- ヴァノワーズトレッキング5日目はプラローニャンからの出発だった。前日には食料を購入した。腹の調子が今一歩だったのでリンゴ8個も購入した。ホテルの裏から登り始めた。最初はスキー場横の登りだった。ゲレンデの終わりには山小屋があった。小屋の手前でキーキー鳴くマーモットがいて、キツネが穴の中のマーモットの子供を襲おうとしていた。小屋で休憩しリンゴジュースを飲んだ。更に登って行くと国立公園に入ったことを示す立派な石碑が有った。お花畑を見ながら登ると氷河湖のヴァッシュ湖に着き、正面にはヴァノワーズ最高峰のグランド・カス(3855m)が見えた。20~30人が湖畔で休憩していて賑わっていた。昼食のパンとリンゴを食べた。食後は飛び石伝いにヴァッシュ湖を横断した。
- その先は小石の道になり花が少なくなった。グランド・カスの麓を回り込み、最後に10m程の雪渓を渡ると、この日宿泊のコル・ド・ラ・ヴァノワーズ小屋に着いた。腹痛がひどかったので、まずトイレに駆け込んだ。続いて、宿泊の受付をしていると、客の男性から「日本語が少し分るのでお手伝いしますよ」と声をかけられた。体調を考えてベジタリアン用の夕食を頼んだ。収容人数150人の小屋は、ほぼ満室で賑わっていた。本格的登山をする人も多くいて、地下の靴置場にはアイゼンやピッケル、ロープがたくさん置かれていた。我々は15人程のドミトリーに入った。夕食時には「これは大豆ミートだ」と説明しながら私にだけ特別食が配られた。鶏肉そっくりで、インディカ米、野菜と一緒に煮込んでいておいしかった。隣には本格的に登攀するらしき二人組が座っていて、スマホを見ながら登頂ルートを確認していた。デザートはクレムブリュレでおいしかった。食後に階段で先ほどの日本語の分る男性とすれ違った。「少し話しても良いですか」と言われたので「はい」と答えると、身の上話をしてくれた。「日本に行ったことがあります。今度は日本アルプスに行きたいです」と言っていた。
- 翌朝は少し寒かった。フリースを着込んで出発した。ヴァノワーズ峠(2517m)を越えると、きれいな氷河湖がいくつも有った。途中で若いカップルに抜かされた。女性はビキニにショートパンツ姿だったので驚いた。谷への下り口まで来ると先ほどのカップルが休んでいた。男性も上半身裸になっていた。
- お花畑を下り川を渡って登り返すと、この日宿泊のプラン・デュ・ラック小屋に着いた。テラスは昼食を食べている人で混雑していた。通された個室は4人部屋で洗面所付きだった。体調も回復したので小屋で焼いているブルーベリータルトを注文した。ブルーベリーがたっぷりのっていておいしかった。おやつの後は少し先の湖まで散歩した。羊の群れがいて、回りを大きな牧羊犬が走り回っていた。この日はヴァノワーズが国立公園になった60周年の記念日で、夕食時には特別にシャンパンがふるまわれた。デザートはチョコレートでくるんだ手作りの大きなケーキだった。6本のロウソクを吹き消した後、切り分けて全員にふるまわれた。体調もよくなり、残り二日間の長い行程に備えて英気をやしなった。
- トレッキング7日目は、緩い上り坂の途中には牧草地があり、牛が登山道をふさいでいた。遠回りして通過した。途中で6人組に抜かされた。峠手前には凍った湖があり岸辺で先ほどの6人組が休んでいた。ロシュール峠(2911m)からしばらくは雪渓の多い道でケルンを道しるべに歩いた。雪解けの流れが多く遠回りする所も有った。1時間ほど進むと、ようやく雪渓が終わり谷への下りになった。休んでいると6人組が追いついてきた。「モンブランが見える」と教えてくれた。
- 下っていくと、この日宿泊のフォン・デ・フール小屋に着いた。3棟のうち1棟が管理棟だった。残り2棟のうちの一つに案内された。夜は扉をしめておかないとキツネが入ると注意された。小屋全体では25人ほどの宿泊客で賑わっていた。小さい子供を連れた家族もいた。周辺にはマーモットがたくさんいた。人に慣れているのか目の前に来ても逃げなかった。体調は、すっかり回復した。テラスでビールとホットワインを飲んでくつろいだ。夕食は、米と野菜の煮込みがおいしかった。すったリンゴがデザートだった。テント泊の人も少しいた。
- 最終日は2976mのフール峠越えだった。峠に着くと、下に凍った湖が見えた。休んでいると6人組が登って来た。一人を留守番に5人が右手のピークに登って行った。15分ほどすると5人が山頂に見えた。どうやら簡単に行けるようなので我々も行くことにした。途中の岩場で少し分りにくいところがあったものの、無事、3072mのPointe des Fours山頂に着いた。ヴァノワーズに来て初めての3000m峰だった。山頂からはモンブランが見えた。峠に戻ると6人組は出発した後だった。
- 峠からの下りは雪が多かった。登ってくる人も10人ほどいた。途中で会った女性には、この先も雪が多いか聞かれたので、多いと答えると、諦めて引き返していった。雪が無くなったところで昼食休憩にした。少し下に6人組がいて「こっちに来い」と身振りで呼んでいた。遠慮して少し上の岩陰で休むことにした。山小屋で作ってもらった弁当(ピクニック)を食べた。穀物と野菜を混ぜたサラダだった。入れ物はすべて紙で、フォークは竹でできていた。ドレッシングも紙の入れ物に入っていた。量もたっぷりでおいしかった。食べていると下から6人組のうちの一人の女性がわざわざ登って来て「また会いましょう」とフランス語で挨拶して下っていった。下の方に小さくなっていく6人組を見ながら我々も下った。きれいな花を見ながら下り、最終目的地のボヌバル・シュール・アルクに着いた。