- 林道ゲートには他の車はなかった。車を駐車して歩き始めた。林道は半分以上舗装されていた。暑い日で汗がしたたり落ちた。最後に未舗装になった林道を少し下ると湿原入口に着いた。長岡ナンバーの車が一台駐車してあった。
- 登山道は苔むした木道が敷設されていた。滑りやすくゆっくり歩いた。やがて下ノ代(しものしろ)に着いた。周囲を樹林に囲まれたサーカーコートほどの広さの湿原にはウメバチソウやイワショウブが咲き、足下にはツルコケモモの赤い実がたくさん有った。
- ブナ林を登って行くと中ノ代(なかのしろ)に着いた。テニスコートからサッカーコートまで大きさが様々の湿原が7つほど有った。池塘も少し有った。ツツジの灌木は紅葉し始めていた。作業者3人とすれ違った。「避難小屋まで行く」と伝えると納得していた。
- 一番上の上ノ代(かみのしろ)は野球場よりも広かった。池塘がたくさん有った。新しい木道が敷設されベンチも有った。池塘の脇にはイワショウブが咲き、トイレの心配が無ければ、いつまでも休んでいたかった。周囲からはホシガラスの鳴き声が聞こえてきた。
- 上ノ代の先で沢を越えると避難小屋に着いた。他の宿泊者はいなかった。携帯電波は入らないのでラジオを聞いて過ごした。
- 翌朝、小屋の温度計は16℃を示していた。小屋に余分な荷物を置いて出発した。
- しばらくぬかるんだ平坦地を進み、沢を渡ると日蔭山への登りになった。登りの道も少しぬかるみが有り、途中でストック先端の滑り止めを紛失してしまった。
- 標高1660m地点で尾根に出て眺めが良くなった。目指す山頂が見えた。日の光が雲の間から差していた。リンドウのつぼみや、ムシカリの赤い実を見ながら尾根を登った。周囲の針葉樹からはホシガラスやメボソムシクイの声が聞こえてきた。
- 尾根を登り詰めると日蔭山山頂に着いた。間近には苗場山、右手には鳥甲山が見えた。苗場山へ向かう稜線には登山道が続き、眺めが良さそうだった。招かれているようで、機会あれば行ってみたいところだった。電波が通じたので登頂報告を送信した。
- 帰りは往路を戻り、小屋で荷物を回収して下山した。途中の中ノ代でこの日唯一の登山者に会った。「今日は誰にも会わないと思っていた」と言われた。