俳人中西一生氏のご紹介




 本名、中西良夫。明治44年5月、東京に生まれる。法政大学卒。昭和5年より矢吹潤の名で短歌に傾倒。演劇活動にも熱中し、築地小劇場にも出演。昭和17年、矢吹時雲の名で作句を開始。戦時中は海運省教官。戦後は海上保安庁に勤務しつつ俳人として活躍。「射手座」代表、「草紅葉」同人、「春光」編集同人、「夜明」編集同人、全国俳誌協会幹事長(昭和56〜平成5)、埼玉県現代俳句協会理事、海上保安新聞俳句選者。
勲五等雙光旭日章叙勲。平成9年2月26日没。85歳。



作 品

 銀漢をあふれ咲かしめ嶺の墓標    

 枯れてゆくものにも影や信じたし

 母の忌へ風船こころあるごとし

 落花しきり枠組太き城の窓

 船帰る立夏の海を碧く割き

 言葉忘れし妻や鉄線花白ばかり

 濯ぎ干す妻の病衣よ梅雨の星

 越年の蝶息あらしめよ翔ばしめよ

 流木が火を欲しがりだして秋

 つと降りてつと止む春のだまし雨

 山査子の花びっしりと陽を吸へる


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