【11月19日(金)】


 集英社三賞(《すばる》《小説すばる》新人賞、柴田錬三郎賞)の授賞パーティ@帝国ホテル。作家率が低く、知り合い率もわりと低め。
 五條瑛嬢とはひさしぶりだが、あいかわらず革ジャケットに革パンツ、胸の谷間が強調されてたり。彼女も三枝嬢の活躍をずっとウォッチしてたそうで、ひとしきりその話。発言態度と胸は似てるかもしれない。
「それ全然誉めてないじゃないですか」と言ってましたが、いや誉めてるでしょう。五條さんは「もうインターネットは飽きちゃったもん」だそうで、惜しい話である。いや、自分が管理する掲示板に来てほしいかどうかはまたべつの問題だが。

 青山南氏はようやくインターネットをはじめたらしく、「いやあ、こんなに便利だとは思いませんでした」と感心してました。アメリカ文学系の人なんか、オレよりはるかに利用価値が高そうなのに。

 奥泉光氏ともひさしぶり。C嬢がミステリを進めてるので、「そりゃやっぱりトラベルミステリでしょ」と焚きつける。内田百閧ェシリーズ探偵の南蛮阿房列車殺人事件とか。
 奥泉さんは清張の駄作の愛好家らしく、バカミステリ系のネタで盛り上がったり。

 友だちの少ない倉阪さんは、なぜか五條瑛と意気投合。ふたり並んでる姿は異彩を放ってました。そこに岩井志麻子嬢が混じるともう完璧というかなんというか。

 パーティ終了後、集英社組の二次会場に合流できず、津原・倉阪組としばらく帝国ホテル内をうろうろしてるうちに時間になり、タクシーで東京駅。最終ののぞみで京都に行って、京都ホテル泊。ツイン一泊25,000円のところ、JR東海の京都倶楽部の割引券で20%オフ、二人で20,000円はけっこうお得。新しくなってから泊まるのははじめてですが、部屋はかなりよくなってました。




【11月20日(土)】


 9時に起きて風呂に入り、タクシーで京都ホテル発。合宿場のさわや本店に荷物を置いて、10時半ごろ、京都SFフェスティバル会場の芝蘭会館に到着。ロビーでは山岸真が細井威男@京大SF研を相手に、イーガン企画の打ち合わせ中。細井くんと言えばたぶん読書日記の人なんですが(というか、わっちりんく(す)厳選SFつながり休止中の代替アンテナ、SF系日記更新時刻の管理者として重宝されている)、オフラインでいまいち要領を得ない感じは須藤玲司―浜田玲系かも。趣味的には林哲矢系だと思ったんだが。まあしかし海外SFおたくの伝統を受け継いでいる気が。
 山岸真は必死に若者の読書傾向を取材してました。きみがインタビューしてどうする。

 というわけで午前11時になり、16回目の京都SFフェスティバルが開幕。グレッグ・イーガン企画は、細井くんの質問に山岸真が回答するかたちで進行。英連邦作家たちの活躍の根っこにインターゾーンのラディカル・ハードSF振興ムーブメントを持ってくるのはいいとして、オレ的には保守反動化する米国産ハードSFへのアンチテーゼっていうイデオロギー的な側面も無視できない気が。サイバーパンクほどあからさまに左翼的ではないにしても、中心対周縁っていう図式はあるでしょう。
 イーガンに関しては、他の英連邦作家と違って、SFの上のSFをつくるとか、SFの伝統を利用するという側面が希薄だとの指摘。これはまったくその通りで、だからSF初心者にも受け入れられやすいんじゃないかとは思ってるんだけど、SF的思考の訓練がないとつらいかもしれない。この辺がよくわからないところですね。いや、ベイリーやワトスンだって読者のSF的記憶に頼る部分は少ないんだけど。
 後半は山岸真お得意のSFスキャナーに突入。未訳作品の紹介はどれも面白そうなんですが(だったら読めよ>おれ)、だんだんふつうになってるんじゃないかとちょっと心配。まあ邦訳に期待したい。

 お昼休みは、中西秀彦、志村弘之、小浜徹也と、午後イチの「活字消失」パネルの打ち合わせ。イーガンが「宇宙消失」で、ヤングアダルトが「ジャンル消失」で、急遽決まった最後のH2事故レポートが「ロケット消失」……と、今回の京フェスは消失四部作なのである。
 しかし、いま気づいたが活字消失パネルは全員京大SF研OBではないか。昼飯を食いながらざっと話をしたけれど、対立点がほぼないのであまりおもしろくない。本というのは紙を綴じたものであるとか主張する愛書家おやぢが一人ぐらい混じってないとね。
 というわけで、午後イチのパネルは、電子出版関係に興味がある人にはあたりまえの話に終始した印象がなきにしもあらず。中西さんの講演モードが炸裂するのではないかと思ってたんだけど、演説はなし。小浜徹也が、電子出版時代の(読者に対するバックリストの)「売り込み方」をしきりに気にしていたのが印象的でした。大量のバックリストをオンラインでavailableにしておけば、あとは買いたい人が買いたいものを買うだろうというのが読者サイドの考えかたなんですが、出版社的にはやはりそれじゃ不安なのか。

 三つ目の企画は、三村美衣vs喜多哲士の「ヤングアダルト総括」。中沢くん@京大SF研のネタ振りがけっこう絶妙でした。現役YA読者との読み方の違いとかをもっと突っ込めばよかったと思った。だいたい、喜多と三村美衣の読み方なんかわかってるわけで。
 去年の架空戦記のときみたいに、きっちり分類してみせるとかの芸があれば。まあしかし、企画が決まったのが一週間前だからな。
 最大のヒットは、喜多哲士の「似顔絵」発言。読者投稿イラストのことらしいが、似顔絵って……。京極堂のイラストは似顔絵なのか? 難しい問題である。

 最後の企画は、笹本祐一×野尻抱介のH2爆破現場レポート。しかし大森は、合宿企画の「クイズ歳の差なんて」の打ち合わせ(というか問題づくり)があるため、会場を抜け出し、三村美衣に中沢くんをひきつれて、下で会議。京大SF研現役がつくった年寄り向け出題はレベルが高すぎ。「でじこの必殺技は?」とか、「ダイガードのロケットパンチの動力は?」とか、知らないと答えようがない感じ。いや、それはそれでボケる余地が多くて面白かったかもしれないが……。

 東一条のクラークハウスでごはんを食べて、7時からさわやで合宿オープニング。毎回同じパターンでだらだら続く来場者紹介は考え直すべきときに来ているのではないか。プロの顔見せは必要だとしても、企画紹介とだぶりがちだし、むしろだれだかよくわかんない人とか、大学SF研の若手メンバーとかを紹介してほしい気が。

 オープニングの最後は「クイズ歳の差なんて」。年寄りチームは、京フェス古株代表の水鏡子(キャプテン)、京大SF研代表の志村弘之(田中世界では40歳なので仕方ない)、マンガカルテット代表の牧野修、そして昼間の「似顔絵」発言で年寄りと認定された喜多哲士の四人。
 対する若者チームは、キャプテンの野田令子(お茶大代表)以下、東洋大の田中嬢、名古屋大の水野嬢、京大の塩崎嬢というお嬢さん四人組。いや、野田令子がお嬢さんかどうかは疑問だが、一応、抑えのメンバーってことで。
 企画的には準備不足を露呈してましたが(NGワードの発表を忘れるなど)、お嬢さんチームの天然ボケが炸裂し、意外な盛り上がり。牧野修のボケはちょっと難解すぎましたね。
 ちなみに若者向け問題でいちばんウケたのは、
「ヒューゴー賞のヒューゴーさんの名前をフルネームで書いてください」
 正解は野田令子ひとりだけ。「ロバート・ヒューゴー」とか「ヒューゴー・ドゥ・ヒューゴー」とか、ありそうな名前(笑)が出てました。まさかヒューゴーがファーストネームとはお釈迦様でも気がつくめえ。
 正解発表のあと、お嬢さんたちがひそひそ。前のほうがなんか爆笑の渦に巻き込まれているのでなにかと思ったら、田中ちゃんいわく、
「じゃあネビュラさんの名前はなんなんですか?」
 いままでオレがやってきたことはなんだったのかと肩を落とす山岸真。「おまえはどういう教育をしてるんだ」と鈴木力(東洋大SF研)を叱りつける三村美衣。
 しかしうしろのほうでは、我孫子武丸ほか数名も、「そしたらネビュラってだれ?」とか言ってたらしい。意外な盲点(笑)。

 あと、「帝国はとても強い。戦艦はとてもでかい。ダース・ヴェーダーは黒い。トルーパーは白い」この歌の最後を締めくくってください」
 という問題も正答者は野田令子のみ。用意していたNGワードは「チューバッカは×××」だったんですが、ペプシボトルキャップを集めていた田中香織は、なんとチューバッカの名前が思い出せず、毛むくじゃらのひとの絵を描いて、「……は茶色い」。あの絵も秀逸でしたね。
「え? トルーパーってサムライトルーパーじゃいなんですか?」という歴史に残る名言もありました。
 比較的正答率が高かったのは、「かつて、京都で一度だけ日本SF大会が開かれたことがあります。なにコンだったでしょう?」
 ヤマカンで三人が正解を出すなか、ひとりだけボケてくれたのは名古屋大SF研の水野嬢。答え「ダイナコン」って……(笑)。彼女はどうも、(名古屋だけに)「ダイナコンというコンベンションがあることは知っていた」→「大納言コンベンションの略だと思っていた」→「そうか、あれは京都の大会だったんだ」と思い当たる――という思考経路をたどった模様。名古屋大SF研の教育体制も根本から考え直すべきかもしれない。
「うる星やつらとウルトラセブンの主人公の共通点は?」という問題は、全員はずれ。「性別がオス」「頭が悪い」「女好き」「一度死んで復活」……と、すばらしい答えを出してくれたみなさん、ありがとうございました。

 年寄りチームでは、意外と(でもないか)水鏡子師匠の「気だけは若い」ことが判明。だてにアニメ見てエロゲーで遊んでないね。なにしろ「宇多田ヒカルのデビュー曲は?」に正解したのは水鏡子ひとりだけ。「ふつうそのぐらいだれでも知ってるやろ。あれは驚いた」と水鏡子に言われてるようでは……。
「湯川元専務といっしょにドリームキャストを売っていたジャニーズ事務所所属のタレントは?」に正解したのも水鏡子だけでした。
「デ・ジ・キャラットちゃんと鋼鉄天使くるみ。コスチュームの共通点は?」とか「機動戦艦ナデシコ。ルリルリと言えば星野ルリですが、ではユリカの姓は?」とか、難度の高い問題(笑)をかたっぱしからはずしたおかげか、結果は年寄りチームの圧勝。ま、若者チームは試合に負けて勝負に勝ったって感じ?

 最後のボーナス問題は足し算。若者問題にも年寄り問題にも強くないと解けないやつ。「南山鳥+るりあ=?」
「カナン+アンドロイド・アナMICO=?年」
 の二問。ほんとはもう一問、「直木+花田=」って美しい問題があったんですが、出題者が正解を思い出せなかったので(一三六が出なかった)カットされました。
 菊池誠が考えた、「地球+宇宙=?年」って問題も美しいが、これは歳の差問題じゃなくてSFクイズの早押し問題ですね。
 しかし大広間の企画をマイクなしでやるのは無理っす。激しく疲れる。というか声が嗄れてダメ。
 どっちかというと「クイズ赤っ恥青っ恥」形式のほうが面白かったような気はするが、アレをやるには準備が必要だからなあ。

 ひきつづいて合宿企画。イーガン部屋は塵理論に話題が集中。やっぱりSF者が燃えるのは塵理論でしょう。年寄り部屋とコンベンションの歴史を語る企画は出席者がほとんど共通。武田さんも来てたし、「SFアニメ論争」の部屋があればタイムリーだったかも。SFセミナー合宿で、小川びい×堺三保の対決企画として提案したい。

 リベンジ・オブ・まんがカルテットはいつも通りのだらだら企画。カムナビはヘビ千匹で巨人が気持ちいい話らしい。あとはひたすら猫を振り回すネタ。田中哲弥が他人の原稿でウケをとっていたのはずるいと思った。

 最後は麻雀。綾辻名人(ミステリ)、我孫子(官能)、浅暮(ファンタジー)、大森(SF)の四派対抗。最下位が『カムナビ』を引き取るという条件で熾烈な闘牌。オーラスは我孫子さんひとり沈みの状態で、ほか三人が一線に並ぶが、名人がシャボをカンチャンに受け変えたのが裏目。大森が間隙を塗ってドラ1の鳴きタンを出上がって、からくもトップ。ついに名人を抑えて、差しウマの1000ガバスを獲得する。
 その前に一回やった半荘(綾辻・橋詰・福井・大森)では綾辻トップの大森2位だったような気もするが、あれは四派対抗じゃなかったし、そんな昔のことは忘れたのである。

 麻雀終了が午前5時。寝ようと思ったら、寝部屋の布団はすべてふさがっている。日曜の夕方は京大SF研20周年記念パーティが予定されてるので、寝ておきたいところなんだけど、日曜のホテルはどこも満室。
 綾辻名人が家に帰って寝るというので、綾辻邸に泊めていただくことに。タクシーで綾辻邸に赴き、ひとしきり「鳩よ!」ミステリ特集の話とか、最近のミステリ情勢の話をしてから寝る。



 細井威男京大SF研による1999年度京都SFフェスティバル アフターレポートリンク集ができてます。この日記をftpしてから15分後に発見したら、もう直接リンクされていたので仰天(笑)。リアルタイム更新中なのか。


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