11月16日

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JOC(日本オリンピック委員会)主催、平成12度コーチ会議
(品川プリンスホテル)

 毎年恒例のナショナルチームなど現場のトップ指導者らによるコーチ会議が行なわれ、午後の部ではシドニー五輪で躍進した女性スポーツについて、銀メダルを獲得したソフトボールの宇津木妙子監督、シンクロナイズドスイミング井村雅代氏、新体操団体で5位となった五明みさ子氏の3人がパネルディスカッションを行なった。
 シドニー五輪では、合計メダル18(金5、銀8、銅5)のうち13個(競泳4、シンクロ2、柔道5、陸上1、テコンドー1)を女子が獲得。比率では72%となり、入賞(8位以内)でも60のうち38人(複数獲得者もあり)と63%と、数字でも女子の活躍が裏付けられている。
 こうした躍進を支えた女子それぞれの指導者が、チーム作り、女子選手に対する指導、信念などを、元シンクロのナショナルコーチで現在JOC専門委員の金子正子氏がコーディネーターを務めて約2時間、白熱したディスカッションを展開した。
 それぞれの指導信念について、宇津木監督は「自分に妥協しない」、五明氏は「選手と練習に妥協しない」、井村氏は「寝る時間を削ってでも、設定した具体的な目標をクリアする」と明確な姿勢を打ち出すなど議論も白熱し、女性指導者の厳しさと気迫に、集まった男性コーチ陣も押され気味だった。

(以下は要旨抜粋)

金子 シドニー五輪への目標はどう設定していたのですか?
宇津木 2年前にどの種目より最初に出場権を獲得しましたので、技術はもちろん、精神面、体力面の強化が充実できるように考えた。合宿はソフトボール漬けにした。私は、練習は絶対に裏切らないと思っている。
五明 アトランタで10位となってしまって出場権を逃がした時点で、翌年の大阪で行なわれる世界選手権で何とかメダルを獲ろうという具体的な目標を掲げた。結果的にここで4位になってある程度の手ごたえを得たことをシドニーの基礎にした。
井村 アトランタ五輪が終わった時点で世界中の選手データを収集して、誰が引退したかを調べた。ここで97年は日本が2位になるのは当たり前といった先入観を植え付けた。こうした自信を積み重ねた結果、金メダルを本気で狙おうという気持ちで、選手には「本気で(取りに)行くから」と話していた。私は、嘘は言わない、おべんちゃらなんて言わない。だから選手は本気で金メダルに挑戦したと思う。

金子 具体的な目標設定をされたのですね。ではその実行については?
宇津木 体を作る合宿から、自分に負けない精神力をつけようとした。一日10時間の練習をさせて、ノック漬けにした。一日3000本ノックで、午後は1000本の打撃スイングをさせて2週間、とにかく量をこなすことを最初に考えた。その中でも一日のテーマと、その合宿のテーマは必ず話し合った。その後は主に国際大会での実戦を中心にチームを作った。
五明 日本人の体型に比べて、外国選手は割り箸軍団とか、足長軍団と私たちが呼ぶほど恵まれている。そんな中で構成にこだわり、オリジナリティを追求することで、選手が「私たちの演技って世界のどこよりも難しいけど面白いね」と話して自信をつけてきた。一日8時間は練習させたと思う。
井村 私たちは海外にまったく行かずに虎の穴に入るような形で練習をしていた。国際舞台を経験していなくても、6人がアトランタを経験していたので信頼していた。私は、自分自身が合宿をすることで成果を求めようと焦ることだけ注意した。自分のマイペースを守ろうと思った。練習は一日10時間、夜8時半頃になって、心身ともに底をついたところからが本当の練習だと、この子たちどこまでやれるかと見ていた。シドニーで、「私たち1日10時間も練習したんだから5分の演技なんてなんでもない」と円陣を組んでいた。イジメじゃなかったとほっとした(笑い)。

金子 女性はどうでしょう、男性よりも粘り強いんじゃないですか。宇津木さん、さきほど控え室で、男性が育てた選手はちょっと違う、と話してましたね。
宇津木 そうですね、私は、こう突き放してしまうところがあるし、寄せ付けない面もある。男性の指導者に育てられた女子選手は、結構男性へのゴマすりが上手いですね(笑い)。逆にうちの選手が男性コーチのところに入ると、使われないようで扱いづらいという面もある。女の子は強い。どんなに絞っていても余力を残している部分ある。それは自分もそうだったのでわかっているからこそ、絞れる。食事の時など声が聞こえれば、まだまだ余力があると判断している。
五明 女は自分を守る面がある。もちろん、過呼吸はよくあるんですが、これだけ20何年取材していても、体力的に追い込んで倒れた選手は観たことがない。
井村 宇津木さんと同じで、食事中にしゃべる声が聞こえようものなら、あーあかん、練習がまだ弱かったあ(笑い)と後悔する。男性コーチは競泳などでも優しいですね。ブスとかデブとか私はどんどん言う。でも大事なのはそのフォローで、ブスはチャーミングになれる、デブもプロポーション抜群になれる、と傾向と対策は言う。男性指導者のみなさんも、どんどん現実は言ってください(笑い)。

金子 心のコミニケーションはどんな風にとっていますか。
宇津木 私はお風呂が大好きですし、今回のシドニーの合宿は天城でやりましたので温泉もあり露天風呂もあった。最初の選手が入ってから大体2時間くらい、自分も出たり入ったりしながら必ず一言は選手と話すようにしていた。
五明 私は練習以外には選手と接触しません。お互いフリーでいる時間を大事にしたいし、選手はどこのクラブでもNo.1の選手でかなりチヤホヤされて来たのであまり声をかけず、電話も用件だけにしている。
井村 終わったらもう勘弁してくれという気持ち。宇津木さん、お風呂まで一緒でエライと思う(笑い)。

 質疑応答
──宇津木さんへ、精神面の強化とはどういう風に行なったのですか?
宇津木 最初は走り込みで鍛えて行った。私は今出ている科学トレーニングはもちろん、重要だと思うが、もっと量をこなすことも大事だと自分がやってきたことは一応信じている。選手の日誌に、もう死ぬかと思ったと書いてあったけど、元気に生きてる(笑い)。ここまでやった、という思いを植え付けるのが精神面のトレーニングで、そのために物量をさせたということ。

──宇津木さんへ、チームには男性コーチもいたのですが、彼らへの役割分担はどうしましたか?
宇津木 こういう性格なもんで、ノック以外はやらせませんでした(笑い)。コーチには立ち入らないようにしてもらったし、戦術も何も、相談したことはない。余計なことをされると腹が立ちます。しかし自分ももう大人になって、人に任せるための指導を覚える時期にきていると思っている。

──今までうかがってきた指導方法は男子に通じると思いますか?
宇津木 私の夢がありまして、それは高校野球の監督として指導をすること。高校生ならもっと素直に人の話を聞いてくれそうですから(笑い)
五明 どうでしょう。究極的には美を追求している種目なんで難しいのでは。
井村 男性は後を引きずりますね。女の子はもう忘れろ、といえばぱーっと忘れる。そういうところは違うと思う。

──海外では、練習をあまりしない。(し過ぎると)選手を壊すという評価もあるが、3人とも非常に練習量が多い、こうした評価をどう思うか
宇津木 日本の場合は企業でできるのでまた少し違うのでは。私は昔人間、ですが一方では勉強はしないとだめですから。
(女子バレーボールの東洋の魔女、旧姓葛西昌枝さんが(現姓中村)手をあげて、発言)私はあの大松監督のもとであれだけの練習をして36年、今こうしてどこも悪くなくて元気です(場内が爆笑)。ですから、どんなに絞っても大丈夫。女性は(力を)抜きますから、大丈夫です。まだまだやれますよ!

金子 最後に男性指導者へのアドバイスを
宇津木 選手を平等に扱うことです。
五明 私も同じ、ミーティングは個別にしないようにして平等に扱う。
井村 女性は色々と話を聞いてしまう。船頭は1人でいいと思う。


2000Jリーグ ディビジョン2 第43節
大宮アルディージャ×浦和レッドダイヤモンズ
(埼玉県営大宮公園サッカー場)
キックオフ:19時4分、観衆:9,499人
天候:曇、気温:11.6度、湿度:60%

取材・田中龍也

大宮 浦和
0 前半 0 前半 1 1
後半 0 後半 0
  大柴健二:19分

交代出場
大宮

45分:浮氣哲郎(ヤン)
66分:斉藤雅人(奥野誠一郎)
81分:野口幸司(氏家英行)
浦和

89分:福永 泰(大柴健二)
 浦和のJ2降格以来、実現することとなった埼玉ダービー。4試合目となるこの日は、埼玉県営大宮公園サッカー場に今シーズン最多となる9499人の観衆を集めた。自力でJ1復帰を決めるためには、この試合を含めた残り2試合で勝ち点5以上が必要な浦和は、トップにクビツァではなく大柴健二を先発に起用。序盤、ホームの大宮は慎重にディフェンスを重視して試合を進めたが19分、浦和の左サイドの路木龍次がアーリークロスを入れると、大宮ディフェンダー陣は裏を取られ、そこに鋭く反応した大柴が豪快にゴールに蹴り込み浦和が先制した。「このところ点が入らなかったので、速い選手を入れて相手のディフェンスラインの裏をつく」(浦和・横山謙三総監督)狙いが的中する形となった。
 得点後は、浦和のディフェンスラインがズルズルと下がってしまい、大宮がサイド攻撃を中心に何度も崩しにかかる。浦和の攻撃陣は孤立し、チャンスの数でも大宮に圧倒される。しかし体を張った浦和のストッパー陣の踏ん張りでなんとかしのぎきり、まさに薄氷を踏むかのような勝利をつかんだ。これで次節、最終戦で勝てば大分の結果に関係なくJ1への復帰が決まる。なお、平塚競技場で行われた、湘南対大分の試合は0−2で大分が勝利した。

浦和・横山謙三監督の試合後のコメント
「お互いに戦い方をよく知ったチーム同士の戦いということで、ある程度、予想されるシーンがあったかもしれない。その中で、前半にいくつかいいチャンスが来たのを逃してしまったことで、波に乗りきれなかったのではないかと感じたゲームだった。後半、勝ちを意識したことから少しプレッシャーみたいなものが選手の中に出てきたのかな、という気がした。ここへきて、勝ちゲームをするということが大事なわけで、そういう面では結果よし、ということで次を迎えたいと思っている」

(以下は一問一答)

──試合後、選手にはどんなふうに声をかけたか
横山 ごくろうさま、ということだけ言ったが、あと1つということは選手もよくわかっているし、次もがんばる、という意識を感じた。
──前半は高い位置からのプレッシャーが効いていたが、後半はできなくなっていたようだが
横山 やはりちょっと疲れの問題があったと思うが、あそこが少しあきだしたということで、少しリズムが相手に移ってしまった。前のほう(攻撃陣)を替えようかとも思ったが、守備に関しては、最初に出た(スタメンの)メンバーのほうが守備能力が高いので、少し辛抱していた。そのうちだんだん落ち着いてきたので、まあ、これならだいじょうぶかな、ということで、意識的に替えることはしなかった。

先制点を決めた大柴健二
──大柴選手が活躍したが
横山 点が入らなかったので、速い選手を入れて相手のディフェンスラインの裏を突くということで、それに関しては、彼自身、狙った通りの仕事をしてくれたのではないかと思う。
──前半プレスをかけ、それが効果をあげていたが
横山 チームとしてもプレスをかけたいが、プレスがうまくかかるときと、かからないときがある。今日は前半、試合が始まってすぐに比較的うまく行っていたので、選手たちもしばらくの間、無理してでもプレスをかけに行っていた。もちろん試合全体を通して続くのが望ましいが、なかなかああいうゲームを1試合するのは難しいと思う。だからあの後、前線からのプレッシャーなしでどのようにいい守備をしていくのか、というのは我々のチームの課題だと思う。
──プレッシャーがうまくかかった原因は
横山 大柴の動きの速さ。今まではあそこにクビツァを使っていたが、クビツァはスローなので、どうしてもプレッシャーはかけにくいというのがある。
──後半、サイド攻撃をかなり受けていたが大宮について注意していたのは
横山 (大宮は)ああいう格好から早めに入ってくる。外からのボールを徹底して潰しに行くのは、体力的にかなり負担がかかる。あそこに入ってくるボールを徹底して跳ね返すという狙いで、特にストッパーの2人が上のボールに十分に戦えると踏んでいた。しかしそういう面では、落ちたボールを拾われる場面がピンチになる。何回か拾われたが、あそこに入ったボールは大半、8割がた拾えていたということで、まあまあ、リズムとしてはそう苦しくないというか、入れられたボールに対してはある程度対応できていたと思う。
──この後、最後の試合に向けて
横山 まだ「こうだ」という点はないが、このあと相手の今日の試合のビデオを見てメンバーを決めていきたい。だいぶけが人も出ているので、メンバーの入れ替えが少しあるかもしれない。いずれにしても、勝たなくてはいけない。ホームだし、攻撃的なサッカーをしたい。

    最終節の結果によるJ1昇格争いの行方
      大分勝ち 大分V勝ち 大分引き分け 大分負け
    浦和勝ち 浦和昇格 浦和昇格 浦和昇格 浦和昇格
    浦和V勝ち 浦和昇格 浦和昇格 浦和昇格 浦和昇格
    浦和引き分け 大分昇格 浦和昇格 浦和昇格 浦和昇格
    浦和負け 大分昇格 大分昇格 浦和昇格 浦和昇格

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