11月18日

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2000Jリーグ ディビジョン1 2ndステージ 第13節
柏レイソル×川崎フロンターレ
(日立柏サッカー場)
キックオフ:19時4分、観衆:10,382人
天候:晴れ、気温:12度、湿度:39%

川崎F
1 前半 1 前半 0 0
後半 0 後半 0
44分:黄善洪  

 首位の鹿島、2位のG大阪がともに延長の末に勝ったため、最高で2位に浮上できるチャンスを狙った柏は、前半から積極的に試合を展開しようと、DFの洪明甫、ここまでFWながら肩の脱臼などで無得点と仕事ができなかった黄善洪が果敢にゴールを狙って行った。前半は、この試合にJ2降格がかかってしまった川崎Fに押され、シュート6本を決められなかったが、ロスタイム、粘り強く10数本のパスをつなぐ柏らしい攻撃から、最後は洪の右サイドからのセンタリングに黄がヘディングで合わせてゴール。黄の柏移籍後初ゴールで、試合前のミーティングで話していた通りの展開とし、後半を優位にした。
 後半は、「多少のリスクを犯してでも1点を取りに行く」と西野監督はハーフタイムに指示。川崎Fに2点差をつければ得失点差で2位に浮上できるだけに、豊富な運動量から、北嶋秀明、大野敏隆らがシュートチャンスを再三作る。しかし、決定的なチャンスを何度か外し、後半だけで9本ものシュートを打ちながらこれを決められないなど詰めの甘さが残った。またDFの薩川了洋が、後半最後になって3枚目の累積イエローで次節の名古屋戦に出場停止となるなど痛いミスもあった。

 柏は現在、年間総勝ち点では54とトップでもあり、悲願のリーグ優勝に向けて残り2試合、次節の名古屋、最終戦の鹿島と勝負をかける。
 優勝戦線に生き残るか、それとも降格をかけてしまうのか、対照的で皮肉な対戦となってしまった一方の川崎Fは、この試合に敗れて勝ち点9にとどまり、これで2試合を残してJ2への降格が決定。J1昇格1年でJ2に逆戻りとなってしまった。降格は、京都、市原がボーダーライン上におり、この日勝った市原は次節で負けなければ(勝ち点1を獲れば)残留。京都は、勝ち点3を川崎から奪う以外、残留することができない崖っぷちに立たされてしまった。

柏・西野朗監督「予想していたことだったが、緊迫したプレッシャーのあるゲームになった。決定的なチャンスを逃すなどあったが、それでもうちらしい粘りで最後まで試合を優位に展開できた。洪を交代したのは、体調が悪く、後半45分はもたないと本人が申し出たからだった。また藪崎(真哉)は、この夏くらいからメキメキと力をつけていて、下平(隆宏)や萩村(滋則)らのボランチと遜色ない働きができると思ったので、きょうをデビュー戦とした。残り2試合、鹿島がどうの、ガンバがどうのではなくて、レイソルがどう戦うかだけに集中したい」

川崎F・小林寛監督「試合前に勝ち点差が9点と開いてしまい、選手のモチベーションが心配だったが、選手は最後まで集中力を切らさないでゲームを戦ってくれたと思う。試合後は、ご苦労さんと言った。残りJリーグでの2試合も、天皇杯もある。今まで通りJ1クラブとして試合をしようと言った(※監督の契約は天皇杯まで、来季の監督は未定)」

    上位チームの今後の試合日程
      第14節
    11/23
    最終節
    11/26
    鹿島(勝ち点29) vsG大阪
    (万博)
    vs柏
    (国立)
    G大阪(勝ち点28) vs鹿島
    (万博)
    vs磐田
    (磐田)
    柏(勝ち点28) vs名古屋
    (柏)
    vs鹿島
    (国立)
    磐田(勝ち点24) vs広島
    (広島ビ)
    vsG大阪
    (磐田)

「1年ぶりのゴールは……」

 肩に脱臼癖のある黄にとって、この日のゴールはC大阪で得点王を奪った時の得点以上に、格別なものとなったようだ。C大阪から一度韓国Kリーグに戻り、再び柏に入団してから、腰、ひざ、肩と怪我のためにまったく「仕事」ができなかった。
「もっとも辛かったのは、FWとしてチームに何もできないという、役立たずの状況だった」
 試合後は、盟友でもある洪からのアシストが、ともにKリーグでプレーをした(浦項)時代以来ではないかと「友情のアシスト」に笑顔を見せるなど、肩の荷を多少降ろした様子だった。ゴールそのものも、約1年ぶりだという。
「怪我とはいえ、点を取れないストライカーという状態に非常に悩んでいたようです」とチームの関係者は口をそろえる。悩むからまた動きが悪くなり、怪我を再発する。こうした悪循環の中、洪が「力はあるんだし、まして、試合に出て取れないのではなくて、出てないのだから」と楽観的に励ましてくれたとも明かす。
 2人の関係は韓国内でも知られており、ともにテクニックを重視する流れの先端を切って韓国サッカー界をリードしてきたといわれる。そうしたコンビが、柏でリーグ優勝を狙うことは興味深い。
 残り2試合、西野監督は「180分をフルに戦うのは厳しいかもしれないが、それでもポイントを抑える決定力はすばらしいし、期待している」と話す。

 こうした30歳台のベテランの活躍とまた違った起用方法もあった。残り9分で洪と交代した藪崎真哉は、西野監督にとって、なんとか重ねてきた「選手層」を示すひとつの手段だったはずである。
 アルゼンチンのヒムナシアに98年に留学。同世代の明神智和、平山智規、大野敏隆、北嶋秀朗に遅れを取ったデビュー戦ではあるが、1点差のゲームにするあたりは監督の性格を物語っている。しかし「何の不安もなかった」と監督が言うように、藪崎は秋口から安定した力をつけ、下平、萩村といった中堅選手に劣らない動きを続けてできるようなボランチに成長していたそうだ。
「緊張はしませんでした」と話していたが、リーグ再開の前には、1週間で5試合を組んだサバイバル遠征でフルに戦い、試合の中でのフィジカル、メンタルを養ってきた自信がうかがえる。

 柏は年間通算成績では常にトップに立ちながら、昨年もリーグ制覇ができなかった。「詰めの甘さが気になるのではないか」と監督に聞いた。
「いや、残り2試合でここにいること自体、詰めの甘さということはないという証。甘いかどうか。前半からきちっと試合をする」
 今シーズン、先取点を奪ったゲームについて17勝1敗、勝率は9割を超え、これはリーグで先制点を奪った勝率として最高である。さらに前半リードの試合をものにしたのは、12勝で負けなし。先制点さえ奪えれば、であり、逆に前半をリードしなければ、という戦いでもある。残り2試合は、名古屋、鹿島との戦いというより、この自分たちの「必勝パターン」をどうものにするか、それとの激しいせめぎ合いになりそうだ。

試合データ
  川崎F
16 シュート 7
8 GK 14
11 CK 2
17 直接FK 9
5 間接FK 6
5 オフサイド 6
0 PK 0

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