(1998/5/2 記述)

「ツインムスタング出撃せよ」を読んで

 仕事の忙しさの為というか、そろそろ書くネタが尽きたというか、ここのところアップデイトをおなっていませんが、このへんで最近読んだ小説から数冊紹介したいと思います。

「ツインムスタング出撃せよ」

ブライアン・ケラハー 著

伏見威蕃 訳

新潮社 1994年 刊

原題 STORM BIRDS :No.2 THUNDER FROM HEAVEN

by Brian Kelleher 1989

「ツインムスタング」と聞いて、すぐ飛行機の姿を思い浮かべられる人は相当な軍用機マニアだと思いますが、かの有名なP−51ムスタング2機を共通の主翼と水平安定版でつないだ、2つの胴体と操縦席をもった戦闘機です。1945年4月に初飛行をし、1949年まで271機が生産されました。航続距離は3605キロで、Bー36など長距離爆撃機を護衛するため,長距離ジェット戦闘機が登場するまでの「つなぎ」として開発されたものです。そして胴体の間に巨大なポッド型レーダーを搭載した夜間戦闘機型が朝鮮戦争では活躍しました。

 さて小説のほうに戻りますが、1950年代の初め、軍内部にもマッカーシズムの嵐がふきあれるなか、原子爆弾を兵器としての実用化するために、投下実験をおこなう秘密の空軍基地に勤めるテストパイロット達の話で、B−36を使った原爆投下実験のエピソードや、Bー36爆撃機を護衛するために、護衛の戦闘機をBー36爆撃機に寄生して飛行し、敵機が現れたとき切り離して活動する、寄生戦闘機、XF−85ゴブリンのテスト飛行などのエピソードがえがかれています。小説ですからどこまで本当かはわかりませんが、1945〜50年当時の原爆投下技術の開発の模様や原爆にたいする空軍兵士の考え方、マッカーシズムにたいする反応など具体的に描かれて面白いと思いました。また、1950年代当時、アメリカ政府の公式の報道にはあらわれなかった原爆投下実験地の居留民であった”ネーテイブ・アメリカン(インデイアン)の問題など、1980年代の小説であることは確かです。

 著者のブライアン・ケラハーは「メッサーシュミットを撃て」という小説では、ナチスドイツが大戦末期に実戦に投入したメッサーシュミット262という世界最初のジェット戦闘機を、ジェット戦闘機開発のために、戦後すぐアメリカ軍が国内で秘密裏に評価実験をおこなった事実をもとに、アメリカ軍が秘密裏にナチスドイツの科学者をアメリカにつれてきて研究をさせていたことをテーマにして書いています。


つづく GigaHit