【8月6日(木)】

 ワトスンの翻訳チェックを終えて原稿を送り、ラッカーの直しを8割までかたづける。
 Spacetime Donutsは、ラッカーがまだあんまり小説の書き方をよくわかってなかったころ(←推測)の作品なので、後期の作品とくらべると文章が激しくぎくしゃくしてて、これをどうするかで呻吟する。『セックス・スフィア』とか『ハッカーと蟻』にくらべて、どうもすらすら読めないんだよなあ。うーん、どこまで修正できるのか。

 訳文との戦いに疲れるとさらに読書。フィリップ・カー『殺人摩天楼』は、タイトルネタバレ(笑)。インテリジェント・ビルが犯人だとわかるのは、小説の真ん中あたりなんですが。これだけストレートなテクノフォビア物も珍しいかも。しかし「コンピュータの叛乱」物がやたら多いような……。二見文庫の『サイバー戦争』とかも読まなきゃいけないのか。げっそり。


【8月7日(金)】

 添野@SFオンラインに誘われて、京王多摩川の大映撮影所まで「ガメラ1999」樋口組の撮影を見学にゆく。「レムナント6」見に行って以来かな。大作のわりにスタッフの人数は少なくて、少数精鋭って感じですが、一日一カットとか二カットとか、時間はたっぷりかけてるので、2時間見学したくらいではカメラがまわらないのだった(笑)
 ま、こっそりガメラにさわったりしたからラッキー。ご近所の開田さん夫妻はしょっちゅう差し入れもって遊びに来てるとかで、「×××が光るとこ見ました? すっごくきれいですよ」とか自慢される(笑)。新しい京都駅のセットはでかい。今日の撮影で破壊されてしまうらしいのだが、そっちは深夜になりそうな気配。予定が押してるので、駅前の牛丼屋でメシ食って、新宿に引き返す。

 電車に乗り遅れて、インタビュー会場のマイシティ8Fプチモンド到着は4:45。馳星周のほうが先に来てたのだった。いや申し訳ない。SCEのオンラインマガジン、Love & PSのリニューアルに合わせて、今月からインタビューシリーズ始めるんですが、今日はその第一回。事前に全然相談してなかったんだけど、プチモンドのロイヤルルームに着いてみると、ビデオが二台セッティングされている。なんかRealPlayerで流すらしい。
 編集部サイドからは「四方山話で」ってことだったんですが、一応『夜光虫』の話から入り、台湾プロ野球裏事情とか。あとはパソコンとサッカーと映画の話。


【8月8日(土)】

 はやめに銀座に出たら歩行者天国だった。ので、松屋デパート前の路上でノートPC広げて仕事をする。今日は涼しくてけっこう快適。
 柳下がやってきたところで喫茶店に移動、タイプIIのフリーデュエルを3戦。Crystlline Sliver 3枚を貸し出したら、スリヴァーデッキに蹂躙される(笑) やっぱり強いよな。オレのデッキはクラゲと金切り声ドレイクでクリーチャーもどしてSoul Wardenで回復しつつ、PandemoniumとAluren張って、Fog ElementalとかCloud Spiritでダメージあててから殴るやつ。無限ダメージコンボも入れてあるけど、成立条件が厳しすぎでしょう。予想どおり全然まわらず、1勝2敗。やはりPandemoniumは赤デッキの友か。

 6時半になり、近くのイタ飯屋、グラナータ銀座店で柳下日記既報の「風間賢二、日本推理作家協会賞受賞を祝う会」。なんかとてもおそろしい話をしていたような気がするが、まあ気のせいだろう。グルメな白石朗選定だけあって、料理はなかなかでした。ワインは知らないけどさ。
 食事のあと、喫茶店を求めて8人で銀座を放浪。地下の店に入ったら、路上からPHSでインターネットに接続してヒューゴー賞の結果を確認することを強要される。まあいいけどさ。しかしForever Peaceが受賞とは。やはり冬樹蛉は慧眼だったのか。小浜徹也も慧眼だったかもしれない。いや、日本で売れるとはあまり思えないけどさ。
 しかしボブ・エグルトンはまた受賞か。これで我が家にあるエグルトンのガメラスケッチの価格が上がる……ことはないか。


【8月9日(日)〜10日(月)】

『時空ドーナツ』の直しの最後をようやく終わらせて、とりあえず入稿。しかしまだ全然ダメな感じ。あとはどこまで化粧直しができるかですね。うむむ。フランク・ザッパ関連のネタは添野知生の協力でほぼ解決。ありがたいことである。

 あとはひたすら書評用読書。上遠野浩平『ブギーポップ・リターンズ』、野尻抱介『ベクフットの虜』、松浦秀昭『虚船』、読みかけだったニーヴン&パーネル『神の目の凱歌』とジーター『ダーク・シーカー』、フィリップ・カー『殺人摩天楼』。
『殺人摩天楼』はタイトルとオビがネタバレ(笑)。中盤まではフーダニットとして読ませる小説なのでは。いや、タワーリング・インフェルノで売ったほうがいいって判断なんだろうけど。「犯人はビルでした」オチもけっこういいと思うけど。ダメ?

 仕事本を読むのに疲れたので、なにかと話題らしい山田風太郎『太陽黒点』(こないだやっと紀伊国屋で見つけた)を発作的に読む。日下三蔵の助言に従い、ふだんは断る書店カバーに包んでもらったやつ。しかしオチがあるとわかって読むと、否応なくオチは割れてしまうのだった。もうちょっと書き方はある気がするけどなあ。

 届いたまま、中を開けていなかったジョン・クルート『SF大百科事典』(グラフィック社6500円)を拾い読み。クルートはめちゃくちゃ悪文なうえに、データ関連がけっこういいかげんなので、監修者の苦労がしのばれる。しかし序文は浅倉さんにでも頼んだほうがよかった気がしますが。あと、やっぱり訳者校正はしたかったなと思いました。いやほんと、クルートの英語って訳しにくいんだ。


【8月11日(火)】

 本の雑誌の原稿書いたら思いきり行数オーバーしてしまったので、ヤングアダルト系をアニメージュに回すことに。むしろ逆にしたほうがよかったかも。

 歌野晶午『ヴードゥー・チャイルド』は、いきなりWWW掲示板が登場。けっこうリアルな感じ。ただし、「オンラインでしか知らなかった人物の意外な正体」は、すでにパターンが出つくした観があって、ややつらい。探偵役としてはよくできてますが。
 ネタは珍しく早めにわかっちゃったんですが、美しくまとまった本格でした。ただ、タイミングがちょっと悪かったかもなあ。

 引き受けきり締切がいつだったか忘れていた朝日新聞読書特集の「最近のホラー動向」な原稿を書く。最近のホラーはホラーかどうかよくわからないのが特徴。ウィルス・パニック物も朝日新聞的にはミステリーだったりするわけだし、オレ的にはSFなんだけど、しかし風間賢二はホラー10選に『マウント・ドラゴン』入れてたりするので、やっぱりそのへんの話ははずせないでしょう。風間セレクションが海外中心なので、こっちは日本中心にここ一年ぐらいのホラーを並べる原稿を書く。


【8月12日(水)】

 『鳩よ!』の翻訳文体変遷史(というほどおおげさでもない)原稿のために本を発掘しようと思ったら、『火星年代記』が出てこない(笑)。ヴォネガットも文庫が全然見つからない。しょうがないのでスクーターで南砂町のたなべ書店に出かけたら、いまごろ山田正紀の『弥勒戦争』とか『氷河民族』とかの角川文庫版がごっそりあるじゃないの。
 JAやSF文庫の絶版タイトルもけっこうあって、わりと狙い目かも。というか、ブックオフよりは収穫が多いでしょう。


【8月13日(木)】

『鳩よ!』のために昔の翻訳SFを猛然と読み返し、引用箇所を捜す作業をつづける。小笠原豊樹はやっぱり天才ですね。
 ハードボイルドの清水俊二や稲葉明雄に対して、本格ミステリの名訳者ってのがどうもイメージできず、確認のため、我孫子さんと法月さんに電話で取材。「昔の本格は読めるだけでうれしかったから、文章がどうのとか贅沢なことは考えなかった」というもっともな話(と、ここには書けない話いろいろ)。しかし決定版的な名訳があれば、いまの若い人にもクイーンやカーがもっと読まれたんじゃないかという気はするね。たまにクイーン読み返そうと思っても、翻訳が古くてつらいもんな。
 その点、SFのオールタイムベストに残るようなやつは、今も翻訳がそれほど古さを感じさせない気がする。小笠原豊樹は別格としても(小笠原訳のロス・マクはいまも立派に読める)、中田耕二の『虎よ、虎よ!』とか、福島正実の『夏への扉』とかさ。つづいて小尾芙佐、深町眞理子、伊藤典夫、浅倉久志……といたおかげで、五〇年代SFが日本のSFファンの心のふるさとになり得たのかも。というような話は高橋良平が書くべきだな、しかし。

 と悩みつつマイルストンで原稿を書いてるところへ、朝日新聞学芸部のF記者がやってきたので、最近の新聞書評業界(?)の話を聞く。新保さんはあまり元気がないらしい。いちばん驚いたのは、ファックスで送った原稿をスキャンしてからOCRにかけてデータ化してるって話。「だったらメールアドレス教えてくれれば……」と言ったら、「いや、メールはみんなあんまり使ってないんですよ」だって。パソコンのfaxソフトで送ったものをOCRでデータにもどすこともないと思うんだが。ま、新聞は特殊だからな。組版はほとんどDTPに近い状態になってるようです。

 MAG TIMEで『鳩よ!』原稿を無理やり仕上げ、家に帰って二見文庫の『サイバー戦争』を読みはじめる。原題はSociety of Mindでいきなりミンスキーなんだけど、この邦題はなあ。ビル・ゲイツが南の島に秘密基地をつくったらどうなるでしょうみたいな話――と思って読んでたら、上巻の最後のところでひっくりかえった。映画でいうと、「モロー博士の島」がとつぜん「○○○○・○○○○○」になっちゃったような衝撃。じつはすげえハードSFかも。これはぜったい違うラインだよなと思って『本の雑誌』からはずしたのに。くー。

 仰天したところで疲れたので、講談社文庫のグレッグ・アイルズ『神の狩人』に乗り換える。アダルト向け商用BBSの女性会員が次々に惨殺されるって発端のサイコサスペンスなんだけど、半分読んだかぎりではけっこうよさそう。『羊たちの沈黙』を引き合いに出す気持ちはよくわかりますね。
 それにしてもやたらコンピュータネタが多いよな。翻訳はどっちもコンピュータ用語よく調べてますが、たまにとんちんかんなミスがあるのが惜しい(「ワード・パーフェクトというファイル」みたいな)。


【8月14日(金)】

 お昼に起き、コミケ初日をパスして高校野球。明徳は組み合わせ抽選に恵まれたね。しかし高校野球なんか嫌いといいつつ、こういうときだけ郷土愛に目覚めるやつがいるから甲子園全試合中継がなくならないんだよな。まあ、明徳が高知の高校かというとやや疑問ですが。
 6−2になったところで家を出て歌舞伎町。引越オープンのロフト・プラスワンで奥崎映画「神様の愛い奴」を見る。しかしいちばん面白いところはボックス東中野の年越しオールナイトでuncensored版ラッシュを見てしまっているので、インパクト的にはいまいちでした。女王様パートがたっぷり長くてよかったけど。ここはやはり根本敬編集版を見たい。
 なお、今後もロフト・プラスワンでは不定期に上映するみたいなので、今回見逃しちゃったひともだいじょうぶらしい。あと、月曜のトークライブには三浦和義が来るそうです。

 せっかくお盆なので、ガラガラの道をタクシーで六本木ギャガまで。あっというまに着いちゃって時間あまったなと思ったら、川本三郎、塩田時敏、野村正昭、暴力温泉芸者等々が続々とやってくる。みんなお盆にやることないのか。
 映画は、塩田さんが今年のベストワンと断言する(向こうで2回見て、今日が3回めらしい)「ブギー・ナイツ」。「キッズ・リターン」のポルノ映画版ですね。いや、ボクシング映画がポルノになったんじゃなくて、ボクサーになるかわりにポルノ男優になる話。
 洋ピンはあんまり見てなくて、ハリー・リームスぐらいしか記憶がないのでいまいちぴんと来ない。ポルノ男優ってあんなにスターだったの?
 とはいえ、時代的にはどんぴしゃりなので(主人公はオレと同年生まれの設定)、ディスコ場面とか懐しく見させていただきました。字幕はクラブだったけど、ああいうのはやっぱり当時の言葉で訳していただきたいものである。ハイファイ関連とかもね。

 メシ食ってなくて腹がへったので、六本木のスバーロでスタッフド・ペパロニ&ソーセージ。けっこういけます。西葛西にもできないかな。

 ってことで、明日は(たぶん明後日も)コミケに行くのでみなさんよろしくね。


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