「怪説・世界のクワガタ」第2回 オオクワガタ(1)


A.CHIBA

今回はオオクワガタである。日本においてオオクワガタDorcus curvidens binodulosusはその独特の雰囲気と形態、巨大種で有る事などから圧倒的な人気を博しているが、このクワガタを知って人生が変わったと言う人もいるぐらい不思議な魅力を持ったクワガタである。このオオクワガタ(日本産)に付いては、多くの採集記、飼育方法等が書かれており情報量は多い。日本のオオクワの他、大型の外国産オオクワと言うと、タイワンオオクワ、シェンクリンオオクワ、アンタエウスオオクワ等が有名だが、今回はこの中の頭部に小突起の有るグル−プに付いて書いて見たいと思う。解説等は簡単にかつ独断と偏見?(ラベルは正確)で書いていく。形態に付いては本来圧倒的な数の個体を見なければ語れない事で有るし、それにここでは♀については一切ふれていない事も有り限界が有るが、多少の参考程度になれば幸いである。


fig 1


まず、fig1の一番左は皆さんお馴染み?の日本産オオクワガタDorcus curvidens binodulosus、山梨県韮崎市1985年採集72oの個体だが、現在ではどの産地でも70oオ−バ−を採集するのはよほど運が良くなくてはチョット無理!至難の技である。以前は累代で大型のモノが出来るなどとは誰も考えず血眼になって大型個体を手に入れようと捜し回ったものだが、累代飼育技術の進歩で大型個体が作出できる今としては、超大型は飼育で狙う方が現実的である。日本産の最大のサイズは色々と噂が有るが、採集されたモノの最大サイズは知る限り77o。飼育では更にに大きいのが出ていると言う。サイズに付いては1o〜2oの違いで一喜一憂し、非常に楽しい話だが、日本産では故有名コレクタ−のコレクションの中に、戦前採れた80oオ−バ−の個体が有るとか、以前より噂されている。この話に限らず昔採れた個体の中に80oオ−バ−が有ると言う話はよく耳にするのだが、残念ながらまだ見た事は無い。この手の話でひとつ考えられるのは計り方の問題で、古き良き時代にはサイズは大抵モノサシで計るのが普通だった。今の様にノギスなるモノで正確に計る様になってから、クワガタは軒並み2〜3o縮んでしまったのである。

真ん中の個体はDorcus curvidens hopei、ラベルは中華人民共和国広西省南康採集73oとなっている。以前は日本産もssp.hopei とされていたが、現在は別亜種とされる事が多い。広西省産は日本産と非常に良く似ており、不鮮明な写真では区別する事は無理。文書で違いを明確に書くのも難しいが、強いて書くと、頭部の少突起は日本産よりも、より鋭角(とがる)に見える。それと大型の個体では、大腮の内歯が日本産よりも前方及び上方を向く傾向が強い様に見える。あと区別の方法としては前胸背板と上翅の点刻の違いで見ていく方法(顕微鏡で)が有るが、コクワでは日本産と大陸産の間で違いが見られる(区別出来る) と言われているし、オオクワでも調べて見るとおもしろいかも知れない。

一番右は台湾産Dorcus curvidens formosanus、(Dorcus grandis formosanus)でラベルは台湾南投県仁愛郷萬大採集。この個体は71o有るが中歯型。このタイワンオオには、前胸背板側縁が前方にあまり狭くならないモノと、ラオスのグランデスに似て前方に狭くなる形態をしたモノがいる。これが産地によるのかその他の原因かはまだよく知らないが、色々な図鑑と標本を見ていくと、同産地で両方の型がいる様に見える。台湾の平地に近い産地は殆ど開発でつぶれた様で、平地産の標本は古いモノが殆どで貴重である。平均的に日本産よりも大きくなり、このクワガタの巨大な個体は横幅が広がり、その重量感は凄く非常に良い。最大型は80oを越えると言われる!      

 
fig 2


次のfig2の左側の2頭は、中華人民共和国福建省龍岩採集、サイズは62oと59o。この個体の前胸背板側縁のカタチはタイワンオオによく似ている。真ん中の個体などは大腮も中歯で有る為なおさらそっくりである。福建省は台湾に近い事であるし、台湾産のモノとは近い関係に有ると想像でき、今後いかなる扱いになるのか興味有る処である。この産地の標本は他にも十数個体見たが全て前胸背板のカタチは同じ(台湾産に似ている)だった。

一番右は、中華人民共和国雲南省紅河産の個体。62o有るが中歯型。頭の少突起は広西省産に比べ尖っていない。前胸のカタチは日本産と似ている。

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