【8月22日(金)】

 1時ののぞみでさいとうよしこと東京を出発。京都から綾辻行人・我孫子武丸・小林泰三の三氏が合流。5時前に広島到着。
 暑い。
 路面電車でのんびり説は綾辻氏に却下され、中型タクシー5人乗りで広島プリンスホテルに乗りつける。チェックインして部屋に荷物を置き、軽く着替えて1階のティーラウンジへ。
 前泊組の見た顔がちらほら。ロビーで立ち話してるうちに、柴野拓美夫妻を発見し挨拶。ワールドコンへは行けなくなったから、参加申し込みしてないならメンバーシップをさしあげますよ、とのありがたいお言葉で、今年もまた参加料を払わなくてすんでラッキー。しかしタクミ・シバノの代理はとてもつとまんないっす。
 柴野さんの部屋でプログレスと譲渡確認書をいただいて一階に降り、ラウンジへ。広島出身の津原泰水氏がやってきて、さらに昼から大瀧啓祐邸を訪問していた小浜徹也・三村美衣夫妻も合流、街へくりだしてお好み焼き三昧……の前に、前夜祭宴会をちらっと覗いて、って話になり、宴会場へ。250円のチケット6枚買う経済的システム。しかし知り合いの顔がわりとすくない。作家では、高千穂さんとか、ひさしぶりの大和真也嬢とか。
 一時間ぐらいだらだらしてから、ビンゴを待たずにホテルを脱出。いざ広島市街――というところへ、明日の自主企画、〈SF&ミステリークラブ〉を担当する女性コンビ、籾田さんと中本さんが登場。副実行委員長の小沢くんから、今夜打ち合わせを、って言われてたんだけど、すれちがい寸前でしたね。
 ふたりも地元だってことで、いっしょに市街へ出て、道中で打ち合わせをかたづけることに。綾辻・我孫子・小林・津原・小浜・三村・大森・さいとうに、水鏡子師匠と菊池誠助教授が加わり、総勢12人がタクシー三台に分乗して出撃する。SF&ミステリ混成部隊――って、津原さんと小林さんのぞけば、ほとんど京フェスの合宿だけど(笑)
 最初のスポットは夜の原爆ドーム。SF大会で世界遺跡が見られるとわ。しかしモニュメントとしてのインパクトは強いね。ライトアップされてるし。中本さんのお父上は、爆発の光を目撃したそうで、広島ではやはり、原爆体験がきちんと語り伝えられているそうです。
 しかしそれにもかかわらず、原爆ドームでは検閲により以下78文字抹消たりして、まったく凶悪だよね、っておれもか。その瞬間、ばさばさと巨大な鳥が頭上を飛び去っていったのは、まるで山田正紀の『妖鳥』から抜け出したような光景で、ちょっとどっきり。
 原爆ドームから広島市民球場横をてくてく歩いて、本通り方面へ。広島名物・ぷよまんの店の前で記念撮影とか。DEODEOの本社が広島にあったとは知りませんでした。うーん、でかい街だ。人通りも多いし。がんがん突き進んでいく津原さんからはぐれないように必死に歩きつつ、地元の中本さんから広島基礎情報を取材。奥田民夫記念館とか吉田拓郎博物館はないらしい(笑)。
 放浪の果てにたどりついたのはお好み村。なんか津原さんのお目当ての店は満席だったらしんですが、まあ総勢12人だからしょうがない。
 屋台村みたいなものだと思ってたら、〈お好み村〉はお好み焼き専門店雑居ビル。秋葉原ラジオデパートのお好み焼き版みたいなもんか。本場の広島お好み焼きはたしかにうまい。が、しかし、これはやっぱり焼そばだよなあ。お好み焼きとは別のカテゴリーに属する気がする――という話から、「これは本格じゃないけどミステリーとしては面白い」とか、「SFじゃないけどエンターテインメントとして楽しめる」とかの議論へ発展し、「広島本格」「広島SF」の新語が誕生。現在のジャンル混迷状況に貴重な示唆を含む食べものである、かもしれない。
 ちなみにおなじ時間、お好み村の三階では、関智@徳間書店がお好み焼き食べてたらしいんだけど、全然気がつきませんでした。
 満腹になって店を出てから、またひとしきり放浪したあと、セガカラ2時間半。二部屋に別れて六人六人。セガカラの新曲に夏エヴァの、「Komme, Susser Todd」(ってスペル自信ないっす。ドイツ語の単位とったのに(;_;))のほうだけが入ってて仰天。し、しぶい。(と思ったら、どんぶらこんでセガカラの担当者に取材したさいとうよしこ情報では、ほんとは「Thanatos」も同時に入るはずだったのに、手違いでこっちが先になっちゃったんだそうです)
 午前2時ぐらいに解散して、プリンスホテルにもどり、うちの部屋でしばらく雑談。三村美衣は明日のクイズの準備に呼ばれてあわただしく去り、さらに小浜も呼ばれる。たかが60人程度の部屋の一時間クイズ企画の準備にどうしてそんなに大騒動するのかよく理解できない(笑)。たぶん、関係者の人数が多すぎるせいだろうな。
 午前4時ごろ風呂に入って爆睡。


【8月23日(土)】

 9時ごろ、中本嬢からの「今日はどうするんですか」電話で目を覚まし、眠りつづけるさいとうを残して朝食バイキング。10時までの朝食タイムに10時過ぎてのんびり食べてるような客はだいたい知り合いばかり(笑)
 11時から企画の打ち合わせに本部へ来いってことだったので、2階の大会本部に顔を出す。ひさしぶりの関さん@徳間書店が暇そうにしてたので、近況を聞く。銀英伝のゲームを担当してて、「揺りかごから墓場まで」面倒を見てるらしい。(関さんにしては)地味めのスーツなんで、どうしたんですかと聞いたら、「いや営業だからね」。広島の大手販売店を訪問する、本物の営業の仕事も兼ねているらしい。向いてるかも。若手の社員もひとり連れてて、「セル画のプレゼントもやるんだよ」って話のあと、その後輩のほうを振り返り、
「じゃあ大森さんにヤンを一枚」
 後輩の人は袋からヤン・ウェンリーのセルをとりだして、「こちらでよろしいでしょうか」だって(笑)。どうするんだ、ヤン。でもちょっとうれしいかも(笑)

 12時からは2階のホールでオープニング。プロジェクターに文字を映し出すシステムはワールドコンのヒューゴー賞授賞式風で悪くない。道原かつみ、武田康廣、綾辻行人、柴野拓美のゲストスピーチもあったりして、まずまずの出来だったのでは。でも、来年の大会代表の挨拶はちょっとなあ……。あ、来年は名古屋のカプリコン1(笑)。MEICONじゃないのはなにか理由があるんでしょうか。ちなみにCAPRICON1のページはすでにオープンしています。

 午後イチの企画は、SFオンライン主催の「最強SF者決定戦」。「クイズ100人に聞きました」形式を採用、司会は川崎昭博、問題朗読は三村美衣、得点板操作は添野知生、ディレクター(?)は堺三保、プロデューサーは坂口哲也@SFオンライン。回答者は、めるへんめーかー(マンガ家)、森岡浩之(作家)、塩澤快浩(編集者)、大森望(翻訳者)の四人。
 オンラインで集めたアンケート結果を問題に採用、多数回答のうち上位6つをパネルにして、回答者があてるとパネルを開いていくシステム。で、得点は、最後のパネルを開けた回答者の総取りと、運の要素を大きくしてるわけですが、出題サイドのシステム理解に統一性がなかったり(笑)。スタートしてから相談はじめるんだもんなあ。
 ダービー問題を連続正解した塩澤編集長が圧倒的リード(172点)を保ちつつ最後の一問を迎えたんだけど、ラストのボーナスポイントは173点(笑)。最後の一問ですべてが決まるという、「いままでやってきたことはなんだったんだ」的配点で、オレ的には断固反対なんですけど、でもおかげで優勝したからいいや(笑)。
 問題と回答はそのうちSFオンラインで発表されるでしょう。
v  クイズのあとはしばらく空き時間なので、ラウンジでお茶。「週刊TVゲーマー」のSF大会取材班からコメント取材を受ける。アクセラ社員の名刺をはじめてもらいました。質問は最近のSF状況とか、SF大会の変遷とか。
 ちらっとディーラーズ・ルームを覗いて、SF資料研究会の「SF書誌の書誌」その他を購入。片隅ではM:TGワンブースター・ドラフトのトーナメントも開催されてるんだけど、企画とぶつかって出られないのが残念。

 4時15分からは、林田くんの企画の「ワールドコン初心者の部屋」。山岸真と漫談する企画らしい(笑)。大会サイドからのオフィシャルな出演依頼が大会当日までなかった山岸氏はけっこうむっとしていたらしいけど(笑)、ワールドコン講義はためになりましたね。大会開催地決定システムとか。四年に一度、アメリカ国外に出るルールがあったとか、はじめて知りました。
 しかし、聴衆の半分くらいはオレよりたくさんワールドコンに行ってるような人たちで、企画趣旨にふさわしい人(これから行ってみたいと思っている人にワールドコンの魅力を伝える)がいたかどうかは謎。20人ぐらいしか集まらなかったけど、まあこんなもんでしょう。

 つづいては、小浜徹也の「海外SF初心者の部屋」。作家・翻訳者が「この一冊」を推薦する企画。これまた半分以上は初心者といいがたいSFゴロな人たちで占められる。最前列にすわって居眠りする水鏡子とか。ええかげんにせえよ。

 7時15分からは、いきなり浴衣姿でやってきた籾田・中本コンビによるSFミステリー・クラブ。前半はトーク、後半はマーダーゲーム。参加者は、綾辻・我孫子・有栖川・大森。例によってわたしは、質問に対する回答にツッコミを入れる係を担当する。なんかけっこう真面目な質問が多かったですね。客席最前列には若い女性がずらりと並び、とてもSF大会とは思えない雰囲気。まあほのぼととおかしいトークにはなったんじゃないかと。

 ようやく今日の企画がぜんぶ終了して外に出ると、SFの人たちはだれもいない。一階のティーラウンジも閉まってて、爆発的に腹が減ってるのにどうするんだ。綾辻氏は外に食事に出る気力もないってことで、けっきょく、綾辻部屋でぷよまんとかもみじまんじゅうとか食べて飢えをしのぐことに(笑)。と思ったら冷凍食品自動販売機電子レンジ付きのごときものが置かれてて、をを、これだよ。とチキンナゲットを買って綾辻部屋で貪り食う。
 落ち着いたなあとかなごんでいると、さっきのSFミステリークラブ企画のスタッフ&観客の人々がコンビニで買い入れた食料・飲料を手に大挙登場。その数12人。全員女性(笑)。有栖川さんもやってきたけど焼け石に水っていうか。なぜか浅羽莢子さんもいて、ベッドにどんと腰を下ろし、若い娘三人を向かいにすわらせて、例によってキムタク礼賛の言葉を流れるがごとき口調で弁じている。床に座り込んだお嬢ちゃんトリオは京極話で勝手に盛り上がり、ときおりけたたましい笑い声が。窓ぎわで綾辻氏としゃべってても声がよく聞こえないくらいで、いやはやたいへんなもんです。
 途中、部屋を覗きにきた水鏡子&福井健太(ってどういう組み合わせだ)は、部屋をひとめ見るなり、「じゃ、上のバーラウンジに行ってるから」とそそくさ退散したくらいで。うら若き女性の山は水鏡子よけのお守りとしては強力かも。

 一時間ほど綾辻部屋にいてから、他所を偵察に行く。最上階のバーでは、我孫子・津原が二丁目系の話で盛り上がる。我孫子さんは二丁目でぜったいもてるタイプらしい。水鏡子・福井はなぜかSFの話をしている。『妖説・太閤記』はなぜSFか、とか、SF者が耳タコでもう十年以上まともに耳を傾けてくれなくなった話を聞いてくれる相手を見つけて、水鏡子師匠はうれしそうである。

 9階のお茶大ファミリールームは早川トリオ(阿部・塩澤・清水)はじめ、業界系SF者の巣窟って感じ。こっちは星雲賞ネタとか連合会議ネタ。いろいろと面白いことがあったらしいが、未確認につき続報を待て。


【8月24日(日)】

 9時半ごろ起きて、10時までの朝食バイキングにすべりこみ。さすがに頭がぼうっとしている。が、11時からはパネル。開始時間直前にあらわれた我孫子武丸はもっとぼうっとしている。すっかり二日酔いらしい。が、とにかく時間なので前にすわる。客席は昨日のリプレイを見ているようである(笑)。まあでも、昨日よりは男性の数がちょっと多いかも。 〈The Thirdwave Riders〉といいかげんなタイトルをつけたこのパネル、2時間とれたので二部構成に変更し、第一部は、我孫子武丸×小林泰三のSF談議。我孫子さんは半分寝てるし、小林さんはパネル初出演なので、最初は全然調子が出ない。SFのタイトルが話に出ても、ほとんど客席の反応がないし。SF大会なのに(笑)。
 まあでも具体的な作品の話になるとそれなりにエンジンがかかってきて、後半はけっこう盛り上がったような。この模様は10月のSFマガジンの〈SFインターセクション〉に再録予定なので、くわしくはそちらを見てね。
 第二部は、有栖川有栖×綾辻行人を迎えて〈新本格の現在〉みたいな話。清涼院流水を〈空虚なる中心〉とするパネルだったような(笑) 『十角館』から十年たって、なにがどう変わったか、本格の未来は、とかそういう話題。有栖川さんもけっこう話芸の人で、客席はウケてました。が、まだ頭がまわってなくて、脊髄反射で司会してたので内容をよく覚えてないっす。パネリストの皆様にはご迷惑をおかけしました<(_ _)>

 企画のあとは下のラウンジでぐったり休憩。SFオンラインから、ワールドコン取材用のデジタルビデオカメラをいきなり渡される。そういえば広島で渡すとかいう話もあったけどすっかり忘れてたぜ。ソニーの最新型で、なんでも昨日デオデオで買ってきたらしい(笑)  ありがたく受けとって、さっそく試し撮り。扱いは簡単、軽くていいっす。しばらくビデオで遊んでるうちに、ホテルから出る宮島行きの船が2時過ぎにあるってんで、エンディングを待たずにとっとと出かけることに。をを、いきなり世界文化遺産の撮影かっ。
 というわけで、一昨日の市内観光ツアーメンバーその他総勢20人ぐらいで船に乗り、一路宮島へ。ひさしぶりに船に乗ると楽しいなっと。島に上陸し、
鹿を冷やかしながらぶらぶら歩く。もみじ饅頭の山を横目に世界文化遺産をめざす。地元ガイドつきなので安心です。女性ファンに囲まれて厳島神社を歩く有栖川・綾辻コンビとか、すっかりツアーな状態だったり。
 三村美衣はバッグを一個、会場に忘れてきたとかで、PHSをかけまくって遠隔捜索。ようやく発見の報が届き、小浜夫妻はホテルへ引き返す。なにもあんなに大騒動しなくたっていいと思うんだが。
 ひとまわりしたあと、かき氷組と別れ、地元・宮島の中本嬢が、広島一うまい穴子飯と太鼓判をおす店に、女性4人と出撃。奥が料亭になってるらしい高級感漂う造りで、お値段もなかなかでしたが、それだけのことはある味。あとから綾辻・我孫子・小林・津原、さいとうも合流、本場の穴子を堪能する。ビデオでお見せできないのが残念です(笑)

 ふたたび全員集合のあと、フェリーで宮島口に出て、JRで広島駅。7時ののぞみでまっすぐ東京に帰還する。
 ところで我孫子さんは、若いお嬢さんたちから、すっかり「こわいひと」と思われていたらしい。たしかに黙ってるとこわいかも。


【8月25日(月)〜26日(火)】

 出発前に嵐のように仕事をかたづける。スニーカー大賞の下読みの締切をすっかり忘れてたのはまずかったな、しかし。

 さて、8月27日(水曜日)から一週間ほど、このページでの日記の更新はストップします。狂乱西葛西日記特別編、「大森望のワールドコン日記」(仮称)として、サンアントニオよりお届けしますが、これはSFオンラインの連載になります。まだURLが決まってないので、トップページからたどってね。では。


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