【12月5日(土)】


 京フェスのつづき。昼間の企画が終わってから、十数人でぞろぞろ流れたのは、日伊会館一階にある自然食系っぽいカフェレストラン。オレが食ったのはケイジャンライスだけど、オクラじゃなくてピーマンなのでいまいち。でもつまみ食いしたカレーはうまかった。来年の夕食もここだな、きっと。
 合宿オープニングは、ゲスト紹介〜企画紹介〜クイズ大会の流れ。クイズは、出題とシステムはよく練られているものの、演出がなさすぎ。「100人に聞きました」はもっと面白く見せられるはずなので惜しかったですね。人力解答表示システムとか非常によくできただけに。司会がまじめすぎたのと、回答者側がおとなしすぎたのが問題か。

 合宿企画はヤングアダルトの部屋をちょっと覗いただけ。三村美衣がうしろにすわって黙りこくっていたので、写真を撮りにきた岡田実行委員長はおびえていたらしい(笑)。もの言わぬは腹ふくるるわざなり。あ、だからふくれてるのか。ってそうじゃなくて、けっきょく黙っていられなくなって介入したそうですが、それならもうちょっと見てればよかった。
 面白かったのは、名大SF研の(たぶん)現役の学生の発言。
 いわく、ミルクソフトのバックナンバーをひっくりかえして検討してみたところ、以下のような傾向がわかった。書評で一方的に攻撃される作家が時代とともに変遷している。初期には火浦功、つづいて田中芳樹が槍玉に上がり、現在はそれがあかほりさとるになっている。攻撃する論調はほぼ同じで、「現役の若手会員のあいだで人気のある作家を先輩会員が叩く」という構図も共通。田中芳樹を擁護していた世代の学年が上がると、今度は下の世代にウケている作家(あかほりさとるとか)を叩きはじめる……と。
 なるほどね。ミステリ研でもおなじようなことはありそうな気がする。

 あとはだいたい大広間で雑談。酩酊した浅暮三文氏が爆発してました。「アッ、サ、グレ、でぇえええす」を5回ぐらい聞けてラッキー。なんか、実家は我孫子さんの実家とご近所だと判明したらしい。ちぇろ子さん(CHEROKEEさん)も飛ばしてたらしいがわたしはよく知りません。
 そのうち綾辻さんがやってきたのでメフィストの話。やはり千街晶之は分が悪いらしい。我孫子さんが『平成の名探偵50人』を持ってきてたので、ぱらぱら見せてもらう。うーん、このレイアウトではなあ。活字秘宝的な切り口でこの企画をやるのは無理がありすぎたのでは。しかしとんでもミステリ本じゃ売れないだろうし。ブックガイドにするのか色物にするのかが中途半端。インタビュー/座談会ページのあのレイアウトはないでしょう。

 睡眠不足で頭痛が激しいので、痛み止めを飲んで一時間ほど横たわる。



【12月6日(日)】


 夜中から、二階奥のスタッフ部屋前で、「キャラ萌え野郎つるし上げ事件」 ((C)野尻抱介)。というか、ヤングアダルトの話をしてたら、野尻さんが「一乗寺くんを呼びましょう」とか言って、若者たちが喚問された結果、尋問に突入したというのが正しい。堺三保がいたら「吊し上げ」になったかもしれないけど。ちなみにオレはキャラ萌え肯定派。キャラ萌え至上主義もべつに否定しない。アイデア至上主義とかトリック至上主義とか文体至上主義とか、まあいろいろあっていいでしょう。

 腹が減ったのでからふね屋に行ってもどってきて、だいたい朝。
「〜風」の話題で盛り上がる。オレ的には「京風世界」がヒットかな。ホーカを主人公に短篇が一本書けますね。ホーカがキモノ着て、「おいでやす」と迎えてくれるの。

エンディング後、十数人で川端方向にぶらぶら歩いてると、教育文化センター一階のティールームが営業してたので、一時間ほどお茶。
 けっきょく今夜も京都に泊まることにして、チェックアウトのときに割引券をもらったハートンホテルに予約を入れる。ツイン1泊2名で10,500円とさらに安い。
 ホテルへ荷物を置きにいく小浜夫妻&さいとうよしこと別れ、ひとりで三条京極の映画館。10時30分からの「時雨の記」を見る。この世のものとは思えない映画でした。どうした澤井信一郎。渡哲也と吉永小百合主演の企画物って時点で、すでに投げちゃったのか。いや、企画物でも投げない人だったんだけどなあ。
 場内は朝っぱらからけっこうな入りなんだけど、50代60代の夫婦者が異様に多い。「失楽園」は下品で見られない――と思ってる人用? 「反時代的な珍作」と言うべきか。まあ12月の京都で見るにはふさわしい映画でしたが。

 ぐったり疲れたまま、三条河原町で小浜夫婦&さいとうと合流。三村美衣が予約した和食屋でお昼の懐石弁当を食べ、てくてく歩いてハートンホテル。午後2時にチェックインして午後9時まで死んだように眠る。

 三村美衣の電話で起きて、タクシーで夜の四条河原町に出撃。やたら混んでる明石焼きカウンター居酒屋で一服。カラオケ2時間後、ラーメン食べてたこ焼き買ってホテルにもどる。



【12月7日(月)】


 フロントからの電話で起こされる。
「本日お発ちでございましょうか?」
「え? はいはい(あたりまえだろ)。チェックアウトは12時ですよね?」
「はい。もう12時をまわっておりますが」
 げげ。ほんとだ。あわてて飛び起き、荷物をまとめてチェックアウト。フロントに荷物を預けてから、イノダで朝のコーヒー。店内の様子がすっかり変わっててびっくり。

 六角富小路あたりの古いビルにタンタンショップが開店してたんで見学。帽子とマフラーを購入。さらに寺町三条までぶらぶら歩き、去年とおなじ三嶋屋ですきやきの昼食。
 女ふたりは買い物に去り、小浜と河原町の六曜社珈琲店に入って仕事。夕方ホテルで再合流し、7時ごろのひかりで東京へ。車中、ひたすらインターネット文芸新人賞入選作を読みつづける。



【12月8日(火)】


《本の雑誌》の原稿をなんとかかたづけ、宝島社忘年会@赤坂プリンス五色の間。宴会場の真ん中に巨大なリングが……と思ったら、スタジオ・ハードの高橋社長いわく、
「なんかゲストが篠原涼子だって」
「え? 篠原涼子? 篠原ともえならまだわかるけどなあ……」
 とか言ってたら、リングに篠原ともえ登場。篠原涼子と篠原ともえの区別がつかないのは重症では(笑)。
 シノラーはキャラ的に宴会向き。でも楽曲的にはあまり向かない。忘年会会場で「心のウサギ」とか歌われても。カロゴンズ呼ぶとよかったかも。
 ミステリ系の出席者は、内藤陳、池上冬樹、西上心太、香山二三郎、霞流一、杉江松恋、福井健太、霜月蒼、川出正樹……とかそんな感じ。メフィスト千街原稿が主な話題。福井健太も今回は珍しく味方が多くてうれしそうである。

 とか言ってるうちに篠原ともえが退場し、メインエベントのJWPエキジビジョンマッチが開幕。どうせキューティーが顔見せするくらいだろうと思ってたら、宴会場でここまでやるかという豪華3マッチ。JWPをナマで見るのはすごくひさしぶりで(というか、JWPになってからは初めてかも)、しかも後楽園ホールにくらべるとリングとの距離がめちゃめちゃ近い。ロープまで約1メートル。
 プラム麻理子の急死、キャンディー奥津の引退、さらにキューティーも年末で引退決定と、JWPもいろいろたいへんですが、デビル雅美はあいかわらずがんばってるし、若手も育ってるみたいでよかったよかった。今日はダイナマイト関西が負傷で欠場、尾崎魔弓も出場しなかったんですが、個人的には久住智子が見られたのが収穫。カナちゃんは……いや、嫌いじゃないんですけど。

 忘年会も忘れて30分かぶりつきで試合見物。パーティがお開きになったあと、プリンスのティールームでスタジオハードご一行さまとお茶。高橋社長が昔話モードに突入し、町山智浩若き日々の武勇伝を大量に聞かせてくれる。町山妻の話から町山妹の話まで、暴露はとどまることを知らず、町山一族話だけで一時間持ってしまうのは、やはりウェイン町山の人徳というべきか。秘密のネタはいざというときのためにとっておこうと誓うオレ。

 キネ旬ベストテンがあさって締切なので、例によって泥縄で未見の映画を大量にビデオ視聴。山田風太郎の忍法帖を映画化した森山祐子の二本立てとか。ようやく見た「エイリアン4」がめちゃめちゃツボだったので仰天。いまごろ驚いてていいのか>おれ。「北京原人 Who Are You?」もやっと見ました。「北京原人風あゆ」というのはどうか。鮎なのに毛が生えている。



【12月9日(水)】


 恵比寿ガーデンプレイスのビヤホーフ麦酒館で恒例のミステリ翻訳者忘年会。ナイトメア・ビフォア・クリスマスの革ジャン(日本のディズニーストア限定発売)を着て出かける。翻訳者・編集者多数。
 おなじ会場で二次会までつきあい、三次会の池林房はパスして帰宅。さらに朝までビデオを見つづける。「ラスト・サマー」とか「恋愛小説家」とか「黒の天使Vol.1」とか。



【12月10日(木)】


 スタージョン"Graveyard Reader"の翻訳チェックを終えてようやく決定稿を送ってから、渋谷パンテオンで「ユー・ゴット・メール」の試写。トム・ハンクスとメグ・ライアンが主演でノーラ・エフロン監督。「めぐり逢えたら」の続編ですね、ほとんど。AOLのメール恋愛物なので、ハリウッド版「With Love」と言えなくもないが、なにしろ書店業界の話なので。トム・ハンクスは大手書店チェーンFOX Books & Sons(モデルはドルトンかバーンズ&ノーブルか)の三代目。新規出店した大型店のそばには児童書専門書店、《Shop Around the Corner》があって、そこの二代目店主がメグ・ライアン。ニューヨークの本屋が好きな人は必見でしょう。


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