16.データの不備

医師は調査対象者のIADL把握は困難なのではないのか? 今回は、施設入所者では、入所時のデータを記入してしまったりすることがある。在宅介護の要介護者では、かかりつけ医がいつ診察したのかわからないという施設職員の感想もあった。

一度しか診たことがなくても、かかりつけ医意見書をやむなく書いた例もあり、医師も昔、一度しかみたことがないので不明との記載があった。

本番では、主治医でない、副次的に受診した医師の意見書だけでなく、行政が再度、他の介護に関するかかりつけ医と認定できる医師の意見書の提出を求める必要がある。

古い診察記録しかないものについては、新たに診察して最新のデータに基づいて記入するように医師会に依頼する。

医師会内部も、在宅医療に関心の深い医師と、関心の無い医師がいて、一律にかかりつけ医意見書を正確に求めるには無理がありそうで、何らかの対応システムが必要と思われる。(平塚市では市内を地区割りで30名の医師にかかりつけ医意見書の記載を依頼したとのこと。99/8)

傷病名については、障害の直接の原因となっている傷病名が特に無い場合は、無理に記入する必要がないのではないかという意見があった。

17.現実と認定のギャップ

認定審査会の意見と実際の高齢者の実態とかなりギャップがあった。特に「見守り」については第三者的立場で、「見守り」の可能性があるから「見守り」とするのか?実際に「見守り」を必要としているか?の判断が難しい面があり、意見書の形式に問題があるのではないかという意見があった。集団で活動していると、ゆっくり見守りができずに集団行動させるために手を貸してしまうことが多いことでしょう。

意見書の内容によっては不服審査にまわった際に、かかりつけ医と患者との信頼関係が損なわれる危険性があるとの医師の意見があった。

肝炎やエイズなどの感染防止の管理の要介護度におよぼす基準が判定に入っていないが、介護に必要な時間の増加という要介護度に影響する事項なので入れてほしい。

18.<訪問調査関連>

調査員が自分の施設の対象者を調査する場合、他の対象者よりきびしく調査せざるをえない部分があったとの施設所属の調査員の意見。しかし、介護保険が実施されてくると、新規に営利優先で参入してくる企業を予想すべきでしょう。

公正・中立な認定調査がされなければ、一次判定の公平性が保たれないことは明らかです。

調査は聞き取りなのでチェックが甘くなるとの感想あり。本人、家族等が「その動作はできる」と言うならば調査員が疑問を持っていても、聞き取りの結果をそのまま記載せざるをえないことがあった。その結果、実際の状態像と異なる一次判定結果がでてきてしまったものもあったとの意見。

調査対象者の体調には波があるので体調が良い日なのかどうか、薬が効いている状態なのかどうか判断がむずかしい。特に、パーキンソン薬を服用の場合など。薬の飲み方・飲む時間にも判定は影響される。この場合は、医師・薬剤師と共同しての調査も必要。

対象者本人は調査の際、緊張してよいところを見せようと無理をしてしまうことがあった。

19.<調査票関連>

概況調査結果は、認定審査会には提出されないが、それを見ないとケアプラン作成に関して意見が述べにくい。

施設だと「火の扱い」など実生活では行わないので、判定の際に、在宅の要介護者が不利になる可能性がある。

調査の際、在宅生活者と施設入所者で同じ要介護度になる公平な判断基準が必要。たとえば、移乗の項目では、はうなら出来る動作は「自立」としているが、施設では危険がともなうために自分ではさせないので「介助」となってしまう場合がある。

食事で「きざみ食」での提供の仕方と判定結果で矛盾があった。

「見守り」と「自立」が調査員と医師によって判断が異なることがあるため判断基準を詳しく示す必要がある。

「見た目」が書ける欄がほしい

聞き取り形式なら、要領の良い人が得をするのではないか?という意見。

20.<認定ソフト関連>

認定コンピューターのブラックボックス部分を明らかにしてほしい。特に要介護認定基準の時間の算出方法に関して。痴呆でない例でも、審査会での調査員への聴取で介護度が増したのに再判定したところが要介護度が下がるという明らかな矛盾が生じるケースがあった。修正すべきである。(厚生省は一次判定ソフトを公開した。一部メーカーは一次判定ソフトを組み込んだソフトを販売している。これによって、認定調査をどのように扱えば要介護度があがるかという操作が入りやすくなった。)

コンピューター判定システムの仕組みは、厚生省の過去の調査にもとづいた3000件の基本調査結果に、最も近い例をコンピューターが探し出し、そのデータの要介護度を判定結果とするとのことで、要介護度の状態像を判断基準とする場合には、審査員の総合判断にコンピューターが劣ることは明らかだった。そもそも、総合判断という場面では、コンピューターによる判定は向かない。公平な判定という呪縛にとらわれて、コンピューター盲信につながったものと思われます。

モデル認定審査会で、一次判定の項目を介護の手間がかるように重く修正したにもかかわらず修正後、要介護認定基準時間がさがってしまった例がままあった。要介護度変更が可能となる適当な記載が「特記事項」や「かかりつけ医意見書」に記載されていない場合は、特に判定結果に不都合が生じる。


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