世界を自分のものにする方法

世界を自分のものにするには、自分で勝手に「この世界の全ては自分のものである」ということにしてしまえばよい。そうすれば、その瞬間から世界は自分のものである。ただし、それがうまくいくためには、「世界は自分のものである」と思っていることを絶対に他人に知られないようにしなければならない。世界を自分のものにするというのは、別の言い方をすると「世界征服」である。今どき世界征服などということをやらかすのは「悪」だから、他人に知られたらマズイ。世界が自分のものになったとしても、そのことを誰にも気付かれないように、今まで通りの生活を続ける必要があるのだ。

世界は自分のものだということにしてみても、すぐには実感がわかない。試しに近所の公園にでも行き、ベンチに座って考えてみよう。この公園も自分のものなのである。これだけの土地を買うとしたらかなりのお金が必要だが、タダで自分のものにしてしまったのだ。自分のものだから、こうして誰に断ることもなくベンチに座ってくつろぐことができるし、芝生に寝転がって空を眺めることもできる。そうやって自分のものになった世界を見ていると、実感もわいてくる。だが、ふと見れば、勝手に犬を散歩させているヤツがいるではないか。ブランコで遊んでいる子供もいる。

ここで、「この公園が誰のものなのかをちゃんと教えてやろう」などと考えてはダメである。そんなことをしたら、世界が自分のものであるということが他人にバレて、何かトラブルが起きるに決まっている。「世界は自分のものである」という秘密を守るためには公園ぐらい、というか世界の全てを気前よく他人に使わせておくしかない。世界全体を所有していながら、その全てを他の人々や生き物たちに解放するとは、何と太っ腹なことだろう。世界を自分のものにするほどの人間は、それくらい度量が大きくなくてはならないのだ。そういうわけで、やっぱり今までどおりに生活することになる。

今までどおりの生活を続けるのなら、世界が自分のものになっても何も変わらないような気がする。だが、「世界が自分のものである」という点が今までとは違う。といっても、税金を取り立てたり偉そうにしたりするわけにはいかない。そんなことをしたら、すぐに「世界が自分のものである」という秘密がバレてしまう。世界の全てが自分のものだとしても、お金や地位のような副産物は得られないのだ。しかし、世界の全てが自分のものだとしたら、世界の全てに関心が生まれ、そこに何か問題があれば解決したくもなる。例えば、自分の公園なのだから、ゴミが落ちていたら拾いたくなったりするのだ。