狂乱西葛西日記98年11月1日〜11月6日

【11月1日(日)〜2日(月)】

 ファンタスティック映画祭をパスして、35時間で『火星物語』をフィニッシュ。中盤やや退屈でしたが、クリアへのモチベーションは高いゲーム。しかしやっぱりゲームは時間がかかってたいへんだなあ。
 それだけ費やしても原稿書くのは一時間。柴尾英令氏にいただいた『レガイア伝説』とか、キノトロープの河合さんにもらったRPGのお店経営ゲームもやらないといけないんだけど、当分時間がなさそう。
 すでに締切を過ぎてしまったホラー大賞の一次をいつ読むか、それが問題。



【11月3日(火)】

 2時、日本出版クラブ会館で山口雅也講演会。神楽坂の駅を降りたら、「出版クラブはこちら」の矢印持った女の子が立ってて仰天。女性会員にこういう係を担当させられる時代になったのか。昔は、貴重な女性戦力は受付にまわすのがあたりまえだったのに――って、そもそもオレの在学中、京大SF研には学内女性会員なんてひとりもいませんでしたが。

 遅れて着いたので、講演はすでにはじまっている。
 といっても、関ミス連とかのイベント同様、司会者がついての一問一答形式。こういう進行がミステリ系コンベンションのスタンダードなんですかね。パネルディスカッションが基本のSF育ちとしては物足りない。山口さんもキャラ的には、パネルとか丁々発止の掛け合いで威力を発揮するタイプでは。
 スタッフサイドとしては、事前にインタビューとって、その内容を小冊子に起こして配布するくらい気合いが入ってるんだけど、そのインタビューの内容と今日の質問内容が重複してたりして、段取りがいいんだか悪いんだか。
 ここまでやるんならどうせ手間はたいして変わらないので、入場料を徴収する全日コンベンションにしちゃえばいいと思うんですが。いまはSFよりミステリのほうが集客力あるだろうし、ワセミスなんて会員が何十人もいるんだからさ。早稲田祭も当分ないみたいだし、このさいイナホコン2とかどうですか。

 講演会終了後は恒例のサイン会タイム。一階の喫茶コーナーに移動して、北村薫、貫井徳郎、佳多山大地の各氏、集英社C嬢、講談社K氏、文春のH嬢などとお茶。

 6時からは高田馬場・海乃家で打ち上げ宴会。60人ぐらい? 千街晶之、鷹城宏、日下三蔵、大森英司、福井健太とか、比較的平均年齢の高いテーブルにつく。
 高瀬美恵嬢とは初対面。噂通り豪快でした。いや、黙ってると美貌の閨秀作家って感じなんですが。A山さんに無理やりひきずりこまれたギャザリングにはまだあんまりハマってないらしい。ちっ。
 現役の若者たちとも多少しゃべる。SF率は意外に高いらしい。20年前まではSFのほうが優勢だったんだから、そうそう死滅するわけではないってことか。

 3次会は魚民。まだ40人ぐらいいたような。暴れる若者若干名。女性率が高い。高瀬嬢、森英俊氏にワセミス史を取材。というか、主に「あの人はいま」とかそういうの。
 宴会コースでいちいちデザートが出るのがおかしい。海乃家はチョコアイス、魚民ではゴマプリンでした。謎。



【11月4日(水)】

 ちょっと余裕ができたので、女性映画週間の「第七官界彷徨 尾崎翠をさがして」を見るべく、渋谷道玄坂へ。尾崎翠の『第七官界彷徨』は、じつは若い頃の愛読書だったりするのである。
 あれがどう映画化されているか(作中作扱いらしい)楽しみだったんだけど、ザ・プライムについて見ると、窓口前は長蛇の列。前売り完売で当日券を出せるかどうかわからないとか言われて、まあだいじょうぶじゃないのとしばらく並んでたんですが、けっきょく当日券売り出しは中止。前売りだけで立ち見って、それはなに。

 しょうがないので、向かいの劇場でやってた「学校III」を見る。第一水曜日は映画の日ってことで、入場料は1000円。すげえラッキーかも。と自分をなぐさめる。まあどうせ「学校III」は見る予定だったからいいのさ。
 映画は、小林念侍のキャラ(リストラされたクソ真面目会社人間)があまりにもパターン通りで、山田洋次もこんな紋切り型の人間ドラマやってちゃいかんよとか思ってたんだけど、大竹しのぶと黒田勇輝の母子は悪くない。でも自転車のコケ方はへたすぎ。
 あとで聞いたら、この映画の原作になったノンフィクション書いてるのは三村美衣の同級生のお母さんなんだそうで。つまり三村美衣は黒田くんの同級生だったんですね。って違うか。世間はせまい。

 ザ・プライムからブック・ファーストにまわって、ようやく『ウォッチメン日本語版』を購入。今年のベストは『スノウ・クラッシュ』で決まりと思ってたたんだけど、WATCHMENが出たんじゃしょうがないよな。3800円ですが、1話300円と思えば高くない。だいたい英語で読むのはしんどい本だし。というわけでみんな買うように。
 ブック・ファーストは初めて入ったんだけど(渋谷もこっちのほうはめったに来ないから)、わりと広くて、あんまり混んでなくて、本はさがしやすい。品ぞろえもまずまずでしょう。こういう大規模書店が一等地にがんがん開店するのも不況のおかげか。本も売れないけど、ほかのものはもっと売れないのである。

 つづいてBUNKAMURAシアター・コクーンで英国映画祭「フェアリー・テール」。「フォトグラフィング・フェアリーズ」のほうも英国映画祭にかかるんだけど、これとはべつ。「フェアリー・テール」は、A True Storyの副題がつくオリジナルで、コティングリー事件が下敷き。コナン・ドイルがピーター・オトゥールで、フーディニにハーヴェイ・カイテル。カイテルは儲け役、かな。映画ではけっこういい人だし。
 堺三保は「史実をねじ曲げよってからに」と怒ってたけど、解釈に振幅の余地を残してあるので、オレ的にはオッケー。妖精のCGIはおみごとでした。しかしなぜ地べたで引っ越すかな。あれじゃ「床の下のこびとたち」でしょう。けっこうエブリデイマジックな設定になっちゃうので、むしろファージョンぽい。

 さらに渋谷パンテオンにまわって、ファンタの「ビッグ・ヒット」に滑り込み。カーク・ウォンのハリウッドデビュー作なんですが、もうまるっきり香港映画ノリ。ジョン・ウーの 『ブロークン・アロー』『フェイス/オフ』だと、ちょっと肩に力が入りすぎてんじゃないの的なところがあったんだけど(それでもたいていのハリウッド大作活劇よりは面白い)、「ビッグ・ヒット」は力の抜け具合がちょうどいい。主役も「ブギー・ナイツ」のマーク・ウォールバーグだし、敵役がルー・ダイアモンド・フィリップスってのもいい感じ。「キングコング2」のレンタルビデオ返却が本筋になってく(なってないって)あたりの呼吸も抜群。でもビデオ屋燃しちゃダメでしょ。あと、恋人のお父ちゃんの酒飲み暴走シーンはもっとエスカレートさせてほしいよね、とか、細かい不満はあるものの、この調子でハリウッド映画のホンコナイズが進むことを期待したい。



【11月5日(木)】

 朝からファンタに行って「シックス・ストリング・サムライ」を見る計画だったんだけど起きたら開映時間。まあいいかと思いつつのんびり出かけて、最後の15分だけ見る。
 ネタ的には面白そうだったんだけど、最後があれではダメでしょう。「マクロス7」の西部劇版だとよかったのに。
 つづいてバハラット・ナルルーリ監督の英国映画「キリング・タイム」。女殺し屋モノなんだけど、イタリア人で英語ができないって設定。スタイリッシュな絵でおねえちゃんをかっこよく見せたい映画だと思うのだが、いまいち決まらない。雰囲気だけね。

 堺三保と西村で飯食ってから、アスミックT氏に頼まれた「ビッグ・リボウスキ」のパンフ原稿。PHSでつないでネットで検索かけたら、シナリオ全文が見つかって、つい読みふけってしまう。が、原稿にはまるで反映されない。あちこちリボウスキ関連サイトを見ただけ時間の無駄だったり。

 つづいて18:30から期待の「ワイルド・シングス」。ジョン・マクノートン監督、っていうよりニーヴ・キャンベル+デニス・リチャーズでしょう。まあケヴィン・ベーコン+マット・ディロンで見る人もいるかもしれないが。内容的にはエヴァーグレイズが舞台のスクリーム――というか、スクリームからホラーおたく受けする要素を抜いて、ひたすらどんでん返しに徹してみました、って感じの映画。メジャーでつくる映画じゃないだろうっって気がするが、メジャーの大作よりは面白い。脚本はかなり無理がありますが、エンドクレジットの裏でどんでん返しのタネ明かしシーンが流れるのはバカバカしてよい。明らかにアンフェアな描写と、犯行の動機に問題はあるんだけど、リチャード・ニーリイ系と言えなくもないか。

 最後はジュリー・デルピーのコスプレ娼婦映画「愛のトリートメント」。売春宿のやり手経営者役のダニエル・ボールドウィンはハマってておかしい。マイケル・ヨークはちょっとなあ。変態描写が紋切り型過ぎて前半はやや退屈、後半もさほど盛り上がるわけじゃないが、この手のユーモアはそんなに嫌いでもない。しかしここまでリアリティを切り捨てるなら、最初からもっとファンタジーにしちゃってもよかったのでは。



【11月6日(金)】

 9時起床。今日も朝からファンタ。ジェット・リー二本立ては予想通り大盛況。リー・リンチェイ、いつのまにこんなに人気者になったんでしょう。
 11:30からは、黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)物の新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン−チャイナ・アンド・アメリカ」。アメリカ映画界からは絶滅したタイプのインディアンが多数登場。鬨の声をあげてトマホークをぶん投げながら馬で襲ってくるのを、ジェット・リーが殺しまくる。アメリカでは、秘密クラブで上映するしかないのでは(笑)。懐かしがるひとは多いと思うけどさ。

「ブラック・マスク/黒侠」はツイ・ハーク・プロデュース。いやもう全然ダメです。考えたらリー・リンチェイの映画で面白かったのって……「少林寺」のころはかわいかったな。あ、「ハイ・リスク」はまあまあでしたね。「冒険王」はダメだったけど。

 良平さんと近くの蕎麦屋で軽く飯食ってから、渋谷東映で「カンゾー先生」。パンテオンは満員立ち見の大盛況なのにこっちはガラガラ。「うなぎ」のときはそれなりに客が入ってたと思ったのになあ。「カンゾー先生」は柄本明がやたらに走りまわる元気な映画で、オレは好きだけどな。カップルで見るのに向かないのが興行的敗因か。映画はひとりで見ろよ。

 ふたたびパンテオンにひきかえし、超満員の「アルナーチャラム 踊るスーパースター」。当然立ち見――というか、二階席の通路に座って見る。3日のインド映画特集はインド人が山ほど来て、列に並ぶ日本人押しのけて入るのでたいへんだったそうですが、今日は舞台挨拶がないのでインド人は目立たず。
 映画の中身は「踊るマハラジャ」とまったくおなじ。「おまえはじつの息子じゃない」と、またしても出生の秘密が明らかになったところで席を立ち、新宿へ。

 今夜はIRC#にっきチャンネルのナースちせ嬢迎撃オフなのである。金子誠氏とは百年ぶりぐらい。あとは奥野、奥村、古川、のぶぞの各氏で、ひさしぶりだったり初対面だったりする人中心。珍しくなかったのは大森英司ぐらいかな。主に日記リンクス系の人々の近況が話題。またしても諸星@ワープ日記の噂とか。あいかわらず女性問題についての悩みをIRCでえんえんと独白して去ってゆく日々らしい。
 がつがつ食ってさくっと歌って終電帰宅。急いでたのでちせ嬢に挨拶するのを忘れて帰っちゃってすまんす。


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