【10月26日(火)】


 ジュブナイルとヤングアダルトについて――というテーマで水鏡子師匠に解説した話を書こうと思って忘れてました。

 英語でjuvenileと言えば要するに児童文学なんだけど、カタカナのジュブナイルはちょっとニュアンスが違う。オレ的理解では、児童文学にジャンル小説(主にミステリとSF)を持ち込んだものが日本語の「ジュブナイル」。《ナンシー・ドルー》とか、はやみねかおるとか、『ねらわれた学園』とか。したがって、基本的には、大人の作者が子供の読者に向かって書くものであって、それを大人の読者が読む場合には、ノスタルジーがキーになることが多い。乱歩の少年物だって、発表当時からノスタルジックな世界だったわけで。
 それに対してヤングアダルトは、(精神年齢的に)同世代の読者に向かって書かれた小説で、同じ文化を共有していることが前提。少なくとも発表時には、ノスタルジーとはあまり縁がない。富士見、電撃、スニーカー、コバルト、X文庫などティーンズ文庫とかジュニア文庫とか呼ばれてるものの大半はヤングアダルトですね。
 オレの中では、ジュブナイル=児童文学寄り、ヤングアダルト=おたく寄り、という分類がなんとなくある。作品で言うと、『タイムリープ』は明らかにジュブナイルで、《ブギーポップ》はジュブナイル的な設定でヤングアダルトを書いてる感じ。
 もっとも、ミドルティーン、ハイティーン向けの児童文学をヤングアダルトと呼んでいた歴史もあるので(晶文社が出してた叢書とか)、そのへんの刷り込みが強い人は、アニメ系のカバーのティーンズ文庫をヤングアダルトと呼ぶことに抵抗があったりしてむずかしい。オレは逆に、ジュニア小説とかジュニアノベルって呼称に激しく抵抗があるんですが(「ヤングアダルト」も最初はちょっと抵抗があったけどもう慣れた。「新本格」みたいなもんか)。
「ライトノベル」という呼び名(NIFTY-Serve方言?)には(lightが物理的な重量のことを指すと考えれば)別に抵抗がないんですが、これは作家側に抵抗があったりして、まだ一般化するには至ってないという印象。比較的ニュートラルなのが「ティーンズノベル」「ティーンズ小説」ですか。大森は最近、わりとこっちを使うことが多いかも。




【10月27日(水)〜28日(木)】


 友成純一『凌辱の魔界』の解説を書く。幻冬舎アウトロー文庫だって。意外な盲点だけど適材適所かも。
 友成純一の最高傑作は『獣儀式』だと信じてるので、『凌辱の魔界』はふつうだったよなと記憶してたんだけど、読み返したら全然ふつうじゃなかった。あとは《宇宙船ヴァニス》シリーズもどこかで再刊していただきたい。ハルキ文庫とか。無理か。
 あ、幻冬舎アウトロー文庫では『獣儀式』も出るみたいなので、未読の人は乞うご期待。

 小説すばる《今月のこの一冊》は、またしても藤崎慎吾『クリスタルサイレンス』。今年はこの本と心中……みたいな。いや、グレッグ・イーガンも捨てがたいけど。
 あ、しかし『クリスタルサイレンス』はイーガンと並べるのが申し訳ないぐらいまともな本格SFなので。そういう意味ではオレが誉めるタイプのSFじゃないんですが。ウェブ上の感想をちらちら見るかぎりでは、「だまされた!」とか怒ってる人はいないみたいなのでめでたしめでたし。この本が十万部売れると日本SF状況も一変すると思うのだがどうか。しかしソノラマのハードカバーなのであまり書店で見なかったり。
 あーとにかくだまされたと思って藤崎慎吾『クリスタルサイレンス』を読んでね。『カムナビ』より見つかりやすいぞ、たぶん。




【10月29日〜31日】


 解説の原稿を読んだとかで友成純一氏からとつぜん電話。東京国際映画祭で東京に来てるらしい。福岡からクルマで山形ドキュメンタリー映画祭まわって東京に来たというからおそるべし。家庭問題その他、鬼畜な話いろいろ。マドンナメイト文庫当時の話とか。
 京極夏彦作品を一冊も読んだことがないまま、WOWOWの『京極夏彦 怪』がらみの京極紹介原稿を書いた話が傑作でした。って書いちゃっていいのか。まあ友成さんですから。
 編集者からは、「さすがに友成さんですね。京極さんの本質を見抜いた原稿です」と誉められたらしい。いや、京極ファンでもないのに「言霊使いの罠」を見て、きちんと覚えていたのはえらいと言うべきか。この度胸と勘は見習いたい。

『このミス』の「今年の新本格」原稿のために、ひたすら国産ミステリの未読消化。柄刀一『サタンの僧院』はちょっとピントがずれた力作。冒頭の謎の解決がアレではギャグでしょう。途中はすごくがんばってるのになあ。兄弟名探偵がべつべつの場所でそれぞれの事件に挑むって趣向は面白い。
 あとは『カーニバル』と『カーニバル・デイ』とか。十億人を一瞬で消し去るトリックには笑いました。『カムナビ』読みながら、梅原克文って流水系かも、と思ってたんだけど、本物はとてもそんなレベルではないのだった。この話を4200枚で書くというのはひとつの才能でしょう。《チョンクォ》なんかメじゃないっていうか。



 LOVE & PlayStationの連載、「たこあしマル秘トーク」がようやく更新されて、仙台エリ嬢インタビューが掲載されました。
「仙台エリちゃんのアニメファンおしゃれ化計画 同じ並ぶなら、コミケじゃなく、ラフォーレのバーゲンに並ぼう!」だって。こんなキャッチをつけたのは大森じゃないのでよろしく。リアルプレーヤーのmovieでは動くエリちゃんがたっぷり10分鑑賞できます(しばらくサーバが落ちてて見られなかったんですが、いまはだいじょうぶらしい)。



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