
一法人では、今はケアマネージャーがいれば指定居宅介護支援事業が受託可能でも、将来の事業の継続は難しいと思われます。当初は介護施設所属のケアマネージャーは不足しており、現在は市から一法人にも委託がくるでしょうが、今後は毎年フリーのケアマネージャーが増えて、介護施設がフリーのケアマネージャーをパートや出来高払いで十分抱え込めば、仕事の割り当ても来ないことが予想されます。
しかし、初年度は市内でも40名もケアマネージャーが不足し、厚生省は経過措置の療養型の看護婦や保健婦、老健施設の生活指導員にも調査員の委託ができるむねの検討中とのことです。(平成11年5月20日付の厚生省事務連絡で可能となった)初年度の立ち上がり時に、当会としても積極的に参加して認定事業に協力することで高い職能の発揮ができれば今後につながるものと思われます。
また、ただでさえコンピューターの要介護度が低く判定され介護費用が低く見積もられる傾向にあると予想されるなかで、要介護度が高い調査をするケアマネージャーしか、施設から委託されなくなることも予想されます。
介護福祉施設所属のケアマネージャーは、中立・公平の現場の意識は高くても、組織として生き残るため、又は、上質な人的サービスを確保するためには必然的に施設運営上は我田引水とならざるを得ないことも考えられ、今後は、高額なサービスを選択するような企業の参入も予想されます。もちろん、運営には厳しいコスト意識が必要ですが、一方では介護サービスの質の確保も同時に必要です。かねあいが難しいのですが医療保険と同じ高コスト構造により介護保険も破綻の轍を踏むことになりかねません。
会は公益法人として、調査に中立・公平な機関として、また、高いケアマネージャー技術とコンピューターネットワークと介護情報データベース・ケアプラン作成ソフトを備え、薬剤師としての知識を生かすことを目標とします。
市民への介護保険の橋渡しの技術にすぐれた、市民の立場での介護サービスが展開できれば、相互に資するというものです。介護サービスの質の向上や利用者の不満を誠実に調整・解消することが、公益法人としての(社)当会にもとめられてくるものと思います。
*一件当たりの認定調査の受託金額は?(回答:55000円程度は必要です)
中立・公平な公益法人に所属するケアマネージャーに認定調査する機関を確保しておく必要があります。調査は、毎回同じ調査員が行うのではなく、6ヶ月ごとの認定更新時の3回に1回は、施設に所属しない公的なケアマネージャーに調査を依頼する必要があります。それが、質の担保や市民の声が聞こえるというものです。
結論としては、最初から事業として行うには、指定居宅介護支援事業者はケアマネージャー兼管理薬剤師の平野先生を常駐者として、情報をコントロールしてもらうのが、平塚中郡薬剤師会の街角の介護福祉相談薬局との連携上、適当と思われます。
事業として成り立てば、支援センター薬局の2階にケアマネージャーを常駐させて展開することを予定しています。
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