稽古着の知識


・(公財)合気会,出版芸術社 発行・合気道探求 第14号より・

合気道と切っても切り離せないのが稽古着と袴。何気なく身に着けていますが、以外に知らないことがあるのではないでしょうか?
剣道の袴とはどこが違うのでしょう?
何故、初段からはくのでしょうか?あなたはすぐに答えられますか?

袴はいろいろあるけれど

合気道の稽古着の特徴は何と言っても袴です。袴と一口に言っても、いろいろな種類があります。 遠山の金さんがお白洲ではいている長袴、巫女さんがはいている紅袴・・・。
袴は形の上では大まかには男性の式服である襠高袴(まちだかはかま)(馬乗り袴)と男女が略式ではく行灯袴(あんどんばかま)の形に分けられます。
襠高袴は、股の部分で裾が二つに分かれていて、片足ずつ入れてはきます。ズボンの形をしていると言った方がわかりやすいかも知れません。 行灯袴は、股が分かれていない、スカートの形をしています。
合気道や剣道では足を使って動くので、裾が分かれている襠高袴を男女ともに用います。
ただ、合気道の袴と剣道の袴には若干の違いがあります。合気道の動きは円の動きです。 また、座り技もあります。その点を考慮して、動きやすいように、剣道の袴よりも裾口が狭めに作られているそうです。
もし、合気道に寝技や蹴り技があったら、袴とは違う形になっていたか、袴をつけずにやるようになっていたかも知れませんね。
気付けの上でも若干の違いがあり、袴の紐を剣道よりもきつく締めるそうです。

上着とズボン

上着とズボンは、柔道着と同じものです。ただ柔道では、裾の長さに規定があり、その点を踏まえて選ぶ必要があります。 合気道は競技スポーツではありませんので、裾の長さに関係なく、体に合ったものを選ぶことが出来ます。
ズボンのことを本来は股下(またした、こした)と呼びます。いつ頃からズボンと呼び始めたかは定かではありません。 本格派にこだわる方には股下という言葉をおすすめします。

袴のはたらき

かつての武道家は、攻撃を予測するために、相手のちょっとした動作や仕草に目を光らせていました。もちろん足の動き(足捌き)にもです。
足の動きが相手に丸見えでは、自分がどんな攻撃をするのか悟られてしまいます。しかし、袴をはくと踝から下が見えにくくなります。 袴には相手に足の動きを読み取られないようにする働きがあったのです。
また、室内での戦いを想定しての座り技があります。その際の畳の上での移動、膝のすべりをスムーズにさせる働きもあります。
ちょうど、腰に当たる台形の部分を腰板・袴腰と呼びます。背筋を伸ばし、正しい姿勢を保つコルセットのような役割を果たしています。 実際にどのようなものかを知るために、袴をはいてみました。なるほど、意識をしなくても背筋が伸びます。
袴腰・腰板は、普通の袴では桐の板や厚紙が入っています。合気道でも昔は桐を使っていたのですが、投げられた時に受け身をとっても、 腰板が桐の板では痛くてかないません。そこで皮を使うようになりました。現在では厚紙をゴム板で挟んだものが使われています。

稽古着の利点

融通性に富んでいるのが、稽古着の特徴です。動かない時は裾が邪魔にならないようにコンパクトに、動く時には広い範囲に足を動かせるようにするために、 袴にはヒダが付いています。
洋服のズボンを選ぶ時に、足の長さに合わせて選ぶと、胴周り、腰周りが合わない。胴、腰に合わせると、裾丈を調節しなければはけません。
稽古着の場合はそのようなことはありません。上着は前が開いています。股下、袴は脇の所が開いています。 それぞれ帯と紐で胴、腰に合わせて調節できるので、自分の足の長さに合わせて選べます。 現在はかなり大きめのサイズの稽古着もあるので、よほど大きな体の人でない限り、特別に稽古着をあつらえる必要はないそうです。 これは稽古着というよりも、日本の着物の特徴であり、日本人の知恵といえますね。

材料の変遷

戦後、化学繊維の研究は進歩し、日本の衣料事情は大きく変化しました。合気道の稽古着もそれに合わせて合理化が進みました。
以前は、繊維は木綿、染料は藍が主流でしたが、それよりも安価で大量生産が可能な化学繊維、化学染料が主流となりました。 現在では、防縮加工や、抗菌・防臭・しわになりにくくするためのSEK加工の稽古着まであります。
昔ながらの材料で作った袴にも利点はあります。古来から日本にある本藍染めにすると、木綿糸は汗に強い丈夫なものに仕上がります。
また、合気道の上着には藍染めは使用しませんが、藍には強い殺菌力があり化膿止め、血止め、だけでなく虫よけの効果もあり、 かつては武士が鎧の下に身に着けて戦いに挑んでいたようです。
それから使ったことのある人の話では、化学繊維の上着よりも木綿の稽古着の方が肌触りもよく、着心地がいいそうです。

着付けについて

こんな話があります。ある時、一人の内弟子が、胴着の前がはだけていることに気付かないまま稽古をしている所を見た開祖が 「そのような格好で稽古をするとは何事だ」と大変お怒りになられたそうです。道場は心身を鍛える神聖な場所です。稽古をする相手に対しても大変失礼なことです。
武士は戦場へ出るときに、万一命を落としたとしても恥をかかないように、服はおろか下着にまでもお香をたいて出陣していたそうです。
不思議な事に初めは稽古着に着られていたような人も、技の上達と同時に着付けの方もきちんと出来るようになってくるそうです。

何故、初段から袴をつけるのか

現在、男性の有段者は黒帯を締め、袴を付けることになっています(女性は三級)。 これは戦後の慣行で、規定化されているわけではありません。
戦前までは入門者は即日、袴を付けていたそうです。しかし、戦時中や戦後間もない頃は、衣料事情経済事情の悪化から、現在のようになりました。
女性が三級から付けるのは、女性は女性らしくというのでしょうか、やはり体の線がはっきりと出てしまう股下のまま、 長く稽古を続けさせてはいけないという配慮かと思われます。
袴=黒帯ですが、黒帯になりたいというだけでなく、早く袴をはきたいという気持ちで稽古に励む人もいるのではないでしょうか。

最後に

袴の数え方・・・一腰、二腰






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