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●大森望・三村美衣著『ライトノベル☆めった斬り!』、bk1で予約受付中。
12月6日発売予定/太田出版・税込1,470円
1970年以降のライトノベル史を概観する対談+代表作100点の徹底ガイド
30年史年表/ライトノベル度チェック/5項目5段階採点/作家一覧つき


装画:D.K/デザイン:岩郷重力+Wonder Workz。

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●豊崎由美/大森望『文学賞メッタ斬り!』(→amazon | bk1 | ABC | eS! books公式サイト | bk1出張版 | interview | forum | 「ニュースな本棚」版 | 131回芥川賞、直木賞選考会 | 書評Wiki | blogmap | はてな
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【10月26日(火)】


 池袋コミカレの米光一成先生の講座「デジタル・コンテンツ仕事術」に潜入。ゲストは大森の尊敬するゲームデザイナー、麻野一哉氏。『弟切草』『街』『かまいたちの夜』の話が中心と来ては聞かないわけには。
 しかし『街』ってそんなに売れなかったのか。まああの時期のサターンだからなあ。
 オレは長野オリンピック見ながらえんえんやってました。頭の中では長い映画を見てたような記憶に。
 調べてみたら、「SFでも小説でもないんだけど、チュンソフトのサウンドノベル第三弾、長坂秀佳監修の『街』はサターン・ユーザー必読」と〈本の雑誌〉で紹介してるのだった。おまけに〈Game Walker〉の連載最終回で、「98年のベストゲーム」第一位に選んでます。
 ちなみに『かまいたちの夜』は、小説すばる94年12月号「今月の、この一冊」で書評。『弟切草』のレビューもどこかで書いたはずだけど思い出せない――ので昔のファイルにgrepかけたら、なんと女性誌〈クレア〉で一本だけ書いたコラムのネタが『弟切草』(笑)。SFセミナーで上京した水鏡子師匠がわが家に滞在したときの話が出てくるから、たぶん92年の5月に書いた原稿ですね(しかもこのとき水鏡子は39歳!)。TVゲームなんかやる女性はほとんどいない(と思われていた)時代らしい。隔世の感に打たれたので全文ペーストする。

「えーっ、TVゲームの話? 興味ないのよね、悪いけど」
 そうつぶやいてページをめくる人も少なくないだろうが、あわてるな、人生は長い。「弟切草」は、そんなあなたのために開発されたソフトなのである。
 つくった人は、ドラクエ・シリーズで有名な天才ゲームデザイナー、中村光一。その背後には、涙なくして語れない開発秘話があるという(伝聞)。
 ある日、中村氏は「興味ないのよね」派の女友だちに、ドラクエの面白さを伝道しようと決意。彼女の家にゲームを持ち込み、セッティングまで全部やってあげたのに、わずか五分後、「こんなのつまんない」と突き返されてしまったのである(業界に不案内な人のために解説すると、これは、シュワルツェネッガーのエスコートで「ターミネーター2」を見にいきながら、五分で映画館を出てしまう行為に相当する)。
 この屈辱をバネに、彼が全精力を傾けたゲーム嫌い矯正秘密兵器が、電子小説「弟切草」だ。
 あなたは恋人とドライブの最中。ところが突如ブレーキが故障し、車は夜の山道で立往生。人家を求めて歩きだした二人の前に現れる不気味な洋館……。
 とまあ、いかにも時代がかった設定で物語は幕をあける。乱歩賞作家・長坂秀佳監修のシナリオは、迫力満点で読みごたえ十分。基本的には画面の文章を読む形で進むんだけど、当然、グラフィックや効果音もばっちり。要所要所には選択肢が出て、自分の意志で行動を決定できるシステム。
 最大の魅力は、二度、三度とくりかえして読むたびに、物語がどんどん変わっていくこと。ほのぼの恋愛小説かと思えば、戦慄の恐怖が襲いかかったり、モンスター一家総登場の爆笑ギャグになったり。読むたびに千変万化する物語――ほとんどボルヘス的なコンセプトを、テクノロジーの進歩が現実に変えたというわけ。
 この魅力にいったんハマるともう病みつきで、先日うちに遊びにきた39歳間近の地方公務員氏など、二日間かけて26回「弟切草」を読み、目を真っ赤にして帰っていったくらい。
「でも、結局ゲームなんでしょ、興味ないもん」とおっしゃる頑固な人もいるでしょうが、このソフト、じつは進化した小説なのである。紙に印刷されるだけが小説じゃない。テレビで読めて、しかも読者が物語に参加し、筋書きを変えていける双方向電脳小説。現代文学の閉塞状況を、電子メディアが打ち破る。友よ、村上春樹の新作がテレビで遊べる日も近い。(文藝春秋〈CREA〉1993年7月号?初出)

 〈本の雑誌〉の1992年度ベストでも、『哲学者の密室』(笠井潔)、『バベルの薫り』(野阿梓)に続いて『弟切草』を第三位に選んでます。
 というわけで、わたしは12年前から麻野作品にハマり続けているのだった。
 なので当然、二次会にも潜り込み、根掘り葉掘りゲーム製作状況を取材。あと、我孫子武丸を語るとか、田中啓文を語るとか、牧野修を語るとか。

 あと、授業の一部を使って実施されたNScripterのデモが面白かった。サウンドノベルを簡単につくれるツールなんだけど、オンラインで小説を読ませる手段にも使えるかも。



【10月27日(水)〜29日(金)】


 太田出版『ライトノベル☆めった斬り!』の対談構成作業をひたすら続ける。



【10月30日(土)】


 ジュンク堂新宿本店オープン記念の『文学賞メッタ斬り!』トークショー。
 会場は新宿三越の地下三階。まさか三越でトークショーに出演する日が来ようとは。しかしどうせデパートなら屋上がよかったな。文学戦隊メタレンジャー。どうせおれはメッタブラックだよ。
 特設会場の客席は超満員の大盛況。あまり変わりばえのしないネタですみません。
 レポートは、こことかこことかこことか参照。
 雨の中ご来場くださった皆様、ありがとうございました。

 しかし結局ジュンク堂新宿本店もロフトも見物するヒマがなかった。ダメすぎる。 控え室で柴田元幸氏と斎藤美奈子氏に挨拶したぐらい。平凡社の斎藤さん担当編集者が元月刊アスキーのN氏だったのでびっくり。

 打ち上げ宴会は池林房。女子率の異様な高さに驚く。男3人に女15人とか。北上宴会をしのぐ女子率! と自慢してたらトヨザキ社長が一言。
「大森さん、男の友だちが少ないんじゃないの?」
 そうかも(笑)。

 仕事が末期的な状態なので、宴会を途中で30分抜けてスタバで〈週刊新潮〉の書評を仕上げてまた池林房にもどり、さらにひと足はやく終電帰宅。 皆川博子『薔薇密室』を読む。



【10月31日(日)】


 小説すばるの書評を『薔薇密室』で。超泥縄。

 キネ旬の「日本の恋愛映画」マイベストテンを選ぶ。『サード』『天使のはらわた 赤い教室』『翔んだカップル』『時をかける少女』『OL百合族19歳』『私をスキーに連れてって』『ラブ・ストーリーを君に』『あの夏、いちばん静かな海。』『Love Letter』『アドレナリンドライブ』。謎。

 さらに〈Men's EX〉の映画評を『エイリアンvsプレデター』で。



【11月1日〜7日(日)】


『ライトノベル☆めった斬り!』のブックガイド作業。全100タイトルのうち、大森担当分は43タイトル。20〜30本ぐらいのつもりだったのになあ。山と積み上げた文庫本を片っ端から読んでは書評を書く。読んでも読んでも終わらない悪夢。
 それと併行して対談部分のゲラ校正。脚注はこれから。

 そう言えばロッキンオン〈SIGHT〉の年末特集、BOOK OF THE YEARは今年から別冊になるそうで(『今年読む本いち押しガイド』みたいなもん?)、
「じゃあ、(北上次郎・大森望のエンターテインメント対談書評も)ふだんより分量が増えるんですか」
「ええ、多少増えると思います」
 みたいな会話がしばらく前にあったんですよ。で、金曜(11月5日)の夜に「ブック・オブ・ザ・イヤーのまとめです。ご一読ください」ってメールが来て、月曜までに戻せと。で、日曜日に添付ファイル開いたら、四百字80枚分(笑)。しかもほとんどベタ起こし。ぜんぶで13冊分の対談を、1冊あたり約6枚の一律スペースに割り振るデザインで、その本についてはほとんどなにもしゃべってない箇所もあったり。頭から直してる時間はとてもないので、とにかく話の辻褄だけ合わせる。それでもほとんど二日がかり。




【11月8日(月)〜13日(土)】


 『ライトノベル☆めった斬り!』の対談部分のゲラを戻し、脚注作成作業に着手。三村担当分も含めて約300箇所ぐらい。『文学賞メッタ斬り!』のときよりは全然短いので簡単だと思ったらそうでもなかった。あのときはアライユキコさんが基本的な人名とかの註はあらかじめつくっててくれたんだよなあ。
 結局、対談及びブックガイドに出てくる作家(ライトノベル系の著作が一冊以上ある人のみ)に関しては巻末に一覧をつくって、そこに生没年、デビュー作、受賞歴etc.をまとめることに。データ作成に関しては有里さんの全面的な協力を仰ぎました。

 『ライトノベル☆めった斬り!』の仕事がやってもやって終わらない無間地獄に陥ってしまったので他の仕事が押しまくり。創元SF文庫から再刊される『スタージョンは健在なり』(創元版タイトル『時間のかかる彫刻』)の解説原稿はギリギリの締切から三日遅れの12日朝に入稿。
 11日の朝には「『犬は勘定に入れません』の4刷が決まりました!」という吉報も飛び込んできたのに喜んでいるヒマがない。mixiチラ見のヒマもない。ライター生活最大級の修羅場。

 泣きながら原稿書いてると扶桑社K氏からメール。日販が1000坪の店売を西葛西に開設だそうです。ほんとはbk1(TRC)の店売ができるといちばんうれしいんだけど(笑)。

 とりあえず自分の担当分の注釈をざっと書き終えてから三村美衣の注釈と合体させて頭から見直し。13日いっぱいでなんとか入稿できる状態にしてほっとひと息。しかしこの本、11月19日校了予定なんですけど。



【11月14日(日)】


 『ライトノベル☆めった斬り!』の序文を書いてメール送稿。中身は三十代以上向けなのにパッケージがわりと現役読者向けになっちゃったので、そのバランスをとらなきゃいけないんですが、ちょっと無理。まあ、このカバーでも抵抗なく買える人じゃないと電撃文庫には手が出ないと推察されるので、問題ないと言えばないのか。
 超キュートなカバーイラストを描き下ろしてくれたD.K氏と、装幀および本文デザインを担当した岩郷重力に感謝。bk1ではすでに予約受付がスタートしてるんで、よろしくお願いします。初版部数は少ないし、版元が太田出版なんで、全国津々浦々の書店にはたぶん並びません。都会の大型店中心かな。
 公式サイトもつくりたいんだけど、今はぜんぜん時間がない。校了してから考えよう。校了するとしてだけど(泣)。

 ミステリチャンネル恒例「闘うベストテン」の収録@船橋市民文化ホール。といっても会場はリハーサル室なんですが、機材や椅子が設営された状態だと、わりとそれらしい雰囲気に。
 お客さんを入れての公開録画は初めてなんでどうなることかと思ったけど、進行は非常にスムースでした。スタッフをつとめてくださったときわ書房の皆様、ミステリチャンネルの皆様、はるばる見物に来てくれた皆様、ありがとうございました。
 結果については大満足。しかし国内も海外もこれが一位かよ! そりゃオレはいいけど……みたいな。

 終了後の打ち上げは太っ腹なときわ書房持ち(茶木則雄・本店店長仕切り)。ときわ書房は聖蹟桜ヶ丘に新店をオープンすることになってて、本来はその開店イベントとして「闘うベストテン」を誘致したはずが、開店スケジュールが延びてしまい、船橋開催になったという経緯なんですね。(聖蹟桜ヶ丘店は11/19オープン。記念イベントは藤子不二雄A先生のサイン会になったらしい。そっちのほうがはるかに派手です。茶木さんは聖蹟桜ヶ丘に引っ越して必死に開店準備を進めてるらしいので、お近くの方はぜひ)。

 打ち上げでは、物見高く見物にきた川村恭子とえんえん昔話をしてた気が。学生時代からサウンドストリートのDJをつとめ、さらに〈SFの本〉3号の映画座談会にも登場。それ以前に『シンボーズ・オフィスへようこそ』に出てきたりする神出鬼没の音楽ライター。関口さんや香山さん吉野さんとも古いつきあい。業界歴の長さと顔の広さでは誰も勝てません。今夜の宴会の席でガラスのコップ二個を破壊した乱暴狼藉ぶりは秘密らしい。



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