【11月23日(火)】



 15:30、新宿シアター・モリエールで、劇団てぃんか〜べるの公演『魍魎の匣』。去年の公演はうっかりしてて見損ねたから、『東の海神 西の滄海』以来ですね。

 業界系の観劇組は、原作者の京極夏彦、新婚の山口雅也夫妻、てぃんか〜べるとは原作提供で縁の深い井上夢人氏、講談社文三のU山部長夫妻とK木さん、C嬢@集英社、それに関口巽のモデルになったS戸さんと、榎木津下僕二号・益田くん(バカオロカ)のモデルであるところのM山くん。芝居がハネたあと、このモデルコンビが果てしなく活躍することになるのだが、このときの大森はまだ知る由もないのだった。

 芝居のほうは、原作にきわめて忠実なつくり。加菜子(石川亜美)の「ほう」もちゃんとありました。前半は、暗転また暗転で細かくシーンをつないでるのでちょっとつらいが、休憩後、御筥様対決から美馬坂対決へと向かうあたりは怒濤の展開。荻須夜羽さんの中禅寺、後谷智弥さんの榎木津と、メインキャラふたりは雰囲気的に原作のイメージとばっちりで、セリフ、立ち居振る舞いともに再現性が高い。陵陵(みささぎ・りょう)さんの里村は飛び道具(笑)。オレ的にはかなりポイント高かったな。
 敦子(杏もとみ)とキャラがかぶるせいか、鳥口くんが削られちゃったのは残念ですが、どうせなら杏さんが敦子になったり鳥口くんになったりするエピソード1的な(笑)演出でもよかったかも。
 その分、ふつうのひとキャラで活躍してたのが、青木文蔵役の迫水由季嬢。原作だとそんなに印象なかったんだけど、木場修(速水沙里)×文蔵の掛け合いはキャラ立ってました。
 亜美ちゃんの加菜子は儲け役。宝珠千琴さんの頼子は……さすがに中学生には……以下略。樫村忠之助さんの関口は、まあこれしかないっていうハマり役。榎木津、中禅寺の関口いじめは異様にウケてましたね。まあ全体に暗い話なので、そのへんがコミックリリーフになるのは当然か。
 ミステリ的にはキモになる加菜子消失場面の演出があっさりしすぎて物足りないとか、いくつか不満はあるものの、複数のプロットが錯綜するあの長大な原作をここまでまとめあげたのは立派。客演のキャストのがんばりもあって、てぃんか〜べるの芝居の中でも力の入った舞台になってたんじゃないでしょうか。

 終了後は、K木さんの素早い手配で近くのイタ飯屋に入り、2時間ほど歓談。すでにマスダくん(仮名)は全開状態。
「ボクは青木刑事ですね、なんと言っても。え? 大森さん、青木刑事と知り合いなんですか? 紹介してくださいよー。ぜひ。いいなあ、青木刑事」
 作中よりさらにノリが軽いのは榎木津がいないせいか。冷ややかな目でそれを見守り、ときどき「いいかげんにしたまえ」と注意する京極堂(仮名)。おとなしく隅にすわって、ときどき気弱にコメントする関口氏(仮名)。
 最近、リアルワールドでは関口と益田が急接近して、いっしょに映画(『御法度』)を見に行ったりしてるんだそうで、
「いや、ふたりで盛り上がっちゃって、帰りにもうちょっとでホテルに入るところでしたよ。満室でよかったけど」とか言い放つ益田君(真偽不明)。『百器徒然袋』にもそのへんが反映しているらしい。ちょうど『百器』を読んでる最中だったので爆笑でした。
 京極さんもふだん業界関係者と同席してるときは「京極夏彦」なんだけど、まわりに薔薇十字団な人がいるといきなり京極堂になっちゃうからポイント高いっす。あとは榎木津が見たい。
 その『百器』にC嬢がサインもらってて、「御祓済」のハンコが「御笑種」に変わってるのを発見。
「これにサインするのはまだ二人目です」とか京極堂(仮名)が言ってるので、ついでに三人目のサインをしてもらったら、「大森わるもの望様」とか書かれてしまってすでに売り物になりません。ちぇ。

 そうこうするうちに9時半になり、てぃんか〜べるの打ち上げ会場へ。劇団関係者がまだきてなくて、作家組は奥の方にかたまってたんですが、すっかり取材モードに突入した大森は、作家組と離れ、関口氏(仮名)に薔薇十字団の真実を根ほり葉ほり質問する。京極堂(仮名)高校入学当時のエピソードとか、いいネタをがんがん仕入れたが、もったいないのでひみつ。
 もっとも京極堂(仮名)は、離れた席でそれを見ながら、
「いや、彼は記憶力ゼロですからね。なんにも覚えてませんよ。なにをしゃべっても全然心配ない。だいたいまともにコミュニケーションとれないんだから」とすっかり中禅寺状態。
 京極堂方面をちらちら窺いながら、マスダくんが、
「榎木津の人に、『薔薇十字団というのがあるんだが、きみも入るかね』といきなり言われて……」
 とかしゃべってると、京極堂(仮名)が一言。
「僕はそんないかがわしい団に入った覚えはないっ!」
「わっ、小説のセリフといっしょだあ」と大喜びする益田くん。ナマ百器ですか、これは。
 つまりあのシリーズはほぼ実話? いやまさか(笑)。

 やがててぃんか〜べる組が合流すると、マスダくん(仮名)はさらにヒートアップ。青木刑事役の迫水嬢に名刺をわたしてアプローチするはずが、近くにすわった亜美嬢にすばやく鞍替え。猛攻撃をかけて、その一画だけ、これはどこの合コンですか状態。しかし亜美ちゃんは、「このひとへん」「先輩、助けて」とかいう対応で、すっかりアプローチに失敗した模様。
 亜美ちゃんが早々に逃げてしまうと、今度は木場修役の速水沙里さんや榎木津役の後谷智弥さんに向かって演技指導。
「本物の榎木津はもっとキレてますから。まだぶっ飛び方が足りませんね。ていうか本物の榎木津は舞台なんかにいませんよ。客席の真ん前にすわって、おまえはちがう!とか叫んでるのがエノさんですから」とか。
「木場は顔が四角いんです。あ、顔四角くするのは無理ですか。そうですかすいません。あのひと右翼ですからね、そういう感じでひとつ」とか。関口(仮名)証言によると顔の傾向としては、「若い頃の渥美清」らしい。

 二次会の終わりごろ、てぃんか〜べるに最近入ったという新人の人(たぶん佐藤あいねさん)から、
「アニメージュの大森さんのコラムでてぃんか〜べるの存在をはじめて知って、それで入ったんです」と挨拶されてびっくり。本人はそんな原稿書いたことも忘れてました。よかったんだか悪かったんだか(笑)。

 打ち上げ終了後、表で撮った記念写真がこれ。ちなみに京極堂を抱きしめてるのが益田くん(仮名)で、そのとなりが関口巽(仮名)さんです。
 ついでにその他の写真も何点か。京極×京極堂のツーショットとか、このページを見ている益田くんのために特に用意した木場修×青木文蔵やおい系ツーショットとか。亜美ちゃんファンのために、匣の中の娘が外に出たところも。匣は舞台で使用されたものです。

 二次会で京極組が引き揚げ、三次会は居酒屋。芝居を見たあと帰って仕事をしていた東雅夫が召喚され、幻想的掲示板話とか。
 酔っ払った迫水嬢はかなり面白い。夜羽さんは舞台を下りてもそのまんまの迫力。後谷さんは舞台上とは全然別人でした。
 京極堂の衣裳はオートクチュール(製作費は自前)だそうで、コミケとかでコスプレしたい人に(下駄、提灯つきで)貸し出せば元がとれるのではとか。中身つきだとさらにポイントが高い。
 晴明桔梗入りの着物を着たい人はメールで交渉してみると吉。いや、ほんとに貸してくれるかどうかは知りませんが。




【11月24日(水)】


 夕方起き出したものの、寝床でだらだら原稿読んだだけでまた寝てしまう。20時間睡眠(笑)。トーレン社長も昨日から来てるんだけどまだ会ってないなり。




【11月25日(木)】


 社長が来てるのでプロテウス仕事。あいかわらずだらだらしているので原稿が書けない。

「今、そこにいる僕」を二週分まとめて見る。サラ脱出場面は壮絶。『OUT』よりリアルかも。TVアニメ史上に残る表現――というか、すでにTVアニメではない。WOWOWは無法地帯なのか。いや、歴史的な傑作だと思いますけど。
 今週はついにコナンのラナ救出場面(ちがうって)ですが、ガラス一枚隔ててやっぱりカタルシスがないところが「今僕」。

「THEビッグオー」はウルトラ化が進行中。先週はメトロン星人だったし。今週はドロシーが論理的でした。峰不二子が出ると演出が東京ムービー化するような気も。三十代後半の人は必見。

 バレーボールW杯のおかげで(今日だけ)曜日まで移った『∀ガンダム』は、先週のつづき。オレの中では先週と今週はすでに「なかったこと」になってます。どうしてこういうエピソード入れるかなあ。先週なんてあまりにRPG臭い展開で怒り爆発。だいたいあの人たちは黒歴史のあいだどうやって暮らしていたのか。いや、なかったことなんだから忘れよう。
 ……とか言ってるとアサヒグラフの富野特集が届く。こ、このカバーはこわすぎる……。

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