「怪説・世界のクワガタ」 第5回 ヒラタクワガタ (4)

A.CHIBA


 3月号に続いてヒラタクワガタ だが、今回は主に大型種(Dorcus titanusを主に)を紹介して見たいと思う。この種は日本から中国、台湾、フイリッピン、ボルネオ、スラワシ、スマトラ、タイ、インド、等々で見られ分布は広い。このヒラタクワガタの中には、おそらくクワガタでは大きさ重量とも最大級になるものがおり、見る者を夢中にさせる充分な迫力を備えている。初めて巨大な実物を見てその魅力にとり憑かれてしまい、クワガタの厳しい道?にのめり込んでしまう人もいるぐらいで、人気は高く標本を集めたり飼育している人も多い。日本産については良く調べられており、伊豆諸島や南西諸島の島々などに分布するもは違いが見られ(日本産 titanus)10亜種に分けられている。そのほか今回紹介できなかったがスジブトヒラタ(Dorcus metacostatus)やチョウセンヒラタ(Dorcus consentaneus)など興味のあるものが多く、採集や飼育は楽しい種である。


fig1

 fig1の左は Dorcus titanus pilifer 種子島産で66o。pilifer は最大で70oを超える個体もいるが、そこまで大きくなる事は少ない。関東以北では稀で採集は困難だが、東京都内や関東近辺で少ないながら採れる個体は小型が殆どで、コクワガタよりも小さいものも多い。たまに大きい個体が採れると、飼育されていた南西諸島産が逃げ出した?ものだった。などと言う事が近年有るらしく何度か聞いた事がある。和歌山県の一部や四国産には平均して大きい個体が多いとも聞くのだが、比較出来るほどの個体数を見た事が無く、正確な情報かどうかまだ良く知らない。

 真ん中は Dorcus titanus sika タイワンヒラタクワガタでラベルは台湾の桃園県拉拉山採集。海抜1000mくらいの場所でも採集されるらしいが、台湾でも日本と同じく低産地から平地の方が多いようで、台湾全土で以前は沢山採れたと言うが、少なくなり特に近頃は大きな個体をほとんど見る事が出来なくなってしまったと聞く。サイズは最大でも70oを少し超える程度にしかならない。
 少し話しはそれるが、昔からたくさんの昆虫標本が日本に来ている産地(台湾など)で、良く大型のクワガタなどに関して近年になり大きい個体は採れなくなったと言われる。これは古くから多くの昆虫を扱う標本商などから良く聞く言葉で、クワガタだけでなく大型の甲虫一般に言える事らしく、台湾テナガコガネなども昔よりひと回り小さくなってしまったと言う。多くの虫を見ているプロからの話しで事実なのだろうし原因も色々有るのだろうが、あまり楽しくない話しである。

 右は Dorcus kyanrauensis ミヤマヒラタクワガタで台湾南投県捕里獅子頭産。この種は前種よりもいく分標高の高い場所に多く産するらしいが、タイワンヒラタより数は少なく採れるものの殆どは35〜45oぐらいのサイズだと言い、大きくても60oを超える事はない様である。この種の標本は前種よりも高く売られている事が多い。


fig2

 次はfig2の左、フイリッピンの Luzon島産。Dorcus titanus titanus(typhon?)85o Mt.Province 北ルソンとなっている。ルソン島のtitanusはあまり多くの個体は見た事がないが、この個体は艶が有りカッコ良い。フイリッピンは多くの島々からなっているので、変異が調べられればおもしろいと思うのだが!次のパラワン産以外は多く入って来ていない様であまり見かけない。

 真ん中は、皆さんご存知の近年よく入ってきているフイリッピン、Palawan島産のDorcus titanus palawanicus 103oで、ラベルは Brookes point Palawan。このパラワンのものは昔から日本に入って来ており、産地ではかなりの数採れるらしく標本は良く見かけるが、全長が100oを超えるものはやはり少ない様であまりお目にかかれず、やはり高価。今まで記録された最大サイズは110o前後か!

 右は、Dorcus titanus titanus で Palu C. Sulawesi 産。写真のものは90oありそんなに小さくはないのだが、パラワン産の103oと並べると小さく見えてしまう。スラワシ島北部に産するものは内歯が大腮の基部に近づく。写真の個体は一番左のルソンのものと似ているが、頭楯の違いで区別出来る。サイズは90o後半ぐらいまで見た事があるが、ほぼ最大サイズだと思う。

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