2002年8月


「地球の果てへ-世界の秘境の旅82」
ロム・インターナショナル編 東京書籍

タイトル通りの、世界の秘境の紹介。行ってみたいが、金銭的にも時間的にも行けない所ばかりなのが悲しい。自然の景勝地、宗教的な土地、未知の文化、人類の遺産、動物植物の聖域、都市、などに分類されている。魅力的な所ばかり。
落差979mのアンヘルの滝があるカナイマ国立公園(ベネズエラ)、ギリシャの岩上僧院群メテオラ、中国四川の楽山大仏、カナダのバッドランド(トルコのカッパドギアに似ている)、中国の黄龍風景区の九寨溝(トルコのパムッカレに似ている)などなど。


「雨天順延」 テレビ消灯時間5
ナンシー関 文藝春秋社

週刊文春00年9月14日号〜01年9月20日号連載のコラムをまとめたもの。目が離せない郷ひろみ、謎のマスクマジシャン(知らなかった)、悪霊払いまくりの陰陽師石田(見たことなかった)、突然陸上通の織田裕二、筋肉番付のケインと悪役池谷、大食い選手権の危うさ、そのパクリのフードバトルなどなど。今回は、知らない番組が多かったが、その番組を見てなくてもなるほどと思わせるのがさすがに上手い。
27時間テレビのルーズさへの突っ込みなど、よく言ってくれたと思う。


「スローフードな人生!-イタリアの食卓から始まる」
島津菜津 新潮社

イタリアにおけるスローフード運動の事は聞いていたが、単にファーストフードの対抗運動という認識でいた。それは大間違いだった。現代社会はファーストライフという共通のウィルスに感染している。ファーストライフに対抗する概念として生まれたスローライフの実現、その手段としてのスローフードという捉え方が正しいのだろう。
スローフード協会は北イタリアの田舎ブラに本部を置く国際団体で、次の3つの指針を掲げている。

1. 消えてゆく恐れのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、ワイン(酒)を守る。
2. 質のよい素材を提供する小生産者を守る。
3. 子供たちを含め、消費者に味の教育を進める。

郷土料理の風味と豊かさを発見すること、ファーストフードによる没個性化に対抗すること、食べ物を通じて自分と世界の関係を見つめ直す事など、イタリアの田舎のおおらかな活動が楽しい。目指す世界は同じだろうが「狂食の時代」の様なマイナス面ばかりを挙げるのでは無く、身近な所からの変革するという内容がいい。

日本のスローフード協会のサイトを見るとなんか違うなあという印象を受ける。詩人ポルティナーリの懸念、スローフード協会は資本主義原理に支えられた商業ベースのグルメ団体に近づきつつあるのでないか、というのが当たっているのでは。

ニッポン東京スローフード協会
日本スローフード協会 - なぜ二つに分裂しているのだろうか??


「お笑い超大国中国的真実」
鷹木敦 浅賀行雄画 講談社

中国の新聞記事に対しての突っ込んで、笑う本。人民日報、人民日報華東新聞、人民日報華南新聞から開放日報、北京日報など、主にインターネット版からの引用というお手軽さ。日本だって戦前、戦後すぐの新聞記事なんか読めばかなり笑えると思う。それも、ほとんどは翻訳の妙による面白さで、ちょっと不公平というか卑怯な感じもいなめない。

例えば「中国人のまっかなホント」「日本人は永遠に中国人を理解できない」など、比較文化人類学視点から見た中国の文化本来の面白さという視点には達していない。イヌ鍋の話、死刑大国、鼻の穴に手術用メスを置き忘れる、入れ歯のどにささる、西瓜食べすぎて胃が破裂、鍋料理屋で停電200人が食い逃げなどなど。

人民網リンク集 日本語版-インターネット人民日報 マスコミ全国紙、通信社等のリンク集
人民網-インターネット人民日報
人民網 日本語版-インターネット人民日報


「秘宝耳」
ナンシー関 朝日新聞社

週間朝日に1999年4月2日号〜2000年9月1日号に連載されたもの。「小耳にはさもう」「耳のこり」とナンシー関月刊が続いている(^^)。相変わらず面白い。
離婚会見に対する近藤サトの不気味さ、森光子とジャニーズの関係の謎(ホントに謎)、おすぎとピーコ人気のTVにおける不思議な位置関係(注目点が鋭い)、安達祐実のお色気路線の危うさ、またスポーツレポータのヨーコ・ゼッターランドみたいなマイナーなとこを取り上げる意外性、その他三遊亭円楽、ケインコスギ、稲川淳二などなど。周富徳がカメラマンをキックした話は知らなかった。
今回もベタだが、「山田くん、座布団くばってくらはい」(円楽)には笑わせてもらった。


「狂食の時代」☆
- The Great Food Gamble - John Humphrys
ジョン・ハンフリース 永井喜久子-西尾ゆう子訳 講談社

「ファーストフードが世界を食いつくす」「死の病原体プリオン」など食の危険性の本を読む事が多くなったが、社会的にも敏感になっている。いいことではあると思う。現代の食の問題、その総括的な話。著者は、BBCラジオの報道番組「トゥディ」のキャスターであり、10年にわたる酪農の経験がある。

食を広い角度から捉え、それでいて突っ込んだ深い話が多く、キャスターらしい判りやすく勉強になる。食品添加剤、殺虫剤、養殖魚、遺伝子組み換え食品、食肉に潜む細菌、失われた大地のバランスなどなど。現代の食がいかに工業化されているか考えさせられる。「沈黙の春」で語られている、有毒化学薬品、化学物質が食品に組み入れられていくのは恐ろしい。最近、安くなったノルウェー産の養殖鮭も心配で食べなくなってしまった。

著者が考える食品の基準は分かりやすく、かつ当たり前。それが、いまでは当たり前では無いのが怖い。

1.安全でなければならない
2.栄養豊富でなければならない
3.二次的な栄養素を含んでいたほうがいい
3.健康的な食べものは健康な植物や動物からしか得られない


「僕はこんな旅をしてきた」
西丸震哉 DHC

何かの本で誉めていたので読み始めたが、すぐに後悔。驚くほど面白くない。何より視点が年より臭くてイヤになるし、自分の狭い世界観でしかモノを考えられず、極私的な意見に偏りがち、情報的にもほとんど役に立たない。
内容的には韓国、台湾、中国、ニューギニア、ミクロネシア、アイスランドから南極、イースター島まで。これだけ旅をしてきて、感じたもの学んだ事はこの程度かとちょっと情けなくなる。
そういえば10年以上前、この人の本は「41歳寿命説」を読んだ事があるのを思い出した。

著者の名前、震哉が震災の年(1923年)に生まれたから名付けられたという所だけ、唯一驚いた。


「うつろな男」
- The Hollow Man - Dan Simmons
ダン・シモンズ 内田昌之訳 扶桑社

主人公ジェレミー・ブレーメンは35歳の数学者、妻ゲイルは2歳年下。二人はテレパスであり、その能力により誰よりも深く理解しあっている。物語はゲイルが脳腫瘍によって死ぬところから始まるが、ジェレミーのその後と、過去のジェレミーとゲイルの生活が交互に語られる…。

満足は出来ないものの、不思議な魅力に満ちている小説だった。SFっぽい話自体久しぶり。フラクタル、平行宇宙、カオス、量子力学などの好みのSF的ガジェットに満ちているのがいい。描き出そうとしているのが宇宙の秘密、精神や生命の秘密までに及んでいてちょっと哲学的。興味が無い人にはちょっと退屈かもしれないが面白かった。
ダン・シモンズは「殺戮のチェス・ゲーム」のホラーから、最近読んだ「ダーウィンの剃刀」のようなハードボイルド、ミステリーなどと作品の幅は広いが、この小説はジャンルを特定出来ない不思議な話。


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