うみへび座
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Hya
学名Hydra
略号Hya
20時の南中月日4月下旬
星座設定者プトレマイオス


ギリシア神話
●アミュモーネの泉
英雄ヘラクレスの12功業の2番目は、レルネーの沼沢に住む9つの頭をもつ 巨大な水ヘビのヒュドラー退治でありました。

 それはむかしむかしのことでありました。 アルゴスの地の支配をめぐり女神ヘラと海神ポセイドンが争いをしておりました。 結局女神ヘラがアルゴスの地を一人占めにしてしまいました。

 それを怒ったポセイドンがアルゴスの地の泉の水を枯らしてしまったのです。 アテナ神殿を建てたアルゴス王ダナオスは、 娘のアミュモーネに姉妹と伴に泉を探すように言いつけました。 姉妹は泉を探して回る途中で、森で眠りに就いているところを、 ヤギに似た野蛮な山野の精サテュロスに襲われたのですが、 海神ポセイドンにより助けられました。

 その時ポセイドンが三叉の戟で大地を打ったところから泉が湧き出したので、その泉に 「アミュモーネの泉(レルネーの泉を教えたとも)」という名前が付けられました。(A2)

●ヒュドラーを探して
それから人々はそのアミュモーネの泉を飲み水としておりましたが、 いつしか現れたヒュドラーのためにアミュモーネの泉は毒水になってしまい 困っていたそうなのです。(A1)

ヘラクレスは女神ヘラののろいで、妻と子を殺してしまった償いに、 ミケーネ王エウリュステウスから下される 十の命令に従わねばならない事になっておりました。 その二番目に与えられた仕事が任務が怪蛇ヒドラ退治だったのです。 ヘラクレスは、甥のイオラ−オスの戦車でレルネ−にヒュドラ−退治来たのですが、 いくらさがしても肝心なヒュドラ−が見つかりませんでした。 その時この地に神殿を持つ女神アテナがヘラクレスに ヒュドラ−の住む洞窟を教たのでした。(A1)

●ヒュドラーとの戦い
ヘラクレスは火のついた矢を洞窟に打ち込み、ヒュドラ−を洞窟から 出て来させました。出て来たヒュドラ−は頭が9つあり、人に背丈の 20倍もある巨大な蛇だったのです(A1)。

ヒュドラ−はヘラクレスの足にからみつき、 ヘラクレスを倒すとその顔に毒ガスを吹き掛けました。 ヒュドラ−の毒の事を知っていたヘラクレスは息を止め、 棍棒でヒュドラ−の殴り付けたので、 ヒュドラ−はひるみヘラクレスの足を放してしまいました(A1)。

●かにの援軍
この時、ヒュドラーを助けようと同じ沼の住人の蟹(蟹座)が 沼から這い出して来てヘラクレスの足をパチンと挟んだのですが、 ヘラクレスに棍棒で叩き潰されてしまったということです。 この間にヒュドラ−は体勢を立て直して、 今度は9つの首から一斉に毒を吐いて攻撃して来ました(A1)

ヘラクレスは剣を抜きヒュドラ−の頭を斬り落としましたが、 斬られた痕からまた新しい首が生えてきて、斬っても斬っても切りがないのです。 さすがのヘラクレスもほとほと困り果ててしまいました。 そのときヘラクレスにある考えが頭に浮かんだのです。(A2)

●ヘラクレスの勝利
ヘラクレスは甥のイオラーオスに、近くの森に火を放ちつよう命じました。 そしてヘラクレスはその燃木でヒュドラーの頭が再び生えて来ないように、 切り落とした首の跡をを焼き払いました。するとどうでしょう、 焼かれた跡からは首が再び生えて来ることはなかったのです。 そうして最後に9つの目の不死の首が残りました。 しかしその最後の不死身の首はいくら切りつけても傷が付きませんでした(A2.A1)。

ヘラクレスは最後の不死の首を大きな石の下に押さこみ、 ようやくヒュドラーを退治する事が出来ました。 ヘラクレスはそのヒュドラ−の体を裂いて、その胆汁に矢を浸して、 これ以後毒矢として使いました(A2)

ヘラクレスを憎む女神ヘーラーは、ヒュドラーよ!よくぞヘラクレスを苦しめて くれたと星座に加えたのだそうです。(A1) また一説にはゼウスがヘラクレスの功績を讃えて星座にしたとも いわれております(A2)

ヘラクレスはミケーネに帰りヒュドラーを退治報告しましたが、 ミケーネ王エウリュステウスは、甥のイオラ−オスの助けをかりたのだから、 十の仕事のうちには入れないといったので、ヘラクレスは十二の仕事をすることになったのです。


名前と誤訳

●名前
ヒュドラ−はヒドラともいいますが,神話辞典を優先しまして ヒュドラ−にしました。ヒュドラ−は魚座の怪物テュ−ポンの 子供で「獅子座のライオン」と「冥界の番犬ケルベロス」とは兄弟になります。

頭の数は5から100まで所伝があるようですが、所伝の中には ヒュドラ−は人頭であったお話もあるようです。(A2)

●誤訳
Hydra(ヒュドラー)は女性名詞で、男性形にしたのがHydrusでこれが水蛇座ですね。 私の頼りない感じでは、「うみへび座」という訳は不適当か又は間違えてしまったのではないかと 考えております。英名では水蛇というそうですね。 日本では明治時代に「九頭竜座」と命名されていた時期もあったようです。(C1)

会議室で、何故うみへび座の首が何故一本かと質問がありまして考えてみたのですが(^^;
首を沢山にする適当な星がなかったので、最後の不死の首だけくっつてると考えるのは如何でしょう。 いえ単なる私の案なのですけれど。。。へ(^^へ)

なにはともあれ、現在では一番大きな星座は「うみへび座」です。


合理的解釈

●合理的解釈
この戦いでヘラクレスは甥のイオラ−オスの手を借りているので ヒュドラー退治はヘラクレスの功績ではないとする説がありますが、 この説に対して古代より2つの解釈がなされておりました。

このお話はヘラクレスがレルネ−の沼沢を干拓した時に 泉をいくら干しても、また水がわき出してしまう話が転じ 沼沢が蛇に、湧き出す水が蛇の頭に比せられたとする解釈。

レルネス王のもとに射手50名の護衛がおりまして その射手は1人倒れると、すぐに代わりのものが 現れたことを指しているのだとする解釈。


参考引用文献
A1☆星座神話クラブ・脇屋奈々代著・誠文堂新光社
A2☆ギリシア・ローマ神話辞典・高津春繁著・角川書店

B1☆星座手帳・草下英明著・教養文庫・658・c028
B2★21世紀星座早見ガイド・林完次著・講談社・B1069

C1☆星座の話・野尻抱影著・ちくま文庫・490・476


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