6月1日
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サッカー
FIFAコンフェデレーションズカップ2001
カメルーン戦前の練習とトルシエ監督の会見
(新潟)
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初戦でカナダを3−0で下して勝ち点3を獲得、無難に大会のスタートを切った日本代表はこの日、昼から新潟市陸上競技場で練習を行い、試合に出場した選手は約1時間半、軽いフィジカルを行って体調を整えた。2日には、Bグループリーグ突破をかけて、ブラジルに2−0で敗れ追い込まれているカメルーンと対戦する。また、午後からはトルシエ監督の会見が行われ、フィジカルでまた上回るカメルーンに対して新しいメンバーを起用していく方針を明らかにした。
トルシエ監督の話(要旨抜粋):
「今日はキャプテンマークを巻いていませんが、どうもすみません。
初戦で勝って勝ち点3を取ったことで、選手には非常にダイナミックな雰囲気が生まれている。何より自信が生まれたと思う。ただ明日の試合に向かっては、もっと高い集中力を保たなくてはならない。だから、選手にはプレス(新聞、雑誌か)を読まないでくれと言ってある。集中するために新聞はまった読むなと言い、インターネットも禁止し、電話も切った。これは本当にカギになることで、大会が終わるまで絶対にプレスを見ないで終了しなくてはならない。
(カメルーン戦は)もちろん、プレッシャーがかかっているし、それはお互いさまで、勝てばグループリーグ突破の可能性が生まれ、負ければカメルーンは終わってしまう。つまり明日は決勝戦ともいえるもので、アジア、アフリカチャンピオンの持ち味のある試合になるだろう。A代表は、初のカメルーン戦でもあり歴史的に試合になるはずだ。
フィジカルではカナダに劣らないだろうし、競り合いには強い。
私たちのオプションは2つある。今日、注射を打ってドーピングをして一晩で12キロくらい体重を増やし、カンフーや空手をやって反則的な力をつける方法がひとつ。もうひとつはそれを忘れて、自分のサッカーをやることだ。注射はファンからのモチベーションである。カメルーンはとにかく勝たなくてはならないので、どこかの時間帯で攻めてくるだろう。バランスを見て、力関係をしっかり考え、積極性を持って考えていかないとならない。
戸田、小野は確かに活躍したが、(ヒーローとして扱った)新聞を(約束通り)もし読んでいなければ、今後もチームに大きなプラスになるだろう。
カメルーンのメンタリティについては、2試合目はボーナスがいくらかということで、政府が大きなボーナスを鞄の中に入れてくるかどうかだ。これが大きなモチベーションになるだろう。私の経験から言って、モチベーションが下がることは絶対にない。エムボマのよう選手が高い意識を持って挑んでくるわけで、私たちの唯一の作戦は、彼らのスーツケース(お金の入った鞄)をどこかでインターセプトすることだ。戦術にかかわる話はあまり細かくできないが、立ち上がりがカギになる。積極的にやらなければならないし、フレッシュで新しい選手を起用していくことが考えのひとつだ。論理的に、私の試合中の采配からいろいろな動きがあるだろう」
「敵はヒョウではなくてトラか」
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会見で監督は、メンバーの交代をも視野に入れていることを示唆している。カナダのように戦術的、技術的には差があっても、高さと強さに対するケアは万全とはいえなかった。右アウトサイドの伊東、DF上村の苦戦ぶりは、世界でも有数のテクニックとスピード、身体能力を誇るカメルーン、特にいまや「世界の黒ヒョウ」と呼ばれるFWエムボマ(パルマ)を封じるには、戦略的にも難しい面がある。カメルーンは当然のことながら日本からの勝ち点を奪わないことには、大会が終了する。こうした状況を考えると、守備を厚くし、向こうが攻め上がって生まれる後ろのスペースに向けて有効的なカウンターを繰り出すのが常套手段だろう。
かつてG大阪で得点王を獲得したエムボマには、Jリーガーもコテンパンにやられている。DFの選手には「エムボマは速くてうまくて、あれは反則だよ」と苦笑する声が続出していた。エムボマはそのプレーの俊敏さから「ヒョウ」と絶賛されるが、むしろこうした負のイメージ「トラ」ウマとの戦いが大きなポイントとなる。
こうなると、上村、中田(浩)とは持ち味の違う、右に松田、左には服部のラインの形成、あるいはアウトサイドにはスペイン戦で代表初出場ながら持ち味を発揮した波戸、守備的センスの高い明神を置くなどして、カメルーンに対応する可能性がある。監督は大会前の会見でも「いかに相手チームに対応するか」がポイントだ、と話している。対応を考えた場合、カナダとはまったく違うものでもあり、左サイドでの小野の起用も、一考するはずだ。
この日の練習では、サブ組と、試合に出場したメンバーが分かれてそれぞれが違ったメニューをこなしたが、サブ組の練習に監督がつきっきりになるなど、全員が「臨戦体勢」に置かれていることが伺えた。
いかに組織的な守備を徹底できるか。カナダ戦では攻める勇気を試されたが、カメルーン戦はこれとはまた違う、守り切る覚悟が試される。
「新聞は読むな」
監督は、初戦終了後も「プレス(新聞)を読むな、インターネットもするな、電話もかけるな」と選手に改めて強調したという。集中できなくなるのが理由だそうで、これまでも、若い選手に携帯を使うな、漫画は読むな、コンビニでの買い物チェックといった「監督流」の管理を公言してきたので新しい話ではない。
しかしここに来て、選手が「スポーツ新聞など、宿舎で見ていたら大変なことになる」と苦笑するほど神経を使っているという。
選手がこれをどう解釈しているかはわからないが、タイトルをかけた公式大会におけるメディアとの関係は、各国、各監督とも違っていて非常に興味深い。ブラジルのようにメディアと会食をする国、アルゼンチンや欧州の国々のように外部と一切遮断する国もあれば、予算の都合で、メディアも選手と相乗り、ホテルも一緒、といったところもある。
日本代表のプレスオフィサーは「(新聞の話は)冗談ですから」とフォローしていたが、監督もW杯に向けてこうした面でも特色を出すつもりなのだろう。

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