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【6月7日(月)〜9日(水)】


 昼飯を食おうと近所の中華料理屋に入り、食後、R3を開いたら、なぜか無線ネットワークがアクティヴに。二階にYBBでも入ってるんですかね。

 ftpで日記を更新して一服してたら、週刊文春のM氏から携帯に電話。

「いま日記を読ませていただいたんですが、長崎の小学六年生殺害事件のことで……」

 っておい。まだ5分もたってないぞ(笑)。偶然とはいえ秒殺のタイミング。アンテナが把握するより速い。日記更新リアクション最短記録かも。
 というわけでコメント取材を受けました。子供がバトロワで小説書いたりするのは別に珍しくないとかそういう話。
 M氏は渋谷で女子小学生にインタビューしたり、カフェスタのログを熟読したり、識者に話を聞いたりの取材を重ねているらしい。

「不勉強で、大森さんが日記に書かれていた、『ヒロインの名前が杉江真耶ってところがポイントかも』っていうのも、どういう意味かわからなくて……

 と言われて恐縮。つまりですね、彼女のBR小説に直接の影響を与えたのは、高見広春の『バトル・ロワイアル』じゃなくて、杉江松恋著の『バトル・ロワイアル2』じゃないの? ってこと。『2』のノベライズ読んでからレンタルで借りて『2』の映画観たのかな。あるいは逆の順番か。いずれにしても、杉江松恋版を読んだあと、ゴールデンウィークに「囁き」を書いたんだと思いますね。
 高見広春に罪はない。悪いのは杉江松恋。杉江松恋は反省しる!

 とか書いてると本気にする人がいそうで怖い。あくまでも、小説における影響関係の話ですからね。しかし「囁き」というタイトルはどこから来たのか。京都の人が書いた小説を読んでる可能性も高いと思うのだが。

 もっともさすがに今回はメディア側も比較的冷静で、BRバッシング的な論調はあんまり(思ったほどには)ない。だいたい直接のヒントを与えたのは前日放送の二時間ドラマだとか自分で言ってるんだから当然ですが。
 ま、『デビル17』を読んでたとか言うんじゃなくてよかったかも。

 しかしメディア側の取材がいい加減だと思うのは、カフェスタのHPについて報じたいくつかの新聞・週刊誌が、「うぜークラス」で始まる最後の日記エントリについて、「女児が去年の12月に書いた日記では」うんぬんと紹介していたこと。日記ファイルは降順でファイル名がついてるので、どう見てもこれが最新なのに、どうして「昨年末」と言われるんだろうと思ったら、タイムスタンプが「2011/12/26」なんですね。12月26日を信用するなら、どうして2011年を信用しないのか(笑)。2004/5/30の次が2011/12/26になってたら、最新ファイルだけタイムスタンプが狂ってるのね、と考えるのがふつうでは。

 そのへん正確に書いてたのは、見た範囲では《AERA》ぐらいかな。しかし見出しに『チャット殺人』はないだろ、『チャット殺人』は。電話で口げんかしたことがある相手を殺したら『電話殺人』か?



【6月10日(木)】


 あと一カ月以内ぐらいにさいとうよしこが第二子を出産する予定なので、病院に出かけて、担当ナースと立ち会い出産の打ち合わせ。前の産院ではそういうの全然なかったんですが、出産に関しては病院によって全然システムが違うね。
 生まれるのはいいんだけど、入院中のトキオ子守り問題をどうするかが最大の難関。仕事は大幅に滞りそうなので、いまのうちに謝っておきたい。

 《本の雑誌》書評用に奈須きのこ『空の境界』を読む。長編4本が合体して上下巻の大長編になる不思議な構成。同人誌版からほとんど直してないらしいけど、時間のコントロールはわりとブギーポップ風、「単衣の着流しに赤い革ジャンを羽織った二重人格の超能力美少女」ってヒロイン像はほぼ完璧。文章はしっかりしてるし、いかにもエロゲ風なのは3話めの学園篇だけなんで(ただしエロ要素はゼロ)、その筋じゃない読者でも問題なく読めるでしょう。浦賀和宏や佐藤友哉より読みやすいかも。
 あっという間に売り切れた限定愛蔵版はヤフオクで2万円超える値がついてますが、ノベルス版も品切店続出。うちの近所の書店で聞いたら、そこの社長が講談社の営業部長と会ったとき、
「なんでも言ってください。すぐに入れますから。なんでも聞きますよ。ただし『空の境界』以外」と言われたらしい(笑)。
 発売前のネット上での盛り上がりを見てたら、ふつう初版部数はもうちょっと上乗せすると思うんだけどなあ。まだ信用されてないのか。

「新伝綺」のネーミングは、なるほどよく考えましたって感じ。つまり清涼院流水が、新本格における島田荘司・竹本健治的な位置づけになるわけですね。『空の境界』が書かれたのは3、4年前だから、西尾維新、佐藤友哉も同時発生的な新伝綺作家と見なすことは可能だし。新本格の歴史をたどり直し、「新伝綺」で黄金時代を築けるか?
 その場合、「青春エンタ」の立場は? という気もするが、まあ、当たったネーミングだけが歴史をつくるので。
 しかし考えてみると、セカイ系にしろ青春エンタにしろ「キミとボク」にしろ新伝綺にしろ、エロゲ文化から派生した小説群に対する命名権を争っているだけのような気がしなくもない。SFに寄るとセカイ系、学園小説に寄ると青春エンタ、ミステリに寄ると「キミとボク」、モダンホラーに寄ると新伝綺。
 エヴァ以降、若者向けエンターテインメントの最先端がエロゲに移行し、いまはエロゲ的なものの浸透と拡散の時代である、と。
 そういう歴史観に立つと、TRPG/ファミコンRPGの盛り上がりが80年代末の異世界ファンタジーブームを準備したのとパラレルな現象として把握できますね。よく知らないので言ってみただけですが。

『空の境界』でもうひとつ驚いたのは笠井潔の解説。上下に分かれて、合計40ページぐらいあります。歴史はこうやってつくるのだという見本みたいな原稿で、思わず説得されそうになります。しかし伝奇ブームが失速して新本格ブームが台頭したっていうのは、いくらなんでも無理があると思った。読者層が全然違うし、伝奇は消えてなくなったわけじゃなくてノベルス棚の一ジャンルとして定着してるから(陰陽師ブームとかもあったし)。
 90年代の伝奇については、ノベルスを無視するのなら(さらに《ブギーポップ》を伝奇に含めるなら)、やはり桑原水菜『炎の蜃気楼』とか若木未生『ハイスクール・オーラバスター』とかを中心にした女の子小説のムーブメントとして語るべきでしょう。
 笠井さん自身は「新伝綺」って言葉は使ってなくて、中心‐周縁論(まつろわぬ民の末裔が活躍するタイプ)を基盤にした80年代伝奇とは別の新しいものと規定してるんですが、そういうものの第一号に『空の境界』を持ってくる理屈が弱い。
 エロゲの歴史にはまったく疎いので、18禁伝奇ビジュアルノベルの第一号がなんなのかは知りませんが、伝奇RPGってことでは、それこそ『女神転生』シリーズあたりまで遡る必要があるのでは。その影響を受けた小説もいっぱいあったような気がする。
 うーん、興味のないジャンルの話はどうも曖昧な書き方になるなあ。伝奇を軸にしてエンターテインメントの歴史を整理するのは面白い視点だと思うけど。



【6月11日(金)】


 太田出版で三村美衣と対談。ライトノベル文学史&ブックガイドみたいな本をつくることになって、その実作業なんですが、今年はいきなりライトノベル本の大ブームらしく、6社ぐらいで、ライトノベル読本(または『このライトノベルがすごい!』的なランキング本)の企画が進んでいる模様。商業的な大ブームはとうに過ぎ去ってるけど、ヤマトから数えても30年たって、もう定着したってことですか。
 しかし三村美衣は資料を集めすぎて歴史観が崩壊したらしい(笑)。だからそうじゃなくて、歴史観に合わせて資料を集めないと。

 曙橋のラーメン屋で海苔満載の超細麺を食って、タクシーで飯田橋カーニバル2。夏木健次迎撃カラオケ。
「夏木さん、いつごろの歌が好きですか?」
「僕ですか? 僕は昭和54年がいちばん好きです」(きっぱり)
 というわけで、デンモク利用の1979年縛りに。「燃えろ、いい女」とか「マイ・レイディー」とか初めて歌った気が。



【6月12日(土)】


 本格ミステリ大賞授賞パーティ@日本出版クラブ。歌野さんはキモノ風のかっこいいシャツ来てました。千街くんはいつもの千街くん。受賞者挨拶は思いきりただのミステリおたくみたいでした。人柄がにじみ出てるというかなんというか。霞流一の司会は飛ばしすぎ。

 二次会三次会の話題は、第131回直木賞・芥川賞候補作、『空の境界』、佐世保の事件、少女マンガ、ジーコ・ジャパン、リレー小説、ユーロ2004など。

 23時過ぎに引き揚げ、臨月の腹を抱えて徹夜カラオケに赴くさいとうよしこと交替。ユーロの開幕戦をTV観戦。ポルトガルだめすぎる。フィーゴもルイコスタも全然ダメ。やりかたは変わってないけどスピードがめっきり落ちてて、いちばん悪いときのブラジルみたいでした。ギリシャは、スペインを抑えての6組1位がダテじゃなかったことを証明する防御力。ポルトガルはスコア以上の惨敗で、いきなりの大波乱。まさかとは思うけど、開催国が一次リーグで消えたりしないことを祈りたい。



【6月13日(日)】


 スイスは意外といいチームかも。クロアチアはラパイッチがなあ……。イエローカードの出しすぎで、後半つまんない試合になっちゃったままスコアレスドロー。

 まあしかし、この試合は前座で、本命はフランス×イングランド。とくに後半30分過ぎからの展開は爆笑。要するにベッカムvsジダンでジダンの勝ちってことか。イングランドらしい負け方とも言えますね。それにしても、あとから効いてくるダメージが相当に大きそう。
 とはいえ、フランス最強の前評判もあんまりあてになりません。この試合、順当に負けてれば、02W杯の二の舞という可能性もあったと思う。これならスペインのほうが強いんじゃないの。  イングランドはかえすがえすも惜しかった。しかしスタジアムを埋めつくしたイングランド・サポーターがあんまりがっくりしてなくて、「やっぱりなあ。どうせ夢だよ……」みたいな空気だったのがおかしい。イングランドのファンって、なんかタイガース・ファンと似てない?




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