●月刊PLAYBOY1月号のミステリー特集では、PLAYBOYミステリー大賞選考会、日本ミステリー・オールタイムベスト100、年末ランキング予想、インタビューなどを担当。
●リニューアルしたハヤカワミステリマガジンで新刊SF書評がスタート。あと、『ミステリが読みたい! 2008年版』(通称・早ミス)、『このミス』の座談会と『このラノ』のいつものやつ。ミステリチャンネル恒例「闘うベストテン」は12月からオンエア。ニール・ゲイマンと恒川光太郎と有川浩のインタビュー(Mysteryゲスト・ルーム)もたぶん流れてるはず。
●文春文庫の乾くるみ『リピート』に30枚の解説を書きました。なぜか最後はSchool Daysネタ。こんなはずじゃなかったのに。道尾秀介『背の眼』(幻冬舎文庫)、曽根圭介『鼻』(角川ホラー文庫)の解説も。他に小説新潮2007年11月号の星新一特集で星新一ベスト3を選んだり。
●現在、書評の連載媒体は、週刊新潮、共同通信(楽読楽書)、北海道新聞(現代読書灯)、日刊ゲンダイ(マイ・ベスト・ブック/隔週土曜)、小説すばる、月刊PLAYBOY、ミステリマガジン、ClubiT。そのほか、MEN'S EX(映画評)、SFマガジン(大森望のSF観光)など。出演番組は、CSミステリチャンネル「MYSTERYブックナビ」(月1回更新)、文化放送ワイド番組「大竹まことゴールデンラジオ」の「大竹紳士交遊録」(毎週木曜)。
■2007年08月30日〜9月3日 Nippon2007日記
■1日目(08月30日)
14:26
とりあえず会場に到着。 今日はだいたい会議センターのみ。
オープニングアニメが完成して、7時からのオープニングで上映されるらしい
18:12
最初の企画、Children of Haruki Murakamiが無事終了。
英語企画だと言ってるのになぜそんなに日本人がいますか。
でもそのおかげで日本語でしゃべれる時間帯があってよかった。
よく覚えてない小説のあらすじを、単語が思い出せない英語でしゃべるのはたいへんだというのが結論。
企画終了後、飢え死にしそうに腹が減ったが、タカアキラ出張販売のカレーパンに救われた。
今日買ったもの:イルミナティTシャツ(横山えいじ柄)と米沢嘉博本。
今日しゃべったガイジン:エレン・ダトロウ、パット・キャディガン、ジョー・ホールドマン夫妻
デイヴィッド・ブリンは家族5人で来日。しかも中国まわり。 ホールドマン夫妻は2週間前から来日して、広島、京都、奈良とまわっていたらしい。
オープニング・セレモニー、柴野さんに対するスタンディング・オベーションですべてが許される。というか、今回のワールドコンでこの先なにがあってももう大丈夫。あれだけで開いた甲斐はあったというべきでしょう。
といいつつ、平日のオープニングでメインホールがぎっしり満員になるようでは、ヒューゴー賞が思いやられる。通訳のレベルに関しても不吉な予感を抱かせたが……。MCの声優さんがものに動じない性格でなかなかよかった。
秋田紀亜氏ほかによるオープニングアニメは、いかにもいまどきの自主制作3DCGIらしい作品。DAICONIIIのOPを踏まえたネタで、けっこうウケてたけど、ワールドコン的なネタがほしかった。むしろ「電車男」のOPを背景だけみなとみらいに変えて流せばよかった気も。
■2日目(08月31日)
12:16
トキオを連れて出発。まもなく京急川崎。現地着は12:30ごろの予定。
向こうのヒューゴー賞マネージャーからは、「いつでもいいから1時間来てくれ」と言われてたのでのんびりしてたのに、日本側スタッフは「11:30集合なのに大森が来ない」とやきもきしていた模様。 ジョージ・タケイが何時に来るのか聞いておけばよかった。
23:55
ヒューゴー賞リハーサルは無事終了。ほとんど立ち位置の確認のみ。
あとは企画を見学。 神田三陽の新作講談と林家彦いちの新作落語を観られてラッキー。
ソノラマの石井さん、天野さん本人とも相談できたので、明日のインタビューはまあなんとかなりそう。
トキオを母親に引き渡したのち、ダッシュで宇宙塵50周年パーティ。浅倉さん、眉村さん、青山さん他と四方山話。
魔界三人娘&小浜徹也とタクシーでインターコンチネンタルに戻り、SF作家クラブのレセプション。ラリー・ニーヴンと並んで一緒に写真を撮りたがる人が列をなし(でも誰も話しかけようとしない)TDLのミッキーマウスみたいだと思った。
シルヴァーバーグは白髪になってもあいかわらずかっこよかった。
ケリー・リンクは意外とふつうのお姉ちゃん風。倉橋由美子のファンだそうです。なるほど。
終わり間際にテッド・チャンを見つけて、ご贔屓だというジョン・クロウリーとかジーン・ウルフとかについていろいろしゃべる。若いのになかなか趣味がいいね。
酒を飲まないから二次会には行かないというテッド・チャンを拉致し、途中で塩澤編集長をリクルートして、カフェラウンジで1時間ばかりまったり過ごす。「リング」の日本版とアメリカ版はどっちがいいか論争とか。 いちばん驚いたのは、『あなたの人生の物語』の部数を知らないという話。「1万部も売れてないと思うけど、よく知らない。出版社が教えてくれなくて……」って。
作家でメシを食うつもりはないそうですが、それにしても極端。 日本でいちばん売れてるってこと?
部屋に引き上げてきて、これからヒューゴー賞台本の翻訳だ。
■3日目(09月01日)23:16
いきなりスピーカーから音が出ないとか、のっけからトラブル続きで最初はどうなることかと思ったが、ヒューゴー賞授賞式はつつがなく終了。立ちっぱなしで脚が痛くなったのを別にすれば非常にらくちんだった。ジョージ・タケイはえらい。 台本のありがたみが身にしみる。
衣裳を調達してくれた電網研所長さま、着付けをやってくれたマダム・ロボさま、ありがとうございました。
■4日目(09月02日)
ディスクワールド企画は、石堂藍とおのうちみんに話を振ってあとは聞いてるだけでいいので超らくちん。聴衆の中に日本語がわからない人が6人いて、通訳が2人。それぞれ3人ずつを担当して、同時通訳してました。通訳環境としては一番充実していたのでは。
テッド・チャン・インタビューは、今まで見たことのないような状態に陥った菊池誠のほうがむしろ見物だったかも。ああいうこともあるんですね。
客席には山ほど作家が来てたので、即席サイン会が終わるのを待って無理やりグリーンルームに拉致し、即席懇親会。円城塔、伊藤計劃、飛浩隆、桜坂洋、東浩紀と、超豪華な顔ぶれ。さらに新城カズマも合流し、根掘り葉掘りインタビュー。主にグレッグ・イーガンとの差異について。トピック的にはジェンダーとか宗教とか。インタビューが終わったばかりなのにそんなに問い詰めてどうする。これは! と思って途中からボイスレコーダーで録音しました(→SFマガジン2008年1月号「大森望のSF観光局」に採録)。
部屋にもどって浴衣に着替える。帯の結び方がわからないのでgoogle。http://yukata-kitsuke.com/otoko-heko.htmを見ながらなんとか自分で結び、ドンブラコンへGO。またまた雇われ司会業。
ゲスト・オブ・オナーの小松、柴野、ブリン、天野、ヒューゴー受賞者のスティーヴン・モファット(「ドクター・フー」の脚本家)、星雲賞受賞者の谷甲州、野尻抱介、笹本祐一が招待枠で乗船。さらにシルヴァーバーグ、ベンフォード、ダトロウ、キャディガン、ニーヴン、ホールドマン夫妻、難波弘之などが自費で乗船しているという、なかなか大変な船でした。しかも主催者は今年の柴野賞受賞者だし。
病人が出たため出航が30分遅れるアクシデントがあったものの、招待者スピーチは電光石火で消化してタイムテーブル死守。
最初に小松さんに挨拶を頼んだら、英語でしゃべりはじめたものの途中でストップして"...I'm sleepy". ソファに横たわってほんとに寝てしまいました。
締めは柴野さんということで、オープニングセレモニーの再現のようなスピーチを披露。これでおしまいと思ったら小松さんがむっくり起き上がり、一言いわせろとマイクをつかむ。
どうやら、「この船がタイタニック号じゃなくてよかった」というネタを発表なさりたかったようです。ドンブラコンの締めとしてはなかなかいい感じ。
この日のために調達したのは、新エヴァ序公開記念の期間限定商品、
NERV浴衣。タケダさんに在庫を聞いたら社販で買ってくれてラッキー。浴衣のことはよくわかりませんが、かなりちゃんとした品物です。 なにしろ、通路を歩いていたら、グレゴリイ・ベンフォードがいきなり大森を呼び止め、
「その浴衣いいね。どこで買えるんだい?」
「ネットで買えますよ。EVANGELIONとYUKATAでgoogleしてください」
「なるほど」(エヴァのことは全然知らないらしい)「私はユカタを7着持ってて、自宅ではいつもユカタだよ。通気がよくて涼しくてすばらしい衣類だね」
「僕は浴衣着るの20年ぶりです」
「なんということだ! 日本人なのに」
「僕はいつもTシャツですよ。通気がよくて涼しくてすばらしい衣類です」
「私もTシャツは2枚ぐらい持っているが、この20年、着たことは1回もないね。ユカタのほうがずっといいよ!」
「…………」
よく考えたら、ドンブラコンのあと、自分が着てたのを譲ってあげればよかったのか。
船を下りると、なぜか桟橋に東浩紀、桜坂洋、伊藤計劃、新城カズマが。結局、インターコンチのラウンジでうだうだしてから部屋に引き上げ、東一家と合流。宵っ張りの子供たちはまだ起きてるよまったく。
■5日目(2007年09月03日)
Nippon2007も無事終了。井上実行委員長の挨拶にまでスタンディングオベーションが贈られて、大会自体は成功だったんじゃないかと。 スタッフの皆様、お疲れさまでした。
正直、3ヶ月前には、とてもここまでうまくまわるとは思ってなかったので、めでたしめでたし。
「自分からは何もしないけど、頼まれたことは断らない」という方針だったんですが、結果的に、めったにないことをいろいろ経験させていただいて感謝しております。
というわけで現在は横浜アンパンマンこどもミュージアム中。ケリー・リンクはじめ外国人参加者はジブリ美術館ツアー中かな。
21:26
アンパンマンこどもミュージアムから夕方引き揚げ、荷物をとりにホテルにもどったら、ちょうどグリーンルームのスタッフ打ち上げがはじまるところだったので、知り合いのスタッフとヒューゴー賞関係の海外スタッフとホールドマン夫妻に挨拶して30分ほど滞在。山のような食い物が一瞬で消えるところがSF大会の打ち上げらしい。ホールドマン夫人はずんだ餅が気に入ったらしい。意外とチャレンジャー。
金土日月と新聞もニュースもまったく見ずに過ごしたら、改造内閣がいろんなことになってて驚く。それにしても野ばらがそんな本名だったとは。
■2007年08月22日 137回芥川賞・直木賞贈賞式
昼間は文化放送ゴールデンラジオ。→
podcast
あまりの暑さに負けてサンダル短パンTシャツで出かけて、ラジオは芥川賞選評ネタ。またしても石原都知事に救われました。ありがたいことである。
帝劇ビルの喫茶店で仕事して、トイレで着替え。わざわざ紙袋に入れて持参したジーンズとアロハで東京會舘対応は完璧だ!
と思ったのに、いろんな人から「思いきりラフな格好ですね」と言われてたいへん心外。やっぱり靴も持参すべきだったのか。
「いいですねえ、ボクもラフな服装が好きなんですよ!」と芥川賞受賞者に強く同調されたが、二次会でいきなりタンクトップ姿になってるやつに言われたくないよ! しかもその格好でずっと川上弘美のとなりに座ってるし。
しかし、諏訪哲史の凄さはそんなものではない。芥川賞・直木賞の長い歴史上たぶん初めて、受賞者あいさつで朗々と歌を歌ったのである。
「群像新人賞の授賞式で『舟唄』を歌ったところ、会場が思いきりシーンとしてしまいまして、あれだけは絶対やめろと親戚・友人一同から言われたんですが、今日はそのリベンジをやりたいと思います。ただし『舟唄』は暗くなることがわかったので、ここは細川たかしさんで行きたいと思います。演歌は譲れないのかよ!とお思いでしょうが、そこは譲れませんね。ではみなさん手拍子をよろしく」
というハイテンションな前フリに続いて「心のこり」をアカペラで熱唱。私バカよねぇ、おバカさんよねぇ、うしろ指うしろ指さされえても〜って、きっぱりバカです。すばらしい。
二次会では代田ひかるネタを披露し、東京都政にまで言及する暴走ぶり。歴史に残る受賞者でした。
ちなみにパーティでいちばん目立っていたのも、アサッテの人の従兄弟の娘だというピンクのドレス姿の双子姉妹。人気を独占してました。
■2007年08月03日 ギートステイトの夜 @ロフトプラスワン
gonzapの人が前売券あまってるよというので東浩紀・桜坂洋のギートステイト・ナイトに出かける。沢城みゆきのためではありません。しかし沢城みゆきはすっかり大人になっていた。前に見たときは中学生だったのに! って当たり前か。当意即妙の受け答えはすでにベテランの貫禄。
東浩紀の芸風も完成されている。30数時間寝ていないといいながら、ローテンションから超ハイテンションまで自在にギアを切り替えるのが見事。
しかし一番ボルテージが上がったのはぷちこネタ。オタクウケのツボをつかんでるね。「にゅ」と「にょ」を間違えて客席から突っ込まれるボケは天然? そのあと激しく落ち込む芸風も愛される理由?
・「一度もない」二題。
東浩紀:僕は「ほしのこえ」を作品として評価すると言ったことは一度もないはずです。
桜坂洋:僕は「ギートステイト」がSFだと言ったことは一度もないはずです。
・渦中の人
打ち上げには、渦中の宇野常寛と、その黒幕である乙木の中の人やユリイカ編集長やgonzapも参加。
機関銃のように自説をまくしたてる宇野くんを、微苦笑をたたえた、「まるでオレの若い頃を見るようだぜ……」的表情で見守る東浩紀が爆笑でした。
宇野理論は面白いんだけど、細かくツッコミはじめるとキリがないのはSFマガジンの原稿と同じ。まあ、局地戦の勝利を積み重ねることは放棄しているから、あれはあれでいいのか。
打ち上げ会場まで来ながら逃亡したタニグチリウウチに宇野からの伝言。
「リウイチさんをぜひ次のラブワゴンに誘いたいと思ったのに、目を合わせてくれないんですよ!」
「セカイ系メタリアル・ドキュメント」と銘打つ『惑星ラブワゴン』は、PLANETS4号に登場した、あいのり系オタク合コン企画。次回はぜひラブワゴン中年スペシャルと銘打ち、中年独身オタクに彼女を見つけてやってほしいと要望しておきました。
ちなみに宇野くんの仮想敵は藤津亮太らしい(笑)。
しかし、SFとはなんの関係もない「ゼロ年代の想像力がなぜSFマガジンに載ってるのかは謎のままだった。