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私の(超々)整理法

さぼりで手抜きな個人データの整理法

1997.12.09. 掲載
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目次
はじめに
1.不要なものは捨て、仮置き場に置く
2.決めた場所に置く
3.必要になるまで分類しない
4.たまり過ぎたデータは捨てるか別の場所へ移動させる
5.時系列とグループ分けが整理の基本
6.日常診療に使う業務用データの整理
7.デジタル・データの整理
8.データ整理法の変遷
あとがき
参考文献


はじめに

私のことを整理魔と呼ぶ人がいる。そう思われる理由は、恐らく野村医院二十年史でまとめたデータとか、電子メールのデータ整理を見られたことによるのだろう。あるいは、野村医院のカルテ棚、薬剤棚などを見られた結果であるのかも知れない。そして、暇さえあれば整理をしている人間と思われている可能性が高い。

そう思って頂くのは光栄であるが、実際はその反対で、かなりの怠け者であり、できるだけ手抜きを考えている人間である。真実を知っている家内などは整理魔と言われたのを知ると、カラカラと笑い出してしまう。実際は常に手抜きを考え、できるだけ整理をしないからこそ、整理ができるという逆説的な整理をしている。

そこで私流整理法なるものをご披露しようと思う。ベストセラーになった野口悠紀雄氏の「超」整理法から比べると、私の整理法などはさしずめ(超々)整理法、もっと正確にはずぼら整理法とでも名乗るべき代物であろう。

その前に一言お断りをしておく。整理するデータを大別して、日常診療に使う患者データなど迅速確実な整理が必要ないわゆる業務用データと、将来、整理が必要となるかもしれないデータ、いわば趣味的データに分けることができる。ここで(超々)整理法としてご披露するのは、もちろん後の趣味的データの整理を指す。

業務用データは、かっちり整理しておかなければならないが、整理のための収納場所や整理の仕方のルーティーンを自分で決めた上で、実際の整理は職員や家内などにまかせ、私自身はタッチしない。この整理法については、野村医院二十年史に詳述したが、その要点を6.日常診療に使う業務用データの整理の項で触れておいた。

また、業務用データ趣味的データに関わらず、その処理に絶大な威力を発揮するのがコンピュータによるデータ処理である。この部分に関しても項を別に設けた。7.デジタル・データの整理がそれである。


1.不要なものは捨て、仮置き場に置く

不要なものを捨てるというのは整理の基本中の基本で、何の変哲もない。しかし、これをしなければ見ている間にデータは山をなす。そこで問題は捨てる基準になるが、自分のまとめたいと思うテーマ(キーワード)に合うものと、自分に関係したものだけを残し、他は捨ててしまう。雑誌類は、一部のページだけを抜き取り、残りを捨てることもよく行う。

自分に関係したデータとは、例えば私宛に届いた個人的な手紙類や、自分が書いた雑文、論文、設計図その他の自作のものを指す。これらは整理をしないでおくことが多いが、決して捨てることはしない。この点は少し他の人と違っている可能性がある。

残すことにしたデータも、面倒だから、しばらくはその場に置いておく。その場というのは食卓の上、診察机の前、検査机の付近、寝室の枕元がほとんどで、要するにデータを見て、捨てるものと残すものにふるい分けた場所である。

その仮置き場のデータが見苦しいほど一杯になると、暇な時を見つけて次に述べる決めた置き場所に移動させる。この時期は、妻の堪忍袋が破れそうな気配を察した時というのが正解で、時には手後れになり、痛い目に会うこともしばしば経験する。


2.決めた場所に置く

決めた場所に置くことがずぼら整理法の要点であるが、そんなに大層ものではなく、この系統はどの部屋のどのあたりに置いてあるか見当が付くという程度の大雑把な配置場所である。

まず部屋を分けることから述べると、その第1は医院内の部屋で、5つの部屋があるが、ここを大まかに分け診療に関係するものを置く。しかし、パソコン関係の一部とFAX関係はこの中の検査机周辺に置くことにしている。もう一つは寝室で、最後は書庫である。

それぞれの部屋には、いくつかのタイプの収納用空間がある。一つはスチールまたは木製の棚、もう一つはプラスチック製引き出し、そして最後は床からの積み重ねの3つに大別できる。棚は大まかなグループ分けをしてあり、本や雑誌類が中心になる。

プラスチック製引き出しは、やや細かくグループ分けをしてあり、先に述べた雑誌の抜き取りページや、薄いパンフレット程度までの書類が中心になる。最後の床からの積み重ねは、決まった雑誌を寝室の隅の壁際に置くのを除くと、書庫内に整理をしないまま積み重ねていく場合がこれに当てはまる。

収納用空間としてプラスチック製引き出しを多用するのが、収納用具から見た私の整理法の特徴かもしれない。今ざっと数えてみると、診察机の直ぐ手の届く範囲には20個あり、検査机の周辺には50個ある。これが業務用の引き出しになると、受付けに430個のカルテケースを天井まで積み上げている。

最後の書庫内の積み重ねは、捨てるものと残すものにふるい分けた仮置き場から移動させただけなので、整理とは言えず、良く言って「整頓」、実態は「ボロ隠し」である。しかし、この「整頓」「ボロ隠し」が整理をする上で意外と大事であり、整理を長続きさせるコツの一つだと思っている。

「ボロ隠し」を整理の前段階として行うのでなく、額面通りに行うこともたまにある。不意の来客のある時がその大半であるが、この時、私は目にも止まらぬスピードでこの「ボロ隠し」作業を行う。ボロの移動先は寝室で、ここに放り込んでしまうと、食堂も診察室も整頓された美しい場所に早変わりし、お客は整頓された状態にだまされて感心してお帰りになる。

この私の早業を何回か経験した後、「仮置き場」の乱雑に対して妻も少し寛容になり、私の(超々)整理法が日の目を見ることになったのである。大事業を成功させるには、この程度の融通と努力を惜しんではならない。

この3タイプの収納の内で、プラスチックの引き出しに収めるデータは、入っている上に新しいものを放り込んでいくだけ、寝室内の雑誌の積み上げも新しいものを上に載せていくだけ、棚の書類や雑誌も積み重ねる場合は古いものの上に新しいものを重ねていくだけである。この下から上へ重ねていく方式は、期せずして、時系列的配列を行っていることになる。本の場合は積み重ねることをせず、立てて並べるが、この場合は隙間を見て適当に置くだけなので時系列的には並ばない。

余談になるが、部屋の中をできるだけ広く収納用空間のために使うコツは、壁面を活用することで、例えば書庫の場合、床から天井までの全面に棚をつけている。

以上、データを移動させて「決めた場所に置く」ことについて述べたが、業務用データの場合は最初から決めた場所に置くことにしている。カルテはもちろん、例えば「診察申し込み書」は名刺の大きさにしてあるため、これを名刺フォルダに日付順に収納していく。死亡診断書の控えも日付順にファイルして行く。他院への患者の紹介状の写し、紹介状の返信はいずれも診察机横のプラスチック製引き出しに投げ込んでいく、などである。


3.必要になるまで分類しない

決めた場所に置いたデータは、そのデータを整理して活用しなければならない時がくるまで、そのまま手を付けず、大雑把な配置だけにしておく。これが図書館方式との根本的違いであり、整理を永続させる秘訣である。最初から細かい分類をしておいて、そこへデータを収納していくといった図書館方式の整理をしようとすると、私のようなサボリ人間の場合必ず投げ出してしまい、あとは空しい気持だけが残ることになる。

その代り、あるテーマ、目的でまとめなければならない時には、関係しそうな置き場所全部から、重点的集中的にデータを取り出して整理をする。この時には引き出しが新しい分類によって再編成されることも多い。この場合の新しい分類も、必要最低限にしておき、詳細な分類や配列は行わない。アバウトな整理が成功の秘訣である。

パソコンを使ってデータをデジタル化した場合のデータ整理は後で述べる7.デジタル・データの整理の方法を使う。


4.たまり過ぎたデータは捨てるか別の場所へ移動させる

大雑把に配置したデータも、放置しておくと間もなく一杯になり、見苦しくなるだけではなく、物理的にも収納しきれなくなる。そこで、時々必要度の少ないデータを捨て、残しておきたいデータを他の場所に移動させることになる。

捨てる場合の選別の基準は、医学関係の雑誌は3年、パソコンやビデオ関係の雑誌は2年としているが、もちろん残しておきたい内容のものはその限りではない。単行本にはそれほどはっきりした基準は作っていないが、内容が陳腐になったもの、将来役立ちそうでないものはどんどん捨てていく。

引き出しに入れた雑誌の引き抜きページやパンフレットなどの書類は、引き出しから一旦全部を取り出して、底にあったものが最上に来るように裏返して置き、先の基準で処分していく。一方、捨てることのできない大切なデータは、古いものから順に別の保管場所に移動させる。

結局、一番手の届きやすい場所に重要なデータや新しいデータがあり、最新データが一番上に来るように日付順(時系列順)にデータを置くことが基本になっている。


5.時系列とグループ分けが整理の基本

時系列というのは自然が与えてくれた最も普遍性のある検索キーである。これを利用しない手はない。また、グループ分けは人間の叡智を示す象徴的な能力であると思う。現実に対応して、いかにうまくグループ分けをするかということが、問題解決に重要な役割を果たすことをしばしば経験する。この二つの因子の組み合わせを、いろいろ使い分けることが、データ整理をうまく行う秘訣ではないかと思っている。

例えば、厳密で細かなグループ分けと一定の時系列の組み合わせによる整理が望まれるのは、カルテとかX線などの検査データなどを挙げることができる。一方、厳密で細かなグループ分けでありながら、時系列は余り問題にしない場合の整理として例えば疾病分類がある。かっては、この図書館方式の整理法がデータ整理の本道とされてきたために、それを試みた多くの者が悪戦苦闘の末、戦いに破れ、虚無感を抱くようになった忌まわしい整理法である。

それに対して、今回ご紹介をした(超々)整理法は、大雑把なグループ分けと、新しいデータを上に載せていくという最も簡単な時系列的配列との組み合わせであり、実用的である。

グループ分けをうまく行うコツの一つは、自分に関係したデータを特別扱いすることだと思う。何故なら、人は誰も自分に結びつくデータを大切に思い、それに関連をつけて他のデータを考える傾向が強いからである。 


6.日常診療に使う業務用データの整理

日常診療に使う患者データは業務用データで迅速確実な整理が必要であり、法律的にも規制されている。そのため、今まで述べたような、将来使う可能性があるという「趣味的データ」とは全く異なる性格のものである。この業務用データ整理の詳細は、1993年に出版した「野村医院20年史」で述べたが、ここにはその要点だけを書き留めておく。

 1)受付事務員が簡単に決めることのできる患者ID番号を採用する。
 2)そのID番号でカルテやX線検査データなどを統一する。
 3)同一ID番号のカルテやX線検査データは時系列順に並べる。
 4)それぞれの収納場所を決め、事務員全員に保管や取り出し作業をさせる。
 5)レセプトコンピュータを窓口会計に使い、事務員全員に入力させる。
 7)レセコンを使った集計などの少し難しい処理は私がする。
 8)経理関係のデータはパソコンの表計算ソフトを使って私が処理をする。


7.デジタル・データの整理

コンピュータを使ったデータ整理も、日常診療に使う患者データなどのように迅速確実な整理が必要なデータ、いわゆる業務用データと、将来、整理が必要となるかもしれないデータ、いわば趣味的データに分けることができる。ここでご披露するのは後の方で、パソコンを使って整理をしている。先の「業務用データ」の方は大部分をレセプトコンピュータで処理しているが、ここでは省略する。

パソコンによるデータ整理も、大筋では一般のデータ整理と似た方法である。昨年からWindowsマシーンを使っているが、それまでは10年以上DOSマシーンを使ってきた。現在は両方を使い分けているが、WindowsはDOSから発展したものなので、データ構成がほぼ同じであり、とまどうことが少ない。

パソコンでは個々のデータを集めた最小単位をファイルと呼び、ファイルを収納する単位をディレクトリあるいはフォルダと呼ぶ。フォルダというのはWindows 95から使われるようになった言葉で、それまではディレクトリと呼ばれてきた。Macでは最初からこのように呼ばれている。

DOSマシーンではFDなどのファイル処理ソフト(ファイラーという)を使ってデータ整理を行うが、Windows 95では、ファイラーの一種であるエクスプローラが最初から組み込まれている上、デスクトップやショートカットという便利な機能が付いているので、データ処理はよりし易くなった。

フォルダ(ディレクトリ)は、一般のデータ整理のところで述べた部屋とか引き出しのような収納空間に相当する。このフォルダを大雑把に、分かりやすい名称で作り、余りこと細かに分類をしてしまわないのが、デジタルデータの整理の場合も大切である。

私は、Windowsマシーンの画面を640×480のサイズで使っているが、データ用のフォルダはデスクトップに約15個作り、それを更に細分する必要があれば、それぞれの「フォルダ」の中にいくつかのフォルダを入れている。

DOSマシーンは98なので640×400のサイズの画面であるが、ルート・ディレクトリに約15個のサブ・ディレクトリを作り、それぞれのディレクトリの下に更にいくつかのサブ・ディレクトリを作っている。

つまり、いずれの場合もデジタルデータを大雑把に約15種類に分け、その後必要に応じて細分している。ただし、現在のパソコンは並べ替えや検索機能が充実しているので、あまり細かく分類する必要はない。

Windowsマシーンの場合、私が1.不要なものは捨てるのところで述べた「データを見て、捨てるものと残すものにふるい分ける場所」がデスクトップであり、仮置き場はデスクトップ上に作ったTEMPというフォルダである。 パソコン上では、データの移動が呆れるほど簡単なので、決めた置き場所に相当するデスクトップ上の決められたフォルダに、その場で移す場合の方が多い。

しかし、それが面倒な時や新しい分類を決めるまでの間は、TEMPというフォルダに一時保管をさせておく。デスクトップの上は作業が終れば、見てくれよく整頓しておくようにしているが、その時のボロ隠しの場所がTEMPフォルダであるとも言える。

パソコンがデータ処理の面で優れている理由の一つは、ファイルやフォルダを自由に、しかも簡単に移動させることができ、コピーや削除も簡単に行えることだと思う。二つ目の理由は、フォルダを開くと、ウィンドウ内に収められたデータ(ファイル)を更新日時順(時系列順)で正逆2通りに並べ替えることが簡単にできることで、他にも名前順、ファイルの種類順、ファイルの大きさ順に正逆2通りの並べ替えが一瞬にして行える。

この並べ替え(ソート)という簡単な操作だけで、かなりのデータ整理が可能になる。普通は最新のデータ(ファイル)が最上段に来るように、更新日時順にデータ(ファイル)を並べる設定にして置くのが実用的であろう。ここでも、一般のデータ整理のところで述べた、一番手の届きやすい場所に重要なデータや新しいデータがあり、最新のデータが一番上に来るように日付順(時系列順)にデータを置くが基本になっている。

パソコンがデータ処理の面で優れている三つ目の理由は、検索機能が充実していることである、迷子になったデータ(ファイル)を大海の中から見つけ出すことも容易で、名前の一部から、あるいは日付からファイルを見つけることもできれば、ある文字列を含んだテキスト文書を探し出すこともできる。これらの「並べ替え」や「検索」機能はWindows 95に標準装備された機能であるが、これだけでもかなりの整理分類が可能である。

もう少し高度の整理をする必要がある場合は、表計算ソフトを使う。これまではDOSマシーンだったので、スーパーカルク3ロータス1-2-3を使って来たが、これからは、Windowsの標準であるエクセルに移らざるを得ないのではないかと思っている。画像データの整理はWindowsマシーンになってからSusieという高級なフリーウエアが使えるので、専らこれに頼っている。

ある文字列を含むファイルを検索し、そのファイルの文字列の記載されている個所を呼び出すような高度な検索をする場合、グローバル検索のできるソフトを使うが、私はDOS時代から使っているMifesというエディターを利用している。

パソコンに収められたデータは非常に整理し易いが、ハードディスクがクラッシュしたり、何らかの操作ミスによって、データを完全に失ってしまう危険も伴うことを常に念頭に置き、データファイルだけはバックアップをとる習慣が必要である。

バックアップをとる最も簡単な媒体(メディア)はフロッピーディスクであるが、他にMOとかCD−Rなども使われている。フロッピーディスクで「バックアップ」を行うと、枚数が増えていくので、この整理も重要になってくる。それには、ラベルに簡単な中身の名前と日付を書いておくだけでも整理がしやすくなる。

自分に関係するデータを大切にして、それに関連付けて他のデータも整理するというやり方は、パソコンを使ったデータ整理の場合により有用である。というのは、自分が関係したデータは思い入れも強く、記憶に残っていることが多い。そこでそのデータを参照したり、再利用する機会が多くなるが、パソコンを使うとそれをいとも簡単に実行することができるからである。

先にパソコンの利点を三つ上げたが、デジタルデータであるために精度を落とすことなくそのデータを再利用できることが、それ以上に有用だと思う。 


8.データ整理法の変遷

私がデータの整理に関心を持ち、いろいろ試みるようになったのは、昭和40年(65年)頃からだと思う。今手元に残っている整理に関する文献を調べてみると、平山健三氏の「知識の整理」という本には無数に赤線が引いてある。この本によって私は本格的な情報整理学ドクメンテーションなるものを知った。これは図書館的整理法を説いたもので、その検索方法はパンチカードであった。

その頃、阪大医学部に麻酔科が新設され、私は第一外科からそこへ3ヵ月間ローテートさせられた。この新設麻酔科では症例のサマリーをパンチカードに記録していたので、パンチカードの非能率性、費用対効用比の悪さを体験することができた。

そのおかげで、これは使い物にならないと判断し、既にその頃使い始めていたパンチカードをきっぱりと捨ててしまうことができた。この時に覚えたソートという概念だけは、パソコンを始めて、MS-DOSやデータベース・表計算ソフトで繁用することになり役立った。

「パンチカード」を使うのは止めたが、図書館的整理法の呪文からは長い間解放されなかった。ちょうどその頃ゼロックスが普及しはじめ、大学ではコピーをとることが簡単にできるようになった。私は、医局や図書館の医学雑誌を片っ端からコピーし、それをファイルに閉じる方法で分類していった。分類に工夫をこらし、薄給の身でありながら、学生アルバイトに整理を頼んだこともあった。

昭和44年(69年)に、梅棹忠夫氏の知的生産の技術が出版され、京大型カード方式が一世を風靡すると、私もこれに似た方法でサマリーをカードに書いて整理する方式を併用するようになった。私のカードは京大型カード(B6判)より1周り小さいA6判の、バインダーで整理する形式で、丸善からマルゼン文献カードという名前で出ていた。

翌昭和45(70年)年には、川勝 久氏の情報整理学が出版され、当時の最新ツールを使った整理法が紹介されたが、道具が変わるだけで整理に対する考えは根本的に同じだった。

以来、大学を辞める昭和46年(71年)まで、このファイルとカードによる文献分類整理が続くのであるが、これは労多くして効少ない方法であるだけではなく、整理すること自体が目的になってしまう危険性も出てきた。これでは本末転倒である。

当時の大学の患者データ(カルテなど)は、管理が年単位で行われ、同一患者でありながらカルテ番号は年度毎で全て違い、個人としての一貫性がないという欠陥があった。そのため学会に発表するデータをまとめようとしてカルテを選び出す場合には、途方もない時間と労力が必要となり、しかもデータの欠損が避けられない整理法であった。

昭和46年(71年)に大学を辞め、開業の準備に入ったが、家庭医として診療をしていく上で、このようなデータ管理では駄目だと判断し、患者のID番号を決め、データを全て時系列順に並べることにした。メイスン・バルグレン両氏の医学における電子計算機の応用などを読み、診療にコンピュータを活用したいと常々思ってきたので、ID番号を取り入れることは、その面からも必須の条件であった。

この開業準備の頃から、昭和48年(73年)現在地で開業をするまでの間に、データ整理に対する考え方は根本的に変わり、現在のスタイルに移行して行った。

その一つは、業務用データ趣味的データに分け、業務用データは迅速確実にデータ処理をするシステムを自分が作り、その作業を職員や妻に担当させる、趣味的データは他人に触らせないが、その代わりできるだけ手抜きをする、つまり、いずれにしても自分の整理に要する時間と労力を可能な限り少なくするという方式である。

二つ目は、データ収納用具としてプラスチック製引き出しを最大限に採用したことで、例えば、診療受付けの部屋に430個のカルテケースを、診察机のそばに20個、検査机の周辺には50個を置いて活用してきた。

三つ目は、データの置き場所について、業務用データの場合、職員の誰もが間違いなく取り出したり収納できる場所を決めておくが、一方趣味的データの方は、大雑把にグループ分けした保管場所に、大雑把に置いておき、その場所が満杯になれば捨てるか、別の場所に移動させる方式を採用した。

四つ目は、業務用データ趣味的データに関わらず、データを時系列順に配列することを最大限に活用してきたこと。

最後は、コンピュータを活用することで、業務用データの処理には主にレセプトコンピュータというオフコンを使い、趣味的データの処理には専らパソコンを使っている。オフコンは開業の翌年、今から23年前から、またパソコンは12年前から使ってきた。


あとがき

整理法をまとめてみようという気になったのは、2、3の人から整理魔と言われたことがきっかけである。整理魔という言葉には、絶えず分類、整理をしている人というイメージが結びつく。「ところが、違うんだな! 整理をさぼるから、整理ができるんだけどな!」という思いに駆られて、「一度ホームページでご紹介してみようかと思ったりします」とメールに書いてしまったのである。

書き始めてみると、いつものようにまとめるのが面白くなり、はじめに思ったよりも長文になった。しかし、そのお陰で自分の整理法をかなり整理することができた。そのきっかけを与えて下さった T先生と I先生ご夫妻に対して感謝の気持を捧げる。

現在の整理法に落ち着いたのは、私が実利的な人間で、役に立つ方法を選択する傾向があり、またサボリ人間であるため、手抜きをしても効果の変わらない方法、言い換えるとcost effectivenes の高い方法を大切に思ってきたことによるのだろうと思う。

また、これほど整理にこだわってきた理由は何なのかと自問してみて、データを使って何かをまとめたいという目的が常にあった、ということに行き着いた。私のしたいことは、こどもの頃から何かを作ることだった。何かをまとめる、構築するということは、その中でも最もしたいことである。

整理にこだわってきたもう一つの理由は、大学受験勉強の中で身につけたよく整理された10の知識は未整理の100の知識に勝るという経験則を持っているからである。

タイトルが(超々)整理法であるから、データ整理をいかにうまく行うかについて述べてきた。しかし、整理法は、埋もれているデータの中から有用なデーを見つけ出すために存在価値があるのであり、いくら整理法が良くても、元のデータが屑であれば、結果も屑である。間違ったデータをどれほど上手く整理しても、結果としては間違いしか出てこない。そのような屑のデータの整理を行うのは、時間と労力の浪費である。だから、整理法にうつつを抜かすより、有用なデータを集めることに力を注ぐ方がより大切であることを、肝に銘じておきたい。

この整理法については心に生きることば第5章:情報 04<情報の整理>2002.9.3.にも掲載している。また、その具体例として、15年間のメールの整理保存 2010.11.03.の記事を載せている。


参考文献

 1.平山 健三「知識の整理」南江堂 1965年
 2.メイスン・バルグレン「医学における電子計算機の応用」
        (高橋・堂前・宮原訳) 東京大学出版会 1966年
 3.梅棹 忠夫「知的生産の技術」岩波書店 1969年
 4.川勝  久「情報整理学」ダイヤモンド社 1970年
 5.野村  望「野村医院20年史」 野村医院 1993年
 6.野口悠紀雄「「超」整理法」中央公論社 1993年
 7.野村  望「私のカルテ整理法」日経メディカル6月号 1994年
 8.野村  望「内科開業20年間における紹介患者の分析」 大阪医学 1995年
 9.野村  望「還暦まで」 野村医院 1996年
10.野村  望「パソコン物語」 野村医院 1997年


<1997.12.9.>

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