●「夜行電車」

夜行電車は朝5:20到着予定だったが、6:40頃に到着した。
途中、寒くてヒザが痛くなった。これでもか!というアジア的な冷房ではなかったけど、ヒザの骨が痛くなって何回か目を覚まして、夜明けあたりからずっと起きていた。かなりな数の駅に停まって、ゆっくりゆっくり走る。スピードもやたらにのろい。ルアージュの快適さを改めて感じる。
車内はふつうだ。非近代的な電車なわけではない。ちゃんとリクライニングできて、スペースも十分にある。ただ夜中、乗ってきた人々に顔をのぞかれて不快だったから、帽子を顔にかぶせて寝ていた。


●「コルブスへ」

チュニスの空気は、ほんの一週間前と違うものになっていた。
それは、奥まで行って慣れてしまってわたしたちの感じかたがよりチュニジアに近くなった、というような意味あいではない。ほんの一週間のうちにチュニスの季節が秋に傾いてきていたのだった。
じわっとしたあの暑さは通り過ぎつつあり、吹く風は心地のよいものになっていたことに、ひどく驚きを感じた。

チュニスの駅から、ボン岬方面行きのルア−ジュ乗り場に向う。そこは、何日か前に夜行バスに乗り込んだ南バスステーションのすぐ側にあるので、まずはそこを目指して向った。南バスステーションでは、カフェにたちよりパン・オ・ショコラと店頭で透明なジュースベンダーに入っていた柑橘系らしい白濁黄色ジュースを朝食にいただく。
その汁はライムジュース(砂糖入り)だった。酸っぱくて甘くて苦いジュースだった。"甘い"と"塩っぱい"以外の味覚を刺激したのが本当に久しぶりに感じた。とにかく、決まった食材の食事しかとっていなかったから、酸っぱいものを欲していた。酸味のあるものが食べたかったんだ。酢の物とか。妊婦の気分ってこんなもんか??なんて、朝の太陽の下でぼーっとしながら飲んだ。

今日の予定は、コルブスKORBOUSで泊まる!だ。
コルブスは、チュニスから1時間〜1時間30分くらいの距離にある温泉町だ。土漠から戻ってきた私たちの体をいたわるために行く町、コルブス。
今までの経験でバスよりもルアージュの方が便利だと思ったからルアージュだ!と思っていたけど、バスの時間をふとみると、丁度良い時間があったのでそれに乗る。
途中、NABEULナブールと書いたバスステーションに停まったのでビビる。看板に書かれている文字は、それ以外はアラビックなので意味が分からず、心の中がちょっとした恐慌状態におちいる。地図で確かめると、ナブールとはコルブスとは方向が違う町の名前だ。
乗車員に聞こうと話し掛けるもののぜんぜん話が通じず、不安にかられながらバスにゆられた。下が海の崖っぷち道路を通り、趣きのある小さな町に到着。無事そこはコルブスだった。


コルブス
町は、海に面していて山に囲まれ、その斜面にかけて建物が点在している。バスはその町が見下ろせる位置に止った。そこから長い階段で町に下りてゆく。本当にこじんまりとした町で、そこから見渡す範囲にしか町はない(ようにかんじた)。坂道(たぶんメインストリートとでも呼ぶのだろうか)をのぼって行くとあった、LES SOURCESというホテルに泊まることにする。ホテルの料金は二人で72DT(6,480円)というから、他も探してみる、と言って出ようとしたら、他のどこへいってもここらへんはこういうホテルしかないし、まけてやるからここにしときな、ということになり、三食ついてバス付きの部屋が二人で51DT(4,590円)になる。まずまずだ。

部屋に行ってみるとコンドミニアム風で、ダブルベッドがある部屋が一つと、キッチンもついているシングルベッドが二つある部屋が一つ、バストイレが別で、靴箱、クローゼット、バルコニー諸々がついている、という値段からは想像していなかった広いところだった。バルコニーからはこの小さい町が見下ろせて、その向こうに青緑の地中海が横たわっている。ただ、古い。まあ、値段とのバランスを考えたら大満足だ。長湯治客が自炊をしながら泊まるようなところなんだろう。

ここの町はハイシーズンの時はひょっとしたら盛況なのかもしれないけれど、今時期はチュニスやカルタゴあたりからの日帰り客が多いみたいだ。ホテルに泊まっているのは、ヨーロッパあたりから来たじいさんばあさん湯治客といったところだ。ランチに食堂に行くと、そもそも客も少ないのだが、若者はわたしたちのみ。

臓物系とはこんなもの
メニューはビーフと臓物系がゴロゴロ入ったトマトシチューピ−マンポテト添えと、チュニジアンサラダ(出てこない日はない)、ナシ一個。なしは洋梨よりも歯ごたえが有り、酸味がある。そうか、市場で果物買ってもっと早くに食べていれば妊婦気分は味わわずに済んだんだ。

お腹いっぱいになったら著しい眠気がおそってきた。部屋に帰り、ちょっと休むつもりが15:00頃迄寝てしまう。こってりとした肉や塩っぱい味付けのものを食べた後にすぐ寝ると、とくに寝覚めが重い感じはないですか?朦朧とした状態ながらも時間がもったいないという意識だけは働いて、フラフラしながら温泉に向かう。

向かうといっても、ひょっと外に出たら露天がある温泉宿ではない。太陽の下、一キロ歩く。
コルブスには七つの温泉があるらしい。そんな温泉町だから温泉マップの一つでもあるかと思いホテルで「地図くれ」と言ってみるが地図はなくて、そのかわりにもらった「チュニジアの健康温泉」なる小冊子に載っていたアイン・アトロスというところに行ってみることにする。

サナトリウム系
アイン・アトロスでは温泉の湯が海に流れ込むところに浸かるらしい。アインAINはhot bath stationのことだそうだ。アトロス温泉。ここの湯は全ての慢性リウマチと外傷後遺症、かたこりなんかの日本の温泉の効用に書いてあるようなことと同じことに効くらしい。この小冊子の写真を見てビビらされた。わたしたちが考えていた温泉での〜んびり、という雰囲気はみじんのかけらもなくサナトリウム系で、60-70年代の香りプンプンの写真だったからだ。この小冊子は一度その頃に作られてから改定されることなく配り続けられているのだろう。ついでに言うと、ホテルの内装も60年代でストップしている。そして、今よりもくたびれていない新品のまるきり同じ内装のホテルLES SOURCEが、その小冊子に載っている。

ランチ前に散歩に出たとき目星がついていた海岸に沿った道路をひたすら歩く。
TAXIが一台いたから、「アイン・アトロス」と言ってみる。しかし乗りたい!という気持ちでいっぱいの私たちをしり目に、運転手は「一キロ先」とニコニコしているだけだった。歩けっつうことか。


こんな海を見ながら一本道をひたすら歩く

アインアトロス

温泉が流れ落ちてワンクッションおかれる所

夕暮れにはせつなすぎる♪

こんなことや

こんなこと
町から海岸沿いに北にのびる一本道を岬に向ってひたすらダラダラ歩くと、岬の先端を越えた向こう側にアイン・アトロスはあった。道路沿いに焼きイカなんかを焼いている食べ物屋と土産屋が4-5軒あり、そこの横道を海に下りてゆくとちょっとした広場があって、温泉が流れ落ちてワンクッションおかれるところがある。
そこから温泉が海に流れ込んでいるところにみなさん浸かって波にゆらゆらゆれていて、たいへん楽しそうだ(水着着用)。チュニジアンカップルがいちゃついている他は男たちが3-4人で来ているパターンが多く、スキンシップを求める毛ダルマのおやっさんタイプが多くを占めていた。狸の置き物のような体型で腹にまで毛がもじゃもじゃのおっさんは圧巻だった。韓国アカスリをもってきて、アカスリをしてニコニコあほっぽい笑いをうかべているドリカムの西川似の男もいる。
イスラムの国ながら、こんなところでカップルはいちゃついていたのか。すすんでるな。
お湯の温度のほうは、海に流れ込んでいるだけあって温度はちょっとものたりない。波に揺られて入る温泉は心地よかった。
一言でここを表わすならば、むちゃ濃い〜かった。

そこから、町にタラタラ戻る。のどかにどこかのうちの牛が道路のどまんなかを歩いている。

町は、海から山の斜面にかけてあって、その海の方の端部分にあるSPAに行く。
ここではマッサージやサウナなど様々なことが行なえるらしい。らしい、というのも、メニューにかかれているのが例のごとくのフランス語で、それも普段のフランス語でさえあまり使われないだろうと思われる温泉業界用語なので、書かれていることは全く分からないのだ。(、、、まあ、英語でもわからなかったろう。)スペシャルセットがあり、いろいろ五種類くらいやって38DTのを勧められるが、正体がわからないし、こんなこと→されたり、こんなこと→されても困るから、なんとか分かったもののなかの泥エステとハマムのセットで12DTのものを行う。

受付でお金を払って中に入ると、それぞれのサービスが部屋ごとにわかれている。廊下をちょっと進んでいきなり目に入ったのは、吸入器を目の前に口を開けて座っているおばちゃんだった。小冊子の写真が頭をよぎる。

奥に進み地下におりる。ドロエステの部屋に案内される。部屋の中には二つの寝台があり、むう〜っと蒸されている。脱衣所が別にあるわけではなく、衣類や鞄もこの蒸されている部屋にかけなければならない。
ベッドの上に黒い布を二枚敷いてその上に担当のお姉さんが泥を置き、その上に寝かされる。更に腹、腕、足、顔に、熱い風呂位の温度の重量感のあるドロを塗られて、布で赤子のようにたたみこまれる。
汗が流れ落ちる位たくさんでて、血行がよくなり気持ちよい。その状態でかれこれ30分くらいいただろうか。担当のお姉さんがやってきて布を外してくれて、同室内のシャワーで泥を流す。水がしょっぱい、これは海水ではなかろうか?
肌質が変わった気は全然しないが、やっているときの気持ち良さは体験できてよかった。体から力を抜いてリラックスする心地よさをしみじみと感じた。あの後、アカスリがあれば最高だっただろう。

ドロエステ効果でお腹が減って、夕食へ向う。ホテルに戻ってシャワー浴びてから夕食へ。牛肉の煮込みイモ添え、サラダ、果肉の白いメロン。材料に使われているものはデザートの果物以外は昼食と全く同じなのがバレバレだ。こんなくどいもんを療養に来ている人が毎日食べていていいのだろうか。


●「再びチュニス」

朝、寝覚めがやたらによい、これは温泉効果か。熟睡した上に夢までみた。日本の首都が小樽になった、というものだ。東京の環境がそのまま小樽にあって、好きな人たちが身の回りにみんないる、今の仕事で働ける環境が小樽にある。で、旅行に行ってどこから来たのか聞かれて「JAPAN」と答えるとその次に「TOKIO?」と聞かれるように「オタル?」と尋ねられるのだ。
起きたときには、ここは小樽だ、という錯覚までおこしていた。深層心理で一番望んでいることなのかもしれないことが、あらためて自覚できた。ここはコルブスだ、と把握したとき切なくなってしまった。


ランドマーク風
朝食はフランスパンにダッツジャム、バター、パウンドケーキ、カフェ、ミルク。
10:00のバスに乗る。高台にあるバス乗り場から町を挟んで対面にある高台の上にはこの町のランドマ−ク的存在の城の一部のようなものとモスクが一緒に建っている。その城の一部のようなところからじゃーじゃーと湯が流れている。あそこも温泉か?

約一時間でチュニスに到着。ここで、日本人の方と会う約束をしている。こちらで働かれているので、いままでチュニジアをまわってきての疑問をいいだけぶつける。わからなかったことがここでいくつも判明した。カウント伯爵=ベン・アリの事実もここで知った。
そして、うんとショックだったのは、今朝原発事故が日本で起こっていた、ということだ。関東で。日本を出発するときに、最近わたしはついているから、ついている私がいなくなった日本で大地震があったりして〜!なんて、友達に喋っていたら、大地震ではないが、大きな嫌な事件がまきおこってしまっていた。

ランチはエディット・ピアフがお気に入りだったというフランス料理店、Chez Nousで。
トマトのスープ、えびのマヨネーズソース、レバーのソテー、デザートのMENUで10DTくらい、飲み物は別。手ごろだとおもう。どれもおいしかった。ガイドブックにも載っているお店だから観光客もたくさんくるし、それに負けないくらい地元の人もたくさんいる。
ここでまた、アンドラのときと同じワナにかかる。デザートは数々の中から選べたのに、Ananas au Ciropを選んでしまったのだ。パインのシロップかけ、どんなおいしいパインが、、、パイン好きとしては見逃せまい、と思って頼んだら、パインの缶詰めだったのだ。au Cirop、要注意。

ここから国営の土産物屋OFFICE NATIONAL DE L'ARTISANATへ。アドバイスによると、ここは国営だから値切ることはできないが、だいたいの土産相場がわかるということで、買うよりも相場を確かめる、が目的で訪れる。ファティマの手のペンダントヘッドは5DTくらい、小さいものだと4DTくらい。
ファティマの手とは、イスラム教を開いたモハメッドの四女ファティマの手を象った、チュニジア土産としては外せない一番メジャーなものだ。細工が細かくてきれいなものほどよい。小さいものは細工がきめこまやかではないので大きい方に目をつける。メディナで交渉するのに役立てるゾ〜、と張り切って見ているうちに、交渉することがめんどくさく思われてきて、そこで少し買ってしまう。


●「愛の芽生え」

飛行機は一時間おくれて出発した。
チュニス-モスクワ間はエコノミーは全席自由だ。早いもの勝ち。
この機内でのトピックは、斜め前で始まった愛の芽生え劇場だ。最初は二人並んで座れるところに、ガタイがいい男がしかめっつらで一人で座っていたのに、気がつけばピンクのツナギをボタンをはじけそうに着こなしている巨大な女とぎゅうぎゅうになって座ってなにやら楽しそうである。アエロにはいまだに喫煙席が存在し、そこで二人は知り合ったらしく、女が席を移ってきたようだった。最初はちょっと意気投合した男女、という感じだったのに、モスクワに着く頃にはぶちゅ〜〜って感じだった。出合いには様々なかたちがあるものだ。

そして、モスクワで各地から集まってきた日本人バックパッカーたちにようやく会ったのだった。もうここは、日本という感じだった。

OFFICE NATIONAL DE L'ARTISANAT  AVENUE HABIB BOURBUIBA - TUNIS  PALMARIUM内

Chez Nous  5 , RUE DE MARSEILLE - TUNIS  TEL:243.043

LES SOURCES  TEL:02.94.533



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