「2002年への助走」
〜ワールドカップ日韓大会に向けて〜


「ルールが分からないスポーツ音痴で」
「子供と夫の話題に入れません」
 ホームページには、女性の皆さんからこんな気弱なメールが時々届きますが、本当に謙虚な告白です。「スポーツライター」を身近に持つ主婦、つまり私の友人たちですが、彼女たちときたら質問も大胆不敵ですから。
「ねえ、A、B、Cゲームがないのに何でいきなりDゲームなの?」
「オリンピックは4年に一度って子供に教えたのに、2年に一度でびっくりよ」
 それでも私は辛抱強く「Dは、DAY GAMEのD」とか、「夏季大会、冬季が2年毎になった」と説明して来ました。一方で彼女たちがサッカー日本代表のMF・中村俊輔(構浜F・マリノス)の大ファンであったり、女子マラソンには妙に詳しかったりするのです。ルールに詳しいこととスポーツを愛することは全く別の話ですから気にする必要はありません。
 さて、アルファベットついでに「Aマッチ」という用語をご存知ですか。サッカーでAマッチとはA代表、つまりその国のトップであるナショナルチーム同士の対戦を指します。例えば五輪代表、ユースなど年齢が限定された代表はAと呼びません。
 今年のサッカー界のキーワードは「Aマッチ」です。97年3月には98年フランスW杯を目指してすでにアジア予選が始まっており、同年10月、ジョホールバルでアジア3位となって代表を決めるまで半年以上の長い戦いが続きました。しかし今回は2002年日韓W杯開催国でもあり、予選は免除となります。そうなるとどんな準備をして本番を迎えるのかが重要なテーマになります。
「今年は世界の強豪とAマッチをアウエーで戦いながら、全体を底上げする」と、フランス人で日本代表のトルシエ監督は言います。3月のフランス戦から、4月にスペイン遠征と敵地で戦う「アウエー戦」を消化。5、6月には各大陸別の王者、ブラジル、メキシコ、カナダ、豪州、日本、韓国、フランス、カメルーンが出場して、FIFA(国際サッカー連盟)のW杯プレ大会として「コンフェデレーションズ杯」が新潟、鹿島で行われます。こうした厳しいAマッチの中で日本代表が自分たちのサッカーをアピールし、本番につながる成果を手にできるかが課題です。
 この大会はちょうど1年後の2002年を占う点で興味深いものにもなるでしょう。
 サッカーでは大まかに後ろから守備、中盤、攻撃と3つのパートに分けて、人数をシステムとして3−5−2、4−4−2と呼称します。日本は3−5−2を敷き、中でも中田英寿(A.S.ローマ)、中村、小野伸二(浦和)、ベテランの域に入った名波浩(磐田)らがどんな風に機能し合って中盤を作り、想像力にあふれたパスを交換するのかワクワクしますね。彼らの繊細なボール扱いも、現場でこそ分かる驚きに満ちているはずですから、ぜひ競技場に足を運んで下さい。
 スタジアムではボールを蹴る音、選手の足がぶっかり合う音や怒鳴り声、芝生の匂い等、テレビ観戦では見えなかった試合を楽しむことができます。
「スタジアム・アイ」が、スポーツの面白さを目で見て、耳で聞き、感じるみなさんの、手軽な「ルールブック」になればと願います。

(Bene Bene 6月号より再録)

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