3月16日

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サッカー

J2 第3節
セレッソ大阪×湘南ベルマーレ
(大阪・長居第2陸上競技場)
天候:晴れ、気温:19.6度、湿度:35%
観衆:
4,774人、15時04分キックオフ

C大阪 湘南
3 前半 3 前半 0 0
後半 0 後半 0
6分:森島寛晃
34分:大久保嘉人

37分:大久保嘉人

 J2第3節、C大阪対湘南戦が長居第2競技場で行われ、C大阪が開始6分、今季初となる森島寛晃のゴ―ルで先制し、開幕から2戦に続いて試合を圧倒的に有利にした。その後も、西澤明訓、尹 晶煥、森島3人の日韓代表選手トライアングルと、昨年は大型のルーキーとされながら足首の故障で長く戦線離脱した大久保嘉人が、素早い攻撃と、イマジネーションあふれる攻撃パターンで湘南を押し、34分には、西澤と濱田 武のワンツーから突破し、尹、森島とつないで大久保がゴールし2点目。直後の37分にも、左足で大久保が決め、3−0とした。前半終了間際には、尹がPKをもらったがポストに当て、追加点はならなかった。
 開幕から3試合で11点と攻撃では圧倒的な力を見せているものの、3人の代表がこの試合で一時抜け、それぞれ合宿に参加するため、西村監督は後半、若手を積極的に起用しながらのシステムにトライする。前半で太もも裏に軽い痛みを感じたという西澤を久藤清一に替え、尹を原 信生に、また守備での補強として獲得した新外国人、ジョアンも初出場するなど、川崎フロンターレ、甲府戦に向けて、さまざまな展開を探っていた。試合は、後半無得点のまま、C大阪が開幕3連勝と、ダッシュに成功する形となった。

試合データ
C大阪   湘南
14 シュート 7
8 GK 5
0 CK 8
23 直接FK 12
1 間接FK 5
1 PK 0
西村昭宏監督
「大久保は期待通り、積極的にプレーしていたと思う。開幕3連勝はそうたやすいこととして考えてはいなかったし、スタートでつまずかなかったことはうれしい。うちとしては、しかしこれから(代表の3人が抜けてから)が本番です。もう1度目スタートという気持ちで引き締めていきたい」

昨年はすべてヘディング、久しぶりに左「足」のゴールとなった森島寛晃「久々に豪快に決まったんで(本当は、ゴール前胴体で押し込んだようなゴールで、苦笑い)よかったです。試合中、手首を踏まれて痛かった。試合後、ロッカー前で円陣を組んだのは、(代表で)しっかりやってくるようにという3人への激励のためでした。目一杯やって、いい結果を出したい」

前半で足に軽い痛みを感じたという西澤明訓「前半途中から違和感がありましたが問題ないです。代表合宿も普通にやります。自分が抜けたとしても、このチームは十分に戦えると思う。21日は、ウクライナ戦の前にここで昼間に試合が行われている。その結果を知って、代表で気持ちよくプレーをしたいですね」

韓国代表合宿へそのまま合流するため伊丹空港へダッシュした尹 晶煥「国を代表するので光栄だし、がんばりたい。29日には戻ってくるので、しっかりコンディションを整えて試合に出るつもりです。(韓国代表監督の)ヒディングには指令塔としてテストをされると思うのでがんばりたい。まだまだゲームがたくさん残っているので気は緩めないが、スタートダッシュできた3戦はよかった」


「スピードがあって、イメージがあって、
テクニックもあって、おまけに華がある」

 おそらく、今もっとも面白いサッカーをしているのが、J2 C大阪ではないか。この日も、尹、西澤、森島の「黄金のトライアングル」とでも呼ぶべき3角形のどこかの辺にボールが入った瞬間、3人がまるでピッチに設計図でも書いてあるかのうように、正確に、しかも想像を越えるような軽やかな動きを見せて、ボールをあっという間にゴールまで運んでしまう。こうした動きに、この日は「3人と一緒にやったのは初めてでしたが、やはりやりやすいですね。特に西澤さんのポストプレーのおかげで、自分は思い通りのプレーができます」と話していた大久保、濱田、といった若手が絡み、J1とは違い5000人ではあるが、サポーターも存分に「得点を奪うためにボールをまわす」という、サッカーのボールで言えば「芯」ともいえる部分を、堪能したのではないだろうか。

 尹のプレーにはしなやかさと強さが同居する。ほとんど準備動作しないままに、強烈なパスを逆サイドに振り抜くキックの技術、手で渡すより繊細なパスとの緩急のつけ方は、世界でも一級品だろう。
「代表とチームは自分にとってひとつのもの。どちらかではダメですし、サッカー選手として価値ある挑戦だと思う。光栄です」
 この日は伊丹から東京に向かって1泊。明日、韓国からドイツ、そして合宿先のスペインに合流する長旅である。

 森島のプレーは、つねにピッチに「勤勉」と書き続けるかのようで、しかし束縛されない、自由や軽やかさを表現できる希有なタイプだ。4年前の代表メンバーでもある。今回は、心身ともに調整に細やかな配慮をしており、代表でもおそらくキープレーヤーになる。

 昨年12月、シーズン途中での帰国という非常に難しい調整をしてきた西澤のプレーには、重厚さと優雅さが備わったようだ。もともと細かなテクニックに優れたFWであるが、ヨーロッパ2か国での経験は、彼に間違いなく自信を与えた。

 C大阪の挑戦は、大きく矛盾する。J2に上がろう、そのためには貴重な戦力である代表候補3人を何としても送り出そう、というのだから。だからユニークで魅力にあふれている。
「屋台にぶらりと入ったら、なんだかどんなレストランにも負けない最高級のフランス料理を食べている。今のC大阪を見ていると、そんな贅沢な気持ちにさせられます」
 隣で、番記者がそう教えてくれたが、いい例えでありまったく同感だ。
 今年の開花宣言は史上最も早いと予想されているそうだが、3人の代表、忠実な中盤、DFの選手、飛び出しそうな若手、それぞれが高い意識と意欲に満ちたここの「サクラ」は、まだまだ3分咲き程度だろうか。もっともうれしいことに、こちらの「サクラ」は1週間では枯れない。長く、44試合の長きに渡って咲き続けることも可能である。

■参考記事:
・「セレッソ大阪の挑戦 誇りと現実の間で」(「Number」 545号、文藝春秋、3月14日発売)



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