下記のモデル介護認定審査会で問題となり、改定されても問題として残っている部分と認定審査会の変更可能事例の運用の仕方の説明、介護に要する時間の延長が予想される概況調査の資料の提示の仕方のご説明を、重点的にお願いいたします。 平塚中郡薬剤師会 渥美
1.平塚市の介護認定申請者数の予測
平塚市は人口25万人余りで、65歳以上の高齢化率は平成9年度は12.3%(平成11年1月では12.7%)で全国平均を下回っています。初年度は4000人(4600-3500人を予想)の介護認定申請を平塚市介護保険推進室は予想している。
しかし、98/11月の時点では、申請をしないとサービスが受けられないのではないかという風潮が広まっているようで、4600人程度に申請者が増えそうな情報があり、その場合の対応に市の介護保険推進室は苦慮しています。平塚市は、認定審査会を6チーム作る予定。人口5万人あたり、1チームというのが目安なので1チーム多く準備しています。1チーム5人構成で、30名を確保する。(その後、1チーム7人構成で42人。医師・歯科医師は2名ずつ参加し交代で出席し、実質は5人で審査を行うこととなった。
1回3時間の審査時間を予定しているが、とてもそれでは1回40件の審査は終わらないがその対策は?
埼玉県草加市(他市と合同審査会)は、人口は平塚市と同程度の25万人ですが、介護認定審査会は8チームを予定しており、薬剤師もメンバーとなっています。1回あたり2時間の審査時間を設定する予定とのこと。平塚より2チーム多いのは、チームの審査時間の負担を軽くする一つの方法と思われます。
平塚中郡薬剤師会としては、薬局の都合上、夜間の開催を介護保険推進室に依頼しています。(介護保険推進室は、コンピューター稼働が午後5時までなので、昼間の審査をお願いしたいとのこと。今後の調整が必要です。仕事をもっている第一線の専門職が、毎週一回、半日仕事をあけることは通常の業務形態では考えられません。
半数の委員3名は、午後6時以降の審査会開催を認定審査会では希望します。
コンピューターの問題も人員の出動シフトで対応できるはずです。高崎市では、市民の窓口業務を夜9時まで勤務シフトでこなしていました)
2.平塚市の認定審査会の体制
平塚市は、1チーム5人で、6チームの認定審査会が、1999年10月より2000年3月までの6カ月間、毎月1チーム3日間開催を予定。1回に40名を審査。(最近の、平塚市介護保険推進室の話では平成12年3月は移行作業で審査できないということとなった。そのため9月から前倒して認定調査を実施する予定とのこと。99/8現在)
40名の審査は半日(3-4時間)では時間的に無理のようです。丸1日かかってしまうかもしれない。
実際には3枚一組の調査資料内容の記述に、矛盾が無ければ即認定という迅速な審査になるという。1件3-4分での判定となる。審査時間が少なすぎては、認定審査会の意味が薄れるおそれでてきます。平塚市のモデル審査会では、1日30件を午後1時30分から5時30分まで、3日間かかって90件、初日に10件、計約100件を審査した。1件平均8分かかった。それも相当せわしなくて、頭が相当加熱した。これでは、心理的に満足な審査はむずかしいというのが感想でした。
1チームは5人構成の予定(平塚市のモデル認定審査会では、医師・歯科医師・薬剤師・施設長・施設の介護福祉士・老健施設等の社会福祉士?の計6名。ハッキリしたモデル認定審査員の相互紹介は無かった)
3.平塚市モデル介護認定審査会の構成メンバー
医師4名、歯科医師1名、薬剤師1名、施設長1名、老健看護婦1名、介護福祉士1名。
モデルでは、午後1時30分-5時30分(当初予定は4時30分まで)の4時間で30件を審査したが、1件平均8分だったが、休みはほとんど無く、非常にせわしなく、審査時間に余裕が無かった。
報酬は、1回1万円余り。(今回の平塚市条例で1回に19000円の報酬と決まった。医師・歯科医師には6000円上乗せの25000円となった。報酬に差額を設定することは、保健・福祉・医療職が同じ介護の審査の仕事をする専門職間では不都合であり、平塚中郡薬剤師会は、当初から全員一律の報酬が連携の理にかなうと申し入れを介護保険推進室にしていたが、行政には入れられなかった。今後、同一となるようにお願いしたい)
あらかじめ郵送された資料1回分30件に全部目を通し、1件3枚の資料の矛盾点を事前にさがし、全体像を把握するのに30件で仕事の合間にこなし数時間かかる。痴呆度や自立度は記号で資料に記されており、今回は、記号の意味する概念をテキスト本と参照しながら資料を検討したので相当時間がかかった。(私自身は、3年前より、処遇困難の平塚市ケアケース検討会に毎月出席し、今回は千ページの介護支援専門員テキストを読み込んでケアマネージャー試験には合格したが、要介護度の各段階の認定像の確認や認定変更可能事例・変更不可事例集をモデル介護認定審査会の開始早々わたされて、その参照作業で準備の時間が相当かかった)
4.介護度の認定方法の試行経過
初回のモデル介護認定審査会では、神奈川県福祉政策課安室(やすむろ)課長代理から認定方法についての若干の経緯説明を聞き、その後、10件程度の審査を行った。介護度は、施設入所者のケースの介護に要する時間を実際にストップウヲッチを持ちながら3000ケースを観察し積算して算出したとのこと。
平塚市のモデル介護認定審査会の初回は、介護度変更可能事例集を見て変更をしようとしても、審査資料に特記事項やかかりつけ医意見書の記載が少なく、ほとんど介護認定がおかしいと思われても変更可能事例に適合せず審査会に無力感がただよった。
特記事項は、是非 充実した具体的記載を調査員にお願いしたい。
厚生省は、全国の市町村を選んで、平成8年、9年、10年にモデル認定を行ってきたが、今回は国内の全市町村3200カ所が、参加して行うとのこと。そして、平成11年10月から実際の準備認定を行う予定。平塚市は要介護認定は4000件予定し、半年間で申請を受付て認定する。介護保険法の本番では、申請から30日以内に結果を通知しなければならないことになっているので、相当スピードが要求されるだろう。
5.今回のモデル介護認定の審査方法
神奈川県足柄上郡は合議体で認定審査会を行い、県内の他の市町村は単独で実施予定。
認定は本番では、3-6カ月で見直す。今回のモデル認定審査は100件を4回でおこなった。本番では、1チーム月3回の開催を、平成11年6月の市条例で決定するとのこと。
認定審査会長は医師が、毎回輪番で出席して務めることと平塚市から要請された。介護保険制度に関してすべての医師が介護保険法に精通しているわけではないが、平塚市は、かかりつけ医意見書で、お世話になるので座長に依頼したいとのこと。将来の介護制度を見据えた学識経験者など、直接の介護関係者以外の介護保険に精通した座長も改革を推進する上では必要でしょう。(社)平塚中郡薬剤師会の薬剤師会の認定審査委員6名は、全員が介護保険法と介護支援専門員の知識に精通し、4名はケアマネージャーです。
モデル初回は医師4名全員出席で2-4回目は各医師が輪番で1名ずつ出席して座長となった。医師以外の審査員5名は、4回審査全部に参加した。毎月、昼間3日間、医師が医院を留守にできそうもない。半数の審査会委員は休日や夜間に行わなければ出席できないでしょう。(その後、医師・歯科医師は2人制の輪番制となった。毎回交代では、再調査事例などの、前回の議論の連携がとれるようにお願いしたい)
反省会では、準備と認定作業の負担に対して担当医師からの意見では、あまりに報酬が低すぎるとのこと。それよりも実際に月3回、医療法での施設人員基準の勤務をはずれて審査にあたれるだろうかという疑問が残る? 県からの通知はありましたか?
98年12月に介護認定審査会関係の政省令が明らかになったとのことだが、ケアマネージャーのケアプラン作成費も2千円程度と聞くが、それでやっていけるのだろうか。かかりつけ医意見書は4000円程度。相当に効率のよい調査方法や連携方法をとらなければ難しい介護費用だろう。(平成11年8月の情報では、ケアプラン作成費は5000-1万円/月、との情報が有ったが、その後、要介護度に応じて月々のケアプラン作成費が提示された)
6.介護保険の情報公開
介護保険財政や医療保険財政の効率的運用や、福祉サービスの質の確保・向上には、福祉オンブズマパーソン制度や医薬分業など、情報公開や外部機関によるチェックがとても重要です。
医薬分業などは初期に人件費等の費用が患者にかかっても、複数の医療機関からの薬の相互作用の防止、処方薬の患者への情報公開、薬局によるねたきり在宅患者・障害者へのFAXを利用した薬の宅配サービスの提供などにより、将来的には高齢者社会の困窮している患者にとって、非常に利益になってくることでしょう。なにより、情報の開示によって効率化が進み、利用者や市民にとって利益となるような仕組みが必要でしょう。
グローバルスタンダードと言う観点でも、先進諸外国では韓国・フィリピンなども含めても医薬分業をしていない先進国はありません。そのシステムには、現在の患者が知らされていない利点がたくさんあるからです。
7.介護認定審査会の資料と手引き
1)一次判定結果
これは基本調査結果をコンピューターにかけた介護度判定です。モデル判定資料には、要介護度の指数を棒グラフ化で表示されています。現在受けているサービス内容の記載と、概況調査の自立度と痴呆度についての調査員の主観的な判定を記号化して表示し、下欄には基本調査の各動作項目の判定結果を表示。「全介助」「一部介助」などで表示。「概況調査」の内容は、判定には用いないことになっていたので審査会には未提出。そのため、要介護者の全体像や具体的な動作可能状況が見えずに非常に議論しずらかった。この動作ができなくてどうしてあの動作ができるのだろうか?というので、矛盾した調査結果のために時間を消費した。全体像が見える概況調査の提示や、調査員の要介護度との印象のずれの解消が必要。介護認定審査会では、この動作ができないのでは、もっと重いのではと想像するが、調査員によればもっと軽い印象と言っている。その対策として、他の市町村では、調査員を介護認定審査会に同席させるところもあります。
また、事務局で事前に調査票と主治医意見書との矛盾点を問いただして訂正しておいてほしい。
2)特記事項
調査員による基本調査の「特記事項」は別紙資料となっているが、今回のモデル事業では、認定作業における特記事項の重要性が事前に調査員に知らされていなかったため、ほとんど「特記事項」に記載の無いものが多かった。記載があっても全体像の把握不能で、具体性に欠けた描写が多く、判定をくつがえす法的根拠となる記述となっていなかった。そのため、要介護度の変更が不能だった。
たとえば、各項目について、「全般的な介護を必要とする」などの記述では具体性に欠け、変更可能事例集に適合する根拠となるような「特記事項」にならない。
かかりつけ医の意見書でも同様に具体性に欠けた記載が多く、なにより字の判読できない記載のために審査会は困難をきわめた。
8.調査員の認定方法の講習会
今回のモデル調査の調査員の認定方法の講習会では、危険を避けるために実際に動作をさせないように指導されていた。また、認定調査にかけられる時間は15分くらいしか余裕がなく、そのため寮母やヘルパーからの聞き取りで調査を終了せざるを得なかったという調査員の意見があった。
実際に調べると2時間はかかりそうとのことだが、それを認定調査の実態としてご認識いただきたい。
毎回、異なる施設から実施した調査員が同席したが、調査員が認定審査会の様子を傍聴していて、一次判定結果を議論している審査員の意見と要介護者の状態は、実像とは違う印象との感想をのべている。例えば、このような身体状態では、この動作はできないのではないかと認定審査員は疑うのだが、本人はできると言い、調査員の前で実際にやってみせるという。(調査項目85項目のチェックからは、同様に全体像は見えない。)
調査の際に、要介護者はいいところをみせようと、その時がんばってやってしまうのかもしれないとの調査員の意見が有る。特に、高齢者の意志疎通などの判定では、日によっても、話す相手によっても、受け答えに差がでるのは当然であり、どのように認定に反映されるのかという疑問の意見があった。
介護保険法でも一度の判定では、無理なので6ヶ月毎に、再審査することになっている。
9.かかりつけ医意見書
これは医学的見地による意見書であり、ADLやIADL等の日常動作の観察はされていないようです。そのため、全判的に長い経過を診察してきた「かかりつけ医意見書」は少ないように思われた。病院の医師の記載は、日常の介護はコ・メディカルまかせのためか患者をよく観察していない印象がある。最も困ったのは医師の字の判読の困難な点で、認定審査会では読めずに非常に困り、長時間をそれに浪費した。
読めない文字は、事務局より主治医に事前に問い合わせておいてほしい。
かかりつけ医意見書には介護認定の記述研修制度が必要です。医師にとっても全国一律に公平となる意見書は難しいと日本医師会の介護会議でも問題となりました。今回の主治医も、「かかりつけ医意見書」の重要性を知らされていなかったようです。
「かかりつけ医意見書」と調査員の「基本調査」と異なる記述が多くみられ、どちらを信用すべきか、とまどうことが多かった。重いのではないかという要介護者の立場で審査するのだが、IADL(手段的日常動作)は観察では可能だった!と、同席した調査員の意見も聞かれた。
全般的な印象では、このままのコンピューターによる一次判定では、要介護認定度が著しく低く判定され、現在の介護サービスは維持できないとの印象。(厚生省は、コンピューターの判定内容を変えると言っている。98/12/2の報道では、各段階につき、3-6万円程度引き上げる意向です)
また、かかりつけ医といいながら、患者から無理やり「かかりつけ医」にされて意見書を求められたという医師の意見もあった。介護に関する主治医ではなく、皮膚科の医師など、従としてかかった医師に家族が意見書を求めてきて、頼まれた医師は拒否しきれない事態も多く発生することが予想されると医師より意見あり。
医師に患者の意志を拒むことはできにくいので、行政でそれを補う二次受診を勧告するなどの制度が必要という意見を提出した。
かかりつけ医意見書については、医師は要介護者の生活を介護の現場で長時間観察する立場になく、現在のところは介護認定に不慣れなために、正確な記述が期待できない状態であった。記載項目にも改良の余地がありそうです。モデル介護認定審査員でさえ、介護度の変更可能事例や不可能事例の適用や議論に慣れていなかった。認定審査会関係者の早期の研修が必要です。
10.<特記事項関連>
特記事項の記載内容を充実してほしいという意見が審査委員から出された。特記事項に具体的な記載がなければ、要介護状態区分変更事例の根拠になり得ないから認定審査会の審査の意味がなくなる。
つまり、「特記事項に具体的に記載される内容が基本調査結果と一致せず、特記事項に本人の状況が正しく記載されていると判断される場合は調査結果を修正して差し支えない。」という修正適当事例に適合しない記載では意味がない。
修正不適当事例としての例示の「特記事項及びかかりつけ医意見書の内容に基づかないで調査結果を修正してはならない。」という規定にしばられてしまう。
概況調査などの結果を判定には利用できない。つまり「介護者の状況を理由として調査結果を修正してはならない。」の修正不適当事例の例示によって介護者が過酷な介護状態に陥る危険性にも対処できない。
介護者の状況を考慮しない公平性が、逆に過酷な介護状況を放置する結果となりかねない。地域介護保険制度として、それを補完する措置制度が必要。(介護保険策定委員会に疑問を提出予定)
11.歩行の判定表現について
「歩行」については杖を使用、車椅子を使用など移動状況の詳しい記載を要望。
要介護者の移動状況、つまり要介護状態がイメージしにくい表現となっている。
例えば、壁づたいに長い時間をかけて、やっと5-6メートル移動する人
床や畳の上をずって移動する人
杖をついてゆっくり移動できる人
車椅子でどこでも自由に移動する人
車椅子から崩れ落ちそうな人
歩行器を押しながらあちこち移動できる人
人に抱き抱えられてやっと歩行移動できる人など色々だが、歩行や移動の設問の判定記述から、どれが「自立」等の移動状況かイメージできない。
12.ケアマネージャーや調査員の研修について
モデル事業では、行政側の調査員に対する研修が不十分だったので、本番までに特記事項が詳しく具体的に書けるようにケアマネージャーや調査員の育成に力をそそぐべきです。
市としても独自に講習会を開き、判定基準のデータベースを集積すべきです。99/9/13の朝のテレビでは、ある町では、全調査員による実際の調査の実地研修からデータベースを作り、調査員による調査の違いが生じないようにするとの報道もあった。また、2人一組で調査するところもあるという。
認定審査委員も今回のモデル事業に参加するまでは、調査員による特記事項とかかりつけ医の意見書が認定する上で、これほど重要であるということは知らなかったという意見がでていた。認定審査会を傍聴した調査員も特記事項の重要性については全く認識していなかった。
特記事項をどの程度書くのか、どこまで書くのか調査員として判断に困るので、国の方で特記事項についての目安を詳しく示してほしいと調査員から要望がでた。
調査に、十分な時間をかけられるマンパワーが必要。
平成11年10月からではなく、もっと早く丁寧に調査作業をすすめるべきでしょう。日によって状態が違うので、訪問調査は2回行ってほしい。すでに、施設に長期に入所している人などもいて状態が安定している人の分は認定を詳しくできる状況にある。
13.特記事項についてのその他
麻痺の程度の特記事項が記述しにくかったという意見有り。
四肢欠損は記載欄がない。四肢麻痺だけの記載では欠損者に不利であるので改善すべきです。(新しい調査票には、手足の欠損の記述が補完されていた)
特記事項の調査に力を入れると、調査時間が2時間近くかかってしまう。また、実際に動かすことも危険なので、特記事項さえ書くことができないケースがあった。(調査員)
特記事項の記入欄のスペースに記入が束縛されてしまった。どこまで書いたらよいのか分からなかったので、決まった言葉があって、その言葉に該当するものを選ぶという形式も主観が入らないのでよいのではないかと提案有り。(調査員の意見)調査員には、特記事項の記載欄のスペースに拘束されずに記入できる旨をハッキリと講習すべきでしょう。
調査の際、一部介助の概念や判定が困難な事例が多い
コンピューターの判定では、一項目の「一部介助」と「全介助」の違いだけで要介護度に差がでることがままあった。
14.<かかりつけ医意見書の薬の記載について>
全般的には「かかりつけ医意見書」はスペースも足らず、書きづらいという意見(医師)
薬が記入されていないものがあるので投薬内容の記入欄を別に設ける、お薬手帳を作る、認定調査の時点で調査員ができるだけ把握するなどの対処が必要(薬剤師意見)
医師の意見では薬の内容を、全て記述するのは無理ではないかという。しかし、高齢者の1-2割は投薬内容による副作用が生じているというデータも有る。副作用のために、医師にだまって薬局でサロンパスや便秘薬や胃薬・鎮痛剤を購入して使用しているなど、服用している薬の副作用と知らずに他の薬で対処している場合もある。
精神安定剤などでの副作用で痴呆や転倒やねたきりとなっている症例はテレビでも報道されている。介護の現場でも薬が多すぎるのではという介護職の疑問に答えるシステムができていない。他の医師にたずねても、主治医ではなく診察していないから分からないということになり、結局は薬による寝たきりは無いという結論になってしまいます。
夜中の徘徊など、介護の現場では大変なことも多々あるのでしょうが、現在 昼間の介護の手が足らないために行う薬による縛り付けの例も問題となっております。
医師による記載が無理なら家族や本人やヘルバーから調査員が聞き取り、または薬局で、お薬手帳に記載してもらう、最近では医薬品情報文書を手渡している薬局もあり、他の手段を考えることもできますと提案した。
「他科の受診有り」とかかりつけ医意見書に記載してあっても医師同士の連携がとれていない?のか省略したのか、他科の処方薬内容がまったく記載されていなかった。一人の医師が書くという規定の中では、記述から見る限りでは、医師同士の連携はとれていないように思われる。広域病院の医師は処方内容を全部書く傾向があった。開業医の場合は、主要薬のみの記載と思われる場合も多々あった。
痴呆患者で精神科にかかっていても、その内容をかかりつけ医が知らない場合があり、多くの薬を飲んでおり介護認定審査の上では問題となります。特に痴呆患者は精神科医とかかりつけ医との連携がより一層必要ではないかと思われた。
痴呆患者では、精神科医への併診という複数受診体制を奨める必要があるのではないかと思われました。
15.かかりつけ医意見書の重要性を
意見書の記載内容の充実を医師会に依頼することが重要と提言された。
コンピューターの要介護認定度をくつがえすためには「かかりつけ医の意見書」が重要ということをかかりつけ医に再認識してもらう必要がある。
滅多に受診しない「かかりつけ医意見書」では、症状の激変を繰り返す人は対応できない。
例えば、肺炎や脱水状態にかかりやすく、かかるとフラフラになり、なおるとしゃっきっとする状態を、何度も繰り返す痴呆高齢者がいるとのこと。そのような例には、調査員が特記事項に必ず記載するように指導を。
医師にはリハビリの効果・経過や見通しを、可能な範囲で記載してほしい。ケアサービスに対する、審査会意見を付するのに参考となる。脳卒中などでは、50歳代の若い患者の片麻痺や言語障害のリハビリが素人の家族任せで放置されているようです。認定審査会では、リハビリサービスの導入の勧告が必要です。
意見書を、要介護者の主治医以外の医師に受診している家族が、無理やり依頼することがある。行政に、他の「要介護者の真の主治医の意見書」の添付を勧告してもらう必要性があります。
16.データの不備
医師は調査対象者のIADL把握は困難なのではないのか? 今回は、施設入所者では、入所時のデータを記入してしまったりすることがある。在宅介護の要介護者では、かかりつけ医がいつ診察したのかわからないという施設職員の感想もあった。
一度しか診たことがなくても、かかりつけ医意見書をやむなく医師が書いた例もあり、医師も昔、一度しかみたことがないので詳細は不明との意見書の記載があった。
本番では、主治医でない、副次的に受診した医師の意見書だけでなく、行政が再度、他の介護に関するかかりつけ医と認定できる医師の意見書の提出を求める必要がある。
古い診察記録しかないものについては、新たに診察して最新のデータに基づいて記入するように医師会に依頼する。
医師会内部も、在宅医療に関心の深い医師と、関心の無い医師がいて、一律にかかりつけ医意見書を正確に求めるには無理がありそうで、何らかの対応システムが必要と思われる。(平塚市では市内を地区割りで、30名の医師にかかりつけ医意見書の記載を依頼したとのこと。99/8)
傷病名については、障害の直接の原因となっている傷病名が特に無い場合は、無理に記入する必要がないのではないかという意見があった。
17.現実と認定のギャップ
認定審査会の意見と実際の高齢者の実態とかなりギャップがあった。特に「見守り」については第三者的立場で、「見守り」の可能性があるから「見守り」とするのか? 実際に「見守り」を必要としているか?の判断が難しい面があり、調査書の形式に問題があるのではないかという意見があった。集団で活動していると、ゆっくり見守りができずに集団行動させるために手を貸してしまうことが多いという現象もある。
意見書の内容によっては不服審査にまわった際に、かかりつけ医と患者との信頼関係が損なわれる危険性があるとの医師の意見があった。
肝炎やエイズなどの感染防止の管理の要介護度におよぼす基準が判定に入っていないが、介護に必要な時間の増加という要介護度に影響する事項なので入れてほしい。(新しい、認定調査資料には感染症の有無の記載がとりいれられていた)
18.<訪問調査関連>
調査員が自分の施設の対象者を調査する場合、他の対象者よりきびしく調査せざるをえない部分があったとの施設所属の調査員の意見。しかし、介護保険が実施されてくると、営利優先で参入してくる民間企業を予想すべきでしょう。
公正・中立な認定調査がされなければ、一次判定や調査にもとづく認定審査会の判定に公平性が保たれないことは明らかです。
調査は聞き取りなのでチェックが甘くなるとの感想あり。本人、家族等が「その動作はできる」と言うならば調査員が疑問を持っていても、聞き取りの結果をそのまま記載せざるをえないことがあった。その結果、実際の状態像と異なる一次判定結果がでてきてしまったものもあったとの意見。
調査対象者の体調には波があるので体調が良い日なのかどうか、薬が効いている状態なのかどうか判断がむずかしい。特に、パーキンソン薬の服用時間は、動作の改善に大きく影響を与える。薬の飲み方・飲む時間は判定におおきな影響を与える。この場合は、医師・薬剤師と共同しての調査も必要。
対象者本人は調査の際、緊張してよいところを見せようと無理をしてしまうことがあった。
19.<調査票関連>
概況調査結果は、認定審査会には提出されないが、それを見ないとケアプラン作成に関して意見が述べにくい。
施設だと「火の扱い」など実生活では行わないので、判定の際に、在宅の要介護者が不利になる可能性がある。
調査の際、在宅生活者と施設入所者で同じ要介護度になる公平な判断基準が必要。たとえば、移乗の項目では、這うなら出来る動作は「自立」としているが、施設では危険がともなうために自分ではさせないので「介助」となってしまう場合がある。今回の介護に要する時間の調査は、施設でのみの調査のため在宅介護に要する時間とは、ずれていることが分かっています。
食事で「きざみ食」での提供の仕方と判定結果で矛盾があった。
「見守り」と「自立」が調査員と医師によって判断が異なることがあるため判断基準を詳しく示す必要がある。
「見た目」が書ける欄がほしいとの調査員の意見があった。
聞き取り形式なら、要領の良い人が得をするのではないか?という意見。
20.<認定ソフト関連>
認定コンピューターのブラックボックス部分を明らかにしてほしい。特に要介護認定基準の時間の算出方法に関して。痴呆でない例でも、審査会での調査員への聴取で介護度が増したのに、再判定したところが要介護度が下がるという明らかな矛盾が生じるケースがあった。修正すべきである。
(厚生省は一次判定ソフトのロジックを公開した。一部メーカーは一次判定ソフトを組み込んだ調査員用ソフトを販売している。これによって、認定調査をどのように扱えば要介護度があがるかという恣意的な操作が入りやすくなった。)
モデルでのコンピューター判定システムの仕組みは、厚生省の過去の調査にもとづいた3000件の基本調査結果に、最も近い例をコンピューターが探し出し、そのデータの要介護度を判定結果とするとのことで、要介護度の状態像を判断基準とする場合には、審査員の総合判断に比べてコンピューターが劣ることは明らかだった。
そもそも、総合判断という場面では、コンピューターによる判定は向かない。公平な判定という呪縛にとらわれて、コンピューター盲信につながったものと思われます。
モデル認定審査会で、一次判定の項目を介護の手間がかるように重く修正したにもかかわらず修正後、要介護認定基準時間がさがってしまった例がままあり、非難の声があがった。要介護度変更が可能となる適当な記載が「特記事項」や「かかりつけ医意見書」に記載されていない場合は、特に判定結果に不都合が生じる。
21.痴呆の介護度が低すぎる
痴呆の介護度が軽く見られているのではないか?というのが重大な欠陥と思われる。痴呆症状が進むと、徘徊・暴言・寝返り等がなくなり、逆に介護の手がかからなくなるため介護度が下がるという判定があったが、悪くなった方が介護度が下がり費用がかからないという妙な理屈が初めて分かった。これでは、介護の手を抜いて痴呆を進行させれば費用がかからないということにもなりかねない。介護費用を低くし、介護の人手を少なくすれば、痴呆は増えてしまう。
コンピューターにこう入力するとこう判定される!という裏マニュアルがでてしまうのではないか?(実際には、理屈では理解不能な判定結果を出すので、今のコンピューターシステムでは予測不能と思われるが、恣意的な調査が行われれば、一次判定ソフトも出ており、公平性の点では生活保護の認定と同じ問題も生ずるだろう。)
22.考察
結局のところ、各要介護状態区分の状態像をよく読んで頭にいれておいて、一次判定結果と照らし合わせて要介護度を判定した方が、コンピューターの一次判定結果よりも、判定の矛盾や不公平性の拡大が少ないということは、はっきりした。(しかし、認定調査技術が未熟だったり、営利企業による恣意的な調査がおこなわれるならば、認定調査の信頼性が低くなり介護認定審査会の意味は薄いものとなる)
コンピューターに判定させる理由はただ一点、全国的な一律性と公平性の確保にすぎない。しかし、今回の認定作業では、コンピューターのロジックは人間の総合判定能力より、はるかに劣るということでした。そもそも介護度の総合判定のような全体像を把握しなければならない作業にコンピューターによる判定は不可能と思われました。それを無理矢理コンピューターにさせた結果、個々の状態像をくらべた時、要介護度認定に著しい不公平が生じている。さらに、今回はモデル認定審査員の認定技術についても、研修の時間不足で未熟なところがあったと反省しております。
23.マンパワーの確保
また、全国一律の判定結果などを求めても、地域の介護の基盤整備には違いがあり、もともと介護体制の一律性などは確保されないことは明らかです。施設が足りなければ、可能な限りヘルパーや在宅関係のマンパワーを育成するなど、地域での対処法が強く求められる。特に、ホームヘルパーの数の育成は高齢者雇用対策や自分の家族の介護やねたきりの予防に大きな効果が期待されます。家族介護でもヘルパーの資格があれば現金給付の道も残されました。積極的な育成に向けたPRが必要。重度の方には施設サービスが提供できるまで、在宅サービスを厚く提供するなどで切り抜けることも必要でしょう。
行政による、民間事業者の新規参入支援や技術向上への支援、認定調査員やケアマネージャー、ホームヘルバーの資質向上などに一層の介護福祉施策が求められます。
コンピューター判定を絶対視するのは、古代のデルフィの神託と同じです。現代のパソコンに神託をもとめたものにすぎない。
24.第三者機関
専門知識・経験があり公平・中立な立場の専門家が認定して、プライバシーに配慮してその過程を情報公開すれば、認定に不公平は生じえないし、コンピューターよりも満足すべき判定ができます。判定に慣れや情実が入ったときに不公平は生じやすいため、情報公開し、監視するオンブズパーソン制度のような開かれたシステムが改善向上には必要です。
厚生省は平成11年度に施設内に第三者を交えたオンブズパーソン制度を導入する法案を国会に提出するとのことだが、各施設のオンブズパーソンを統合した市内のオンブズパーソン制度も必要である。オンブズパーソン制度は施設サービスの向上や市の施策の調整・福祉サービスの改善・サービス提供状況の情報公開などを通じて、市民に開かれた福祉サービスを推進するためのもので、決して監視・監督などに偏る機能ではない。
これに関して、99/3/2厚生省は第三者機関の設置を、社会福祉の基礎構造改革の関連法案として今国会に提出するとのこと。(どうも提出は見送れそうです。)
25.概況調査について
概況調査を判定に用いないとしているが、従来の措置制度では概況調査こそが措置決定に影響を与えてきたことを考えると大きな隔たりを感じる。家族等介護者が介護する場合には、家族による在宅サービス負担を施設入所サービス提供などに振り替えたりするのに十分対処できる施設があるのだろうか?結局は家族にしわよせがくるのでは?
独居で身よりのない高齢者に対して、コンピューターによって軽すぎる要介護度の判定が下されるおそれは大きい。それによって早期にねたきりになるという事態は、何らかの施策を講じて防がねばならない。
平塚市の老人保健福祉計画や障害者福祉計画などと、十分連携のとれたものとなるような方策を平行して確保し、その結果を介護保険策定委員会に報告されて、策定委員会の答申にも反映させたい。
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