東アジア選手権第二戦目となる香港戦で、日本代表は21本ものシュートを放ちながら、PKでの1ゴール(三都主アレサンドロ、前半37分)のみと終わった。香港戦での結果によっては、引き分け以上なら優勝(韓国が中国戦に1−0だったため得失点は韓国3、日本は2)と優位に立つこともできたが、これで、韓国に勝たなくてはタイトル獲得が不可能となった。
日本はボール占有率で66.4%と、圧倒的なペースで試合を進めながらも、大久保が2本のオフサイドを含み決定的なシュート3本を外し、中国戦では2ゴールを奪った久保もチャンスを作ったものの無得点。前半13本、後半8本のシュートでPK1本のみというフラストレーションの高い試合となった。
ジーコ監督「点が入らない決定力の不足は、技術的な問題で、対策、コツコツ積む練習しかない。今までやってきたことを信じるしかない。しかし香港があそこまで引いてしまった中で、サイドでも中央突破でも、ああして多くのチャンスが作れたことはよかった。こうした戦いは、予選の中でも多くなるはずだ。ボールをつなぐ、ミスをしない、我慢をするしかない。韓国戦は中澤が戻ることができればメンバーを変えることはない、システムも変えない」
日本サッカー協会/川淵三郎キャプテン「後頭部が痛くなる試合だった(チャンスをあまりに逃がし、そのたびに、あー、と何度も上を向くため、また血圧が高めのため)。弱い相手こそ、徹底的にやっつけるということができていなかった。しかし、これで韓国は勝つしかない、と自分たちを追い込むための、たった1点だったと思うことにする。
ミックスゾーンに出てきた大久保はそれでも、ふてくされた様子も落胆した様子でもなく、メディアの質問に対しては丁寧に、最後まで答えていた。
中国戦から続いて、この日もチャンスメークに至るものの、今年のパラグアイ戦と同じオフサイドにバーと、徹底的に嫌われている。
試合データ
日本 |
|
香港 |
21 |
シュート |
5 |
10 |
CK |
3 |
18 |
直接FK |
21 |
2 |
間接FK |
4 |
1 |
PK |
0 |
大久保自身の分析によれば、「丁寧すぎる結果」だという。
「いつも(Jリーグ)なら、打ってしまえ、打ってしまえ、という気持ちで行くのですが、何でか、今は丁寧に、丁寧に、となってしまっている。いつも通りやるしかない、と思っているんですが……。点を取れなかったことは、U-19の最初の頃ですか、入らなかったことはある。お祓い? 行かないっすよ」
視野には、いろいろな情報が入り、しっかりと「見えて」いる、久保との連携も問題はない、「生みの苦労」にはジーコ監督も、仲間も、嫌な顔をすることなく、ただ忍耐の一文字である。
これだけ「お膳」が揃っているからこそ、大久保も丁寧に、と思いたくもなる。
タイトルは、同じく日本代表FWだった川淵キャプテンが、記者に「大久保君のように、こうして入らないことが続いているとき、悪い流れを断ち切って何とか点を取るにはどういうアドバイスをされますか」と聞かれた時に、「流れを変える? 点を取らなきゃ変わらないよ」と苦笑いをしながら、答えたコメントだ。同業者には、激励というよりはどこか冷たいが、FWは、点を取れない悪い流れを、点を取ることでしか変えることができない、というのは皮肉な現実だろう。ほかのポジションならばこうしたパラソックスは起き得ないはずだ。
こんなときは、先人はこうしたスランプを何と打開したかを見直すのもいいかもしれない。かつて取材した中から抜粋する:
「99本外れても、100本目を打ちに行く、それがゴールゲッターだ」(元横浜M、ラモン・ディアス)
「たとえ、全てが真っ黒でも、自分の1点で真っ白に変えることができる。ゴールはオセロの最後の1手」(神戸・三浦知良)
「たとえ1試合で2本のPKを外しても逃げるなら、3本目を蹴って外して腐ったトマトをぶつけられるほうがずっといい」(アルゼンチン代表、パレルモ、99年南米選手権で1試合3本のPKを外し)
「きっと、自分には最後に大きなご褒美がもらえるんだと信じてた」(90年W杯得点王、イタリア代表、元磐田のスキラッチ)
さて、ジーコ監督である。この試合はまさにアジア予選、と同じ状況に追い込まれたものだったはずだが、大久保をまだ使うか、と聞かれて会見で言った。
「使う。彼がどれほど努力しているかを知っている。こういうときは辛抱強く、彼が1点を産むことを望むしかない。そして……」
監督は、大勢の記者に向き直った。
「韓国戦では、ぜひとも、彼の1点で優勝をもぎ取るのだ」