資本主義の行方

経済成長の限界に達したところで資本主義はオシマイのはずだが、資本主義を終わらせる方法は判らないし、そもそも経済成長に限界があるということがあまり認識されていない。だから、とりあえず今までどおりに資本主義は続く。経済成長の無い社会で資本主義を続けると、会社が無理やり利益を出そうとして人件費を減らすので、世の中にお金が回らなくなってデフレになる。それをなんとかしようとして、政府が公共事業をしたり中央銀行が金融緩和をしたりするが、何しろこれ以上経済成長できないのだから、何をやっても効果が無い。

そういう困った状況にある資本主義を延命するには、1%のお金持ちが自分の収入以上にお金を使えばいい。それがトリクルダウンというものだろう。お金持ちの皆さんは資本主義システムから多大な恩恵を受けているのだから、自分たちにとって大切な資本主義を持続させるためにお金を使いまくった方がいいのだが、実際はそんなことにはならない。お金持ちというのは、お金を使う能力より稼ぐ能力の方が大幅に上回っているせいでお金持ちなのだから、急に収入以上に使えといわれたって無理なのだ。

トリクルダウン現象が起きそうにないので、資産に課税しようという話が出てくる。とにかく、お金持ちが貯めこんでいるお金を強制的に世の中に回そうというわけである。そうすれば、デフレをなんとか止めることができるかもしれない。でも、それが根本的な解決になるわけではない。経済成長が限界に達していることに変わりはないので、経済の縮小が止められたとしても、定常状態になるのが精一杯である。

とにかく応急処置として、格差の拡大と経済の縮小が止まる程度まで資産に課税するとしたら、資産によって得られる収益を全部税金として取ってしまうことになる。よく考えてみると、それは資本主義ではない。現在の市場経済システムを守るためには、資本主義を終わらせなくてはならないということだ。

とはいっても、それほど徹底的な資産課税が近いうちに実現するとは思えないので、このまま格差の拡大と経済の縮小傾向が続くのだろう。最終的には株や債権が暴落して、資本主義の終焉が誰の目にも明らかになるところまでいくのではないだろうか。