【8月23日(月)】


 14時間眠りつづけて昼ごろ起きる。毎日中学生新聞の原稿をあわてて書き、日本SF新人賞の下読みに着手。

 ミストラルで仕事してると堺三保が箱根の話を聞きにやってくる。というか、さいとうよしこが呼んだらしい。
 箱根の一件では大森がいちばん得をしたということになってますが(それは否定しないけど)、じつはいちばん楽しんでいるのはさいとうよしこかも。わたしは部分的にしか目撃してないからなあ。ってなにを。




【8月24日(火)】


 2時半、早稲田のデニーズで《ゲームぎゃざ》組と落ち合って、寺島令子邸へ。まさか仕事で寺島さんちに来ることになるとは。
 写真撮影があると聞いて必死にかたづけたらしく、一階のゲーム部屋はすばらしくきれいになってました。しかし。
「マンガ家さんの取材なので、できれば仕事部屋の机の前にすわっているところを撮影させていただければ……」
 とカメラマンに言われて顔面蒼白になる寺島さん。
「いや、あの、その、それはちょっと。他人様にお見せできるような状態では……」
 と必死に止めようとしてましたが、全然だいじょうぶでした。

 二階の仕事場の奧の本棚とか探訪してたら、『ブロントメク!』『ハロー・サマー、グッドバイ』を発見して仰天。そ、そうだったのか。

 アニメージュF.F.N.の大槻ケンヂ×京極夏彦の原稿整理。オリジナルは400字で50枚以上あるのでもうどうしていいかわからない感じ。
 さらに新人賞の原稿があるので、翻訳がさっぱり進まない。今週はダメかも。




【8月25日(水)〜26日(木)】


 アニメージュの原稿を書き、新人賞の原稿を読む。アスキーとゲームウォッチのコラムを書きはじめるも調子が出ない。もうダメすぎ。




【8月27日(金)】


 5時、さいとうよしこといっしょに新宿MY CITY8階のプチモンド。仙台エリ、W辺某、小林治各氏と合流し、歌舞伎町一番街のインドネシアラヤ新宿店へ。遅れてきた日下三蔵を加えて、彫刻の森ツアー組が再集合し、なぜかインドネシア料理で(南海奇皇つながり?)慰労宴会なのである。あれから一週間もたってないのになぜまた集まるのかとか、そもそも温泉旅行にどうして慰労会が必要なのかとか、さまざまな謎はありますが、そのへんはひみつ。
 仙台エリはあいかわらずがんがん飛ばしてました。ちょっと飛ばしすぎでは。まあ夏休みももう終わりだからな。

 食事の途中、野尻抱介氏から携帯に架電。今夜はうちの仕事場に泊める約束で、10時ごろ西葛西に来るとかいう話だったんですが、まあどうせこのメンツだしってことで、食事が終わったあたりでこっちに来てもらうことに。それがまさかあのような結果を引き起こすとは……。いや、仙台エリは野尻さんのツボだろうとは思ってたけどさ(笑)。

 食後、次の場所を決めようと立ち話しているところへ野尻抱介登場。仙台エリ嬢を紹介する。「女子高生」「声優」に強烈に反応するところは西澤保彦とおなじですが、とっさに、
「ネオランガのゆうひちゃんですよね」と出てきた点で野尻抱介1ポイントリードか(笑)。さすが女子高生作家だけのことはあるね。ていうか、あれだけ「大運動会」にハマってた人だしな(でも漢字はまちがって記憶していたらしい)。

 しかしあらためて考えると、某嬢をのぞくあとの5人は全員SFオンラインに原稿を書いた経験があるので、これはSFオンラインつながりというか、ほとんどSFオンラインのオフ会なのである。うそだけど。

 日下三蔵は渋谷で別件があるとかでとっとと去り、残り5人で新宿パセラ。
仙台「わたし、新宿のカラオケってここしか知らないんですよ」
 って、それはつきあってる人間が悪いと思います。

 ひたすら女子高生観察中の野尻抱介を無視して、非アニソン縛りのカラオケに突入。日下三蔵がいなくてほんとによかったなり。
 小林さんはいきなりKinki Kids。大森は女子高生に迎合してフリッパーズ・ギターの夏唄、「ワイルド・サマー ビートでゴーゴー」を選曲し、声優の人にデュエットしてもらったのでもう思い残すことはないっていうか。
 その仙台嬢は三重野瞳とか宮村優子とか椎名へきるの声優ソングを歌ってて、通常の女子高生選曲からはかなりはずれてると思った。「風の眠る島」をはやくカラオケに入れていただきたいことである。
 一方、宇多田ヒカル似の某嬢(娘が宇多田ヒカルに似てると言われて、「え? じゃあ、あたしは藤圭以子ってこと?」と喜んだゆかいなママがいるらしい)は、満を持して「First Love」を熱唱。いやあ、絵になるねえ。

 途中、「アニメ雑誌の副編は三日やったらやめられない」を強引に入れた人がいて、本人がマイクを持つのを拒否したので、大森が十年ぶりに(たぶんうそ)歌いましたがほとんど忘れてました。うちにはCDシングルがあるはずなので、小林治の印税収入には貢献してる……はず。CDって実売印税っすか?

 2時間経過でお開きになり、野尻さんの強硬なリクエストにもとづき、女子高生といっしょの記念写真を撮影。ちなみにこのとき仙台エリはごらんのとおり眼鏡をはずしてて、眼鏡っ娘萌えの野尻さんとしては千慮の一失だったらしく、あとで写真を見て悔しがることしきり。
「ああ、どうせなら眼鏡かけてもらえばよかった。ああ、でも画像に加工して眼鏡を追加すれば……」とかすっかり自分の世界に入ってました。邪悪な作家にもこんな一面があったのか。
 仙台嬢が手にしている野尻さんの新刊『私と月につきあって』(富士見ファンタジア文庫)は、著者サイン入り。オレが読みかけで持ってたのを、「じゃ、きょうの記念に」とあげようとしたら、野尻さんがすかさずカバンからとりだしてサインした物件です。まあこれ以上有効な利用法はないに違いない。



 超絶密度の新宿駅をかきわけ、仙台組と別れて総武線で飯田橋。深夜零時過ぎに西葛西に到着すると、堺三保から架電。
大森「いま駅に着いたとこ。通り道だから野尻さん連れてくよ」
堺「いや、連れてこなくていいっす。他人に見せられる状態じゃないんですよ(泣)。ぼくのほうから行きますから」
大森「それじゃ野尻さんが納得しないと思うけどなあ。ちょっと待って」
野尻「あ、堺さんですか、どうも。いまからうかがいますので。あ、いや、そんなわけには。ここまで来て見ないで帰ったら作家じゃないでしょう。作家は好奇心が命ですから」

 歩きながら押し問答をする野尻抱介×堺三保。ぞろぞろ歩いていくと、道の途中に大きな人が立って通せんぼしている。そ、そこまで見られたくないのかっ。
 しかしそんなことに動じる作家・野尻抱介ではない。
 ここから先は、のじりにせもの掲示板の野尻発言を引用しよう。
 電話で訪問する旨を伝えると、堺氏は通りに出て待ちかまえていて、懸命に私を阻止しようとする。「いや、半端じゃなく汚いですから」「あれは人に見せるもんじゃないです」「来ちゃだめです、絶対だめです」「いやまじにあれだけはだめです」と言うのだが、そこまで言われてやめるような人間は作家失格であろう。私は部屋に押し入った。
 ……ものすごいものを見た。
 部屋というのはここまで汚せるものだろうか。私は本やビデオの山を想像していたのだが、それよりも何よりもゴミの山であった。床面は人一人があぐらをかけるスペースだけが露出していて、そこから30度ほどの傾斜でゴミの山が部屋一杯に満ちている。もう一つの部屋は寝室らしく、人一人が横たわるスペースだけが露出していて、そこから30度ほどの傾斜でゴミの山が以下同文であった。まるでゴミでできたバスタブのようであった。嘘だと思ったら大森さんの日記に載るであろう写真を見てほしい。
 写真は公開しないでくれと堺三保が泣いて頼むのでここには載せませんが、まああれを見たってだれも人間が住んでる部屋だとは思わないからいっしょだよな。
 それにしてもその部屋の中に川口探検隊隊長よろしくずかずか入ってって、にっこり笑ってポーズをとる野尻抱介はただ者ではない。明日から鬼畜作家に転向してもじゅうぶんやっていけるでしょう。小説にだまされてはいかんよ。

 おなじアパートのとなりの棟にすむ林哲矢(部屋を見ただけでは、同じアパートとはまったく思えません)を呼び出し、野尻さんに引き合わせ……ようと思ったが、この部屋の前では言葉が出てこない模様。ていうか、宇宙開発とかハードSFとか軌道計算とかゆってる場合じゃないよな。

 わたしはあまりの衝撃に、インドネシア料理のこともカラオケのこともすっかり頭から消えてしまったのだが、野尻抱介の脳裡にはしっかり仙台エリ嬢の姿が焼きついたままだった模様。
 いったいどういう状態だったかについては、本人が先にうちの伝言板で告白しているので一部引用する。
 日記で面白おかしく書かれては困るので以下に先手を打ちますが、
 箱根で撮ったという仙台エリと西澤保彦のツーショット写真を見せられて、私が急に
「前から思ってたんですが西澤さんはSFマインドがない。あの人はだめでしょう」と言ったら大森さんはすごくイタそうに笑い転げましたが、つまりそういうことです。
 ちなみに西澤・仙台写真を見たときの野尻抱介の第一声は「ゆるせん!」でした。
 で、いちばん笑ったのが、仙台ホームページを見せたときの反応。
野尻「こ、こんなページがあったのか。ゆ、ゆるせん!」
大森「ゆるせんってなにが?」
野尻「いや、こんなページがあることを今まで知らなかった自分が」
大森「知らなかったって、そもそもついさっきまで、仙台エリって名前しか知らなかったんでしょ」
野尻「それはそうですが。やっぱりゆるせん!」
大森「まあとにかくここを読んでよく勉強してください。掲示板もありますから」
野尻「あっ! すばらしいっ!」
大森「ど、どうしたんですかいきなり」
野尻「ほら、タイトルが『―宇宙へ―』じゃないですかっ。エリちゃんも宇宙が好きなんだ。やっぱりなあ。うんうん」
大森「……(笑い転げているので言葉が出ないらしい)」

 どうも仙台エリには中年男を思春期未満にひきもどす効果が備わっているらしい。やっぱりミディ・クロリアン値が高かったりするんだろうか。

 まあしかしこれで《ロケットガール》シリーズがアニメ化された場合の森田ゆかり役は決まりましたね。うーんでも個人的には茜役かなあ。
 野尻さんも新しい芸風が開拓できたし、めでたしめでたし。

 しかし、DASACON2前夜であるにもかかわらず野尻さんと宇宙の話をするために(推定)うちの仕事場までやってきた林くんは、日本が誇る宇宙開発SF作家のこわれぐあいにただ茫然とするばかり。ぽつりと一言、
「ぼく、塩澤兼人よりあとの声優はひとりもわからないんで」とつぶやいて、堺三保に、
「きみ、いったいいくつやねん」とつっこまれてました。まあ、あの部屋に住んでる人にいくらつっこまれてもな。

 午前2時、仕事場を引き上げて自宅にもどり、SF新人賞の原稿読み。


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