美しい死体処理方法入門(2) 実践編   Page1/4

k−sugano

今回は死体処理(=標本作製)の実践編である。

軟化処理

サクエチで殺した虫はしばらく柔らかいので問題なく、いきなり展足へと進めるが、それ以外の場合、普通虫は固まっていて、脚があっち向いたりこっち向いたりしているので厄介だ。購入した標本も同様である。そこで最初に軟化処理をしなければならない。

前回紹介した、スノコ付きタッパーにペーパータオルを敷き水で充分濡らす。このとき正露丸を水で溶いたものやヨード液を少し垂らしておくとカビの防止になるが、それほど長い時間タッパーに入れておくわけでもないので省略して良い。

ペーパータオルを濡らした後、スノコを敷いて虫を並べる(Fig-1)。そして蓋を閉じて放置する。甲虫は意外に短時間で吸湿するので、1時間で良い場合もあれば12時間ほどかかるときもある。いずれにせよ、付節や触角が動きやすくなって、関節も動きそうならそれで良い。多数の個体を入れた場合は小型の虫は早く軟化するので注意が必要である。まめにチェックしよう。

fig-1

前脚の処理

クワガタを始め、甲虫で厄介なのは前脚の処理である。自然死した甲虫は筋肉の収縮からか脚を伸ばしたまま死ぬことが多い。特に前脚ではこの傾向が顕著で、このままでは展足ができない。(fig-2,fig-3,fig-4)

fig-2

fig-3

そこで、前脚を前方(頭部)の方向へ倒してやる必要があるが、Fig-4に示した基節が前後にローリングすることにより、転節を介して腿節は前後に動く構造になっていることに注意する。

fig-4

そこで注意を払って腿節を前方に押して行くのだが、無理をすると転節で簡単に折れてしまう。当然パーツの小さい小型のものの方が折れやすいが、DORCUS属は比較的強く、メタリフェルなどのホソアカクワガタ属やミヤマクワガタ属など脚の細い種は折れやすい。このあたりの手加減は経験を積まないとなかなか判らない。

fig-5

fig-6

fig-7

どうしても困難と思われる場合は、あとで乾燥に長時間かかるのを覚悟して、fig-5のようにぬるま湯に短時間漬けてしまうか、fig-6のように基節周辺をニードルで突付き動きやすくする。fig-7のように一度頭部をはずし、前胸と頭部をつないでいる穴からニードルを入れて、内側から基節周辺の筋肉を壊すのも効果的である。

このようにして前脚を上手く処理したものをfig-8、fig-9に示す。

fig-8

fig-9

中脚、後脚については関節の動く方向に逆らわない限りさほど問題は無い筈で、脛節と腿節をペキペキと曲げれば宜しい。関節の動く方向に逆らうとすぐに折れるから注意すること。

オオアゴの処理


クワガタでは、前脚とともに厄介なのがオオアゴである。
fig-7のようにオオアゴを閉じたまま固まってしまった場合、これを開かなければならない。

fig-10

オオクワガタのような大型種では両手にオオアゴを持って「エイヤッ!」とやれば開くことが多いが、小型種や大型種でもオウゴンオニとかマルバネとかは無理をすると壊れてしまうことがある。オキュピタリスノコギリやローウェイノコギリなど小型だがオオアゴの付け根が太い種は特に壊れやすい。

そのような場合は、無理に開くのはあきらめて筋肉を壊すことにしよう。

fig-11に示すように一旦頭部を取り外す。そして頭部と前胸部をつなぐ穴からニードルを入れて内側のオオアゴの付け根あたりの筋肉をかき出すように突付く。

fig-11

このようにすれば、どんな種でも簡単にオオアゴは開く。(fig-12)

fig-12

前脚の処理とオオアゴの処理が終われば、もうこっちものだ(^^)
あとは整形作業が残っているだけである。



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