【9月12日(土)】


 夕方起きて、Remake再開。
『龍河邸事件』のハードカバー版の解説(二階堂黎人)と対談(島田荘司×笠井潔)をやっと立ち読みする。もっとはやく読んでおくべきでしたね。匿名座談会ネタがこんなに語られていたとは。「Fくんを呼べばよかった」と島田荘司は言ってますが、座談会メンバーがそう提案したのを編集部が拒否したんじゃなかったかな。
 しかし当のFくんは、『(語弊を覚悟で言えば)今回ほど覆面座談会メンバーに同意したのは初めて』と書いているので、事実関係に関する発言は、彼の認識と大きなズレはなかったんじゃないでしょうか。
 というわけで、福井健太の事実経過説明に期待したい。無理か。


【9月13日(日)】


 買ったまま読めないでいたセオドア・ローザック『フリッカー、あるいは映画の魔』を読みはじめる。実名ががんがん登場する(ジョナサン・キャロルの映画ネタ以上)のでけっこう楽しい。しかし読み終えるのはいつのことやら。
 外出時には、茶木則雄・北上次郎熱烈推薦の新潮文庫のダグラス・ケネディ『ビッグ・ピクチャー』を持ち歩いているのだが、これは翻訳がちょっとつらくてなかなか進まない。
 さらに乱歩賞の『Twelve Y.O.』と篠田節子の『弥勒』が読みかけなのだが、『多重人格探偵サイコ』の2巻目も出ちゃったし、たいへんだなあ。まあ、毎年九月はミステリ系新刊ラッシュの月なんですが。

 3時過ぎ、渋谷のパルコ・ブックセンター。綾辻さんのサイン会に遊びに行く。ダ・ヴィンチとじゅげむの仕切りで、対象は『YAKATA』公式ガイドブック。長蛇の列の長さを確認しているとタニグチリウイチを発見。意外と男性率が高かったような。
 サインする人を横目に見つつ新刊の棚に歩み寄ると、福井健太のほか、杉江松恋、川出正樹、村上貴史など逆密室な人々が集まってたので噂の真相を直撃取材するもはぐらかされる(笑)。霜月蒼と日下三蔵は来てませんでしたね、そう言えば。
 棚差しの本を見ているあいだにだんだん知り合いが増えてきて、じゃあお茶でもと思ったら満席なので路上でたむろ行為。祥伝社のH坂さんが息子二人連れてやってきたのには驚きました。日曜日の家族サービスの合間にも仕事をするえらい編集者である。
 猛烈に腹が減ったので、パルコの向かいの京たこでたこ焼き買おうと思ったら列ができてるので、となりのイラン人(?)の店でピタを買う。中東系。うまい。
 最終的に集まったのは、喜国雅彦、国樹由香、津原泰水、室井佑月、貫井徳郎河内実加、C塚K子@集英社、M浦R香@角川書店などの各氏。
 サイン会終了後、パルコ2階の喫茶店アイウエオに10人ほどで流れてお茶。ガイドブック関係者の人々はリクルート接待の夕食会に去り、大森はC嬢・河内嬢と三人で食事。両手に花ってやつですか。
 河内さんと言えば、、夏コミで会ったときの模様を「当の大森さんは、金髪をやめ、前髪立てたり、少しやせたりしてカッコよくなっていて」と日記に書いてて、じつに鋭い観察眼というべきであろう。我孫子武丸だけ観察させておくのはもったいない。が、我孫子武丸のようには観察されたくないかも(笑) 前髪は寝癖で勝手に立ってるだけだったのはひみつだ。
 しかしC嬢K嬢コンビだと、話題は「法月綸太郎とミド」「我孫子武丸と武士道」に集中。あ、「編集者から見た匿名座談会問題」ってトピックもあって、なかなかためになりましたが。と思ったら、河内日記では別解釈が。うん、まあそういうこともあった気がする。

 10時、109前で綾辻・喜国・国樹、竹本・京極の夕食会組と合流。パルコPART2裏のルノアールに流れる。地下に個室があるんですが、ホワイトボードの予約表を見てたら、「海外SFに親しむ会」という書き込みが。これってもしかして、伊藤さんが主宰してるやつ? 風野さんとかもいたのか? 時間がずれててすれ違ったのは残念でした。

 11時、ルノワール閉店とともにさいとうよしこが合流し、仕事のある喜国さんが帰り、タクシー2台で竹本さんの仕事場へ。描き下ろしマンガは飛躍的に進んでいる。170ページまで来て、あと80ページとか。囲碁シーンもはじまって燃える展開。やるなあ。
 京極さんは原稿をわたされておもむろに点描をはじめる。「水木系なんで、点描にはうるさいんです」以後1時間、ひたすら点描をつづける京極夏彦。詳細は河内日記参照。ちなみにわたしはデジカメ持ってきてなかったので、写真はありません。

 さいとうよしこはひたすらベタを塗っている。河内さんは進行状況をチェックし、作業を監督。大森はユベントスの開幕戦がはじまった時間だなあと気もそぞろ的なのだが、あまりにもスリリングな話題が展開されるため、テレビをつけてくださいと要求することもできない。ていうか、まさかあんなことになってるとは思わないもんなあ。家に帰って「めざましテレビ」見て公開したけど、話がおもしろすぎたのでしかたない。「業界の難しい話」の詳細はひみつ。


【9月14日(月)】


 午前5時に帰り着いて、寝たのは7時。泣きながら1時に起きて、西船橋から武蔵野線に乗り継ぎ1時間。駅前のマクドナルドでW辺嬢@アニメージュおよび福井健太と合流して京極邸へ。
 さんざん写真で見てるので初めてな気がしないが、写真に映っていない隠し部屋もあるのだった。内部はすでにあちこちで公開されているので、「これを写真に撮った人ははじめてですね」と言われた京極マシンを紹介しよう。これがナツヒコの秘密兵器だっ。本棚ばかり話題になりますが、AV機器の集積度も高い。でも古い方のセレクターはうちのおなじ(笑)。
 感動したのは、『文庫版 姑獲鳥の夏』のカバーに使用されていた姑獲鳥フィギュア。というか張り子細工。こんなの。

 横から見るとこんな感じ
 講談社のK木さんが持ってきたばかりの『塗仏の宴 宴の始末』の見本をいただき、第二号(第一号はK木さん)のサインを拝領する。
 F.F.N.の収録をすませて、あとは今後の打ち合わせ。

 2時間後、ふたたび武蔵野線に乗り、西船橋で降りて『宴の始末』を読みつつ蕎麦を食う。ちょっと仕事をしてたら猛烈に眠くなったので帰って寝る。


【9月15日(火)】


 寝たり起きたりしながら『始末』を読みつづけ、ミストラルでごはん食べてちょっと仕事してから神田の三省堂。本日は二階堂さんのサイン会。蘭子FCやってる倫さんこと中村倫彦さんなど、ファンクラブ系の人が十数名たまっている。求道の果てのらじさんとか。
 来てるはずの我孫子さんの姿が見えないので二階のピッコロに上がると、案の定、C嬢、河内さんとお茶を飲んでました。爆発的に髪が短くなってるのは、対決姿勢を明確にするためなのかっ。これは着流しに匕首のんで乱歩賞に行くしか。
「全員スキンヘッド」とか「全員金髪」とかいろいろ考えるが、予想されるメンツに似合うスタイルがないかも。「全員覆面」は簡単だな。
 あとから国樹由香嬢も合流。タニグチリウイチを我孫子武丸に紹介し、平和なアニメの話題。スプリガン、トライガン、lainなど。

 そうこうするうちにサイン会が終了し、二階堂+講談社+三省堂組はいつものように地下のビアレストランの打ち上げに去る。U山さんがビール飲みはじめたらとまらないに決まってるので、ピッコロ組は近所の中華料理屋で食事。
 8時ごろ、二階堂組と合流し、古瀬戸珈琲店に入るも一時間で追い出され、我孫子さんが投宿しているエドモントのティールームでさらに二時間。一部戦闘的な話題もありましたが、おおむね平和でしたね。

 台風が来てるので11時でお開きになり、大雨の中、東西線で西葛西にもどり、ビルディでちょっと仕事してからずぶ濡れで帰宅。
『宴の始末』読了。クライマックスはすごすぎる。予想されたこととはいえ、狭義のミステリの枠は逸脱してますね。京極夏彦はやっぱり「SFのテーマをミステリで書く」作家なのかも(決着のつけかたがSFよりはミステリに近い、って意味で)。
 SFで書くと、犯人はふつう人間じゃなくなるわけで、じっさい50年代の短編にこういうアイデアの小説はあったけど、妖怪シリーズでここまでの展開は予想してなかった。
 ××の設定とか、『人狼城の恐怖』と微妙にパラレルなところもあったりして、シリーズでは随一の異色作かも。わたしは基本的にこの設定が受け入れられない(そういうことがありうるとは信じられない)性格なので、技術的ブレークスルー(洗脳系)を仮定してほしかった気がしなくもない。
 うーん、ネタバレしないで書こうとするとなにがなにやらだな。シリーズ全体の再解釈を迫るような本でもあるわけですが、最初からぜんぶ伏線が張ってあったのか。京極夏彦おそるべし。しかしこのあとどうするんだろう。もはやオルタネート・ヒストリーな世界に行ってしまう気が。


【9月16日(水)】


 起きたら午後4時。
 しまった。今日は「プライベート・ライアン」の試写だったのに。行きます葉書まで出したのに。
 しょうがないので仕事をする。
 8時前、高橋まこりん@MAC LIFE登場。なんか、MacOSのエミュータをさいとうのVAIOにインストールして写真を撮る計画らしい。まこりんはさらに大きくなっているかもしれない。ミストラルでお茶飲んでから、仕事場の場所を教え、オレは珈琲館でさらに仕事。
 11時ごろ仕事場に行ってみると、インストールはまだ難航していた。DOS上でインストールするソフトらしくて、すでにDOSのことをすっかり忘れているMac雑誌編集者はconfig.sysとにらめっこしている。さいとうよしこは当然まったく役に立たない。というか、VAIO上でDOS画面を見て、「こんなのVAIOじゃない」とかゆってるし(笑)。
 さらに1時間が経過し、ようやくインストールに成功。VAIO上でMacOSが起動する。をを。Sad Macが出る。爆弾マークが出る。どんどんMacらしくなってきました。
 が、まともに動くようになるまではまだまだかかりそうなので、ひとり自宅に帰って読書。山口雅也『マニアックス』と清水義範『その後のシンデレラ』を読む。
『マニアックス』は半分ぐらい既読なんですが、Amazing Storiesが出てくる話は読んでなかったのでびっくり。エド・ウッドのやつとおなじパターンですが、SF作家にはぜったい書けないタイプの話。でもあれだと掲載誌はAmazingじゃないほうがいいような。StartlingかThrilling Wonder Stories? いや、パルプ雑誌のことはよくわかんないけど。

『フリッカー』はやっと半分。どんどんすごくなるな、しかし。

 論争関連補足。
 関口苑生氏より、Sの正体は、「『この文庫がすごい!』の同じ号で、匿名座談会の少し前の頁で「賞ものはこれを読め!」の筆者紹介のとこにちゃぁんと「匿名座談会の座敷ワラシとしても、たまに登場する」と明かしてある」との指摘あり。すっかり忘れてしました、すみません。しかし、さすがにアリバイの工作の達人(笑)
 また、西上心太氏からは、茶木則雄と並んで、「エッセイ系書評家」とされたことに対する疑問が寄せられている。「エッセイ系って呼ばれても間違いないのは、本の雑誌のコラムだけ」だそうで、言われてみればそうですね。失礼しました。

 いろいろ話を聞いてると、《闇カルテル》発言の背景には、「『このミス』ベスト投票根回し疑惑」や「どの書評を見ても誉めてるものがおなじで、均一化している印象がある」など、ミステリ書評業界に対する根強い不信感が横たわっているらしい。要するに、本格の場合はそれぞれ読者の物差しが違うので評価が一致しにくいけど、冒険・ハードボイルド系は一致しやすいってことじゃないでしょうかね。



 PDに落としたままだったNetscapeの去年のキャッシュをコンバートして、ローカルに再構築。技術評論社のサイトから消えてしまった《辺境の電脳たち》Web版をこっちのサイトに置くことにしました。一部欠けてるファイルもありますが、水玉画伯の美麗イラストをお楽しみください。連載継続媒体募集中。


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