6.介護保険の情報公開
介護保険財政や医療保険財政の効率的運用や、福祉サービスの質の確保・向上には、福祉オンブズマン制度や医薬分業など、外部への情報公開や外部チェックがとても重要です。
医薬分業などは初期に人件費等の費用が患者にかかっても、複数の医療機関からの薬の相互作用の防止、処方薬の患者への情報公開や新たな薬局による在宅患者へのFAXを利用した薬の宅配サービスの提供などにより、将来的には高齢者社会の困窮している患者にとって非常に利益になってくることでしょう。なにより、情報の非開示によって効率化が進み利用者や市民にしわよせがこないような仕組みが必要でしょう。
グローバルスタンダードと言う観点でも、先進諸外国では韓国・フィリピンなども含めても医薬分業をしていない先進国はありません。そのシステムには、現在の患者が知らされていない利点がたくさんあるからです。
7.介護認定審査会の資料と手引き
1)一次判定結果
これは基本調査結果をコンピューターにかけた介護度判定。資料の上欄には、要介護度の指数を棒グラフ化で表示。現在受けているサービス内容の記載と、概況調査の自立度と痴呆度についての調査員の主観的な判定を記号化して表示。下欄には基本調査の各動作項目の判定結果を表示。「全介助」「一部介助」などで表示。「概況調査」の内容は、判定には用いないことになっているので審査会には未提出。
2)特記事項
調査員による基本調査の「特記事項」は別紙となっているが、認定作業における特記事項の重要性が事前に調査員に知らされていなかったため、ほとんど「特記事項」に記載の無いものが多かった。記載があっても全体像の把握不能な具体性に欠けた描写が多く、判定をくつがえす法的根拠となる記述となっていなかった。
たとえば、各項目について、「全般的な介護を必要とする」などの記述は具体性に欠け、変更可能事例集に適合する根拠となるような「特記事項」にならない。かかりつけ医の意見書でも同様に具体性に欠けた記載が多く、なにより字の判読できない記載のために審査会は困難をきわめた。
8.調査員の認定方法の講習会
今回のモデル調査の調査員の認定方法の講習会では、危険を避けるために実際に動作をさせないように指導されていた。また、認定調査にかけられる時間は15分くらいしかなく、そのため寮母やヘルパーからの聞き取りで調査を終了せざるを得なかったという意見があった。実際に調べると2時間はかかりそうとのこと。
毎回、異なる施設から今回の調査員が同席したが、調査員が認定審査会の様子を傍聴していて、一次判定結果を議論している審査員の意見と要介護者の状態は、実際とは違う印象との感想をのべている。例えば、このような身体状態では、この動作はできないのではないかと認定審査員は疑うのだが、本人はできると言い、調査員の前で実際にやってみせるという。(85項目のチェックからは、全体像は見えません。)
調査の際に、要介護者はいいところをみせようと、その時がんばってやってしまうのかもしれないとの調査員の意見が有る。特に、高齢者の意志疎通などの判定では、日によっても話す相手によっても、受け答えに差がでるのは当然であり、どのように認定に反映されるのかという疑問の意見があった。
介護保険法でも一度の判定では、無理なので6ヶ月毎に、再審査することになっている。
9.かかりつけ医意見書
これは医学的見地による意見書であり、日常動作の観察はされていないようです。そのため、全判的に長い経過を診察してきた「かかりつけ医意見書」は少ないように思われた。病院の医師は、コ・メディカルまかせで患者をよく観察していない印象がある。最も困ったのは医師の字の判読の困難な点で、認定審査会では読めずに非常に困った。コミュニケーションをとろうとする意図が感じられない。かかりつけ医意見書には介護認定の記述研修制度が当然必要でしょう。医師も全国一律に公平となる意見書は難しい。今回の医師も、「かかりつけ医意見書」の重要性を知らされていなかったようです。
「かかりつけ医意見書」と調査員の「基本調査」と異なる記述が多くみられ、どちらを信用すべきか、とまどうことが多かった。重いのではないかという要介護者の立場で審査するのだが、IADL(手段的日常動作)は観察では可能だった!と、同席した調査員の意見も聞かれた。このままのコンピューターによる一次判定では、要介護認定度が著しく低く判定され、現在の介護サービスは維持できないとの印象。(厚生省は、コンピューターの判定内容を変えると言っている。98/12/2の報道では、各段階につき、3-6万円程度引き上げる意向のようです)
また、かかりつけ医といいながら、患者から無理やり「かかりつけ医」にされて意見書を求められたという医師の意見もあった。介護に関する主治医ではなく、皮膚科の医師など、従としてかかった医師に家族が意見書を求めてきて、頼まれた医師は拒否しきれない事態も多く発生することが予想されると医師より意見あり。
医師に患者の意志を拒むことはできにくいので、行政でそれを補う二次受診を勧告するなどの制度が必要という意見を提出した。
かかりつけ医意見書については、医師は要介護者の生活を介護の現場で長時間観察する立場になく、現在のところは介護認定に不慣れなために、正確な記述が期待できない状態であった。というよりも記載項目にも改良の余地がありそうです。モデル介護認定審査員でさえ、介護度の変更可能事例や不可能事例の適用や議論に慣れていなかった。早期の認定関係者の研修が必要です。
10.<特記事項関連>
特記事項の記載内容を充実してほしいという意見が審査委員から出された。特記事項に具体的な記載がなければ、要介護状態区分変更事例の根拠になり得ないから認定審査会の審査の意味がなくなる。
つまり、「特記事項に具体的に記載される内容が基本調査結果と一致せず、特記事項に本人の状況が正しく記載されていると判断される場合は調査結果を修正して差し支えない。」という修正適当事例に適合しない記載では意味がない。
修正不適当事例としての例示の「特記事項及びかかりつけ医意見書の内容に基づかないで調査結果を修正してはならない。」という規定にしばられてしまう。
概況調査などの結果を判定には利用できない。つまり「介護者の状況を理由として調査結果を修正してはならない。」の修正不適当事例の例示によって介護者が過酷な介護状態に陥る危険性にも対処できない。
介護者の状況を考慮しない公平性が、逆に過酷な介護状況を放置する結果となりかねない。地域介護保険制度として、それを補完する措置制度が必要。(介護保険策定委員会に疑問を提出予定)
最初のホームページに戻る pf4m-atm@asahi-net.or.jp