会員製作のEV−EVハッスル
このEVを製作した奥貫千年氏は2016年10月、78歳で永眠されました。心よりお悔やみ申し上げます。
東京都目黒区在住の奥貫氏が製作していたスズキアルトハッスルEVの製作者自身によるリポートです。
ベ−ス車:スズキアルトハッスル(V-CL22V)1993年式
完成日:2001年5月4日
ナンバ−取得日:2001年6月8日
- 製作記
私はホンダライフに20数年乗り旧車ファンを自称していました。
エンジンブロ−を期にエンジンの載せ換え(軒下工房)に始まり、マニア仲間の面倒まで見ていましたが、これをついに手放してしまいました。
仲間にせがまれ手放したまでは良かったのですが、手を汚すことがなくなりモヤモヤとした気が晴れず悶々とした日を送っていた折、改造電気自動車の事を知りました。
これだ!!これは楽しめそうだ!!これしかない!!、さっそくベ−ス車さがしをはじめスズキアルトハッスル('93年式)を手に入れました。外形が変わっていることと荷室が大きいのが気に入りましたが、なんと検針にEVも使っている○○電力のサ−ビスカ−あがりでした。
次は部品探しです。KTAのカタログを取り寄せ、部品をチョイスしていた折に、日本EVクラブ電撃掲示板でスズキエブリイ電気自動車(V-DE51V改、書類無部品取車)をみつけ、これを引き取ることができました。
同型エンジンなのでミッション結合がしやすいのでは、
コンバ−トより移植のほうがやり易いのでは、
と単純な考えで始めました。
バッテリーが上がっていたので動いていたという話を信じて、テストはしないでどんどん分解してしまいました。これらの判断は後で大きな間違いだったことに気がつくことになります。
たしかにミッションとモ−タ−の結合は何の加工もなくできましたが、モ−タ−のマウントはエン ジンマウントとかなりの角度違いがあり、新規に作成しなければならなくなりました。結局手書きの図面と厚紙で型紙を切り刻んで町工場に持ち込み、アルミブロックを削り出しで造ってもらいました。
家族からはどうせできないだろう、いまにあきらめるだろう、と言われ意地になって組み立て ました。軒下工房にはいろんな人が訪れてくれました。中には呼びつけたり、無理な願いに快く来てくれたり本当に大勢のかたがたにお世話になりました。
おおかたは移植し、部品取りとなったEVのとおりに仮配線してジャッキアップした状態でスイッチオン・・・したのですが動きません。スズキ製のコントローラはよく使われている市販のものに比べて非常に複雑です。元の配線を良く調べると市販車ならではの安全装置が幾重にも入っています。できるだけ元のとおりに配線してみたのですが動きません。
コントローラへの信号は来ていましたのでどうやらコントローラが故障だったようです。修理はちょっとできそうになく、スズキのコントロ−ラ−はあきらめ、コントロ−ラ−とスロットルポッドはアメリカKTAよりカ−チス製を購入することに落ち着きました。
スズキ製のコントローラのためにフレームを作ってあったのですが、アメリカ製のコントローラに合うように改造、オリジナルより小さいのでそれほど難しくありませんでした。
今度は無事始動、一安心です。
モ−タ−(直流分巻)の特性か、トルクのかかり具合が昔のタ−ボ車のようなタイムラグが感じられます、でもEV特有の力強さには満足しております。
旧車ではエンジンの組替えなど何度も経験しましたが、はじめてモ−タ−が回ったときの感動は 何にたとえようか…………心当たりのなかった感動でした。
心配していた重量オ−バ−も許容範囲におさまり、検査協会の係官も好意的に協力していただき 事前軽量、申請書のアドバイスなどもあり、登録申請書は一発で合格、実車検査も一発で合格できました。
- コンバ−トデ−タ
モ−タ− : 日本輸送機 DTA-13PB(スズキエブリイEV用)
タイプ.定格出力: DC120V 13kW、直流分巻、ブラシ式
コントロ−ラ− : カ−ティスPMC 1221C-7401 400Amax
バッテリ− : 古河電池 EB-65、12V60Ah、10個直列
補器用バッテリ− : 12V25Ah 1個、オリジナルの始動用を使用
充電器 : 日本電池 SG3型(スズキエブリイEV専用)
入力電力 3相200V 17A 50/60Hz
出力電圧.電流 120-150V 10-30A
補器用バッテリーはスズキEV用のDC-DCコンバータを移植し、メインバッテリーから充電
1充電走行距離 40km(?)
最高速度 60km/h(?)
- EVハッスルのその後
2001年6月に改造車検を取得以来、使い走りに使用しておりますが、同年11月に日本フィスティバル2001に出場してみて、街中での使用にはさほど不便を感じなかった高速域の伸びにいささか不満を感じています(トライアルで完敗、勝てたのは一回戦だけ)。
モータ(直流分巻)の特性で高回転の伸びが足りません、悩んであちこちとあさったあげく界磁側にもう1個コントローラーを付けようと思っていた矢先、以前に日本EVクラブの掲示板で見かけた(弱め界磁)の項を検索してみたところ界磁側の電流をカットすると高回転を得ることができるらしい??ということを知りました。軒下工房に春が来たら今度、コントローラーより並列接続してるフィールド側配線にコンタクタを入れて高回転域で手動の入り切りをテストをして見ようと考えています。
フェスティバルで屈辱をあじわったのを期に速い車も造りたくなり、アルトワークス(550cc)を手に入れました。目下部品集めをはじめています。四輪駆動なのでエンジン ミッション&フロントデフを取払いリヤーデフにアドバンスド203-06-4001を直結、カーチス1231C-8601で144Vをかけて走らせてみようなどともくろんでいます。
EVハッスルは日常の街乗りで
EVワークスはイベント用にと思っているのですが、一番の悩みは置き場所です。そのほかは中古のバッテリーがどこまで持つか、冬を迎えて気温が低いためか走行距離が少なくなっています。不安材料が重なっていますが、いろいろとテストなどしながら改良、改造を重ねてこれからも愛用して行きます。
電気に弱い者がここまでできました。これからコンバートしたい方がおられましたら、いつでもおしみなく協力いたします。
スズキの軽メカについては勉強させてもらいましたし、電気についてはすべて松本支部に頼りました。
EVハッスルについてはできるだけ走行記録などとっております。
機会があれば報告したいと思います。
- 事務局からひとこと
奥貫さんには2EVアメリカの旅で大変お世話になりました。帰国後コンバートを始められるということでご自宅が東京事務所から歩いていける距離にあるのでお手伝いすることになりました。
お手伝いといっても最初に訪問したときにすでに部品取りのEVはほとんど解体され、アルトのほうはジャッキアップされてモーターが載っていました。その後多忙だったり入院したりとお手伝いできず、力仕事も含めて当方の出る幕はあまりなく、ほとんど奥貫さん一人で完成させて車検まで取得しました。
近くの東京都庭園美術館で2001年充電の旅のゴールを出迎えた後に駅まで送っていただきましたが、都内の一般道路を走るには十分な性能です。2EVがある松本ではちょっとした用足しでも走行距離が多く、EVを使うにはバッテリーを気にしないといけませんが、東京では山手線の直径が10kmしかなく、道路も混んでいるのでレンジ15-20km、最高速度60Km/h程度のEVでも十分実用になります。
数少ない実用EVとしてこれからもリポートをお願いします。
home|
->Top of this contents