【12月8日(水)】


 ミステリー忘年会@恵比須ガーデンプレイス。
 試写で「ブギーポップ」を見てきたという柳下毅一郎に文句を言われる。
「普通の脚本家なら、この原作を渡されたら話をバラして時系列にそって再構成するはずである」って、それじゃ全然つまんないでしょ。視点人物の知らないところでいつまにか話が終わっちゃうところに新鮮なサプライズがあるんだってば。
 これは、「主人公のいない場所で重要な事件はなにひとつ起きない」という、最近のハリウッド映画的な脚本に対するアンチテーゼでもある。なにが起きたのかを最後まで見せないでいればもっとかっこいい映画になっただろうが、まあそれは無理でしょう。宮下藤花の「2年後」にも驚いたし、黒須麻耶はかっこいいし、それでじゅうぶんじゃん。
 とか劇場でまだ見られない映画についてあれこれ言うのもむなしいなり。テレ東と共同でアニメの1話と二本立てにしてプギーポップ祭りとかやればいいのに。
 しかし柳下は原作を全巻一気読みしたらしい。意外とマメ。

 M村嬢@本の雑誌は、『宇宙消失』を読破した勢いで『順列都市』を読もうとしたら、大森や鏡さんが「小説としてはダメ」と言うので気力が萎えているらしい。『マトリックス』→『仮想空間計画』→『順列都市』というコースが順列的でしょうか。どのぐらい読みにくいのかはよくわからない。

 西上心太氏は自宅兼店舗に押し入ってきたアジア系の覆面強盗三人組(ナイフ持ち)と格闘して撃退したらしい(一部フィクションが含まれています)。警察がやってきたあとで確認すると、着ていたトレーナーの背中の一部がすっぱり切れていたそうである(というのはホント。しまった、「格闘して撃退」と整合性がない記述だ)。
 教訓:覆面のたたりはおそろしい。または、「覆面を見たら強盗と思え」。

 夏来健次氏は茶木則雄氏に新しい名刺を手渡した模様。茶木さんは夏来さんと目を合わせようとしなかったらしい。「わたしなんかはまともに相手をしてもらえないんです」と語る夏来健次だが、それはかなりニュアンスが違うと思う。

 当日記ミステリチャンネル座談会収録後のエピソードについて、ある登場人物の存在を秘匿しているため叙述トリックになっているとの指摘を受ける。あのときあそこには川出正樹氏@逆密室も同席していたという事実をあらためて記録にとどめておく。我孫子武丸の悪口を彼がひとりで言いまくっていたという意味ではないので誤解しないように。

 酒井昭伸氏が来てたので、『ハイペリオンの覚醒』について少々。自分の読み方の正否のチェック。ちなみに総枚数は2150枚だそうで、オレの計算と激しく違うのはなぜ。そんなに改行多くないのに。

 池林房の3次会はパスして帰宅、まじめに《本の雑誌》の原稿を仕上げる。年末進行締切に一週間遅れだがなんとかゲラの出るタイミング。

 目先の原稿がかたづいたので、松岡圭祐原作、落合正幸監督の『催眠』を見る。宇津井健のおかげもあって、往年の大映ドラマのよう。TV的いかがわしさはよく出ていて、テーマにはふさわしい。もうちょっとで傑作になったかも。

 アンゲロプロスの『永遠と一日』は、バスのシーンとかいかにもな感じ。ふつう、年をとるとこういう映画がよく見えてくるんだと思うけど、オレの場合は逆だな。昔は好きだったのに最近はもう耐えられない。絵はきれいなんだけど(海辺の色彩設計とか)、リズムがのんびりすぎる〜。それとも無意識が老人映画に拒否反応を示しているのか? アニメばっかり見てて成熟を拒否する三十代? 高畑先生のいうとおりかもね。




【12月9日(木)】


 アラン・スミシーが監督してないほうの『ジョー・ブラックをよろしく』。長い。長すぎる。中盤がのばしすぎ。しかし弱点をつかれてしまったのだった。
『恋におちたシェイクスピア』も、トム・ストッパードの臆面もないメタシアター趣向がTV的メロドラマにうまくハマってて、それなりに楽しく見られる。シェイクスピア的要素はだいたい拾ってるんだけど、地口が足りませんね。オレが聞きとれてないだけ?

 渡辺武『なで肩の狐』、主演の椎名桔平は悪くない。哀川翔は悪い人役。椎名桔平に携帯電話をわたし、位置情報サービス使ったソフト(携帯でできるんだっけ?)で相手の場所を確認するんだけど、哀川翔のノートパソコンをぶんどったヤクザの下っ端が、すかさず「最近使ったファイル」を開いてそのソフトを起動し、椎名桔平の居場所を知る――っていうのが笑えました。全体的にはまずまずの出来。

 相米慎治『あ、春』は、死んだと思っていた迷惑な親父(山崎努)が帰ってくる「父帰る」話。さすがに手堅い。佐藤浩市、斎藤由紀、富司純子と役者も堅実。

『ベルベット・ゴールドマイン』は市民ケーン・スタイルがちょっと。部分的には面白いんだけど、こういう映画ってなんか全然反応しない。




【12月10日(金)】


 三池崇史『日本黒社会』は、冒頭のロケ地が『DOA』の冒頭と同じ。いや、こんな風景見つけたらまた使いたくなる気持ちはわかるけど。じっさい、人間関係も設定も、ついでにラーメンつながりも、『DOA』の姉妹篇(というか前篇)みたいな感じ。勢いでは『DOA』に一歩譲るけど、歌舞伎町映画としては最高の仕上がり。コマ劇場半径300メートル内でほとんどの話が進行するのでは。商業映画史上たぶん最短のエンドクレジットは必見。

 安藤尋『さらば極道』は、根津甚八と哀川翔の顔合わせ。可もなく不可もなくってとこですか。

 ……と、二週間で36本見たところで時間切れ。自信をもってベストテン選ぶにはあと20本ぐらい足りない気がするがまあしょうがない。後半、邦画にシフトしたおかげで洋画がけっこう情けないことになってしまったなり。




【12月11日(土)】


 朝方、週刊現代の『エンディミオンの覚醒』書評を書き上げ、徹夜で黎会・宇宙塵の合同忘年会@六本木。いつものように午前11時スタート。いやあ、あれからもう一年たったのか。なんかあっという間だったような。例年どおり食事のあとはアマンド、それからカラオケ。
 キャサリン・アサロのどこがいいのか山岸真を問いただすも、納得できる回答はなし(って柳下みたいだな(笑))。ビジョルド『バラヤー!』の原稿はとっくの昔に入ってるんだそうで、創元SF文庫はとっとと本を出すように。

 7時ごろ帰宅して寝ようと思ったが、Jリーグのチャンピオンシップがはじまってしまう。ジュビロ先制、アレックス退場、沢登FKの5分間は壮絶でしたね。しかしPKで外国人二人がはずすとは。清水の優勝で大団円のはずが、アンチクライマックスな結果。




【12月12日(日)】


 先週につづいてUEFAチャンピオンズ・リーグをつい見てしまう。バイエルン・ミュンヘン×ディナモ・キエフ。マテウスはまだがんばってるのか。アメリカ移籍をちょっと待ってくれとか言われているらしい。さすがドイツ。試合はキエフが開始早々に一点プレゼントしちゃったのであまり盛り上がらない。やっぱキエフが先制してバイエルンが追いかけないと。リスタートからしか点が入らない試合は、中継で見なくてもいい気が。



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