【9月11日(木)】

 ミストラルで仕事してから、3時半、東銀座の松竹本社地下で、黒沢清の新作「CURE」の試写。やればできるじゃん、って感じの傑作。「セブン」に似すぎている(犯人逮捕で事件が解決しない)点はあるにしても、映画の出来は「セブン」より上かも。映画オリジナルのものとしては、ネタ的にも秀逸だし、萩原聖人も(こっちは「マークスの山」からの引用に近いけど)それなりに不気味。最近のホラー/サイコサスペンス映画の中では出色でしょう。ただし、うじきつよしはちょっとね。

 はじまる前に外で煙草吸ってたら、久美沙織さんがやってきて、「先に荷物置いてくる」と言って試写室に入り、大森の席を指さして、「これ、アボさんの荷物?」  どうしてバレたんだろうと思ったら、『火星夜想曲』をとりだし、「ここまで読んでるの」と栞を指さす。わたしの席には読みかけの『火星夜想曲』が置いてあったんですね。さすが話題作。途中まで読んでる感じでは、まったく火星版『百年の孤独』です。
 試写室では、ひさしぶりの稲田隆紀氏と野村正昭氏にも会いました。

 映画のあと、東銀座から九段下乗り換えで神楽坂に出て、出版会館の『幻想文学1500ブックガイド』出版記念パーティ。幻想文学発行人の川島徳江(石堂藍)女史と東雅夫氏が主賓。幻想文学系のパーティは初めてなんで、珍しい人、ひさしぶりの人多数。矢野浩三郎氏とか、岡野玲子さんとか。稲生平太郎(乗水金太郎)氏とは、15年ぶり。昔はこわそうな人だったけど、すっかり話し好きのいいおじさん(失礼)になってました。
 10月に結婚が決まった宍戸健司課長@角川書店書籍第一編集部も来てて、あいかわらずマメなことである。作家では篠田節子、篠田真由美、井上雅彦、森奈津子とか。SF系は塩澤編集長のほか、三村、小浜、山岸、菅浩江、牧野修などなど、10人ほど。井上雅彦氏、菅ちゃん、東編集長の並んだスナップはこれです。
 あとは国書刊行会の磯崎編集長による著者コンビ紹介が個人情報満載で爆笑でした。

 パーティ終了後、二次会組と別れて、外堀通り手前のカラオケボックス、ビッグ1になだれこむ。コンサート前にSMAPの歌を練習したいという浅羽莢子さんの強い希望(笑)で実現しただけあって、SMAP歌いまくり大会。溝畑@出版芸術社は接待モードでSMAPのアニソンがんがん入れるし。孫悟空じゃなくてほんとうによかった(笑)

 とか言いつつガガガを絶唱してる最中に、二次会から抜けてきた東編集長と倉坂鬼一郎氏が登場。東さんの「さそり座の女」は噂通り絶品。さすが幻想文学カラオケチャンピオンベルト(というものがあるらしい)保持者だけのことはありますね。この幻想文学コンビによる「北ホテル」デュエットもすばらしく、ビデオ持ってっててほんとうによかった(笑)。
 午前1時ごろには、インターネットラジオ出演を終えた武田さん@ガイナックスもやってきて、正調「愛国戦隊大日本」その他で盛り上がる。溝畑は勝手にガイナックス縛りの選曲してるし。
 けっきょく解散は午前3時ごろ。タクシーで帰って倒れる。


【9月12日(金)】

 先月末が締切だったスニーカー大賞一次選考の原稿を猛然と読む。1箱分だけはアメリカ出発前にかたづけてたので、残りは20本(正確には16本)。あいかわらず異世界ファンタジーが多いが、はっきり言って、いまヤングアダルトでデビューしようと思うなら、ありがちな西欧型異世界ファンタジーは出すだけ無駄でしょう。もうちょっと傾向と対策練ったほうがいいのでは。といって、サイバースペース物がそんなに流行るとも思えないけど。学園バンパイア物とか、学園妖怪物とか、せめてそのあたりか。歴史物はちょっと減った気がするな。

 8時、新宿(というか初台)のパークハイアット40階の和食レストラン〈梢〉で、大槻ケンヂ×今野敏対談。小説すばるの企画で、テーマは格闘技(ほとんど古武道)。べつに司会ってわけでもなくて、原稿化の仕事を受注したので、たんに現場に遊びにいっただけ。ほとんど野次馬ですね。
 固有名詞の8割は意味不明で、いやはやこの世界も奥が深いっす。謎の言葉で盛り上がってたけど、英語がまじらないだけM:TGとかよりましか(笑)。しかしこんな話をどうやってまとめるんだっ。ちょっと勉強しないとなあ。
 担当は当然C塚嬢。記念写真はこれですよ>C塚さま。
 ところでこの日はサンフランシスコで買ったエイリアンTシャツ(グレイ×2)を来てたんだけど、それを見るなり大槻氏、
「ボク、いま非常に興味があるんですけど、エイリアンのグッズがすごく流行ってますよね。でもその肖像権はいったいどうなっているのか。許可とってないでしょう(笑)。
 ある日宇宙人がやってきて、肖像権侵害だと訴えて、莫大な使用料を要求するとか、そういうことってないですかね」
 あるかも。


【9月13日(土)】

 午前8時起床。時差ボケはつづく。寝床でしばらく馳星周を読んでから、10時に出かけてビルディで仕事。混んできたところでミストラルに移り、もうちょっと働いてから新宿に出て、ピカデリー3で市川準の「東京夜曲」。
「フーテンの寅さん」的導入からはじまる下町噺。市川準は昔からごひいきで気持ちよく見られる映画。今年のベスト5は確実かな。しかしピカ3は客席を通らないとトイレに行けないつくりで、次の回の上映を待つ人々がひっきりなしに通ってくので、市川映画を見るには最悪かも。

 三丁目までもどって、地下の金券ショップで前売り買って、新宿ビレッジで「キャッツアイ」「シャ乱Qの演歌の花道」の2本立て。休憩時間中は「キャッツアイ2000」がずっと流れてるんだけど、まあ「もののけ姫」の主題歌がずっと鳴ってるよりはましですね。
「キャッツアイ」はオープニングのアニメが実写に変わるまではナイス。ビジュアルはティムバートン真似のキャットウーマンだけど、まあマンガの映画化としては標準的選択でしょう。稲森いずみの瞳をはじめ、三姉妹は悪くない。しかし俊夫はなあ。マンガでもなんとかしてほしいと思うけど、映画ではさらにデフォルメされてて正視に耐えない感じ。林海象ってギャグセンスは全然ないんじゃないの。宮崎ルパンノリの銭形警部って線を狙ったんですかね、これは。アクションは香港映画っぽくてワイヤーワークも入ってるけど、いまいちおさまりが悪い。全体的にはダメでしょう。
 それに対して、滝田洋二郎の「演歌の花道」は安心して見られるコメディ。コテコテギャグがそれなりにサマになるこの才能はやっぱり貴重かも。しかし日本音楽大賞場面のカメラはちょっと。口パクじゃない設定なんだから、あそこだけテレビっぽい口パクな絵になるのは変だよなあ。でも、この手のグループ出演物コメディとしては、「チェッカーズのたんたんたぬき」以来の秀作では。って「キャッツアイ」のあとだからよく見えただけ?

 明治通りをわたり、中央通りをちょっと歩いて、おなじみペガサス館ビル6Fのゼニス。山岸真主催のカラオケ宴会に合流……と思ったら、エレベーターを降りたとたん、佐藤哲也氏とばったり。ど、どうしたんですか、こんなところで。と訊ねると、横にはスタジオハードのアニカラ王者・木川氏が(笑)。さらに佐藤亜紀女史までいるじゃありませんか。それも今日、パリから帰ってきたんだとか。成城大学SF研のOB会の二次会とか、そんな趣旨だったらしい。このファンタジーノベル大賞作家コンビのほか、初対面の人も3、4人いて、名刺をもらったら、大映の人とリブロの人とジャストシステム出版部の人だった(笑)。おそるべし成城大学SF研。あとでさいとうに言われて気がついたけど、「サカオちゃん」つくった人たちだったのね。なるほど、それなら納得。
 しかし土曜夜のゼニスに予約なしで来るのは甘いぞ(笑)。

 一方、山岸カラオケのほうは、川口晃太朗@世界SF情報、内田昌之、小木曽ゆき、河野佐知、田中光、牧紀子、さいとうよしこなどのメンツ。さらに嘉藤景子、山田順子も合流して盛況でしたが、けっきょくアニカラだったり。
 45分待ちで入室した成城組もやっぱりアニカラ。佐藤哲也氏は「おはよう、スパンク」とか歌っていたらしい。

 11時半にお開きのあと、山岸組は「コンタクト」&「フィフス・エレメント」のオールナイトに流れたんだけど、わたしはどっちも見ちゃってるし、なにしろ朝型の人になってるんで、終電でとっとと帰りました。土曜日は新宿三丁目発11時47分が、最終の西船橋行きに接続するんだよ、とメモしておこう。


【9月14日(日)〜15日(月)】

 秋の宴会ラッシュ第一弾がやっと終わり、早寝早起きではCity of Lightの追い込み。やっと先が見えてきた感じ。完パケまであと一週間、かな。次がつかえているのでたいへんかも。
 馳星周『鎮魂歌』読了。著者献本につづいていまごろ書評献本が届き二冊になってしまいました。今回は「操り」テーマで、ほとんど馳版『絡新婦』。ってちがうか。まあ『血の収穫』なんですけど、真の主役の健一は表に出てこないという趣向。操られるふたりの視点で交互に語られ、いっしょになったときに破局が起きる。しかしこんなに死んでいいのか(笑)。
 元刑事のキャラがいちばん立ってるんで、こいつの視点だけに絞ってもよかった気がするけど、クォリティ的には前作に負けていない。しかしこのつづきがもしあるとしたら、書くのはたいへんだろうなあ。

 井上夢人『風が吹いたら桶屋がもうかる』を読む。ごった日記でネタをばらされていたので(笑)、多少インパクトが薄れたかも。しかし当て馬にするためだけにこれだけの論理を構築するのはさすが井上さんですね。ただし、一冊つづけて読むと、くりかえしの部分がギャグに見えなくなってくるのがつらい。途中、もうちょっとパターンを崩してもよかった気がする。

 しかし夜になるとすぐ眠くなるので未読本の消化がなかなか進まない。


●渡米前で書く時間がなかったあきこん2日めの日記を追加しました。

日記の目次にもどる
ホームページにもどる
リトル東京ページにもどる