そもそも倒産とは何か

 一般的に倒産というと、記者会見か何かを開いて
「もうお手上げ〜・゜・(ノД`)・゜・」
と社長がギブアップ宣言した時点で倒産が確定したというイメージがある。が、会社が破産したと宣告するのは社長でも株主でもなく、裁判所なのである。記者会見での発表は、あくまでも倒産を周知させるためのセレモニーでしかない。となるとセレモニーに至るプロセスが存在する。そのプロセスをみると、ツール王国の社員には気の毒としか言いようがない部分がみえてくる。


 万策尽きてどうにもならなくなったときの手続きには大きく分けて3つある。民事再生、会社更正、自己破産だ。民事再生、会社更正ならば再建の道があるが、自己破産にはそれがない。言い方を換えると、再建できないと判断したから自己破産を選択したと言える。ツール王国の場合は、顧客と債権者にとって最悪の選択をしたのだ。
 自己破産するためには、裁判所に「破産手続開始申立て」をしなければならない。申し立てにはエイシンの取締役会での決議が必要であり、債権者一覧表や売掛先・売掛金一覧表、資産一覧表などの各種書類を裁判所に提出する必要がある。これらの書類をもとに裁判所が破産を決定し、同時に破産管財人を選任してようやく破産となる。
 これを読んでいただければおわかりの通り、破産するにはいろいろな手続きが必要なわけだからそれなりに時間がかかる。一概には言えないが、2008年2月終わりには「破産手続開始申立て」が行われたのではないか。しかもこの申し立てを知っているのは会社内でもごくわずかの人間だけである。倒産すると知っていて働く人間と、知る由もなく働く人間。再建の道があるのなら、その1ヶ月の仕事は無駄にはならないだろう。しかし、もう再建の道はないとすると従業員にとっては単なる無駄骨でしかない。もっと素早く手続きできなかったのかと思われるかもしれないが、経営者側は正規の手続きを踏んだ上での対応であるからどうしようもない。責められるべきは、民事再生などができないほどに財務内容を悪化させた点だ。
 前述の通り、ツール王国の社員は死ぬ直前までやる気満々だった。また驚くべき事に、自己破産から4日経過した2008年3月28日(金)に私の手元に最新のカタログが到着した。死人から手紙がやって来た気持ちとはこういうものなのか。彼らは本当に死ぬ直前までやる気満々だったのだ。



未開封の最新カタログ


 もう気の毒としかいいようがない。何が倒産の原因になったのか、現時点で資料が手元にないため皆目わからない(想像はつくが)・・・