2002年7月



「心にしみる天才の逸話20」
山田大隆 ブルーバックス

 科学史を人物伝による視点から研究する著者による、偉人の意外なエピソード。
 エジソン、ニュートン、アインシュタイン、湯川秀樹、キューリ夫人、ファラデー、エジソン、ラボアジェ、ダーウィン、野口英世、ジュール、メンデル、ワット、パスツール、ライト兄弟、メンデレーエフ、ガリレイ、ガウス、ゲーデル、ボルツマン、北里柴三郎。
 知っている話も多いが、悪い部分のエピソードは意外で面白い。三角関数を用いる交流理論を理解出来ず、自己流を押し通して送電事業で失敗したエジソンとか、恐怖政治を引き英国の科学を100年遅らせたニュートンなど。


「アジアを喰う」
鈴木みそ 双葉社

 WEELKY漫画アクション、平成8年4月9日号〜平成9年2月4日号に連載されたものい加筆訂正したもの。
 読書コーナーに入れたが、ほとんどの部分は漫画。著者とその妻ゆう子が夫婦でアジア8カ国を402日間放浪の話。表題の割にはそれほど食事の話が多いわけではないし、それほど深く突っ込んで食べる事を追及していいるわけでは無い。寄生虫、コピーものゲームソフト、ゲテモノ、トイレの話、バリ島マジックマッシュルームなどなど。ヘンな視点は他の旅物に無い面白さがちょっとある。


「耳のこり」☆
ナンシー関 朝日新聞社

 「小耳にはさもう」に続いて勢いでナンシー関を読む。最近の話題で面白い。
 天然の演技を計算と言い切る松岡修造、公開恋愛劇とその不幸体質の梅宮アンナ、前世がイルカその前がマリーアントワネットと自分で悟っている深田恭子、んー、さすがに視点が鋭い。そして言い切ってくれる。特にスポーツ勢の田村亮子、松野明美にはガツンと言ってやらねば。
一番笑ったのが、選挙特番の出だしの一言「こんばんは。筑紫哲也れす」、ベタだが抱腹絶倒。数日間、思い出し笑いが続いた。


「80日間世界一周」
- Around the World in 80 Days - Michael Palin
メイケル・ペリン 山本宜子訳 心交社

 ジュール・ヴェルヌが1872年に書いた「八十日間世界一周」でフィリアス・フォッグと従者パスパルトゥーが行った旅を、1988年英国のモンティ・パイソンの一人、マイケル・ペリンが挑戦した記録。BBCの番組企画らしい。飛行機は使わず、フォッグの時代にあった乗り物だけを利用し、世界一周を80日間にするというルール。
定期航路が無くなったせいで、代わり貨物船に乗るのが結構大変。大英帝国の時代の優雅さは無い。読み物としてはあんまり面白くなかった。ちなみに日本ではなぜかカプセルホテルに泊まる


「サンキュー、ボーイズ」
- Riding in Cars with Boys - Beverly Donofrio
ビバリー・ドノフリオ 鹿田昌美訳 角川書店

  著者の自伝小説。1960年代、文才があり作家を夢見ていたビバリー・ドノブリオ、どこにでもいる生意気、反抗的で異性に夢中なティーンの彼女はレイ・ハセックと知りあい、15歳で妊娠。高校は中退、レイの気持ちは冷めかかりながら結婚、レイは飲んだくれて仕事もおろそかになり、そして離婚。ベトナム戦争、ヒッピーの時代を息子ジェイソンを一人育てながら作家になる夢を果たそうと努力する…。

ドリュー・バリモア主演で同名で映画化されているけど、映画は未見。原作の方が面白いという噂で読んだけど、イマイチだった。文章も陳腐、展開も先が見えて面白くないのだけど、どうもつまらない半生をダラダラと語られているようでちょっと疲れる。


「堕天使は地獄へ飛ぶ」☆
- Angels Flight -Michael Connelly
マイクル・コナリー 扶桑社

 LA市警と係争中の人権派の黒人弁護士エライアスと女性の惨殺体が、ケーブルカー「エンジェル・フライト」の頂上駅で土曜の夜に発見される。月曜の朝にはLA市警を相手とする訴訟が開始する。一歩間違えれば、大規模な人種暴動がおきかねない状況。警官も容疑者となるこの事件を、ハリー・ボッシュは黒人警官二人の同僚と捜査を開始する…。

 ハリー・ボッシュ・シリーズ第六作、らしいけど実は読むのは初めて。複雑に入り組んだ事件を解きほぐしていく展開はなかなか読ませてくれる。O.J.シンプソン事件、LA暴動などを絡めたリアリティの出し方は巧みで、事件の緊張感が伝わって来る。ラストの展開は意外で、印象的。面白かった。


「ラスト・コヨーテ」上
- The Last Coyote - Michael Connelly
マイクル・コナリー 古沢嘉道訳 扶桑社ミステリー文庫

 主人公のハリー・ボッシュ、LA大地震で家は半壊、恋人のシルヴェアとは別れ、上司のパウンズ警部補への暴力で強制休職処分を受け精神分析医のカウンセリングを受けることに。休職の時間を使い、1961年に起こった、ハリーの母親である売春婦マージョリー・ロウ殺害事件を再調査するが事件の裏側に気がつく…。

 「堕天使は地獄へ飛ぶ」と同じハリー・ボッシュ・シリーズ。ハードボイルドらしいストイックな展開。ボッシュはかっとしやすい性格だけど人間味があって、暴力的でもなく魅力的。単純な事件と見られた売春婦の殺人事件の、その裏側が次第にあばかれていく展開の上手さは見事。楽しめた。


「ラスト・コヨーテ」下
- The Last Coyote - Michael Connelly
マイクル・コナリー 古沢嘉道訳 扶桑社ミステリー文庫


「イブの七人の娘たち」☆
- The Seven Daughters of Eve - Brayan Sykes
ブライアン・サイクス 大野晶子訳 ソニーマガジンズ

 著者のブライアン・サイクスは遺伝学者。5000年年前に死にアルプス山脈で眠り続けていたアイスマンの人骨からのDNA採取に成功する所から話は始まる。母親からしか受け継がれず、核DNAより突然変異が速い(時間経緯が計算しやすい)ミトコンドリアDNAに着目し、ポリネシア人の研究、さらにヨーロッパ人
での対規模な研究で、ミトコンドリア・イブの子孫、七人の娘たちのアースラー、ジニア、ヘレナ、ヴェルダ、タラ、カトリン、ジャスミンの一族の分れ方を解明していく。

 考古学とは違う視点から有史以前の歴史を解いていく所が、科学的ではありながら、非常にロマン溢れ、ファンタジックに感じる。数千、数万年という単位で人の生活変化や移動が見えてくるのは、不思議な感覚。
核DNAとミトコンドリアDNAの違い等、さまざまな専門的な話題は出てくるが、どれも説明が上手く、科学が苦手でもすんなり読めると思う。

日本は研究が進んでいないが、2500年前に朝鮮半島から渡った弥生人により、縄文人の末裔アイヌと琉球人が南北に追いやられたという。しかしアイヌと琉球人は縄文人の末裔でありながら12000年の独特の変異があることから、当時から接触が無かった事が判った。これからも人種や国家という枠組みがいかに狭いかが判る。


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