【7月3日(土)】


 午前8時に起きて朝ごはん。前泊組の早起きな人たちとしばらくしゃべってから朝風呂を浴び、部屋にもどって10時からコパ・アメリカ、パラグアイ×日本。川口は全然いいところなし。3点めが入る直前まではもうちょっとなんとかなりそうだったのに。

 試合のあとはラウンジでコーヒー。青山さんとしゃべってたら、向こうのほうから高千穂遥がやってくる。とたんにすっとんでいって必死に頭を下げる青山智樹。青山さんも苦労してますね。

 2時からはファングループ連合会議。武田さんの独演会でした。特筆すべきは星雲賞の票数。海外短編にこんなに票が入るなんて前代未聞。投票率が5割近いっていうのも、この20年ぐらいで最高なのでは。いったいどうしたことでしょう。

 つづいて同じ大広間でオープニング。雨が降ってなきゃ屋外で開催の予定で、その場合、星雲賞授賞式では、武田さんが馬に乗って登場する予定だったらしい(笑)。
「そんなこといきなり言われても、馬なんか乗られへんで」とか言ってましたが、その勇姿は見たかった。ずっと待機してた馬もかわいそうですね。いや、武田さんを乗せずにすんでしあわせか。

 劇ナデが受賞したので、佐藤竜雄監督が律儀に南小谷村まではるばる星雲賞受けとりに登場。いきなり『十兵衛ちゃん』のネタを振るオレ。先におめでとうぐらい言えよ。
 まあでも、「ちょうど昨日が打ち上げだったんですよ」ってことで、最終回に関する疑問点も確認できたのでよかったよかった。
 しかし、さと竜さんがもらってきた賞状には、「佐藤竜夫殿」の文字が(笑)。
「いや、よく間違えられるんですけどね。オレ、『宇宙エース』とか監督してないんですけど、みたいな」(笑)
 と笑いつつも、内心はむっとしてたかも。そりゃそうだよな。

 星雲賞をもらいにくるはずの中原尚哉は、けっきょく授賞式には間に合わず。バクスターの代理で柴野さんが受けとり。しかし今回は、笹本祐一、森岡浩之、野田昌宏、横山えいじ……と軒並み受賞者本人が出席してたので、オープニングにまわした甲斐がありましたね。一時は受賞者の8割が代理受賞とかってこともあったもんな。

 オープニング終了後は、『電撃SFの部屋』を覗き、田中哲弥がSF扱いされていないことを確認する(笑)。しかし出席者は、
「SF書いてるつもりはないんですけど……僕が書いてるのはスペオペで」
「スペオペはSFじゃないんですか?」
「違うでしょう。スペオペはSFの手前にあって……」
「でもそしたらエドモンド・ハミルトンもSF作家じゃないってことになりますよね」
「『スター・ウォーズ』はSFでしょ」
「ルーカスはSFじゃなくて神話だと言ってますけど……すいません、おたくなツッコミで」
 と言ったのが上遠野浩平だったりするのでおかしい。ちなみにハミルトンの話も上遠野発言。なんかほのぼのとした進行でしたが、作家四人集めたわりにせまい和室だったのが残念。

 途中で抜け出して、ほかの部屋をあちこち覗く。神林長平二十周年お祝い企画では、野阿梓が飛ばしまくり。
「長平が二十年ってことは、同期デビューのオレも二十年なんだよ。長平はいいよなあ、ファンクラブの奥さん会長にして、こんなパーティやってもらえて。オレのファンクラブの元会長なんか、いま裁判の被告だよ。パーティどころじゃないもん」
 野阿梓ファンクラブの初代会長は山形浩生。いや、裁判がなくてもSF大会には来ないと思いますが。

 向かいの部屋でSFまんがカルテット公演がはじまったので、そちらに移動。冒頭30分の寒さは強烈でしたね。ナノマシンの話あたりからようやくエンジンがかかりはじめる。
「そら、SF作家と呼ばれたいですけどね。科学わかりませんからね。ナノマシン言われてもわかりませんもん」
「そういうのは小林さんにきかんと」
「小林さん、ナノマシンってなんですの」
「ナノマシンですか……」5秒間の沈黙。「ナノマシンというのは略称なんですわ」
「ほう」
「みんなのマシン、略してナノマシン。みんなで使える機械ということで」
「そやったんですか。ぼくはてっきり大人のマシンの略かと思うてた」
「そうとも言いますね」
 まるで用意してあったようなネタである。「大人のマシン」まで来れば、あと15分はこのネタで転がりそうだが、司会の武田さんが無理やり本題にひきもどすのでそのたびに勢いが止まるのだった。
 じつは真面目な人だろうと思っていたが、やはり武田さんはむちゃくちゃ真面目な人である。公演終了後、まんがカルテット全員が、
「やっぱり武田さんがねえ」
「あれはあきませんな」
「あれではウケるもんもウケへんでしょう」
「人選をまちがいましたな」
 とか口々に悪口を言っていたが、ウケないあいだじゅうずっとすがるような目で武田さんを見ていた人たちのいうことじゃないと思うね。ま、また次がありますから。

 11時をまわってから自分の企画にすべりこみ、SFスキャナーを5分やってから、SF翻訳企画。すごくひさしぶりな気がする。ハマコン以来かも。

 0:30からはSFクイズ。さいとうよしこは裏でアニソンクイズに出ていたり(笑)。ダッシュで途中経過を覗きにいくと、一回戦は突破してました。日下三蔵とか岸場とかは余裕の表情。まあそうだろうよ。
 SFクイズのほうは、前半快調に飛ばしたものの、途中から音なしのかまえで、山岸はおろか小浜にまで抜かれそうになる。ビンゴシステムの賞品にクラークのサイン入り『二〇一〇年』を出したおかげでなんとか二位は死守したが(もしものとき用に『リメイク』も持ってって正解だった)、優勝は山岸真にさらわれる。反省せねば。

 企画終了後、腹がへったので24時間営業のティールームでガーリックトーストとか。野阿さんがやってきて、またしても梅原書簡と大森伝言板の話題。野阿さんも書けばいいのに。
 とか言ってると森岡浩之が登場。酔っ払ってご機嫌状態で梅原書簡をこきおろす姿がラブリー。しかしSF界のコミュニケーションの促進にめざましい効果を上げているような気がするな。これだけ話題を提供し、それまで話をしたことがなかった人同士を結びつけたという意味で、梅原さんの功績はきわめて大きい。いや、ほとんどは三枝さんの功績かもしれませんが。




【7月4日(日)】


 2時間寝て9時半起床。エンディングは見ないまま、11時のバスで南小谷に出て、小浜夫婦とタクシーで白馬。長野行きのバスでは、佐藤竜雄ご一行さまといっしょになる。星雲賞表彰状は、訂正版をあとから郵送ってことになったそうで。

 長野の駅前でまたしても蕎麦を食い、東京駅からタクシーで帰宅。その後意識不明。




【7月5日(月)】


 16時間寝て、3時ごろ起床。5時から東京會舘ティールームで、Quick Japan編集部のK尾氏、A田元編集長と落ち合って、最近の小説業界について一時間ほど話をする。『バトル・ロワイヤル』はめちゃくちゃ売れてるらしい。太田出版で出してほしいものはいくつかあるんですが……。

 6時からホラー大賞授賞式。受賞者三人とも全然新人じゃないのが笑えますね。賞状を受けとって着席するなり、広げて文面を読みはじめる牧野修とか。竹内志麻子改め岡山桃子改め岩井志麻子さんの挨拶も爆発してました。「ぼっけえ、きょうてえ」を書くだけのことはある。受賞者三人と審査員三人が並んだ写真がこれだ
 ちなみに大賞をとるだけあって、岩井志麻子さんはめちゃめちゃこわい人である。どのくらいこわいかというとこのくらいである。というのは嘘です。素顔は全然こわくないので、無理やり「ホラーな顔をしてくれ」と言って撮影したなのでおこんないでね。まあ60枚で500万もらったんだからこのぐらいいいよな。

 パーティには清涼院流水氏も来ててびっくり。鈴木光司はいなかったけど、帰国した瀬名さんとはひさしぶりに対面。当然、最初にたずねるのは梅原書簡の感想(笑)。瀬名さんはなんと400字50枚の返事をしたためたそうで、これでますます書き下ろしが遅れるかも――とか書いちゃまずかったかも。しかし、そんな長文を梅原さんにしか読ませないのはもったいないので、ぜひウェブ上で発表していただきたい。

 二次会は銀座。一次会の井上雅彦×東雅夫会談につづいて、我孫子武丸×茶木則雄会談が持たれる。自分から乗り込んでいく茶木さんはえらいね。ダブル田中がとなりの席でずっと聞いてたはずなので、詳細はふたりの日記で……と思ったらろくなことが書いてない。役に立たない人たちである。飯野文彦の下ネタはあんなに細かく書くくせになあ。

 三次会はロフトプラスワン。津原泰水消失事件とか。高瀬美恵がいないので、飯野文彦の主な標的は霜島ケイ。やはり被害にあった五代ゆうは思いきりいやそうな顔してました。箱入り娘ですから(長旅の許可が出ず、長野のあと、いったん奈良の実家に戻ってまた東京に来たらしい)。
 小林泰三の邪悪ぶりを観察しながら田中哲弥が笑い転げていた話は、当人の日記にくわしい。まったくあの通りでした。
 そうそう、菊地秀行氏と『マトリックス』とかの話をしてて、話題が『13階』に及び、「原作はガロイって作家の……」と言いかけたら、
「ダニエル・F・ガロイですか? いやあ、懐かしいなあ」と即座に返ってきたのはさすが。いまどきSF者でもなかなかこういう人はいないね。まあSF翻訳の大先輩だから当然と言えば当然ですが。




【7月6日(火)】


 猛然と仕事。佐竹雅昭インタビューのまとめ原稿に手を入れ、週刊小説の上半期ベスト10を選び、《文藝》別冊のエピソード1原稿を書く。合間に《メンズ・ウォーカー》クロスレビュー用のゲームを泣きながら遊ぶ。ああもう締め切りすぎてるのにと死にそうな状態でコントローラを握っているゲームが『サルゲッチュ』だったりするのでまったく緊張感がないというか。PS版の『グランディア』は、なんか画面切り替えが遅くなってませんか。




【7月7日(水)】


 快晴の七夕。日本橋から京急の特急に乗り、横須賀中央まで一直線。駅前で《映画秘宝》組と落ち合い、タクシーで京急観音崎ホテル。仕事する気がしない環境ですね。「海を見ていた午後」っていうか。
 しかし泳いで帰るヒマもなく、3時から《映画秘宝》の山口雅也インタビュー。前回は京都で今回は観音崎。なぜこんな出張シリーズになるかな。
 山口さんは事前に送った質問項目ファックスで予習ばっちりな感じ。立て板に水のしゃべりで、起こすのはさぞ楽だろう。T辺くんがロックネタをがんがん突っ込んでたのがおかしい。じつはファンだった模様。
 帰りは山口さんの車で馬堀海岸駅まで送ってもらい、横須賀で遊ぶこともなくとっとと帰宅して仕事。ああもうなんでこんなにヒマがないかな。それは自業自得だろう。3点。


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