【5月23日(土)】

 2時に起きて、新宿に出かける。新宿南口ソフマップそばの雀荘ですでに卓を囲んでいる我孫子武丸、貫井徳郎、二階堂黎人、石毛さん@原書房の各氏に合流。麻雀のルールを知らないという河内実加嬢はずっと見学。
 貫井くんが絶好調で、我孫子さんが絶不調。なんと半荘4回連続でラスを引いてます。わたしは途中から入って半荘二回だけ。どっちも2位で2000ガバスの浮き。我孫子さんは5回めの半荘でやっと浮いたが、二位で焼け石に水。けっきょく我孫子さんが貫井くんに貢いで終わり、かな。
 喜国・国樹夫妻が合流したところで、甲州街道沿いのアフリカ料理屋、ローズ・ド・サハラに移動。カンガルー、ワニ、ダチョウの卵オムレツなどを食いまくる。ああ、ダイエット中なのに(;_;) カンガルーはいまいち。ムサカがうまかったな。メレンゲにブランディふりかけて燃やす巨大アイスクリームでしめ。さいとう姉妹とC嬢がやってきたところで、我孫子、喜国夫妻と6人で新宿パセラへ。

 ケータイで呼び出された水玉さんは、なぜか日下三蔵といっしょに登場。日下三蔵はワセミスの若者たちと歌っているらしい。日下三蔵の正体を知らなかった我孫子さんが驚いている。そうか、そんなに知られていなかったのか。しかし評論家で探偵で編集者という一人三役はすでに成立しなくなってしまったので惜しいことである。
 パセラは、セガ(タイカン)、BeMAX(日光堂)、JOY、GIGA、ゆーカラ、X2000、孫悟空(シンコム)、DAM、興商LDの全ソフト対応で30000曲以上のセレクションを誇るシステムなんですが、なぜか今日の新宿は曲順入れ替えが異様に激しい。リクエストしてから3時間出ない曲もあったりしてわけがわかりませんね。いったいどういうシステムでデータを呼び出しているのか、知ってる人がいたら教えてください。(と思ったら、あとでさいとうが直接取材してきた。なんか各社別に用意してあるHDがすべて使用中だと、自動的に順番飛ばすらしい)
 そういえば池袋のパセラで木曜に歌えた黒夢の「MARIA」は歌えなくなってました。これってアーティスト側の希望でカラオケには入れない約束だったのにGIGAだけうっかり入れちゃったとか、そういう曲らしい。なのでGIGAの入ってるとこ行ったらとりあえずリクエストしてみると吉。
 ワセミス組は2部屋おさえてて、片方はアニカラ専用。日下三蔵は「アイドル伝説えり子」の主題歌を歌うが、周囲の若者たちはだれも合いの手を入れようとしない。
「なに? きみたち見てないの? これをひとりで歌うとはなあ。さびしい〜」とか言いながらひとりで歌い続ける。が、まあヒゲがないからよしとしよう。

 お開きは午前4時。さいとう姉妹とタクシー帰宅。


【5月24日(日)】

 アスキーのコラム原稿と、角川の鈴木光司本の原稿。『ループ界』とかいう『リング』三部作+映画のファンブックのようなものらしい。けっこう枚数書かないといけないのでたいへんかも。気が重い的。


【5月25日(月)】

 2時に辰巳出版、4時に一水社とまわってプロテウス仕事。
 トーレン社長と別れて日比谷の東京會舘に向かい、H内さん@角川書店と『ループ界』の打ち合わせ。
 今日は横溝正史賞のパーティなんだけど、打ち合わせ後もはじまるまで時間があったんで、一階のティールームに下りる。T木さん@角川書店に呼ばれて、奥泉光、貴志祐介両氏のテーブルで、しばし「最近のSF」な話。貴志さんも昔はSFマガジンコンテストに応募してた人で、新作はわりと科学系らしい。

 ひとりでティールームにやってきた我孫子さんは憔悴した顔。なんか今朝も5時までカラオケしてた模様。
 6時になり、ふたたびパーティ会場へ移動。正賞の山田宗樹『直線の死角』は、よくまとまってて読みやすいミステリ。完成度は高いんだけど、こぢんまりした感じで、これが受賞したのはわりと意外でしたね。ま、主催にTBSが入ってることを思えば、TVドラマになりやすいこの作品の受賞は正解なのだろうが。
 オレ的なイチ押しは、佳作の尾崎諒馬『思案せり我が暗号』。来月刊行予定らしいのでぜひ読んでいただきたいわけですが、まあへんな小説。インパクト的には前回応募作『ブラインド・タッチ』のほうが上なんだけど、暗号一個で長編保たせるのはやっぱり才能でしょう。
 奨励賞の三王子京輔『稜線にキスゲは咲いたか』は、茶木さんイチ押しだった原発物。従来の原発物に欠けていた運転員の視点を導入したことと、方言の使い方は評価できる。審査員からは地の文の文章を厳しく批判されてましたが、まあ読めないほどではなかったと思った。まあオレにはあまり興味がない種類の小説ですが。

 しかしこのパーティの最大の見物は、茶木‐我孫子対決。今日の茶木さんは大マジ状態。会場のスミでのんきに食べてる我孫子武丸を捕まえて、『本格ミステリーベスト10』の我孫子原稿に関して思いきり反論。どんどんムキになるところが(横で見てると)面白い。
 茶木さんの文句は主に、

1 「本好きにはたまらない」という表現は、批判されるにはあたらない。

2 (書評ではなく)電話コメントの一部をあげつらうのは不当。まともな書評は「宝島30」に書いているのに、それについてではなく、たんなるコメントを例に一刀両断にされるのは納得できない。

3 新人賞の下読みに「隠然たる影響力」などない。創元系の若手評論家にこういう仕事が回らないとすれば、それは単純にキャリアの問題。

 という感じ。我孫子さんの主張は我孫子さんが書くだろうから、ここでは省略。
 オレの場合、『死の蔵書』は、「古本おたくには一読の価値があるミステリー」程度だと思ってるので、まあ「本好きにはたまらない」って表現がややデリカシーに欠けるものであることは認める。ただし、字数の限られた書評やコメントでは、その種の紋切り型を使わざるを得ない場合もありますわな。
 2については、無作為抽出に近い方法で分母が選ばれたんだから、茶木さんは運が悪かったと思ってあきらめるしかないでしょう。早川書房から我孫子さんにまわったコピーの中に「宝島30」のものが入ってなかっただけの話。
 3に関しては、我孫子さんの書き方が不用意だと思う。まともに書評できないやつが新人賞の下読みやってて、ミステリ業界で隠然たる影響力を行使している現状がミステリをダメにしているとか、ほとんど陰謀理論的な読み方を許容しちゃう部分がある。
 キャリアだけで書評担当者や下読み担当者を選んでいる編集者の無定見を批判するのが我孫子武丸の持論であることは、ごった日記読者には自明だとしても、あの書き方では、『「本好きにはたまらない」としか書けないやつに新人賞の下読みまかせておいていいのか』と言ってるようにも見えるもん。
 新人賞の一次選考担当者を選んだ経験のある元編集者として言えば、該当ジャンルに関する読書量と一般常識が最大の基準でしょう。書評能力とか文章力とか、あるいは特定作品についてつっこんだ考察ができるかどうかは、一次選考者の適正とは別問題。
 また、最終候補の決定権は編集部が持っている場合のほうが多いので、一次選考者を交えて最終候補を決定する賞(乱歩賞、横溝賞、新潮ミステリー倶楽部賞など)とは事情が違ってくるわけです。
 いずれにしても、書評の話と新人賞選考の話をごっちゃにしたのはよくなかったような。

 もうひとつ、書評業界で感情的な反発があったのは、「こんなやつに書評させるな」とか「こんなやつに下読みやらせるな」的な論調が、「生活権の侵害」と受け止められたせいかも。書評者は、小説をけなしても、「こんなやつに小説を書かせるな」とはふつう言わないわけで、「個々の書評について文句を言われるならともかく、イメージだけで切られるのはかなわん」という思いがあるような気がしますね。
 作家が売れ行きで淘汰されるのに対して、書評者は能力に関係なくコネとキャリアだけで生き延びていくから積極的な批判が必要……という我孫子説はある程度まで納得できるにしても、その場合の批判は、やはり具体的な個々の書評を対象にしていかないと説得力がない。
 ま、『本格ミステリベスト10』のあの原稿一本に対してそれを求めるのは筋ちがいかもしれないけど、なぜ書評家がいっせいに反発したのか、その理由が我孫子さんにはよくわかってないみたいなので、とりあえず大森説を提示しておきました。

 パーティ後は、東京會舘ティールームで休憩。柴田よしき、図子慧、新津きよみ、N崎@角川書店の各氏のテーブルにすわったら、初対面の人がふたり。スーパーファンタジー文庫で活躍中の荻野目悠樹氏と弓原望氏でした。これさいわいとヤングアダルト業界のネタを仕入れる(笑)。金蓮花の素顔、とか。あんまりSFな話ができなかったのでちょっと残念かも。ちなみにハルキノベルスの柴田さんの新刊を見せてもらいましたが、近未来SF吸血鬼物らしい。60年代のPKDをちょっと意識したとかいう話なので、これは楽しみ。

 ティールームが閉店になったところでミステリ組と合流し、帝国ホテルのレインボーラウンジ。受賞者三名と角川組多数のほか、綾辻、宮部、我孫子、C塚、津原泰水、室井佑月など各氏。
 尾崎諒馬さんとはこの席でやっとゆっくり話ができたんだけど、作品と反対にすごくまじめそうな人でした。本格スピリットにあふれた話を書いてるだけに、綾辻さんが作品に厳しいつっこみを入れてたのが印象的。愛のムチっていうか、「このネタをこう使うのはもったいなさすぎる」みたいなしごく具体的な話。綾辻さんが選考委員だったから横溝賞に応募した――ってことなので、その甲斐があったというべきか。

 AM12:00でレインボーラウンジが閉まってから、いつものメンバー4人(綾辻・我孫子・大森・さいとう)と珍しい人4人(津原・室井・角川2人)でタクシー二台に分乗し、飯田橋カーニバル2に移動。カラオケ嫌いを広言する津原さんがいきなり「ボヘミアン・ラプソディ」で玉砕したりしてましたが、さすがミュージシャンな歌唱力。
 しかし夕方あんなに疲れた顔してた我孫子さんは三連荘にもかかわらず元気。けっきょく3時過ぎまで歌ってタクシー帰り。


【5月26日(火)】

 2時過ぎに起きて、トーレン社長と3時コアマガジン。なんかぐったり疲れたので、軽く飯食ってちょっと仕事してから帰り、10時には寝床。
 12時から「日本でただひとりのカラオケライター」がビデオ出演する「ワンダフル」だったのに忘れて寝ちゃったよ。


【5月27日(水)】

 午前6時起床。
 きのうのワンダフルのビデオを見る。パソコンの前からえらそうにコメントするさいとうよしこ。『アニカラ100』とか絶版の著書を長く映してもらってもなあ(笑)。
 しかし四社の取材VTRの合間にさいとうのコメントが入る編集だったので、けっこうお得だったかも。やっぱり日本にひとりしかいないと強いよね。あとはやっぱり六本木のプールつきカラオケ取材でしょう。

 SF Onlineが無事に更新されている(映画レビューとか、間に合ってない原稿も多いけど)。
 特集はSFセミナー98。「全21企画のすべてを完全レポート」がウリなんだけど、合宿企画を出演者(主催者)にレポートさせる方式はやめたほうがいいんじゃないですかね。森太郎は客観レポートらしくまとめてたけど、あとはおおむねレポートになってない気が(とくに堺三保。あれなら自分で準備したビデオのタイトルリストぐらいつけておけばいいのに)。スタイルにあまりにも統一がなさすぎ。添野知生型のレポートを標準にすべきだったのでは。深上レポートは先輩の遺産を継承してる感じ(笑)。ちゃんと文句を言ってるのがえらいね。しかし、質量ともにPINKのセミナーレポート(ってもう10年ぐらい前か?)には及ばず。そうそう、この機会に資料としてアレを電子化すればよかったのにと思いました。

 事実関係のあやまりをいくつか。「ネットワークとファンダム」について、添野知生は、
「大森氏のネット上での呼びかけを受けて参加した、《書物の帝国》に代表される“SF古本系ホームページのネットワーク”の人々の活発さは目立っていた」と書き、
 深上鴻一は、
「せっかく大森望氏らが“ネットで知り合った初参加者”の方々をお誘いしていたのだから、彼らを中心に据えるべきだったのではないだろうか。」
 と書いてるけど、オレが呼びかけたり誘ったりした事実はありません。ネットの人はネットの企画があれば勝手に集まるもんでしょ、ふつう。そりゃ「SFセミナーあるから来てね」とか日記には書いてるけど、そりゃ毎年やってることだもんな。
 この企画に関しては、そもそもNIFTY-ServeのSFフォーラム草創期の話と現在のWWWの話をいっしょにやるのは無理があったんじゃないかと思いますが、まあ小浜くんの企画だからね。

「SFセミナーの歴史と現在」を三村美衣が書いてるのも(外から見ると)たぶんよくわからないところで、何年から何年までSFセミナー事務局長をつとめたとか、そういう基本的なプロフィール情報が必要でしょう。
 この原稿の註8で、「合宿ではセミナーに毎年参加している作家、翻訳家、研究家、編集者による企画が基本だが、“SFクズ論争”を仕掛けた『本の雑誌』発行人・目黒孝二が合宿企画のためのゲストとして登場したことがある。」というのも誤解を招きやすい表現。これは96年セミナーの話で、まだSFクズ論争は起きていないし、ゲストに呼んだのは、目黒考二ではなく(「孝二」は誤字)、小説すばるに「現代エンターテインメントの新しい波」を書いた北上次郎。
 しかし特集一本で行くなら、せめて過去の企画一覧ぐらいはほしかったな。

 小説の書評は(間に合ってないやつはともかく)あいかわらず数が少ない。というか、選択基準がよくわからない。海外に関してファンタジーとホラーをフォローするなら、国内作品でとりあげるべきものがもっとたくさんあると思うんだけど。
 海外作品でも、たとえばここ2、3カ月に出た『エドガー@サイプラス』『虚数』『こちら異星人対策局』『戦闘機甲兵団レギオン』『伝説の船』あたりが落ちてるし。ここ半年の平均新刊レビュー点数が4点ちょっとっていうのはなあ。
 ちなみにSF Onlineで毎月どんなのが紹介されてるかは、SF Online月号別書評作品(小説)一覧をつくってみました。


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