【8月28日(金)】

 27日のつづき。
「岸和田」「大怪獣」二本立てのあと、ニュートーキョーの映画館で、ポケモン二本立てを見たんでした。「ピカチュウの夏休み」と「ミュウツーの逆襲」。ピカチュウはダメすぎ。ポケモンさえ出せばなにやってもよくて、予算もそれなりに使える環境で、ああいうものしかつくれないとは。話はあのままでも、絵的にはいくらでも遊べたはずなのに。ピカチュウとライチュウでコナンとジムシーのパロディやられてもなあ。あれはパロディじゃなくてパクリだとさいとうよしこは怒ってましたが。ナレーションで説明するのもちょっとね。
「ミュウツー」は、きっちりつくってある昔のSF映画で(水玉説では『オッド・ジョン』)、ポケモン世界との整合性を持たせつつ、こういうテーマに挑戦するのはえらいんだけど、しかし人造ポケモンが人間に復讐するなら、やっぱり「ポケット人間スタジアム」をつくってですね、「行け、マサル!」とか、ポケニン同士を闘わせて遊ぶんじゃないかと。ポケモンが目指すのは最強のポケモンマスターじゃなくて、最強のポケニンマスターだよな。でも人間とポケモンの関係をつきつめちゃうと、そもそも成立しない世界観なので、ちょっとさわっただけですぐ引き返さざるをえないのがつらい。
 しかしこれ、『サイバー戦争』とおなじ話かも(笑)

 銀座で飯食って家に帰り、速攻で寝たけど夜中に目が覚めちゃって、しょうがないので名古屋に持っていくデッキをつくる。Pandemonium赤デッキ。召喚酔いなしのクリーチャーを使い捨ててReanimateする作戦。Pandemonium + Ball lightning + Reanimateで18点とか。

 書くのを忘れてましたが、『傾城傾国』の尾瀬はやみさんから、J本と森本を送っていただく。ありがたいことである。理系ネタのミステリ系4コマって珍しいかも。コミケではちゃんと読むヒマがなかった対談を熟読したんですが、いや爆笑。というか、SF上がりの新本格読みな人とは趣味が合うというだけなのか。

 5時ごろもう一回寝て、起きたらお昼。11時には出かけるつもりだったのに。ま、天気悪いからいいか。
 結局、2時過ぎのひかりに乗り、名古屋到着は4時過ぎ。タクシーでヒルトンに直行し、チェックインしてから、1時間前に到着している小浜・三村夫婦とティーラウンジで合流。
 ヒルトンのサマープランは1泊2名で25,000円(サービス料込み)。これに朝食(またはケーキブッフェまたはパスタブッフェ)、ウェルカムドリンク、プール&サウナ無料券(通常3000円)などなどの割り引きクーポンがつく。朝飯は食い損ねることが多いので、こういうシステムはありがたいっすね。
 Pメールで召喚された名古屋人・タニグチリウイチが登場し、元・名古屋人の三村美衣とふたりの元ジモティに先導されて栄までてくてく歩く。途中、豪雨を逃れて丸善に入るのはお約束。日本橋の丸善よりは品ぞろえがいいかもしんない。

 名古屋にはダイナコンで何度も来てるんだけど、街を歩くのはほとんどはじめてに近い。名古屋大のSFな人々は、東京からだれが来ても、じゃあ名古屋の街を案内しましょうとはぜったい言わないのである。地下街の山本屋で味噌煮込みうどん食べさせて、それで終わり、みたいな。「いや、べつに名古屋は見るもんないですからね」と名古屋人はみんな言うのだが、でもあらためて歩いてみるとけっこう面白い。プリンセス大通りとか、ふつうそんな名前つけないよな。しかしどうしてこんなにたくさんCafe de Crieがありますか?
 つづいてなんだか知らないが巨大ロボットビルなナディア・パークへ行く。スペルはNadya。名古屋デザインなんとかの略、なんだろうな。名古屋だから発音は「なでぇぁあ」(「どえりゃあ」の節で)に違いないとか、そういう話。ビルの半分はロフトなのだが、上のほうには青少年センターのマルチメディア体験コーナーがあり、をを、画面踏んで歩くこれって、伊藤ガビン作品じゃないの。まさかこんなところでガビンさんのアートに対面するとは。と思ってたら、自分の顔を撮影してアニメから似た顔を呼び出して再生する(たぶんそういうことだと思うがよくわからない)「スナップショット」って作品は、アニメがうるまでるびで、プログラムは五十嵐久和(笑)。寺島令子さんは今回パスでしたが、名古屋にきてれば夫のひとの作品に出会えたのに。ま、五十嵐さんはいま、岐阜の大学で講師だかをなさってるので、名古屋に作品があっても不思議じゃないかも。
 とか遊んでるうちに綾辻さんがヒルトンに到着したので、タクシーでホテルまでひきかえす。タクシーの運転手さんいわく、
「お客さんどこからですか? 東京から? 名古屋は見るもんがなんにもないでしょう」
 思わず笑いを噛み殺す。ヒルトンのラウンジで綾辻さんと合流し、徒歩3分の距離にあるウナギ屋の『宮鍵』でひつまぶし。そうか、これがひつまぶしか。ネギとわさびを山盛りにして食うとこれがうまい。ウナギ単体の味は浜松に負けるにしても、総合力では、オレ、こっちのほうが好きかもだな。
 しかし綾辻さんは、明日のお昼、現・名古屋人の太田さんに「ほんとうのひつまぶし」を食べに連れていかれる予定なんだそうで、わりと浮かない顔。いきなりひつまぶし二連発ですか。
 食事のあとヒルトンまでもどり、向かいのカラオケボックスで、JOY SOUND2時間。そりゃやっぱり名古屋に来たらJOYでしょう。ちなみにさいとうよしこは、食事の時間までエクシングの本社を表敬訪問していたらしい。
 カラオケのオレ的課題は、覆面座談会の替え歌を考えること。ガッチャマンの替え歌で、「覆面戦隊マスクマン」っていうのを考えたけど、ふつう光戦隊マスクマンでつくるだろうと指摘される。しかし本家マスクマンのOPはかっこよすぎていまいち。
 しかし、関係ないところにテーマ曲は転がっていたのだった。「ショムニ」の主題歌、SURFACEの「それじゃあバイバイ」がそのまんま。
「まわりの顔を気にして となりに倣い ものを言う ろくに話も聞かずに 相槌打って作り笑い」とか、「まずい事情アリアリの場面もさらっとかわす」とか。かわしてないけど(笑) でもこれって主にBさんのテーマかも。

 カラオケのあとは綾辻さんの部屋に集合して雑談。『屍鬼』のネタバレ談議になったら読んでない人がみんな帰ってしまってので(そりゃそうだ(笑))、心おきなく、ディテールに関してつっこんだ話をする。なにしろ3500枚なので、しゃべるタネは無限にあるのだった。


【8月29日(土)】

 9時半に起きて、朝食ブッフェにすべりこみ。おかゆとタラコがうまい。あとベーコン(笑)。水玉さんはヒルトンが満室でとれなくて、近くのホテルだったんだけど、朝ごはんにソーセージとスクランブルエッグとコーヒーをとったら、ウェイターの人がつかつかとやってきて、「きしめんはいかがですか?」と2度くりかえしたらしい(笑)
 残念ながらヒルトンの朝ご飯には、きしめんも味噌煮込みうどんもありませんでした。もちろんひつまぶしも。

 朝食後、タクシーで大会会場の名古屋国際会議場へ。約15分。「あれが伊藤みどりの通ってたスケートリンクですよ」と運転手さんに教えてもらう。ほら、ちゃんと見るものあるじゃん。
 国際会議場もすごい。とにかくでかい。ナディアパークもそうだけど、名古屋の建物はやたらにでかくて、人口密度が低い。この会場も、キャパは5000人ぐらいあるんじゃないですかね。合体変形の途中で静止したような形状で、パイロットは馬に乗っている。ダ・ヴィンチがつくりかけてた騎馬像の原寸大レプリカだそうで、名古屋の人はやっぱり大きなものが好きなのである。なにしろ馬の背丈が七メートルですよ。しかし乗ってる巨人はだれ。ゼントラーディ人なのか。
 11時ジャストに到着したけど、受付はスムース。オープニングビデオは自主制作SF映画な感じで、ネタ的には薄いんだけど、まあそれなりの仕上がり。下手な芝居をごまかすカット割りと演出テクニックは悪くないかも。シナリオ的にはもうちょっと笑いがとれたと思うけど……まあSF大会参加者もいろいろだから、万人向けにするとああなるんでしょう。
 オープニングが終わって企画がはじまると、あっというまに人々が巨大な空間に呑み込まれて姿が見えなくなる。ほんとに千人もいるのか。ロビーとか閑散としてるぞ。
 あとの企画がつまっているので、先にディーラーズルームを覗く。堀さんがソリトンを売っている。となりに梶尾さん。
「どうもごぶさたしてます。宇宙法廷ノートのつづきをはやく」と挨拶するヒマもなく、堀さんが「こらっ。『OKAGE』の悪口言うたらいかんやろ!」だって(笑)。「『OKAGE』をさんざんけなしておいて、原稿料もらえる解説では誉めるのか」って、そういう問題じゃなくて……(笑)
 おかげで梶尾さんにクルマエビのお礼をいうのを忘れてしまったことである。

 SFセミナー出張版の部屋に行って、SFオンラインの企画を見る。関係者が集合しているので見つけやすくて便利。
 つづいて1時からは「辺境の電脳たち・出張版」。どうしてもヴァーチャル・ガールの話にもどっちゃいますね(笑)。『殺人摩天楼』『サイバー戦争』『エドガー@サイプラス』とか、今年の新刊中心に雑談。ウルティマ・オンラインとかlainのネタも少々。堺三保が入ったんで、水玉さんのトーク量が減っちゃったけど、まあ「ツボをおさえた一言をときどきはさむ」というのが芸風なのであれでよかったかも。
 つづいて夏休みSF映画祭り。映画の話をぐだぐだしゃべるのはわりとかったるい。柳下毅一郎が各所から集めてきたトレーラーがあったので、それを流してお茶をにごす。あとは「大怪獣東京に現わる」のネタをがんがんバラしたり(笑)。
 この企画は趣旨と責任者が不明だったのが難点でしたね。イニシアチブをとるやつがいないし。辺境電脳と連荘なのもつらかった。もうちょっと焦点を絞ったほうがよかったかも。当初はゴジラ座談会って言われたんだけど、SFマガジンでやっちゃったから、それ以外のSF映画でやることにしたんだよな。
 むしろ小林泰三、田中啓文、牧野修の怪獣座談会とかのほうがウケたかも。って、それじゃ怪獣酒場か。そうそう、田中・牧野といっしょに来ていた田中哲弥氏とはこの日が初対面。ちょうど「鳩よ!」の原稿で『悪魔の国からこっちに丁稚』(電撃文庫)の一節を引用したばっかりだったので、「あの超訳は最高っす」とかそういう話をする。田中哲弥訳の『ニューロマンサー』とか読みたいよね。本来なら《大久保町》シリーズの話をすべきところだが、読んでないので翻訳の話ばかりして申し訳ないことである。

 ようやく空き時間ができたのでぶらぶらほかの企画を覗く。満田監督と池田憲章さんのトークとか。部屋がせまくて奥に入れず、マイク使ってないので満田さんの声が聞き取りにくかったけど、「恐怖劇場アンバランス」の舞台裏の話とか面白かったな。

 ロビーや通路は人口密度が低くて、あんまり人に会えない。喫茶コーナーにたまってる人も少ないし。分科会の雰囲気はまるっきりワールドコンだし、各会議室にはけっこうまんべんなく客が入ってるんだけどな。
 シムラ式キングギドラ折り紙の部屋もほぼ満員で、しかも考案者のシムラ先生は不在(笑)。高弟の人たちが指導している。志村もえらくなったものである(あとで聞いてたら先生は連合会議を見に行ってたらしい)。

 5時からはSFミステリークラブ。スタッフは違うんだけど、広島でやったやつの再演ですね。一問一答形式だし、司会を振られているわけでもないので、主に聞かれたことだけに答える。綾辻さんが積極的に突っ込んでくれたんで、後半はわりとダイナミックなやりとりになりました。来年は「SFホラークラブ」とかやろうかな。

 企画のあとは、主催者コンビに引率されて、近くのカフェレストラン《シャーロック・ホームズ》で打ち上げ宴会。会場に到着すると、12人掛けぐらいのテーブルの手前にずらりと同人誌系の女性たち(SF大会に参加してない地元サークルの人々)が並んでいて、思わずびびりがちになりましたが、とくに恐れていたような事態にはならず、なごやかな雰囲気。オレは関係ないから飯だけ食おうとか思ってたら、向かいにすわっていた女性から、とつぜん、「大森さんのページ、きょう落ちてましたよ」と言われて驚く。
 まあ更新さぼってたからちょうどよかった。ってそうじゃなくて、最初にそう言ってくれればいいのに。
 話題の中心は同人誌業界の話で、名古屋方面のミステリ事情を取材する。火村×アリスのオンリーイベントも開かれているらしい。わたしはコミカの時代のことしか知らないのでためになりました。

 9時近くになったので、宴会を途中で退席し、タクシーに乗ってヒルトンにもどり、古沢さんのスイートで、『火星夜想曲』星雲賞受賞お祝い宴会――のはずだったのに13票差(推定)で涙を飲んだために急遽用意された――というか雨傘番組として当初から用意されていた――三村美衣36歳のおたんじょうかいに出席する。
 なんか20人ぐらいいたような気がするがよくわからない。古沢さんが招待した人たちなのでSF翻訳系がほとんど。古沢さん提供のワインとシャンペンとチーズなどがふるまわれる。わたしはヒルトンの一階のティールームで前日に予約してつくってもらった巨大バースデーケーキを差し入れてひと切れ食べただけ。フォークと皿のことを考えてなかったのはバカでしたね。
 せっかくデッキをつくったのに水鏡子はデッキ持ってきてなかったので、佐脇洋平の青単Tradewind Riderデッキと対戦。1戦めはBall Lighting行って来い18点で殴り勝ち。2戦目はばっちり赤対策されたにもかかわらず、Diskがまわって辛勝。意外と強いかも。しかしPandemonium入れないほうが強いという話もある。

 11時ぐらいで古沢部屋が解散になり、19階のスイートに移動。というか、うちの部屋と小浜夫妻の部屋のあいだのドアを開けてもらって無理やりスイートにする。
 夜も更けてから、SFの現状と展望に関する白熱した議論が展開されたような気もするがよく覚えていない。
 明日は朝9時から企画なんだけど寝たのは結局5時ぐらいで、だいじょうぶか。

 ってことで、疲れたのでつづきは別ファイル。


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