6月16日午前(エクスレバン・フランス)
気温14℃、曇り後晴れ
練習メニュー:GK練習(スタジアム)。フィールド選手は競馬場でランニング。


「何を見ていたのか」

 視聴率67%は、それがどんなものなのか見当がつかないほどの数字ではないか。
 しかし、現場にいる自分を含め、では一体何を「見ていた」かというと、かなり映像はボケてしまう。そうした過熱の中、きっと見逃した、あるいは気付くこともなかっただろう2つの話しを、16日午前の練習から拾って置く。

「バティの足を見て」

 中山雅史(磐田)に、「あまり前を向いたシーンがなかったのでは」と聞くと、すぐに「中盤で触っていても何もしてこないが、ペナルティ付近に近ずくにつれて厳しくなる。前を向いての仕事はまったくさせてもらえなかった」と、肌で感じていた違いを説明した。
 また、トゥールーズに着いてもっとも芝の状態を気にしていただけに、芝の話にも触れた。あの日、中山は晴天にも係わらず「取り替え(ポイント、普段は固定を履くが悪天候などの場合は、芝へのストップをきかせるために、ポイントといって多少重くはなるもののかみのいい方のスパイクにする)を履いていたように見えたからだ。FWで取り替えを履く例はあまりない。
 「そうなんです、実は練習では一度、固定を履いてピッチに上がっています。そして、まずバティストゥータの足元を見たら、取り替えを履いているのがわかりました。それで、エっ、バティが取り替え履くの?と慌てて、履き替えました。お陰で心配はなかった」
 W杯、それも緊張でがちがちになってもおかしくない時に、バティの足元を見てスパイクを履き替えていたとは、こちらもまったく知らなかった。落ち着いていた、ともいえるし、慌てていたともいえる。
 それにしても、初めて聖地・ウエンブレ―での(95年アンブロカップ)試合を取材した時にも、イングランドFWは取り替えで、それこそ90分ガンガン走っていた。ああいうことを知ると、サッカーを観る楽しみが増えるような気がした。もちろん、選手にとってそれはいわば「武器」であり、楽しむものなどではないのだが。
 ちなみに、秋田のヘディングに相馬が合わせたシーンについて、「ゴンは俺なら合わせたのに、と言ってたらしいね」と確認したところ、「そんなことは言いませんよ、全然。そういうことは言いません」と恐縮していた。そして「言いませんよ、思ってましたけど」

「ビデオを観直して」

 67%の視聴率なら、当然ビデオに撮ったという人も多いはず。しかし、ビデオは案外観ないもの。では、川口の話しを参考に、もう一度観てください。
 「うれしかったのは、1点取られた後に立て直しができたこと。大崩してもおかしくないシーンをきちんと抑えたことでした」と、試合の感想を話す。
 しかし川口がもっとも印象に残っているのは、ヘディングを止めたシーンでもなく、バティと競った場面でもない。
 「ファーストタッチ、それだけ考えていたんです。ゲーム最初に触るボールを、一体どんな風な精神状態で触るのか、落ち着いてやろう、大事に扱おう、それがあの試合のテーマだったんです。シュートでなくてもいいし、相手のボールを拾うんでもいい。とにかく丁寧に、それを意識できれば行ける、と言い聞かせてました」という。

 川口がこの試合で最初に触ったのは、前半…、せっかくだから、ビデオをまき戻して、川口がその、もしかすると画面にも映らなかったかもしれないシーンにどれほど集中していたのか、その気持ちを想像して観直してみたらどうだろう。


6月16日午後(エクスレバン・フランス)
晴れ、気温23℃
午後の練習は4時から。体操、ボール回し(ハーフ)、ボール回し(ピッチ全部)
組み分け:14日の先発・井原、秋田、中西、相馬、名良橋、名波、山口、中田、城、中山(GKは別)


「ボバンに要注意」

 この日の午後の練習には「お客様」が2組あった。まずは日本の練習取材に訪れたクロアチの報道陣。
 8人が取材に訪れ、それぞれ日本記者に逆質問を寄せた。意外だったのは、クロアチアが狙っている予選突破の数字である。記者によれば、クロアチアは1勝2分けで予選突破を狙っており、日本とも引き分けられればいいという考えだという。もう1点は、クロアチアの記者たちが「チームの状況が良くない」と言っていたこと。14日の試合を見る限り、岡田監督も「より組織的になったので驚かされた」と評価していたが、記者たちは、「日本戦を前に非常にナーバスになっている。シューケルは体重オーバーでまったく使い物にならないはず。日本戦は苦しい戦いだろう」と、日本の記者たちと同じくらい悲観的な?ことを話していた。この件については、きょうにでもクロアチアの取材に行き確認をしようと思っている。

 もう1組のお客様は、高円宮ご夫妻がエクスレバンを訪問されたこと。井原正巳主将から手渡されたユニホームをさっそく着て、練習終了後にはミニゲームにも参加された。
 「アルゼンチン戦はチームが緊張していたように見えるが、2試合目、3試合目で良さを発揮して欲しい」と話されていた。

「2トップ変化なし」

 岡田監督は練習後、中山と城の2トップを呼んでピッチで立ち話をした。「クロアチア戦はポジショニングが変わるから、動き方なども変わってくる、ということの確認をしたに過ぎない」と短く話していた。シュート数5本、うち枠に行ったのは1本とお寒い状況だが、それでもメンバーの入れ替えはないようだ。


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