4月19日


ボストンマラソン
(ボストン、米マサチューセッツ州)
天候:晴れ、気温15.5度、風:北西2メートル(途中まで追い風)
出場者:1万2775人

 3年ぶりのマラソン復帰となった有森裕子(32歳=リクルート)は、前半から自己記録を上回るハイペースで積極的にレースを展開した。ラスト2キロでは、4位通過ながら1人を抜いてゴールする持ち前の粘りも見せて2時間26分39秒で3位に入り、完全復活を果たした。これで、シドニー五輪代表の座をめぐる戦いに名乗りをあげ、今後は選考会となる99年1月の大阪国際女子マラソンを狙って調整をしていく。

女子の成績上位者
1位 ロバ エチオピア 2:23:25
5k:0:16:5110k:0:33:3715k:0:50:0420k:1:06:53Half:1:10:27
25k:1:23:3130k:1:40:2835k:1:57:5340k:2:15:11
2位 ロシャーモザー スイス 2:25:51
5k:0:16:5010k:0:33:3715k:0:50:1720k:1:07:34Half:1:11:22
25k:1:24:5930k:1:42:5635k:2:00:5240k:2:17:56
3位 有森裕子 リクルート 2:26:39
5k:0:16:5010k:0:33:3615k:0:50:1720k:1:07:31Half:1:11:10
25k:1:24:5630k:1:42:4135k:2:00:5140k:2:18:46
4位 デリュック 南アフリカ 2:27:54
5k:0:16:5310k:0:33:4915k:0:50:4420k:1:08:05Half:1:11:50
25k:1:25:2230k:1:43:0035k:2:01:0840k:2:19:31
8位 杉浦光子 NEC 2:30:34
5k:0:17:1110k:0:34:3815k:0:52:0520k:1:09:32Half:1:13:18
25k:1:27:0130k:1:44:5035k:2:03:2140k:2:22:02

男子の成績上位者
1位 チェベ ケニア 2:09:52
2位 グエッラ エクアドル 2:10:19
3位 ポーエ 南アフリカ 2:11:37
11位 大家正喜 佐川急便 2:15:45

レース展開
 女子は、スタート直後から中国の孫が1人飛び出し、下り坂を利用してハイペースで5キロ、10キロを通過。有森は、男子集団のペースに巻き込まれないように自重してロバを捜したという。見渡すとロバが隣に、カツナ(ルーマニア)ら強豪がすべて有森の周囲におり、この集団で進む。しかし10キロでロバがネデレバと飛び出す。ここでトップ中国の孫、第一集団と第二集団に分かれ、16キロ過ぎから有森は1人になった。下りもあり、前半ハーフポイントまでは、有森の過去6回のマラソンでもすべて通過自己最高記録となった。このため、後半は抑え、30キロからの心臓破りの丘も、一杯一杯と言いながら無難なタイムで乗り切った。残り2キロ、40キロ通過では3位のネデレバと30秒もの差があったが、残り1キロを過ぎて逆転。驚異的な粘りを見せて、3位、しかも自己記録を更新した。

有森の話(会見抜粋)「3月1日に転倒して怪我をした。大事な時期だったので、一時はもうボストンは辞めようとも思ったが、できないことより、できたことを考えようとしたのが良かったのかもしれない。自分のペースを保って気持ちよく走ったが、途中で、16キロを1時間かかっていないハイペースに驚いてしまった。このままいけば潰れると思い、小出監督(前リクルート、現在積水)の『前半無理をせず、後半から1人ずつ拾っていけ』というアドバイスが頭に浮かんだ。
 30キロからはマメができたような(実際にはできていない)感じだったので、これも結果的にはオーバーペースを防ぐ要因になったかもしれない。タイムは決していいわけではないが、自分としては、このタイムで日本の女子の波に少しは乗れたかな、という思いはあるし、若い選手のことを意識するなどという気持ちもない。結果的にこのタイムがシドニーにつながれば、と思っている。今後選考会として狙うのは、大阪です。大阪は、自分がスタートしたところでもあるのでそこで挑戦したい。
 (きょうは夫ガブリエルの応援が3か所であったと聞かれ)実際には、1箇所しかわからなかった。ボストンはオリンピックではないし、日本から多くの人たちがこんなに駆けつけてくれるとは思わなかった。その中に、新しい家族の1人としてガブリエルの姿があったことは本当にうれしかった。苦しいときに力になった」

有森の母・広子さんの話「どんな結果でも花束を渡してやろうと、(有森の一番好きな)ひまわりをボストン中探したんですが、やっと見つけたらあまり元気がよくなくて、しなっていたので、黄色のチューリップにしました。今回は、人間の意地を見せてやりなさい、と言いました。夫(茂夫さん)にも、今回は、意地とやらねばならないという責任をかけて走る、走らなくてはならないから走る、といっていて、本当に強い子だな、と親ながら思いました。私たちにとって、きょうは過去2度のオリンピックよりもうれしいものです」

夫・ガブリエルさんの話「3箇所で応援をしましたが、多分一度だけ目があって、おたがい笑いました。本当にうれしいです。ユウコのランナーとしての努力を一番近くで見ていて、とても誇りに思っていたし、きょうは、日本語が分かりませんが、impressed(印象的、心を打たれた)です。彼女は本当に強いひとで、信じられないほど不思議な魅力にあふれています」

ロバの話(96年のピッピヒ以来の3連覇)「本当にうれしい。今回はプレッシャーも感じたが、いい走りはできた。これでしばらくは、のんびりしたい。ライバルを振り切って1人で走ることが自分に一番良いと考えた。どこで飛び出すかを考えて、過去2度の経験から10キロが一番ナチュラルに出られると確信した」

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