ジャパニーズ ビジネスマン

我々は水辺で寝転がっていると自然にリラックスできるが、その反対の環境に置かれているのがビジネスマンだ。「空の見える、水辺で、裸で、リラックスした状態」の反対を考えると、「空が見えなくて、水辺から遠くて、窮屈な服を着て、緊張した状態」ということになる。それは「日の当たらないビルの奥で、空調が効いて湿気のない所で、ネクタイを締めて、仕事をしている」ビジネスマンである。

ビルも空調も文明の産物である。ビジネスマン的な状態は文明そのものを表している。オフィスビルに空調を効かせるのは自然を忘れるためである。自然は想像力の源であり、自然に接していると色々とお金にならない無意味なことを考えてしまう。特に夏は暑いままだと頭がぼおっとして意識状態が低下するから、身体は自然に帰りたがって仕事なんかやってられなくなる。「今は仮想的夏休みであることにしよう」などと意味のないことを考えているうちに無性にビールが飲みたくなったりする。だから、会社というところは夏なのに寒いくらいに冷やすのである。寒いのもつらいが、意識は冴える。寒い方が意識の緊張が保てるのだ。

ビジネスマンの使う情報機器も文明の産物で、情報機器を考え出して売りさばくのもビジネスマンである。そして、文明を支えるのは明文化された情報だから、ビジネスマンの仕事は計画書とか契約書とかの文書を作ることなのだ。そして、文明というのは自然を支配しようとして人間が生み出したものである。支配するというのは「考えたとおりにいくようにする」ことだから、ビジネスマンはいろんなことを計画しなければならないし、ものごとが計画どおりにいくようにいつも気を付けていなくてはならない。だから、緊張する。リラックスなんかしてられない。

しかし、緊張し続けていると身が持たないし、何か問題が起こった時に緊張していると臨機応変に対応できない。そういうときこそリラックスすることが重要で、無意味と思えるようなことを色々考えたりしているうちに対応策を思い付いたりするのである。だから、ビジネスマンにだってリラックスは必要なのだ。でも、問題に直面した時にリラックスするのは難しい。そういうのは、日頃から練習しておく必要がある。

会社員である以上、僕も(ネクタイはしていないものの)ビジネスマンの端くれである。そういうわけで、何事にも臨機応変に対応するためにいつもアホなことを考えているのだ...というのはもちろん後付けの理屈だ。振り返ってみると、僕は子供の頃から余計なことばかり考えていたのだった。色んな人から「会社員に向いてないんじゃないか」と言われます。

(98.8.23)