採集報告:はじめての灯火採集
by えりー


はじめに
去る6月20日12時07分,関西の大馬鹿者3名がJR福井駅に降り立った.目的は 福井県某所における灯火採集&秘湯であった.私はなんとか12時に改札前につく ことができた.まず帽子をかぶったKAZさんが,そして大石さん,如意棒をもったK-suganoさんが改札前にやってきた.彼らは北陸線の2時間の間にすでにビー ルを飲んでいたらしい.きっとそのあいだじゅうクワガタ虫の話が肴であったに ちがいない.さっそくわたしのクワ採り専用車に乗り込む.皆すぐに話題にした ことは天気のことだった.どう考えてもこの日の福井の天候は良くない.朝から 小雨が降っており気温も下がっていたが,朝方,私が灯火セットを宿に置きにい ったとき,山の方は日が射していたのでこのまま夜までもってくれれば・・・.

とりあえず山に向かう前に腹ごしらえ.近くの手打ち蕎麦屋”さのや”で本場 の蕎麦を堪能する.福井県の蕎麦といっても全国的には無名だとおもうが,私は 福井県の蕎麦は絶品だと思う.細くて唇で噛みきれるようなあるいは飲み込むよ うな蕎麦を食べているひとには想像もつかないような蕎麦である.私は値段をみ ても納得のできる味だと思うのだが蕎麦通にいわせると”さのや”レベルではま だまだということらしい.福井県人の蕎麦に対する思い入れは恐ろしいものがあ る.

さて,腹も膨れたところで山へ向かう.ここからだと1時間くらいのドライブ だ.途中,発電器用のガソリンを調達しようとおもったのだが,携帯用のガソリ ン用のタンクが売っていない.ホームセンターにはあったのだが,かなり本格的 なもので買う気がしない.そこで,車のガスを入れるついでにガソリンスタンド で借りれないかどうかバイトの姉ちゃんに打診してみたらあっさりOK(車内から 拍手・・・).さあ,これで準備は完璧だ.


ブナ林をめざして
福井駅から美山町を抜けて大野市へ向かう川沿いの古道「大野街道」は緑のな かを走れるので気持ちがいい.大野市から山に入りひたすら目的地をめざして林 道を突き進む.小一時間で宿に到着.私は何度も通っているので分かっているが かなり人里離れたところである.気になっていた山の天気は曇りであったが雨は 降っていなかった.宿からは20分程度で林道入り口の駐車場へ.時計はすでに 3時をとうにまわっている.とりあえず荷物をおいて着替えをし,ブナ林のおよ び灯火場所の検討をかねて下見にいくことにした.ブナ林のなかのK池をまわる 周回コース.まずU川に沿って登りながらヤナギのルッキングをする.


Fig.1林道の入り口で左から私(えりー),KAZさん,そしてK-suagnoさん. K-suganoさんの持っているのが如意帽である.今回はあまり出番がなかった. 林道の入り口で標高1000m?1100m.


Fig2きのこの看板の前でほほえむ大石さん.

結局この林道も護岸工事と砂防ダム工事のせいでヤナギがかなり伐採されてしま っている.また,時期がはやいせいかヤナギに食痕がほとんど見られない.川を 登り切ったところでW杯サッカー日本代表のように半分絶望的になる(今回はも しかしてボウズか?).


Fig.4川の上流で.左が大石さん.右がk-suganoさん.Fig.5 左:KAZさんと  右:私(えりー).

日も暮れかかってきたが,このまま引き替えさずにブナ林を探検することにす る.ここからが難所である.岩山をのぼりブナ林に到達するまではちょっとした 登山である.はっきり言って何で福井まで来て運動せなならんのや?(皆の心の 声).さあ,そしてここが本邦初公開のK池の原生林である.


Fig.6ブナの原生林

ここからは平坦な道が池まで続く.このK池は福井県内でも屈指の自然の宝庫と いわれ様々な動植物が産するところである.今の時期はちょうどモリアオガエル の産卵期にあたりそこらじゅう卵塊だらけである. ここは,本当にひとの手が加わっていないブナ林で蹴飛ばしてもびくともしない ブナ,ミズナラの大木が鬱蒼と覆い茂っている.まだ,本格的に材採や薮に入っ ての採集はしていないのであるが,高山種は相当数存在すると思われる.林内で の採集はそれほど容易ではなさそうだ.どこかに居るはずなのだが,わたしはこ こでは目の届く範囲でミヤマを捕まえただけである.


Fig.7ちょっと見づらいが,KAZさんの向こうの池に張りだした枝にはびっしり卵 塊がついている.

このK池には水生動物もたくさんおりアカハライモリはうじゃうじゃいる.KAZさ んはどうもイモリとかも好きなようで嬉しそうにすくっていた.他にも3種の山 椒魚が生息しているらしい.材をひっくり返すとときどきこの手の小動物にで会 うことがある.また,後でも出てくるが,日本カモシカ,ヤマネなどの天然記念 物にも出会える.


Fig.8K池でアカハライモリと戯れるKAZさん.

5月くらいまで雪の残るこのブナ林は池があることからもわかるように割と多湿 である.材割りに向いている材も林道沿いに転がっている.成虫の姿が見えずに いらいらしている我々はそのような美味しそうな材をみつけると居ても経っても 居られない.この時期にやるか?といわれそうだが,誰も大馬鹿者は止められな い.大石さんが必殺の鉈でミズナラの倒木をぱきっと一撃.すると「いました」 の声.うそ?と思いながらみるとスジクワかオニクワのような初齢幼虫発見.そ うなると止まらない.とりつかれたように削るとミヤマの2齢幼虫,さらに2匹 スジクワかオニクワの幼虫(アカアシではない)が立て続けに出てくる.まだま だ削れば出てきそうだが,ここではたと本来の目的を思い出し,一度宿にもどろ うということになる.池から最初の地点におりるのがまた一苦労.すごい急な下 りで溜息が漏れる.途中,K-sugano支部長が頭だけの大型のミヤマを発見.まだ 動いている.きっと鳥に喰われたのだろう.居る!ここには絶対居るのだ.我々 はこのとき小さな希望をはじめてもったように思う.


Fig.9初夏のブナ林で材割りをする!!

宿に戻るとすぐに温泉につかり汗をながす.ここの風呂はわたしもはじめてであ るが,わりとさらっとしたタイプのお湯で,温度は少しぬるめであるがのんびり 入るには良い.ここも白山の麓であるだけに白峰温泉に近い感じがする.ちょう ど食事の支度も整ったようでみなそそくさと食べる.なにしろ日はすでに沈みか けている.天気は上々.やや気温が低いものの月も細く,灯火採集は可能だろ う. ここで,問題が一つ起こった.料理は余り期待していなかったが思ったより美 味しかった(山の民宿は山菜料理しか出ないというのは分かっていた).問題 は,なぜか料理のなかに「鯛の刺身」があったのだ.みんなビールをやりつつ, ぴりっとした天然わさびの和え物,鮎の素揚げ,などそれらしいものを食べなが ら何で鯛の刺身が山にあるのだろう・・・?と疑問に思っていた.皆なんかイヤ な予感はしていたのであるが,食べてみると以外に美味しい.歯ごたえがこりっ としていて鯛よりこくのある魚だ・・・.ちょうどご飯をもってきた仲居さんに 美味しいですねこの魚ときいてみると・・・「ああ,それイワナの刺身です わ」.がーん.おいおい先に言ってくれよ!食べてしまったぞ!!しかも生 で!!!多年性の川魚なんて寄生虫の宝庫なのだ.いくら新鮮だからって,そん なもん生で食べたらいかんのだ!!まあ,食べてしまったのは仕方がない.吸虫 くらいですめば御の字だろう.さあ,いよいよ灯火採集だ.


次のページへ