今年の夏、天候はあまりぱっとしなかった日本だが、蝉は当たり年だった。昨年よりはかなり多く羽化しており、夏のBGMとなっていた。この世知辛い世の中でどれだけの人達がこんな微妙な自然の違いに気づいているんだろうか?
「なぁ、あんたセミが多いと思わないか?」
「セミ?、セミって嫌い・・うるさいし、ゴキブリみたいだろう」
そんな会話が聞こえてきそうだ。
さて、8月の初旬、妻の実家に子連れで遊びに行った帰りの出来事だ。息子の佑太が、よく蝉の抜け殻を見つける場所に帰り際に最後のチェックを入れたいた時、
「あーっ、中身が入ってる」と叫んだ。
「どれ、どれ、おーっ幼虫だ、それもアブラゼミの」そう答えた僕は直ぐに佑太から幼虫を奪い取っていた。5年の歳月を経て地上に出て、5歳児の佑太にゲットされるとは、なんという奇跡の運命だろうか・・・。
「ようし今日は蝉の羽化の観察だ!」そう呟くと僕は、愛車レガシィをメル・ギブソンのように自宅まで走らせた。
自宅に着くともう既に背中が割れていた。
「やばい!」
僕は焦り幼虫を固定出来るものを探した。
「あったぞーっ」
僕は佑太のお気に入りのカエルのヌイグルミ(名前はバブ)の背中にセロテープで幼虫を固定し、それを生ゴミ禁止のゴミ箱の上においた。
そして、羽化は順調に始まったのだった。
蝉の羽化は1時間程度で終わった。羽が乾くのには半日以上必要なようだ。
実のところ蝉の羽化を見るのは初めてだった。
羽化したてたのセミの色は限りなく白に近いクリーム色。羽の部分にはエメラルドグリーンが薄くかかっている。とっても綺麗だ。この色はなかなか僕の安物デジカメでは捉えることが出来なかった。でも生命の神秘を1時間以上の間家族と一緒に観察出来たのは、今年の夏の大きな収穫である。
翌朝、羽が乾いてもう茶色くなったアブラゼミは、佑太の手から夏の青空の中へ飛び立っていった。

体が半分程度出ている。羽が全部出たら、一応羽化は成功だ。
濡れた羽が綺麗、このとき羽に触ると羽が変形してしまうので、注意。
これで終わりこの時が一番綺麗、後はどんどん茶色くなって行きます。
| 作者紹介:Masahiro Ikezaki もっと詳しく日常を知りたい人は作者の日記がここにある。つまんねーぞ。 アドベン日記 |